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nukkamさん
平均点: 5.43点 書評数: 2979件

プロフィール | 高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.1699 6点 フランス白粉の秘密- エラリイ・クイーン 2016/09/09 17:06
(ネタバレなしです) 1930年に発表された国名シリーズ第2作の本書はなぜあの人物が犯人かという推理だけでなくその人以外の容疑者たちがなぜ犯人ではありえないのかという推理まで丁寧に説明しているところが工夫になっています。エラリーが一人一人の名前を照会しながら犯人ではないと容疑から外していき、残る人物の誰を犯人として指名するのかという謎解きのスリルは(文字通り)最後の一行まで続くのです。まあそこに至るまでの筋運びはお世辞にもスムーズとは言い難いし登場人物も誰が誰だか整理が大変です。(ちょっとネタバレになりますが)犯罪組織の暗躍が示唆されているのも本格派推理小説としては好ましくないと感じる読者もいるかもしれません。メインの謎である殺人には組織力を使ったトリックなどはもちろんありませんけど。ところで本筋とは関係ありませんがこの時代で既に壁面収納タイプのベットが開発されていたとはさすがアメリカ(笑)。

No.1698 5点 霧の中の虎- マージェリー・アリンガム 2016/09/09 15:20
(ネタバレなしです) 1952年に発表されてジュリアン・シモンズらから絶賛された本書はアルバート・キャンピオンシリーズ第14作ですが本格派推理小説ではなくサスペンス小説に分類される作品で、キャンピオンも脇役でした。凶悪犯が登場しますがその危険性をそれほど強調した描写ではないので「恐怖感」を期待する読者には物足りないかもしれません。とはいっても決して退屈な作品ではなく独特の小説世界が築かれています。単なる勧善懲悪を超越した結末も印象的です。

No.1697 5点 ひよこはなぜ道を渡る- エリザベス・フェラーズ 2016/09/09 15:15
(ネタバレなしです) 1942年発表のトビー・ダイク&ジョージシリーズ第5作の本格派推理小説です。地味なアリバイ調べが多いのでやや読みにくい面もありますが終盤はさすがに上手く盛り上げます。ジョージの登場場面が非常に少なく、しかも探偵活動から手を引きたいことを再三語らせているのが気になりますが果たして本書がシリーズ最終作となってしまいました。次の作品が発表されるまで第二次世界大戦の影響か3年間のブランクがありますが、作者としてもユーモアに溢れた当シリーズをもはや書く気がしなくなったのかもしれません。

No.1696 8点 サム・ホーソーンの事件簿Ⅰ- エドワード・D・ホック 2016/09/09 15:08
(ネタバレなしです) ホックは何人ものシリーズ名探偵を生み出していますがサム・ホーソーン医師のシリーズは歴史本格派であることとほとんどの作品で不可能犯罪を扱っているのが特徴です。1996年に出版された第1短編集の本書は1974年から1978年にかけて発表された12作品が収められており、作中時代は1922年3月から1927年9月にまたがっています。全部で70を超すシリーズ短編を書いただけに当たり外れはありますが本書は当たり作品が多く、謎の提示、推理の積み重ね、合理的な謎解きと本格派推理小説の基本を守った作品が並んでいます。ホワイダニットとしても面白い「水車小屋の謎」、よく考え抜かれたトリックの「ロブスター小屋の謎」、留置場からの脱出を描いた「十六号独房の謎」が私のお気に入りです。なお創元推理文庫版は非シリーズ作品の「長い墜落」をボーナス追加していますがこれは蛇足で、シリーズ作品のみで統一した方がよかったと個人的には思います。割を食ったのが非シリーズ短編集の「夜はわが友」(1991年)で、米国オリジナルではこちらに「長い墜落」が収めてあったのに創元推理文庫版では削除の憂き目にあいました。

No.1695 9点 ウッドストック行最終バス- コリン・デクスター 2016/09/09 13:28
(ネタバレなしです) 英国で絶大な人気を誇る本格派推理小説家コリン・デクスター(1930-2017)の1975年発表のデビュー作となるモース主任警部シリーズ第1作です(長編作品13作は全部モーズ主任警部シリーズです)。エラリー・クイーンの全盛期時代を思わせるような論理的なモースの推理が素晴らしいです(そして中盤での迷走ぶりもまた別の面白さがあります)。デクスターの作品はあまり登場人物に感情移入することがなく、物語として味気なさを感じることも多いのですが本書ではロマンスがいい味付けになっています。個人的には本書がデクスター最高傑作です。

