皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ サスペンス ] レベッカ 旧邦訳副題「若き娘の手記」 |
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ダフネ・デュ・モーリア | 出版月: 1949年01月 | 平均: 6.29点 | 書評数: 7件 |
ダヴィッド社 1949年01月 |
ダヴィッド社 1952年01月 |
新潮社 1958年01月 |
河出書房新社 1960年07月 |
河出書房 1961年01月 |
三笠書房 1967年01月 |
三笠書房 1967年01月 |
三笠書房 1967年01月 |
新潮社 1971年10月 |
三笠書房 1974年01月 |
新潮社 2007年05月 |
新潮社 2008年02月 |
No.7 | 4点 | みりん | 2024/04/07 21:21 |
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"どこでこわれたの oh フレンズ"
で有名な神バンド、この小説から名前とってんのかな? こじつけておくと、この作品もマキシムとわたしが友情関係(とても短いが)から恋愛関係に発展し、ギクシャクするところから始まる。わたしがマンダレーに招かれ、先妻であるレベッカの存在に劣等感を抱くパートが長くてかなり退屈でしたね(この作品を元ネタにした泡坂妻夫『花嫁のさけび』を先に読んだせいで、展開も大体知ってたし)。 ハードカバーで600ページ弱と大長編ですが、400ページあたりから、起承転結の"転"が訪れ、ようやく面白くなってきます。 で真相とオチに関してですが、正直どちらもふーんって感じでした。結末を読んでから1章を読み返すと、ああ…そういう描写だったのねと。8時間読んだご褒美としては少し物足りなかったです。 「英米のベストセラー」「20世紀のゴシックロマン」「ミステリーの金字塔」と評価されている大名作にこんな元も子もない感想しか出てきません。情けないです。内面を深く抉るような心理描写や文学的価値が評価されている理由は大変よく分かりましたが、単なるパズルミステリーが好きな方にはおすすめできません。 あと、個人的には「マンダレー」より乱歩の『パノラマ島』の方がはるかに魅力を感じました。比較対象としておかしいかもしれませんが。 |
No.6 | 8点 | 斎藤警部 | 2022/08/01 08:00 |
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ハンカチーフのくだり、一瞬でイメージ拡がってゾッとしました。 不安定な妄想と自己欺瞞、過去への恐怖と美しい風景描写が敷き詰められ、陰も陽も吞み込んだ大長篇。 河出書房世界文学全集(大久保康雄訳)の太帯によれば『読者を一晩中眠らせないサスペンス・ロマン』。 夫の亡き先妻「レベッカ」との心理闘争と◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯を巡る物語。 直接心理描写は主人公「わたし」に一任されましたが、それもかなりの所まで削り取られ、場面によってはハードボイルドに近い文体感触も見せ、それがサスペンスの醸造に大きく寄与しています。
まるで短篇のような衝撃を放り投げつつ、何故かジワジワ気を持たせるエンディングに引っ張られ、オープニングがもう一度気になって仕方が無い小説構成。気になった勢いで読み返せば、初めの二章の意味合いが、長きに渉って変わってしまっている。書かれない部分の峻烈な悲劇を美しく昇華させ、懐深く忍ばせていた事にも気付く。心の平安に溺れることを甘受せんとする「わたし」の生きる智慧にようやく思い当たります。 “わたしは、それらのものを、じっと見まもり、永久に心に焼きつけたが、なぜ、こんなものが、わたしの去るのをいやがる子供のように、わたしを感動させ、悲しませる力をもっているのだろうと、ふしぎに思った。” 最後の三分の一くらいで急流に差し掛かった様にミステリ流儀のスリルを増し、だがそこから一直線とは行かず意外性ある波乱の行路を行ったり来たり繰り返す、ジリジリと焦げるサスペンス。挙げ句があの終結。いつの間にか存在感極薄になっていた「わたし」が最後に大きく巻き返し、結局はあのオープニングへ再生されて戻る、空気を匂わす空恐ろしさ。 終盤に登場する人物の「属性」による諸々も、登場人物表での匂わせ含め、なかなかに唸らせてくれました。真相暴露部分は非常にミステリ度が高いです。何気にシンプルな構成の妙が最後に大見得を切りました。 “雷鳴がして、暗い曇った空の向こうには雨があるのだが、降ろうともしなかった。雨が雲のうしろにとじこめられていることは感じやにおいでわかった。” 文学的味わいは言わずもがな。 所々散らばる仄めかし隠喩の馥郁たる様は息苦しいほど。 |
No.5 | 9点 | 蟷螂の斧 | 2019/11/26 19:55 |
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「東西ミステリーベスト100(1985年版)」第68位。英ベスト6位、米ベスト9位。ゴシック・ロマンの傑作。「ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見た」の冒頭の暗示が効いています。この時代にこのプロットを書き上げた手腕に敬意を表します。真相およびラストシーンにはゾクッとさせられました。なお、新潮文庫の(下)は完全にネタバレしていますので注意。 |
No.4 | 7点 | ことは | 2019/08/31 14:30 |
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古典、侮りがたし!
