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メルカトルさん
平均点: 6.02点 書評数: 1768件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.448 3点 異説 夢見館- 霞田志郎 2014/03/29 23:40
再読です。
太田忠司が自作のキャラ霞田志郎名義で書き上げた、幻想的なミステリ作品。
主人公の純はひきこもりの高校生。毎日自分の部屋でゲームばかりしているのだが、あることからそのゲーム『真説・夢見館』(セガ・サターンから実際に発売された)にそっくりのアネモネ荘に迷い込み、その後も頻繁に訪れるようになる。そして、その後自分と一人の住人を残して、管理人を含むアネモネ荘の住人が皆殺しにされてしまう、というストーリー。
全般にごくごく薄味、というより薄っぺらで、微塵も奥深さが感じられない。最後に実は叙述トリックもありました的なのも明かされ、やや意外性があるものの、まあ評価に値しない駄作と言ってもいいんじゃないだろうか。
結局最後は夢オチのようで、正直よく分からないが、作者は何を書きたかったのかも私には理解できなかった。
賢明なる本サイトの書評家達は、まさか本作を読まれてはいないとは思うが、今後ももし古書店で見かけられても本書を手に取らないように。良い子のみんなは決して読まないでください、ってことですね。ごめんなさい、太田さん。でもいいよね、もう絶版だから。

No.447 7点 白い部屋で月の歌を- 朱川湊人 2014/03/28 22:43
再読です。
第10回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品の表題作と、中編の『鉄柱』を併録する朱川氏初期の代表作。
表題作はいわゆるゴーストバスターズの3人組の話で、霊能者である中年女性が悪霊を封じ込め、その依代として車椅子の「ぼく」が悪霊を憑依させる。もう一人霊能者の弟は、営業マン的な役目をしている。どこにでも転がっていそうな話ではあるが、朱川氏の腕にかかると、これがなんとも言えない独特の世界観を醸し出す。
ホラーなのに、叙述トリックまで仕掛けられていて、いかにも選考委員受けしそうな作風である。直木賞受賞者の実力を遺憾なく発揮した傑作であろう。
個人的に表題作よりも気に入っているのが『鉄柱』(クロガネノミハシラ)である。
女性関係の失敗(妻は事情を知らない)で小さな町に左遷になった主人公の雅彦とその妻は、引っ越し先の小高い丘の上にある広場で逆L字型の鉄柱を見つけるが、一体何の目的でそれが建っているのかが分からない。
町の人達はみな一様にいい人ばかりで、夫妻は内心喜んでいたのだが、次第にその町にしかない異様な慣習が明らかになっていくにつれ、じわじわと精神的に追い詰められていき、最後にはとんでもない破局を迎えることになるというストーリー。
死という概念を逆説的に捉えた、普通の感覚では発想すら難しい怪異を、流麗な文体で描いた佳作である。

No.446 6点 灰色の仮面- 折原一 2014/03/26 22:11
再読です。
初期の作品だけに、活きの良さが際立っている。勿論叙述トリックも然りだし、プロットもらしくていいんじゃないかな。私はノベルズを読んだので、改訂版ということになるらしいが、単行本とは違った結末というか構成になっているとのこと。そちらの方は知らないが、改訂版はスッキリして分かりやすいので、その辺りに筆を入れ直したということだろうか。
また、本作は折原流のラブ・ストーリーとも言えると思う。それもあまり恋愛に免疫がない若者同士の感じがよく出ていて、初々しさがなかなか微笑ましい。そんなにうまくいくものか、という気がしないでもないが、気の合った二人ならまあアリなのかもね。
突出したものがないだけに高得点とはならなかったが、いかにも折原氏らしさが出ていて、初期の代表作の一つと言ってもいいかもしれない。