No.1694 5点 金庫の中のピエロ- パトリック・A・ケリー 2016/09/08 00:59
(ネタバレなしです) 1986年発表の落ち目の奇術師ハリー・コルダーウッドシリーズ第2作である本格派推理小説です。名物ピエロで旧友のクインプが「この世界にもう長くはありません」という不吉な予言をしたのを知ったハリーが彼が泊まっているホテルへ急行する場面で開始されますが、相変わらず感情を控え目に描写しているのでハリーの焦りがいまひとつこちらに伝わって来ませんでした。全般的には軽妙で読みやすいですが後半になるとストーリーが結構複雑になります。真相にはそれなりの意外性もありますが推理の強引さも目立ちます。クレイトン・ロースンの「帽子から飛び出した死」(1938年)を連想させるようなクライマックスシーンはなかなか印象的です。

No.1693 5点 騎士の盃- カーター・ディクスン 2016/09/08 00:50
(ネタバレなしです) 1953年発表の本書はH・M卿シリーズ第22作で最後の作品でもあります。最後の作品といっても特にお別れを象徴するような演出はなく、お笑いやどたばたを混ぜながらしっかり謎解きもしているファルス本格派に仕上がっています。何者かが密室状態の部屋に入り込んでは家宝の「騎士の盃」を動かしているという犯罪ともいたずらとも特定しにくい行動の裏にある動機はなかなか見抜けにくいと思います。密室トリックは感心できませんが最後にH・M卿が犯人に与える「罰」がいかにもファルス(笑劇)ならではです。あと作中で「青銅ランプの呪」(1945年)のネタバレがありますのでそちらを未読の人は注意して下さい。

No.1692 5点 消えた鱈- シャーロット・マクラウド 2016/09/08 00:43
(ネタバレなしです) 奇抜な状況設定の本格派といえばマイケル・イネスなどのファルス本格派が頭に浮かびますが1984年発表のセーラ・ケリングシリーズ第5作である本書もそれらに負けじ劣らずの作品で、冒頭の「浮かれ鱈の会」場面からして面食らいます。「納骨堂の奥に」(1979年)での悲劇性や重苦しさは本書では完全に払拭されています。なおシリーズ第5作と紹介しましたが本書で探偵役を務めるのはマックスでセーラは脇役的存在です。

No.1691 5点 殺人はラディカルに- ライア・マテラ 2016/09/08 00:31
(ネタバレなしです) 1988年発表のウィラ・ジャクソンシリーズ第2作の本格派推理小説です。前作が(十分に成功したとは言えませんが)ユーモアミステリーを心がけたようなところがあったのに比べて本書は作風ががらりと変わり、暗く厭世的な雰囲気が強く漂っています。作者は若い頃に家を飛び出てヒッピー生活をおくった経験があるそうですがそのことが影響しているのかもしれません。ウィラが再びアマチュア探偵として事件を調べることになるのですが、そのことがやがて自分自身を傷つけ悩ませることになるプロットが重苦しいです。

No.1690 5点 国会議事堂の死体- スタンリー・ハイランド 2016/09/08 00:18
(ネタバレなしです) わずか3作しかミステリーを書かなかった英国のスタンリー・ハイランド(1914-1997)が1958年に発表したデビュー作である本書は単に国会議事堂という作品舞台の珍しさに頼った作品でなく、凝りに凝ったプロットの本格派推理小説です。ジョセフィン・テイの「時の娘」(1951年)のように昔の事件を現代の探偵が解明するというパターンに大きなひねりを加えています。このひねり方はとても鮮やかで本書の白眉といっていいでしょう。とはいえそこに至るまでの前半部の読みにくさは相当なものでしたし、結末のつけ方もすっきりしませんでした。傑作だという評価にあえて反対はしませんが、相当ミステリー通の読者でないとその良さは十分わからないのではと思います。残念ながら私のレベルではお手上げでした。

