海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

江守森江さん
平均点: 5.00点 書評数: 1256件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.516 3点 レイトン教授とさまよえる城- 柳原慧 2009/11/08 13:41
宝島社からの(海堂尊によるとあるらしい)このミス大賞受賞3作縛りが明けたら、原案ありの児童向け作品に移行した。
宝島社の3作はデキは良くても売れずに大人向け作品の依頼が無かったと想像できる。
児童向けでも活劇は手慣れいて無難にこなしている。
所々に挟まるクイズも含めて児童向けミステリーとしては推薦できるし、小学生へのミステリー普及には持って来いではある。
お子様と趣味(ミステリー)を共有してみては如何だろう。
※採点は大人対象でしている。

No.515 6点 名探偵も楽じゃない- 西村京太郎 2009/11/08 07:40
名探偵パロディシリーズ3作目。
残念ながら「Yの悲劇」「獄門島」のネタバラシから始まる(-1点)そこにも狙いが潜むので改訂してカット出来ずに残念。
登場人物に語らせる皮肉タップリなミステリ論は実に楽しい。
いつものメンバーに加え、ミステリ愛好会メンバーと新名探偵候補まで登場して連続殺人が起こる。
皮肉にも名探偵達が連続殺人を防げないのはご愛嬌。
パロディと侮ると、吉牟田警部補の捨て推理→事件を挟み→マニア→新名探偵候補・左文字京太郎の順に披露される推理、更に先の名探偵達の推理と何段階もの構成にやられる。
逆に、この作品を今更読むミステリ好きには構成から狙いが透けると思えるのが惜しい。

No.514 5点 追想五断章- 米澤穂信 2009/11/07 19:01
大人になりきれない主人公が居候先の古本屋でヒロインから依頼された5つの遺された断章(小説)を探す話。
その断章が過去の事件を暗示させるリドル・ストーリーで、ヒロインに遺された「結末の一行」と併せ挿入される。
リドル・ストーリーに「結末の一行」が遺されている事に違和感を感じ、早い段階で作者の狙いが察せてしまった。
更に、プロローグと合わせ過去の事件の真相にも到達した。
リドルと仕掛けミステリの融合を試みているが、このやり方だと狙いが透けるジレンマが生じる。
作者らしい主人公を突き放した筆致はリドルに合っているだけに残念。
※余談
出版後のインタビューで作者は、連載と順序を替えて加筆して仕掛けを施したと語っていた。
余計な事をしなければリドルとして良いデキだったと思うのだが・・・・・。

No.513 4点 黄金仮面- 江戸川乱歩 2009/11/07 09:52
西村京太郎「名探偵が多すぎる」を読んで、再読したくなった。
大乱歩より西村御大の方が本家の雰囲気や原理を上手く活用している。
黄金仮面が「ルパンに思わせた怪人二十面相だった」ってな勝手で甘い解釈でお茶を濁して楽しむしかない。
自作キャラと他人のキャラを対決させると誰が描いても贔屓の問題が生じて傑作は生まれないのだろう。
この手の作品は中立的第三者な作家がパロディで描いた方が楽しめる。

No.512 6点 名探偵が多すぎる- 西村京太郎 2009/11/07 09:30
シリーズ二作目で名探偵達に加えてルパン・怪人二十面相まで登場させた。
その為か、前作のパロディ風本格ミステリからパロディ風活劇にシフトしている。
完全密室からの名探偵達の脱出方法も前フリが利いていてニヤリとできる。
名探偵達やルパンを引き立て役にして、今回の主役が、捨て推理をして暴走気味の吉牟田刑事と最後を締めるメグレ夫人だと思える辺りに西村御大の稚気が出ていて楽しい。
各章題もパロディになっていて倉知(猫丸先輩シリーズ)や歌野(密室殺人ゲーム)もここから引用したのかもしれない?
※追記(或いは余談)
よもや、約30年の時を経てテレ朝「相棒」S8ー3話で、この作品の完全密室脱出手口が交渉術として使われるとは思いもよらなかった。

