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nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2849件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.69 6点 高木家の惨劇- 角田喜久雄 2009/04/17 16:59
(ネタバレなしです) 角田喜久雄(1906-1994)は戦時中は伝奇小説、時代小説作家として有名でしたが戦後はミステリーにも力を注ぎました(それでも時代小説の方が主要でしたが)。その代表作とされるのが1947年に(当時は)「銃口に笑ふ男」というタイトルで発表された本書(加賀美捜査一課長シリーズ第1作)で、横溝正史の「本陣殺人事件」(1946年)、高木彬光の「刺青殺人事件」(1948年)と共に戦後の国内本格派推理小説黄金時代の幕開けを飾る作品と評価されています。プロットには甘いと思われる箇所がありますしトリックも今となっては子供だまし的です。まあ登場人物の1人がアリバイという言葉を知らなかったような時代の作品ですから堂々と通用したのでしょうが。とはいえこの作品の優れているところはトリックに全面依存していないことで、終盤のどんでん返しの見事さは戦後間もなくの本格派推理小説としては高水準だったのではと思います。随所で挿入される、タバコを巡る悲喜劇的なやり取りが物語のいいアクセントになっています。

No.68 8点 呪い!- アーロン・エルキンズ 2009/04/14 14:29
(ネタバレなしです) 1989年に発表されたギデオン・オリヴァーシリーズ第5作で、メキシコを舞台にしています。呪いの正体(真相)が他愛もないと低く評価されている傾向にあるようですが、謎とトリックが無理なく両立していることを(最後の石化トリックはかなりこじつけ的ですけど)もっと高く評価してもいいのではないでしょうか。どちらかといえばひらめき的(悪く言えば場当たり的)に謎を解いているギデオンが本書では実に論理的な推理を披露しており、良い本格派推理小説を読んだ充足感を与えてくれます。この作者ならではの明るい文体のため呪いの恐さが十分表現できていないきらいはありますが逆にそういうのが苦手な読者でも安心して読めるメリットの方が大きいでしょう。風景描写も上手いです。

No.67 2点 三角館の恐怖- 江戸川乱歩 2009/04/14 12:01
(ネタバレなしです) 1951年発表の長編本格派推理小説で読み物としてはそれなりに面白いとは思います。しかし問題なのは本書は某海外ミステリーのコピー作品であることです。トリックの借用程度ならまだしもプロットまで丸ごとパクリです。国内ミステリーが海外ミステリーの翻訳や模倣から始まったのは確かですが、黎明期ならいざしらず戦後になってもまだこんなことをしているのは許されないでしょう。ミステリーファンの開拓における乱歩の功績は大いに認めますが、こういう作家良心に反する行為はとても残念です。これを盗作と批判せず翻案と擁護する出版界にも失望です。

No.66 4点 魔弾の射手- 高木彬光 2009/04/10 18:05
(ネタバレなしです) 1950年発表の神津恭介シリーズ第3作となる本格派推理小説で、犯人当て懸賞付き小説として発表され、「読者への挑戦状」も付いていたそうです(私の読んだ角川文庫版では挑戦状は削除されています)。この複雑な真相を果たして読者はきちんと当てられるのだろうかと思いましたが、(どれほど応募があったかはわかりませんが)4名の正解者がいたそうです。魔弾トリックは某海外作家のトリックのコピーに過ぎず謎解きとしてはあまり感心できませんでしたが読みどころとしては名探偵・神津恭介の苦悩ぶりが印象的に描かれているところでしょうか。

No.65 7点 未明の家- 篠田真由美 2009/04/07 17:47
(ネタバレなしです) 1994年に発表された本書は記念すべき建築探偵桜井京介シリーズ第1作です。笠井潔による講談社文庫版巻末解説によればこの作者は「第三の波」の「第二世代」に所属する作家のようですが、王道的な本格派推理小説にこだわった第一世代作家の作品と違い、本格派推理小説といってもやや毛色が異なります。その解説の表現を借りれば、桜井京介と準主人公3人(本書では2人が活躍)による「血縁関係のない家族」のようなドラマが最大の魅力で、他の誰にも真似できない作品世界を築き上げています。その特長は本書でも十分に発揮されています。謎解きもやってはいますがむしろ家族問題をどうまとめるかにかなり力を入れています。容疑者たちの人物描写も繊細で、謎解きもホワイダニットに重点を置いたものです。建築の謎解きも家屋の特殊な構造や奇抜な仕掛けに頼っていないところにユニークさを感じさせます。