No.1689 6点 灯火が消える前に- エリザベス・フェラーズ 2016/09/07 13:23
(ネタバレなしです) 1946年発表の本格派推理小説で第二次世界大戦の影響を残しています。序盤で殺人事件が発生し、あっという間にジャネットという容疑者が逮捕されます(後に有罪判決も出ます)。ジャネットが犯人とは思えないアリスは事件関係者を次々と訪問します。しかしジャネットが無罪という確信があるわけでも他に有力容疑者の心当たりがあるわけでもないのですからストレートな捜査にはならず、ジャネットを理解するという点では進展があっても事件の真相に近づいているという予感がしないので中盤はややじれったい展開です。しかもジャネットを有罪とする根拠が自白、指紋、そして目撃者の証人とそれなりに強固な状況証拠ですのでこれをひっくり返さなければいけません。ジャネットがそのまま犯人の可能性もありますのでひっくり返るかどうかはここでは書きませんが、いずれにしろ終盤にそれまで灰色の世界だったのが突然派手な極彩色の世界に変わったかのような劇的効果が生み出されていることだけは書いておきます。

No.1688 8点 ブラウン神父の不信- G・K・チェスタトン 2016/09/07 12:26
(ネタバレなしです) 「ブラウン神父の知恵」(1914年)から随分と久しぶりの1926年発表のブラウン神父シリーズ第3短編集で8作品が収められています。チェスタトンはジョン・ディクスン・カーに大きな影響を与えたとして有名ですが、特に本書では不可能犯罪やオカルト的雰囲気を持った作品が多数揃っています。世評の高い「犬のお告げ」は密室トリックがやや肩透かしながらも犬を巡る推理が見事で代表作とされるのももっともな出来映えです。説明がやや冗長ながらも「翼ある剣」は(実現性はともかくとして)凄まじさを秘めたトリックが使われています。奇想天外さでは「ブラウン神父の復活」がイチ推しで、何を書いてもネタバレになりそうなので詳細は書けませんがとてつもない怪作です。他にも大胆な仕掛けやどんでん返しの作品がずらりと並んでいます。

No.1687 6点 ガーデン殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2016/09/07 11:45
(ネタバレなしです) 1935年発表のファイロ・ヴァンスシリーズ第9作の本格派推理小説です。青い車さんのご講評でも紹介されていますように序盤の競馬場面(ちゃんと出馬表が添付されています)がなかなか印象的で、当時の米国の上流社会ではこういう風に競馬を楽しむのかとちょっと社会勉強になりました。謎解きプロットもしっかりしており、自殺にみせようとする犯人のトリックを早い段階で殺人と見破るヴァンスの推理の前半から快調で、中盤で聞き慣れない化学物質が登場して理系が苦手な私はちょっと集中力がトーンダウンしたものの(笑)、最後は劇的な結末で締め括られます。往々にして饒舌な語りで他人を困惑させるヴァンスがある女性からの訴えに極めて真摯でストレートな対応をしているのも印象的でした。

No.1686 6点 絞首台の謎- ジョン・ディクスン・カー 2016/09/07 11:24
(ネタバレなしです) 1931年発表のアンリ・バンコランシリーズ第2作は不思議な魅力を持った本格派推理小説です。夜と霧を効果的に使うためでしょうか、舞台は前作「夜歩く」(1930年)のパリからロンドンに移っています。欠点も非常に多く、死人の運転する自動車トリックはひどいトリックだし、miniさんのご講評にもあるように霧の中に出現する絞首台の謎及び謎解きは文章説明だけではわかりにくいです。しかし幻想的怪奇的な演出に優れており、犯人逮捕場面のサスペンスも素晴らしく最後の一行も衝撃的です。結果としては雰囲気のみで勝負したような作品になっていますがこれだけ雰囲気豊かな作品はなかなかお目にかかれません。

No.1685 5点 ストライク・スリーで殺される- リチャード・ローゼン 2016/09/07 11:01
(ネタバレなしです) TVキャスターを経験したこともある米国のリチャード・ローゼン(1949年生まれ)が1984年に発表したハーヴェイ・ブリスバーグシリーズ第1作は野球界を舞台にした本格派推理小説とハードボイルドのミックスタイプです。米国や日本では野球はよく知られているのでそれほど問題ないのかもしれませんが特に25章から26章にかけての説明は野球を知らない読者には難解過ぎると思います(それ以前に野球選手だらけの登場人物リストでげんなりするかもしれません)。推理の要素が少ないので謎解き重視の読者はお気に召さないかもしれませんがストーリーテンポは軽快で読みやすいです。