No.511 2点 レベッカ- ダフネ・デュ・モーリア 2009/11/06 12:00
映画も含めて古典的有名作品で翻訳本を楽しく読書したならミステリーの雰囲気もあり標準点だった。
しかし、大学時代の英語の課題作品で原書を辞書と首っ引きで読まされたトラウマは一生拭い去れない。
当時、先に翻訳本を入手し読破してから課題に取り組むファジーな選択を考えなかった(翻訳アレルギーの為、翻訳本も読みたくなかった)自分が今思うと腹立たしい。
情けない事に、レンタルビデオで映画を観て、あらすじを知って原書・翻訳本に取り組むファジーな方法は単位を取得してから思いついた。

No.510 7点 名探偵なんか怖くない- 西村京太郎 2009/11/05 09:05
25年前の初読時は読んだという記憶しか残らなかった。
「本格ミステリ・フラッシュバック」で読者挑戦物だと確認して再読してみた。
老境にさしかかった名探偵達(クイーン・メグレ・ポアロ・明智)が集められ、パロディに見せかける展開だが、実は周到な本格ミステリだった。
タップリとページを割いた「読者への挑戦」、各名探偵の推理手法を活用した解決編、代表的作品のネタバレを捨て駒にした最終章の捻りと楽しさ山盛りだった。
新版で再読したので西村と綾辻の対談までオマケに付されより楽しい。
※書かれた時代のミステリ界がネタバレに寛容だったにしても少しヤリスギな面を考慮してー1点した。

No.509 5点 能面の秘密 安吾傑作推理小説選- 坂口安吾 2009/11/05 03:26
戦後文学の無頼派・安吾の推理短編が8編収録されている。
作者の主張する推理小説が犯人当てパズル小説で、それに沿って書かれた「投手殺人事件」「南京虫殺人事件」「正午の殺人」「心霊殺人事件」辺りは今では平凡に思える。
表題作は犯人当てとしては平凡だが結末のオチでの脱力は、なかなか味がある。
そして、犯人を特定しない儘に投げっ放した「影のない犯人」は、犯人当てに真っ向勝負した作品群に組み込まれ強烈な味わいがある。
もっと推理小説を書いていたら「不連続殺人事件」以上の作品を残してくれたかもしれないと思うと残念でならない。

No.508 4点 探偵ガリレオ- 東野圭吾 2009/11/03 09:13
原作より先にドラマを観るファジーな接し方になった。
読者の推理を拒絶する点でドラマで観る方が(どの道、物理学を勉強したい訳ではないのだから)理解し易い。
一方では、読者が到達しえない事で天才キャラを強調しているとも考えられる。
その意味で湯川が天才であればある程、本格ミステリ作品としては凡作になるジレンマが生じている。
「所詮、凡人に天才が理解できるワケがない!」と達観しながらエンターテインメントとして楽しめばよいシリーズなのだろう。
自分にも天才と思える友人がいるが、その友人をして「あいつは天才だから理解し難い」なんて言う奴がいるのだから(上には上がいるものだ)・・・・・湯川なんて天才でも何でもない気がするのはご愛嬌。
※東野圭吾は天才的名探偵を描いてきた先人達に、このシリーズで喧嘩を売っているのだろうか?

No.507 2点 四日間の奇蹟- 朝倉卓弥 2009/11/03 07:56
先に断っておくが、作品自体は映画も含めて酷い訳ではない。
「どこまでをミステリーの範疇に含めるか」について人それぞれだとは思うのだが、出版社自らミステリーと銘打った大賞を受賞させた時点で一考を要する。
東野圭吾「秘密」や横山秀夫「クライマーズ・ハイ」等と同様に自分のミステリー地図上では境界線上か存在しない分野の作品。
それ故、敢えて「ミステリの祭典」に拘りミステリーの範疇に含めない扱いで2点とした。
※因みに、純然たるSFやホラーはミステリーとは別物と思っているし、好みではない。

No.506 3点 淫の殺人- 藍川京 2009/10/31 16:59
女流官能小説の第一人者がミステリーに初挑戦した作品。
ミステリーとしてはトリックを含めて二時間ドラマ的で褒めようがない。
探偵役が犯人とエッチしまくる展開は官能小説ならではでミステリー的には掟破りかもしれない。
それを逆手に取って捻れば傑作になり得たかも。
密かに作成した○○人形(トリックではなく卑猥な為伏せ字)が曝される下りは笑える。