No.64 10点 「そして誰もいなくなった」殺人事件- ジャックマール&セネカル 2009/04/07 15:34
(ネタバレなしです) 本書が発表されたのは1977年、つまりあのアガサ・クリスティー(1890-1976)が亡くなった翌年で、クリスティーへのオマージュ作品であることは明白です。クリスティーの「そして誰もいなくなった」(1939年)のネタバレを作中で行っているのは通常ならマナー違反ですが、これほどクリスティー作品と密接な関係を持つプロットではやむを得ないと思います(当然クリスティー作品を先に読んでおくことを勧めます)。個性豊かな登場人物(変な人だらけだけど)、サスペンスの盛り上げ方、舞台描写(もともと作者は劇作家だったので劇場の雰囲気づくりは巧い)などに前作「グリュン家の犯罪」(1976年)から格段の進歩を遂げており、何よりも壮大な事件構図と白熱の推理合戦(第3部第4章が秀逸)は本格派ファンとして大いに楽しめました。動機については事前の手掛かり不足かであるなど小さい問題点もありますが大満足の面白さです。

No.63 5点 和時計の館の殺人- 芦辺拓 2009/04/06 16:49
(ネタバレなしです) 2000年発表の森江春策シリーズ第8作は横溝正史の「犬神家の一族」(1950年)へのオマージュ的な本格派推理小説で、横溝作品を読んだ読者なら楽しめる趣向があちこちに仕掛けてあります(読んでいなくても鑑賞上の支障はありませんが読んでおくことを勧めます)。綾辻行人の「時計館の殺人」(1991年)を意識したかのような舞台も印象的です。ということで背景や雰囲気についてはなかなか面白いネタが揃っているし、ストーリー展開もスムーズで読みやすいのですが謎解きが(私には)複雑過ぎるのがやや惜しまれるところです。

No.62 5点 三つ首塔- 横溝正史 2009/04/03 17:12
(ネタバレなしです) 1955年発表の金田一耕介シリーズ第11作ではありますが名探偵としての推理らしい推理をすることもなく(登場シーンも少ないです)、殺人事件は場当たり的に解決してしまいますので本格派推理小説としては楽しめません。犯罪に巻き込まれたヒロインがこれまで全く縁のなかった裏社会の人間模様にカルチャーショックを受けていく様を丁寧に描いていた通俗スリラーです。21世紀の読者視点では世間知らずのヒロインの内面描写に古臭ささを感じるかもしれませんが、遺産を巡ってのサバイバル・ゲームにも通じるサスペンスと連続殺人の絡ませ方は巧妙でぐいぐい読ませます。風俗描写に力を入れすぎてせっかくの三つ首塔がいまひとつ存在感がなかったのは惜しいですが。

No.61 6点 サマー・アポカリプス- 笠井潔 2009/04/01 18:01
(ネタバレなしです) 前作の「バイバイ、エンジェル」(1979年)も決して軽い作品ではありませんが1981年発表の矢吹駆シリーズ第2作の本格派推理小説の本書は重厚感がぐっと増しました。前半は中世の宗教史の知識が半端でなく、その分謎の魅力がややもすると霞んでしまったようなところもありますが第4章の終盤あたりからは前作でも見られた思想対決的な雰囲気が濃くなり、息苦しさと緊張感を同時に味わいました。そして鮮やかな謎解きの後に訪れる、あまりの後味の悪さは高木彬光の某作品を連想しました。なお作中で「バイバイ、エンジェル」のネタバレ(犯人の名前を堂々と公表)しているのはいくら原作者といえどマナー違反ではないかと思います。

No.60 7点 踊り子の死- ジル・マゴーン 2009/04/01 16:09
(ネタバレなしです) 1989年発表のロイド主任警部&ヒル部長刑事シリーズ第3作です。登場人物が揃いも揃って共感できないタイプだったので物語的にはいまひとつのめり込めませんでしたが本格派推理小説としては1級品です。緻密な推理が披露された後でそれを根底からひっくり返すような証拠が提示され、さらにそこからの逆転推理という流れが凄いです。どんでん返しの鮮やかさでは世評の高い「騙し絵の檻」(1987年)をも凌ぐと個人的には思います。