No.445 5点 白ゆき姫殺人事件- 湊かなえ 2014/03/25 22:30
どことなくダサいタイトルだけど、意外に面白かったりします。全編、証言と独白、そして巻末にドーンと控える参考資料から成り立っている、独特の構成。湊女史ならではのアイディアが光っているとは思うが、ミステリとしてどうだろう。一応、フーダニットとホワイダニットが興味の中心だが、一級品の文章とテクニックにはぐらかされた感じで、正直ミステリとしての評価は低い。
しかし、ほぼ証言だけで構成されているにしては、ぶつ切り感もないし、スムースなストーリー展開になっているのは、この作者にしかできない芸当かも知れない。
また、近日映画公開されるわけだが、確かに映像化には向いている作品だと思う。観に行く予定はないけれど、かなり難しい役柄を井上真央ならやってくれそうな気がする。
それにしても、ほとんど伏線らしきものが見当たらないまま、いきなり犯人が明らかになる辺りは、やはり本作がミステリとしての体裁を有していないことを物語るものである気がしてならない。私は湊女史をミステリ作家とは思っていないので、それは当然なのかもしれないけれど。だからこの人に本格ミステリを望んでも土台無理な相談なのだろう。

No.444 4点 喜嶋先生の静かな世界- 森博嗣 2014/03/23 22:06
本作は、森博嗣をこよなく愛する人に捧げられるべき作品であって、私のように大学生活をパチンコと麻雀に明け暮れていた下衆が読む小説ではないね。まあ真面目で真っ当な学生生活を過ごしている人、或いは過ごした人にとっては有意義な読書体験になるかもしれないけれど。特に理系の人間にはね。要するにこれは内容こそ難解ではないが、それだけ私にとって敷居の高い作品なのだ。
そして敢えて苦言を呈するならば、森博嗣という作家は執筆作業から得られる代償を単なる労働の対価と考えており、それを公言してはばからない人だ。ならば尚のこと、読者を裏切るような作品を書いてはいけないだろう。また、私はすべての小説は広義でのエンターテインメントでなければならないという持論ももっていて、その意味で本作は全くその条件を満たしていないのも不満の一つである。これを読まれた多くの方は「何を寝ぼけたことを言っているんだ」と憤慨されるかもしれないが、あくまで個人の意見なので大目に見てもらいたい。
ただ、終盤の数ページだけは少しばかり意外性もあり、考えさせられるものではあった。
蛇足だが、中学生の頃、近所の女子大だか女子短大だかの学園祭に、友人に誘われて遊びに行ったことがあるが、招いてくれた女子大生たちは一様に楽しそうだった。大学というのはそんなに楽しいところなのかとその時思ったものだが、それが幻想だと気付くのにはまだ数年の時を必要とするのであった。

No.443 6点 8の殺人- 我孫子武丸 2014/03/21 22:29
再読です。
まあ何と言うか、よくありがちなストーリーとプロットで、際立った特徴は見られないが、全般にユーモアが効いていて私には結構面白く感じられた。速水三兄弟の描き分けも上手く決まっていると思うし、他のキャラも性格や行動様式などがよく描かれている気がする。
トリックは目新しいというわけではないが、分かりやすく好感が持てる。また、死体を引きずった跡が残っていた理由などは非常によく考えられていて、デビュー作のわりにはそつなくまとめられているように思う。
いかにも新本格という作風だけど、我孫子氏独自の「色」をさりげなく押し出しており、その後の作品にも自然に継承されているのは、一応戦略として成功を収めてると言ってよいだろう。
余談だが、ノベルズの巻末に収められている島荘の『本格ミステリー宣言』に書かれている「予言」は見事に的中しており、今更ながらその慧眼に驚かされるばかりである。