No.505 6点 ここに死体を捨てないでください!- 東川篤哉 2009/10/31 08:17
烏賊川市シリーズ第5弾。
シリーズの持ち味であるドタバタを効果的に利用し、二方向から描いたストーリーがご都合主義的に交差しながら二転三転して楽しい。
一部読者にしかウケないギャグも洗練され笑いの部分はシリーズ最高だと思う。
2つの大きな謎が“一撃”で氷解する(見抜きやすい)大技は正に本格ミステリで、それを捻ったバカミス的な結末にも、しっかり脱力できる。
謎と一撃のインパクトがやや弱く地図添付が無いのが残念。

No.504 5点 さよならの次にくる 新学期編- 似鳥鶏 2009/10/28 05:21
読後にまず思ったのが、わざわざ新学期編などとして分冊すべきではなかった事。
分厚くても一冊か上・下巻同時刊行ならもう少し高評価できた(ある意味出版社の売上に走った戦略ミス)
前編で名探偵が卒業退場し、主人公が名探偵に成長する話かと思ったら、前編を前フリにした名探偵の謎が解明されるミスディレクションだらけなストーリーだった。
各話での細々とした謎はチープだし、前編からの暗号も解読する気にならずミステリとしては微妙。
その一方でシリーズ物としては、両手に花状態になった主人公が名探偵として目覚め始めたので今後が気になる。

No.503 6点 手焼き煎餅の密室- 谷原秋桜子 2009/10/24 17:08
「美波の事件簿」シリーズ前日談を描いた初の連作短編集で、ミステリーズ!連載の4話に書き下ろしを加え纏めた。
シリーズ長編でのラノベ色を纏った「正統派本格ミステリ」と違い、連載された短編では「日常の謎」にシフトしているが、提示される謎や論理的解決は長編以上に濃縮された本格ミステリと云える(特に「廻る寿司」)
更に、一冊に纏める事を前提に連載時に仕込んだ伏線を回収しながら残された主要キャラを登場させる書き下ろしは東京創元社の短編集らしさに溢れニヤリとした。
長編での名探偵(修矢)も、まだ成長途上で(長編では冥土にいる)じいちゃんが名探偵なのも楽しい。
ラノベ風な作者だが本質は本格ミステリにあり侮れない!

No.502 7点 金雀枝荘の殺人- 今邑彩 2009/10/22 03:04
まさに館ミステリ。
但し、館をトリックではなく物語の展開に活かしている。
第四章まではハウダニットで、必然性のある見立てと密室トリックが本格ミステリしている。
第五章〜プロローグに還る部分では三段構えな真相が楽しめ、サバイバル度とフーダニットを捨て駒にしてプロローグに還りネバーエンドを成立させている。
本格ミステリ+サスペンス仕立てな恋愛小説になっていて一粒で二度美味しい。

No.501 6点 そして誰もいなくなる- 今邑彩 2009/10/21 02:26
本家「そして〜」・「十角館〜」再読の流れで読んだ。
「十角館〜」のC・C物で本格ミステリ寄りアレンジに対し、この作品はC・C設定を捨て学園物&見立てアレンジ。
途中(三人目以降)の被害者達の警戒が緩いのはC・Cでなく見立ての見立てだからさほど気にならない。
※ここからネタバレ注意!
真相が二段構えで、一段目はロジカルに到達する本格ミステリだが捻りは弱い。
しかし、二段目はプロバビリティーに操りと捻った真相が待ち受ける(この真相の為に警察の警護が緩いのはご愛嬌)
「裁かれざる犯罪」という本家のテーマも踏襲している。
本家や「十角館〜」の印象が鮮明な時期に読めばより楽しめる。

No.500 6点 十角館の殺人- 綾辻行人 2009/10/19 23:14
島荘の推薦文付きノベルス出版時に初読。
※以下ネタバレ御免!
「そして誰も〜」を土台にした作品で‘本土’が平行して描かれた点に違和感を感じ、推理が飛躍し作者の狙い(犯人)に到達してしまい'例の一行'に驚きが無かった。
更にC・C設定なくせに犯人だけC・Cでない結末に(密室の解決が秘密の抜け穴だった位)落胆し館シリーズから離れた。
自分の認識を再確認する目的で約二十年振りに再読してみた。
本格ミステリにシフトする事で「そして〜」ほど登場人物達の生き残り本気度も気にならず(かえって笑えた)、緻密でロジカルな構成を思いの外楽しめてしまった。
しかし、上記の不満に加え、エピローグに物足りなさも感じ微妙な評価に留まった。