No.59 8点 検死審問ふたたび- パーシヴァル・ワイルド 2009/03/31 10:54
(ネタバレなしです) 「検死審問」(1939年)の続編的な1942年発表のリー・スローカムシリーズ第2作で、本書を先に読んでも支障はありませんが共通する登場人物も多いのでできれば前作を読んでから本書を読むことを勧めます。証人の証言シーンが続くので単調と言えなくはありませんがこれが実にユーモアたっぷりで、派手などたばたがないのに全くだれることなく読み進めました。ユーモア一辺倒ではプロットが腰砕けになりがちですがそこはさすがワイルド、緻密な仕掛けを施した用意周到な謎解きが用意されており本格派推理小説マニアも満足できると思います。

No.58 4点 ローマ帽子の秘密- エラリイ・クイーン 2009/03/27 14:10
(ネタバレなしです) エラリー・クイーンはいとこ関係にあったフレデリック・ダネイ(1905-1982)とマンフレッド・リー(1905-1971)から成るコンビ作家で、単に米国本格派推理小説の黄金時代を代表する作家というだけでなくミステリー専門誌を発行して無名作家の発掘に力を注ぐなどミステリー界全体の振興に偉大な功績を残しています。1929年発表の本書がクイーンの記念すべきデビュー作で、「読者への挑戦状」を挿入して謎解き手掛かりを全てフェアーに提示したことを宣言した作品です。息子エラリーのヒントを基に父リチャードが真相を見抜くという、2人3脚探偵形式を採用しているのがこのシリーズとしては異例の試みです(本書以降は普通にエラリーが謎解きしてリチャードは脇役です)。エラリーを古書愛好家で会話の中にやたらと古典文学からの引用を混ぜる癖があるキャラクターにしていますが、これは当時人気絶頂だったヴァン・ダインの名探偵ファイロ・ヴァンスを意識した造形になっています(ちょっと意識しすぎだと思う)。登場人物が無駄に多くて(しかも個性が描けていない)非常に読みにくく、心地よくだまされたという快感よりもこんな物量作戦では犯人が当たるはずないという不満の方が強かったです。

No.57 6点 死神の座- 高木彬光 2009/03/27 11:51
(ネタバレなしです) 1960年代になると作者は社会派推理小説や法廷ミステリーを発表するようになりますが、1960年発表の本書は神津恭介シリーズ作品(第11作)だけあって純然たる本格派推理小説です(但しシリーズ次作は1970年代まで書かれませんでした)。占星術にロマンスに宝探し趣向まであって書きようによってはロマンチックで神秘的な作品にも仕上げられたと思いますが、作者独特の暗くてドライな文章ではさすがにそういう雰囲気にはならなかったですね。

No.56 2点 雪だるまの殺人- ニコラス・ブレイク 2009/03/26 18:27
(ネタバレなしです) 1941年発表のナイジェル・ストレンジウェイズ第7作の本格派推理小説です。雪だるまの中から死体登場、という出だしはなかなかのインパクトがありますが結局のところ、メインの謎解きは首吊り事件の方だったのは拍子抜けでした。自殺か他殺かを推理するのはいいのですけれど、死体が全裸であったことに名探偵役のナイジェルを筆頭に誰も疑問を表明しないのはなぜ?あまりにも不自然だとは思わなかったのでしょうか?不信感を持ちながら読んでしまったので私個人にとって最も不満の多いブレイク作品となってしまいました。猫の不思議な行動の謎解きなんかは結構読ませますけど。

No.55 3点 冷たい校舎の時は止まる- 辻村深月 2009/03/26 16:55
(ネタバレなしです) 辻村深月(1980年生まれ)の2004年発表のデビュー作ですが文章はなめらかで読みやすいです。第16章の前に読者への挑戦状風なメッセージがあるというので本格派推理小説かなと期待して読みましたが、ああいう超自然的な舞台設定では真相も無限に用意可能にしか思えず、謎解きの面白さは感じませんでした。これはホラー小説と割り切った方が間違いなさそうです。残虐シーン連発タイプのプロットではありませんが、それでも私は苦手でして...。