No.1684 5点 殺人者の街角- マージェリー・アリンガム 2016/09/06 19:29
(ネタバレなしです) 1958年発表のアルバート・キャンピオンシリーズ第16作です。場面変化に富んでおり、犯罪者の視点で描かれているシーンあり、ルーク警視やアルバート・キャンピオンが活躍するシーンあり、奇しくも犯罪者と行動を共にするはめになったある人物の冒険シーンありと色々あって退屈はしませんが、逆に主人公不在の物語のようにも感じます。ミステリーとしてのジャンル分けも難しく、アリバイを巡る推理はありますが本格派推理小説ではないし、犯罪小説でもないし、私は(消去法的に)サスペンス小説に分類しましたがあまり自信ありません。ストーリーテリングが冴えわたった読みやすい作品で、ややメロドラマじみていますが印象的な結末が用意されています。

No.1683 5点 憎しみの巡礼- エリス・ピーターズ 2016/09/06 19:18
(ネタバレなしです) 1984年に出版された修道士カドフェルシリーズ10作目です。時代は1141年5月、スティーブン王と女帝モードの争いは形勢が逆転してモード優勢となりスティーブン擁護派のシュルーズベリが不安を隠せない状況下で起きた事件が扱われています。懐古調になったのか「聖女の遺骨求む」(1979年)、「氷のなかの処女」(1982年)、「聖域の雀」(1983年)などのエピソードが振り返られたり、懐かしの人物が再登場しています。特に要注意なのが「聖女の遺骨求む」のミステリー部分のネタバレをしていることで、未読の人は本書より先にそちらを読んだ方がいいと思います。前半は人物関係がばらばらでまとまりの悪い物語に感じられましたが最後には一つの流れに上手くまとめています。全体としては冒険小説のジャンルに属する作品ですが、本格派としての推理場面も終盤には用意されています。

No.1682 5点 青チョークの男- フレッド・ヴァルガス 2016/09/06 19:10
(ネタバレなしです) フランスのフレッド・ヴァルガス(1957年生まれ)は本国では大変人気の高い女性作家です(フレッドは男性名であることも多いので非常に紛らわしいです)。本書は1991年発表のアダムスベルグ署長シリーズ第1作の本格派推理小説です(長編ミステリー第2作のようです)。登場人物もエキセントリック、会話もエキセントリック、これが延々と続くので何度も頭の中が混乱してしまいましたが最後は本格派の謎解きとしてびしっと引き締めています。読み終えるのに苦労しますが横溝正史のフランス版みたいな結末は強く印象に残ります。

No.1681 6点 カリブ海の秘密- アガサ・クリスティー 2016/09/06 19:06
(ネタバレなしです) 1964年発表のミス・マープルシリーズ第9作にあたる本格派推理小説です。大勢のリゾート客が訪れる西インド諸島を舞台にしており、もう少し異国の雰囲気が描けていればなあとは思いますがミステリーとしてのツボはしっかり抑えてあって1960年代の作品の中ではいい出来映えだと思います。作中でミス・マープルが「こんな簡単なことなのに」と述懐していますが、私は過去の作品で使われている騙しのテクニックにまたまたやられてしまった自分を再発見する羽目になってしまいました。

No.1680 5点 緋色の研究- アーサー・コナン・ドイル 2016/09/06 19:00
(ネタバレなしです) 英国のサー・アーサー・コナン・ドイル(1859-1930)は本業は医者でしたが商業的に苦しかったため、冒険小説、歴史小説、怪奇小説、SF小説など幅広いジャンルの作品を精力的に執筆し、ついには専業作家へと転身しています。その作品中最も有名なのが世界で一番有名な探偵シャーロック・ホームズのシリーズでしょう。全部で4長編と5短編集(56短編を収録)が残されており、21世紀になった今なお多くの作家がホームズを主人公にした作品(パロディーも含む)を書いているなどミステリー界に巨大な足跡を残した偉人です。本書は1887年発表の記念すべき最初のホームズ作品となった長編です。中編に近いぐらいのボリュームで、しかもホームズの活躍場面が二部構成の物語の前半部だけという点に物足らなさを感じる人もいるでしょうが(後半部の最後にもちょっとだけ登場しますが)、それでもホームズの名探偵らしさは十分鮮やかに描かれています。後半部は冒険ロマン小説風になっていますが小説として面白いかはともかく、ここでのモルモン教徒の扱い方は現代だったら(宗教団体から)訴えられたんじゃないかなと思えるほど過激に描かれていますね。

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー、D・M・ディヴ...
採点傾向
平均点: 5.43点   採点数: 2979件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(85)
アガサ・クリスティー(57)
ジョン・ディクスン・カー(45)
エラリイ・クイーン(43)
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