いろんな作品の、これが元ネタかぁ、といったところが多々あり。面白い。 今の視点からすると、プロットの仕掛けはわかりやすいけど、(時代によるのかな)ゆったりとした描写力は味わいがある。読み捨てではなく、再読したくなる魅力を感じる。 ついでに、翻訳について。 数年前に新訳されたが、私は旧訳を読んだ。 比較を色々検索すると「マキシムは旧訳のほうが萌える」というような記述があって、下記の比較がのっていて、たしかにこれなら私も旧訳が好き。 【旧 大久保訳】 ところで、あなたはまだぼくの質問に答えていませんね。ぼくと結婚してくれますか? 【新 茅野訳】 まだ答えを聞いてないよ。ぼくと結婚する? |
No.3 | 9点 | クリスティ再読 | 2019/07/14 15:38 |
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え、なんでこんなに平均点低いんだ?と驚くくらいのお二人の評だが、英語のサブリーダーでイヂめられたことで、本作みたいな名作を貶めるのはちょいと不当だと思うよ。ほぼ完璧の大名作であり、サスペンスの大古典であって、本サイトで評を書くのも完全ストライクな作品である。なんでこんなに評が少ないんだ?と不思議に思うくらいである。
思いがけない玉の輿に乗って、名所旧跡級の荘園マンダレーの所有者であるデ・ウィンターの当主の後妻に収まったヒロインは、マンダレーでの女主人としての新生活の重責に押しつぶされそうだった。いたるところにある前妻レベッカの影。完璧な女主人として尊敬を集めたらしい前妻に、ヒロインは強い劣等感を抱く。家政婦頭のダンヴァース夫人はレベッカと一心同体だったようで、ヒロインをまったく受け入れようとしない。しかし、夫のマキシムとごく親しい人々にとって、レベッカは一種のタブーのようでもあり、その理由がヒロインには打ち明けられない...ダンヴァース夫人はヒロインに仕向けて、かつてレベッカが扮装したのとまったく同じドレスを作らせて、仮装舞踏会に登場させた。夫マキシムたちはその姿を見て、言いようもない強いショックを受けた。一体レベッカの実像はなんだったのか? 折しもレベッカの死体を載せたボートが発見される..... 「女性向け」という印象があるせいかもしれないが、ちょっと昔風の女性のくどめの内面描写も、実のところそれ自体がミスディレクション風の働きをしていて、舐めてかかるとトンデモない。それ以上に本作の主人公は「マンダレー」というデ・ウィンター家の荘園であって、事件が終わった後もヒロインも夫も、その「マンダレー」に囚われ続けるのが、裏ヒロインたるレベッカの永続的な勝利ですらあるのだ。この人工のエデンの園からの失楽園の物語として、読むと面白いのかも知れないな。それほど、次第に明らかになってくるマンダレー「そのもの」としか思えない前妻レベッカの像というものが、悪夢的に傑出しており、さらにその代理人めいたダンヴァース夫人とのヒロインの角逐がサスペンスの具体的なエンジンとなっている。 しかしね、実はダンヴァース夫人も偉大なレベッカのイメージに囚われ続けた気の毒な人のようにも思えるのだ。レベッカの仮装と同じ仮装をヒロインにさせるように仕向けるダンヴァース夫人の策略も、奇妙なまでにトラウマチックなもののようにも思える...実はかなり多義的な愉しみ方のできる、懐の深い小説である。実に潔いラストのあと、ついつい冒頭に戻って読み直して「ああこういうことなのか!」.....更に興趣が深まる小説である。後を引くなあ。 ミステリを論じる上では、ほぼクイーン・クリスティ・チャンドラーの名作級の必読書。新潮文庫で途切れることのないロングセラーなんだから、読みなさい。 |
No.2 | 5点 | レイ・ブラッドベリへ | 2009/11/28 20:36 |
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高校のとき、英語の授業のサブリーダーに、この作品のダイジェスト版が使われた。テキストに選んだのは、定年退職を控えた独身の女の先生だった。
本の内容は古雅な趣を持つ上品なサスペンスだったが、この先生も銀髪を短くまとめられた穏やかな方だった。 この作品は1938年にイギリス人の女性によって書かれている。だから読んでいるうちに、いろいろな意味で古臭さを感じるかもしれない。そこで、よりコンテンポラリな英語に触れさせようと、サリンジャーの「バナナフィッシュ日和」を副読本に選んだ先生もいたそうだ。 だがこれは新婚旅行で宿泊しているホテルの一室で、ベッドに眠っている新妻を後目に、自分のこめかみをピストルで撃ち抜く男の話である。 ぼくは「レベッカ」を読み終えて、ヒロインの不安に満ちた新婚生活の謎が解けたことに安堵したのだが、「バナナフィッシュ…」を読まされた生徒たちの感想はどんなものだったのだろう。自分たちには解きようもない謎を扱った解決編のないミステリを、いきなり突きつけられたような気持ちだったかもしれない。 |
No.1 | 2点 | 江守森江 | 2009/11/06 12:00 |
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映画も含めて古典的有名作品で翻訳本を楽しく読書したならミステリーの雰囲気もあり標準点だった。
しかし、大学時代の英語の課題作品で原書を辞書と首っ引きで読まされたトラウマは一生拭い去れない。 当時、先に翻訳本を入手し読破してから課題に取り組むファジーな選択を考えなかった(翻訳アレルギーの為、翻訳本も読みたくなかった)自分が今思うと腹立たしい。 情けない事に、レンタルビデオで映画を観て、あらすじを知って原書・翻訳本に取り組むファジーな方法は単位を取得してから思いついた。 |