No.442 5点 白い森の幽霊殺人- 本岡類 2014/03/19 22:25
再読です。
第一の殺人は雪だるまの中に埋め込まれた女子大生、しかも両足が切断されているという、なかなか猟奇的なものだが、第二、第三の事件は事故か殺人か判然としないという、いたって地味なものである。
ペンションのオーナーである邦彦は、巻き込まれるように探偵役を演じることになるのだが、その独自の捜査がいかにも地味で、なんだか一向に期待感が盛り上がってこない。他にはあまりこれと言って目立った人物が登場しないため、全体的に平板な感じを受けてしまう。地道な捜査により、次第に事件の全貌が明らかになっていくタイプのミステリが好みの読者には向いているだろうが、私にはどちらかというと嗜好が合っていないと感じた。
ただし、謎解きのシーンはそれなりに読み応えもあり、なぜ両足が切断されたのか、あるいはなぜ雪だるまに死体を隠したのか、といった理由には納得させられた。
よくよく考えてみると、結構面白い事件なのだが、ストーリーに派手さがないので、せっかくの逸材がかなり控えめな作品と言う印象になってしまっているのは残念である。

No.441 6点 殺人の駒音- 亜木冬彦 2014/03/17 22:24
再読です。
ミステリのパートを除いては、将棋を指すシーンや将棋を生業としているキャラたちのエピソードがいちいち面白いのだ。いっそのこと、殺人事件など取り除いて、エンターテインメント一本で作品を仕上げてしまったほうが良かったのではないかと思うほど、対局シーンなどが際立っている。それは確かに劇画的なタッチと言えるかもしれないが、普段将棋など全く指さない私でも自然に引き込まれるような臨場感あふれる描写であり、本当に素晴らしいと感じる。
一方、ミステリとしてはさして特筆すべき点はない、どちらかと言うと平凡な作品と言えよう。ただ、ミスリードも含めて、意外な犯人であるのは評価できる。しかし、新味はないし、殺人事件の話になると、急に面白味が半減してしまうので、せっかく娯楽小説として一級品であるだけに勿体ない気がする。
エピローグがまたいい味を出している。私が過去に読んだミステリの中でも、5本の指には間違いなく入る、素晴らしい締めくくり方ではないかと思う。
総括すれば、エンターテインメントとしては8点超え、ミステリとしては4点くらいな感じだろうか。しかし、約20年ぶりくらいに読んで良かったと素直に思った。また何年かしたら忘れてしまうだろうが、その時はまた読めばいいかなと思わせるような作品ではあった。

No.440 4点 そのケータイはXXで- 上甲宣之 2014/03/15 23:24
再読です。
シーマスターさんの書かれている通り、ドタバタ劇の連続。しかも第一章、第二章とそれが続き、正直飽きが来る。さらには、各章とも視点が固定されているため、変化に乏しくサスペンスが一向に効いてこない。少しは緩急を考えて、場面を変えるとか、もっと物語に起伏が欲しかった。
特に第二章は、本筋にほとんど関係ない敵に主人公の一人が狙われるという、読者にとってはどうでもいいような展開を長々と読まされて、悪い意味で疲れてしまう。それでも、文章が下手なわりに読みやすいので、つい引っ張られてしまうという、悪循環の繰り返し。初読の際はもう少し面白かったイメージがあったので、再読してみたが、どうやらその価値はなかったようである。
最終章では、主人公の女性が、自分が心の中で描いていた理想と現実の差に、とんでもない愚行を犯してしまう。これは一体どう言った心理なのか、理解に苦しむ。
面白かったのは第一章の、村に昔から伝わる因習を事細かに説明されるシーンくらいのもので、どんでん返しがあるわけでもなく、イマイチ魅力を感じない作品であった。

No.439 5点 黄昏の囁き- 綾辻行人 2014/03/12 22:26
再読です。
ストーリーの流れは島荘を彷彿とさせる。だけど事件終息に向けてのアプローチの仕方は全然違う。そりゃそうだ、いくら師匠と仰ぐ島荘でも、その辺りはキッチリ線引きをしているということだろう。今や、綾辻氏が師と仰がれる立場になっているから、それでいいと思う。
序盤で大方の展開は読めてしまうのに、なかなか進展具合がスピーディでないため、じれったいというか、多少イラッと来る。特に、過去にあった出来事が小出しにされるため、どうにもスッキリしないねえ。
しかし、結局はそれを逆手にとって、叙述トリック風の仕掛けを施している辺りは、さすがに綾辻だと言わざるを得ない。それに加えて、犯人は実に意外な人物であり、サスペンスの括りの中にも、本格スピリットを忘れていないので、ジャンルを超えた異色作に仕上がっているのではないだろうか。
「囁きシリーズ」は全般的に、今邑彩女史辺りが書きそうな作風にも思える。似ているというのではなく、どこか共通するものを感じるというだけの話だけど。