No.499 5点 そして誰もいなくなった- アガサ・クリスティー 2009/10/19 10:16
最高峰ミステリーと世間の評価は揺るぎない。
しかし、約三十年前の初読時その評価に納得しかねた(発表時に初読した綾辻「十角館〜」も同様だった)
それ以降再読していなかったが、今なら・・・の思いで再読した。
C・C&見立てによるサバイバル・サスペンスで夢中で読了は出来る。
一方で、登場人物達の(特に後半まで残る男2人の描かれたサバイバル能力と行動の矛盾に)生き残り本気度が感じられないのが不満の原因だったと気付いた。
※以下ネタバレ御免!
サバイバルを扱うなら〔C・C内の人物全員(初対面な極限状態では職業や身分は考慮すべきでない)を疑い続け警戒を怠らない〕〔事件の度に生存者全員での死亡確認、出来るなら死体に‘トドメの一撃’を加え完全抹殺〕->〔死んだフリは許さない〕な行動は必須。
最低でも、後半には死体を並べての確認行動は必要だと思う。
この手の作品(映像含)では、登場人物達になったつもりで生き残りを模索しながら読む(接する)ため、本気度が感じられなと高評価できない(ドラマの話だが、24やプリズン・ブレイクなんかも、その点では酷い)
本格ミステリ的な結末の捻りをなくすか、リドルにして描かなければ本気度の問題は生じなかったが、それで世界的高評価を得られたか?疑問で悩ましい。
この作品が世界的高評価な為か?未だに〔芝居オチの亜流である「死んだフリ」〕を用いた作品が書かれる弊害と、好きな舞台設定であるC・C物を世に知らしめた功績を加味&相殺して採点した。
※余談
究極の生き残りは、自分で自分以外の全員を殺してしまう事だろう。
「死人に口なし」なので、最後は幾らでも言い逃れ出来る。

No.498 5点 傍聞き(かたえぎき)- 長岡弘樹 2009/10/17 17:09
日本推理作家協会賞・短編部門受賞の表題作を含む作者の第二短編集。
人を救う職業に従事する(異なる)主人公の人情ミステリを4話揃えた。
各話に謎(何故)があるが、丁寧に描き過ぎ(作者に隠蔽する気がないのかも)で先の捻りが察せる。
しかも、捻り方がマンネリ気味なのでミステリ短編集としては微妙、その一方でマンネリな捻りを捨て駒に暖かな結末を導き人情小説として読後感は良く素晴らしい。
※人情小説として楽しむなら邪道だが、ミステリとして楽しむなら表題作を先に読み堪能してから残り3話を流し読めば良い。

No.497 7点 七回死んだ男- 西澤保彦 2009/10/16 18:18
SF設定で繰り返される遺産相続のドタバタ喜劇に見せ掛けた仕掛けミステリで楽しく一気に読了できる。
設定上のルールは明快で状況打開の試みは一見ロジカルそうだが上手くピントをずらしドタバタを巻き起こす。
ドタバタに隠蔽された作者の狙いは伏線に気付いても飛躍を要するので論理では完全到達しないのが惜しい。
※以下ネタバレ注意
私的経験から二日酔いで一日中爆睡してたと推理を飛躍させたが・・・これが正解でも成立するかも?
採点はミステリ部分よりドタバタ部分での比重が大きい。

キーワードから探す
江守森江さん
ひとこと

※「読書(ミステリ)は趣味で娯楽」「相容れない主張(嗜好)は、どこまでも平行線」を標榜している。
※多くの作品に接する努力として、映像化作品で済ます等々、ファジーな方法を常に模索している(本質的...
好きな作家
高木彬光、天藤真、平石貴樹、古野まほろ (ミステリーに限定しなければ一番は梶山季之...
採点傾向
平均点: 5.00点   採点数: 1256件
採点の多い作家(TOP10)
雑誌、年間ベスト、定期刊行物(52)
高木彬光(32)
アガサ・クリスティー(30)
梶山季之(30)
東野圭吾(28)
事典・ガイド(26)
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク(23)
芦辺拓(21)
アンソロジー(出版社編)(21)
評論・エッセイ(18)