No.54 5点 ドッペルゲンガー宮「あかずの扉」研究会流氷館へ- 霧舎巧 2009/03/25 15:22
(ネタバレなしです) 島田荘司が20世紀最後の新本格派新人と激賞し、ペンネームの名付け親にまでなった霧舎巧(きりしゃたくみ)(1963年生まれ)のデビュー作にして《あかずの扉》研究会シリーズ第1作が1999年発表の本書です。結構大作の本格派推理小説ですがそれにも関わらず書き込み不足を感じます。死体発見を直接描写せず基本的に伝聞形式にしているのが珍しい工夫ですがこのアイデアが成功しているとは言い難く、死体発見という盛り上がるべき場面をぼかしたためサスペンス不足で回りくどささえ感じます。どうでもよさそうな些細な謎をやたら細かく推理している一方でせっかくの大トリック(印象的ではあります)の謎解きがいまひとつインパクトが弱く、演出面の課題が浮き彫りになっています。

No.53 7点 血染めのエッグ・コージイ事件- ジェームズ・アンダースン 2009/03/24 18:54
(ネタバレなしです) 英国のジェームズ・アンダースン(1936-2007)が1975年に発表した本書は舞台を1930年代に設定しているだけでなく、プロットも1930年代の黄金時代本格派推理小説を意識したかのように謎解きの面白さが満載です。雷鳴轟く夜に起きる犯罪、暗闇の中にうごめく人々とあやふやなアリバイ。そして全員を一個所に集めての、しかもどんでん返しの連続が何章にもまたがる謎解きの場面。トリックや手掛かりよりも物語性や人間描写やリアリズムを重視した作品が主流になりつつあった時代に敢えて逆行したような作品です。時代遅れの作品と批判するのは簡単ですが、謎解きの面白さに満ち溢れた作品であることは間違いありません。豪快なトリックも印象的です。なお文春文庫版も扶桑社文庫版も表紙にエッグ・コージイの絵や写真が載っているのはとてもよい気配りだと思います(名前だけではよくわからなかったので)。

No.52 5点 大蛇伝説殺人事件- 今邑彩 2009/03/23 17:17
(ネタバレなしです) 1998年発表の本格派推理小説で、タイトルの「大蛇」は「だいじゃ」でなく「おろち」と読むのが正しいです。光文社文庫版の島田荘司による巻末解説の通り、バラバラ死体を生々しく描写していないのは個人的には大歓迎ですがそれにしてももう少し派手な演出がほしかったです。また大蛇の神秘性や怪奇性と地道なアリバイ検証の謎解きは、組み合わせとしてはあまりにもミスマッチな感じがしました。節度とサスペンスのバランスをとるのは難しいなあと改めて感じました。

No.51 7点 幽霊が多すぎる- ポール・ギャリコ 2009/03/23 15:26
(ネタバレなしです) 米国のポール・ギャリコ(1898-1976)はファンタジー小説の大家として有名ですが、パニック映画ブームの火つけ役となった「ポセイドン・アドベンチャー」(1969年)など結構幅広いジャンルの作品を書いています。1959年発表の本書はこれまた意外や本格派推理小説で、怪奇現象の解明というハウダニットに重きを置いているのが珍しいです。これでもかといわんばかりに怪現象や事件が続発しますが、全てが合理的に解決されます(一つだけ解けない謎がありますが些細な謎です)。トリックは目新しいものはありませんが繊細な人物描写が素晴らしく、特に子供に向けられた優しい眼差しがいかにもこの作者らしいです。

No.50 6点 見えない凶器- ジョン・ロード 2009/03/18 17:33
(ネタバレなしです) 1938年発表のプリーストリー博士シリーズ第29作で、密室内の殺害方法不明の事件を扱っています。賛否両論の密室トリックの評価がそのまま作品評価につながっているようですが決してハウダニットのみの本格派推理小説ではなく、犯人当て謎解きとしてもカモフラージュの技巧を凝らしており、一読する価値は十分あると思います。

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー、D・M・ディヴ...
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2849件
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