No.438 6点 暗闇の囁き- 綾辻行人 2014/03/10 22:28
再読です。
うーん、悪くはないんだが普通だね。どこをとっても普通。これと言って突出した部分もなければ、特別アラも見当たらない。まあ雰囲気はそれなりのものを出している気はするけど。
亜希以外の兄弟は、そんなに異様な感じもしないし、不気味な存在感を醸し出しているふうでもない。その点、亜希はどこか不透明で、その生死さえ不明なので、最後までホラー作品としての一翼を担っていると思う。彼の存在がなければ、かなり平凡な作品になっていただろう。
途中、死体の髪が切られていたり、片方の眼球がくり抜かれたりして、内心「おっ」と思ったが、その真相にはやや脱力感が漂う。肩透かしを食らった感じである。
色々なジャンルを含有しているのもいいが、どうも中途半端に終わっているようで、やや消化不良気味の出来になってしまっていると思われるのは、少々残念である。

No.437 6点 緋色の囁き- 綾辻行人 2014/03/08 23:22
再読です。
相変わらず人間が描けていないなあ。と、冗談はさておき、そこはかとなく綾辻テイストが味わえるが、どうも全般的に回りくどい文章が目立つ気がする。勿体付け過ぎなんだよね。
『サスペリア』は程遠いが、やはり元祖はホラーだし、こちらはあくまでミステリだからやむを得ないのか。しかし、もう少し書き様もあったのではないかと思ってしまう、サスペンスもそれほど効いていないし、ホラー小説としてもなんだか中途半端。心理描写もなっていない、これではせっかくの構想が相当悪い方向に走ってしまっているではないか。
しかし、終盤の真相が明かされるシーンは俄かに生き返る感じで、それまでのまったりした展開は何だったのかと言いたくなってしまう。
まあ綾辻作品としては、テンポも良くないし、キレもないので、出来としてはよくない部類になるのかもしれないけれど、犯人の意外性と過去の事件と現在の事件を貫く一貫性に敬意を表してこの点数にしました。

No.436 6点 鬼の探偵小説- 田中啓文 2014/03/06 22:18
再読です。
ミステリの側面と、警察小説の側面と、伝奇小説の側面がいい塩梅に合成された連作短編集。乱暴に言ってしまえば、京極堂のいない「百鬼夜行シリーズ」的な。当然異論もあろうが、これはあくまで総合的に見た印象からの直観的感想である。
しかし、『探偵小説』はちょっと違うんじゃないかとは思う。いい意味で昔懐かしい探偵小説を期待される向きには、期待外れとなる可能性が高いだろう。ただ、個人的にはこの作風は非常に気に入っている。誰が何と言おうと、それは私の嗜好の問題だから仕方ないのである。
奇抜な死体装飾や不可思議な現象の数々に加えて、アメリカ帰りのエリートと冴えない主人公の、刑事同士の対決も見物だ。
田中氏得意のダジャレもほぼ封印して、気合の入った作品集に仕上がっていると思う。本当ならもう少し加点したいところだが、一般受けしそうにはないので、この点数に留めた。

No.435 5点 鬼頭家の惨劇- 折原一 2014/03/04 22:15
再読です。
ミステリとしては非常に弱い、ジャンル的にはサスペンスだろうか。でも、それなりに楽しめた。なんだか似たような作品があったような気もするが、気のせいなのか。
オチはどこにでも転がっている、使い古されたパターンだが、見抜けなかった。再読なのにね。やっぱり、読み直してみると分かるが、10年も前の作品だと、すっかり忘れている作品もあれば、ところどころ憶えているのもあったりする。その時の精神状態や、読んだ時の状況がかなり影響してくるものだと思うね。
本作は、結局何が書きたかったのかよく分からないが、取り敢えず氏独自の仄暗さや、シチュエーションを楽しめばいいのではなかろうか。
前に書かれている諸氏の評価が低いのは、折原という作家に対する期待の高さの表れなのだと解釈したい。

No.434 4点 青い館の崩壊 ブルー・ローズ殺人事件- 倉阪鬼一郎 2014/03/03 22:01
再読です。
主人公はゴーストハンターと名乗る吸血鬼。彼はあることから手に入れた自費出版らしき小説のタイトルや作家名などから、作者が目の前のブルー・ローズというマンションの管理人だと目星を付ける。そして、オペラグラスで観察を始めたところ、怪しげな挙動を目にし、さらには自らを名探偵と名乗るほどの推理力で、マンションで何が起きているのかを推理し始める、というストーリー。
執筆に一年費やしたと言っているが、この程度、森博嗣なら一ヵ月足らずで書き上げてしまうだろう。勿論、森博嗣はこんな下手なものは書かないけれど。
手掛かりはその小説の暗号だけで、さしたる伏線もないまま、ゴーストハンターは勝手に推理し、吸血鬼の仲間と共にマンションに乗り込む。まさに、作者のご都合主義全開で、読者は置いてけぼりに。と言うか、それ以前にミステリとしての体裁も保っていないので、ミステリとしてはもっと点数は低くてもいい。
そんな箸にも棒にもかからないような訳のわからん小説を、二度も読んだ私は、まるでクズのような人間である。いや、人間のクズと言ったほうがいいだろうか。

No.433 5点 『クロック城』殺人事件- 北山猛邦 2014/03/01 23:25
再読です。
デビュー作だけあって、全体的に荒削りな印象を受けた。
設定が世紀末で人類が滅亡するという、例の予言のもとになされているので、警察組織は形骸化しており、その代わりということなのか、SEEMとか11人委員会とかが登場してきているが、意味が分からない。別にそれらの組織など絡ませる必然性は全くなかったと思う。がしかし、その中の各中心人物が妙に存在感を示しているので、何とも言いようがないが。
それはさておき、ストーリー的にはそれ程見るべき点はなさそうである。袋綴じされたメイントリックは、まあそれなりによく考えられているとは思うが、例のアニメのほうが先らしいので、それをヒントにしているとしたら、ちょっと噴飯ものではある。
そのトリック解明以降は、展開が二転三転し、それまでやや煩雑だった流れが突如として引き締まったものになり、面白さも倍増する感じがする。
首を切断した理由も納得というか、前代未聞であり、これには感心した。だが、殺害の動機はあまり納得のできないものとなっている。北山氏は大抵そんなものなので、今更どうこう言う必要もないけれど、そこさえ首肯できれば評価も少しは上がったとは思う。
まあ、こんなもんだろうね、メフィスト賞受賞作とは言っても。

No.432 6点 絶叫城殺人事件- 有栖川有栖 2014/02/27 22:24
再読です。
どの短編もある程度の水準をクリアしており、良質の短編集と言える。平均して面白いので、あとは読み手の好み次第となろう。
個人的には、『黒鳥亭殺人事件』>『絶叫城殺人事件』>『月宮殿殺人事件』の順で評価したい。だがあくまで先にも述べたように好みの問題なので、他の作品が劣っているとは思わない。
土地勘のある大阪や京都が舞台となっている作品が多いので、その点私にとっては情景が浮かびやすかったし、親近感を覚えた。これも好感度がアップする要因となっている。
表題作はこれから読む方にとっては、おそらく想像していたものとは全く違った印象を受けることと思われる。だからと言って、それが悪い方向に向いてしまっているとは言い難い。短編にしては相当構想から練り上げられている感触である。
他の作品にも言えることだが、全体的にプロット、トリック、ストーリーとも充実した一冊となっていると思う。

No.431 3点 迷宮 Labyrinth- 倉阪鬼一郎 2014/02/25 22:14
再読です。
言いたくはないが、よく編集者がOKを出したなと思う。これは世に出してはいけないレベルの作品。帯にも作者への賛辞は書かれているが、作品に対しての推奨の言がなかったのも頷ける。
内容としては、ミステリ、ホラー、幻想小説の要素を盛り込んだだけの「がらくた」。探偵も推理も捜査もあったもんじゃない。
一応、不可能犯罪を謳われているが、その真相は一体どうなったのだろうか。犯人だけは分かったが、事件の顛末は一向に明かされないと思ったら、そのまま終わってしまった。この小説は一体何が言いたかったのかさっぱり分からない。
もし最後の一行がなかったら2点だったな。本来であれば、1点でもおかしくないが、私は温厚なので(笑)3点付けさせていただいた。

No.430 6点 芙路魅- 積木鏡介 2014/02/24 22:23
再読です。
密室本だけど、最早密室は関係なくなってしまっている。ミステリと言うよりも、ホラー色のほうが濃い。ホラー・サスペンスなのだろうか。
時系列がどうにもスッキリしないので、多少理解しづらい面はあるものの、徐々に全貌を現してくる一連の事件や因果関係は、暗くてじめじめした感触だが、読者を引っ張り込む力を持っている。総じて、何とも言いようのない魅力を持った作品に仕上がっているのではないかと思う。
短いページ数の割には、中身がギュッと詰まってそこかしこに読みどころが散見され、凡百のホラー小説とはまた違った面白さを味わえる、なかなかの怪作ではないだろうか。
ただ、もう少しまとまりが欲しかった気はする。二度読みすればもっとその世界観に浸れるのは間違いないはずだが。

No.429 4点 十字屋敷のピエロ- 東野圭吾 2014/02/23 22:14
再読です。
正直、どこが面白いのか分からない作品だった。どこをどう叩いても面白いとか楽しいとかの要素が見当たらない。感情移入する余地はないし、登場人物がまるで人形のように個性が感じられない。探偵役の人形師も、只のいい人って感じで、もっとこうアクの強さを押し出してもいいのにと思ってしまう。それが物語のアクセントになり得るのなら、当然個性的な探偵を用意すべきだろう。
トリックも使い古されたもので、全く魅力を感じないし、ピエロの視点も大して功を奏してはいないと私は思う。その上、ストーリーは平板で起伏に欠けるきらいがある。はっきり言えば読んでいて退屈なんだよね。
この作品をありがたがって面白いと言える人は、とても幸せな読者だと思う。決して皮肉ではなく本心である。このような作品にもどこかしら美点を見出して、高評価を与えることのできる優秀な読者に私も出来ればなりたかったが、自分に正直になるのなら、やはり点数はこんなものじゃないかと思うね。
結論としては、どこにも特筆すべき点がない平凡な作品ということ。

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メルカトルさん
ひとこと
「ミステリの祭典」の異端児、メルカトルです。変人でもあります。色んな意味で嫌われ者です(笑)。
最近では、自分好みの本格ミステリが見当たらず、過去の名作も読み尽した感があり、誰も読まないような作品ばか...
好きな作家
島田荘司 京極夏彦 綾辻行人 麻耶雄嵩 浦賀和宏 他多数
採点傾向
平均点: 6.02点   採点数: 1768件
採点の多い作家(TOP10)
浦賀和宏(33)
島田荘司(25)
西尾維新(25)
アンソロジー(出版社編)(23)
京極夏彦(22)
綾辻行人(22)
折原一(19)
中山七里(19)
日日日(18)
森博嗣(17)