海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!
ログインもしくはアカウント登録してください。

nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2921件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.321 4点 扉の影の女- 横溝正史 2012/08/14 15:03
(ネタバレなしです) 雑誌掲載された短編「扉の中の女」(1957年)を長編化して1961年に発表した金田一耕助シリーズ第23作ですがこれは結構な問題作でしょう。地味な事件を地味に調べる盛り上がりに乏しいプロットなのはまだしも、この真相は本格派推理小説としては反則と批判されても仕方ないと思います。金田一の日常生活が紹介されているのがファン読者へのアピールポイントにはなっていますけど。

No.320 5点 ホッグズ・バックの怪事件- F・W・クロフツ 2012/08/14 14:45
(ネタバレなしです) クロフツの作品は探偵役の行動だけでなく考えていることまで丁寧に描写しているので早い段階で犯人の見当がつきやすいのが珍しくありませんが、1933年発表のフレンチ警部シリーズ第10作となる本書では最後まで犯人の正体を隠しているだけでなく何と64個の手掛かり索引を使っての推理説明があります。とはいえこの手掛かりは大半が重箱の隅をつついたような細かい手掛かりで、そんなところまで覚えていられるわけないだろうと凡才読者の私としては抗議したくもなりましたが。それにしてもこんな失踪事件で(最終的には殺人事件に発展しますが)引っ張り出されるなんてロンドン警視庁って結構暇なのでしょうか(笑)?

No.319 5点 出口のない部屋- 岸田るり子 2012/08/13 18:39
(ネタバレなしです) デビュー作の「密室の鎮魂歌」(2004年)はサイコ・スリラー要素のある本格派推理小説ですが、2006年発表の長編第2作の本書は本格派推理小説要素のあるホラー小説というのが個人的な評価です。怖いというより気持ち悪いと感じましたが。前半はややもたもたした展開で、犯罪描写はありますがミステリーらしくありません(ホラーらしくもありません)。後半はテンションが上がります。謎解きはやや駆け足気味な気もしますが、要点のわからないばらばらの物語を有機的にまとめあげる手腕は見事で、作者の実力の高さを十分に示しています。本格派とホラーの組み合わせというと今邑彩や綾辻行人もそういう作品を書いているので比較するのも面白いかも。

No.318 7点 スリー・パインズ村の不思議な事件- ルイーズ・ペニー 2012/08/13 17:58
(ネタバレなしです) ルイーズ・ペニー(1958年生まれ)はカナダ人の女性作家で2005年発表のガマシュ警部シリーズ第1作である本書でミステリー界にデビューし、レジナルド・ヒルやピーター・ラヴゼイから好意的なコメントを寄せられています。このシリーズは一時期コージー派ミステリーであるかのように紹介されたこともあったような記憶がありますが、どうしてそうなってしまったのでしょうか?キャロライン・グレアムの傑作「蘭の告発」(1987年)に雰囲気の近い本格派推理小説で登場人物の心理を非常に丁寧に描き、平和で静かな世界の秘められた悪意をガマシュ警部が追求するプロットになっています。謎解き伏線もしっかり張っており、なかなかユニークな手掛かりが印象的です。ガマシュ警部も十分に活躍していますが、もう1人名探偵にふさわしい推理をした人がいましたね。

No.317 6点 ライン河の白い霧笛- 高柳芳夫 2012/08/13 15:47
(ネタバレなしです) タイトルが紛らわしいですが1981年発表の本書は「ライン河の舞姫」(後に「『ラインの薔薇城』殺人事件」に改題)(1977年)とは全く別の作品です。小説部分のプロットには釈然としないところもあります。例えば主人公の鷹見が敵対的であることに気づきながら雇い主のヴォルフマンが解雇しないのは不思議としかいいようがありません(いくら優秀でも運転手の代わりならいくらでも見つけられそうですが)。また鷹見のキャラクターも読者の共感を得られるかは疑問です。しかし本格派推理小説の謎解きとしてはユニークなトリックが光る作品で、一読の価値は十分にあります。

No.316 6点 QED 龍馬暗殺- 高田崇史 2012/07/13 11:37
(ネタバレなしです) 2004年発表の桑原崇シリーズ第7作の本格派推理小説です。本書で取り上げられた歴史の謎は坂本龍馬暗殺事件で、歴史の苦手な私でも知っている暗殺事件であることと、本格派推理小説の犯人当てに通じるところがあるので比較的とっつきやすい歴史の謎解きでした。とはいえ桑原崇の説明は(奈々の指摘の通り)物的証拠のない解決なのですっきり感は得られませんでしたが。現代の事件の方は何と嵐の山荘ならぬ嵐の村落で起こったのが新鮮でした。ところが警察の介入がないので大手を振って探偵活動するのかと思ったら、事件そっちのけで龍馬暗殺の議論に明け暮れているではありませんか。そりゃ彼らは一般人だから犯罪事件に自ら顔を突っ込まないのが普通と言われればそれまでですけど。最後はちゃんと解決していますけど、色々な意味で私の思惑を外された作品でした。

No.315 8点 夏の記憶- ピーター・ロビンスン 2012/07/12 20:27
(ネタバレなしです) 初期の作品は叙情性の勝った作品が多いのですが、特に1988年発表のアラン・バンクスシリーズ第2作の本書はその典型です。この作者は男性作家とは思えないほど人物描写が繊細ですが、それだけに結末の衝撃性はより一層重く響きます。解決後に漂う悲哀感もまた強烈で、地味な展開ながら全く退屈しない本格派推理小説でした。個人的にはシリーズ作品中1番のお気に入りです。

No.314 6点 海を見ないで陸を見よう- 梶龍雄 2012/07/12 20:22
(ネタバレなしです) 1978年発表の長編第2作の本格派推理小説です。第1作の「透明な季節」(1977年)から作中時代が4年が経過した設定で同じ主人公(芦川高志)が登場していますが、前作のことに全く触れていないのでどちらを先に読んでも支障はありません。青春小説要素が濃いのは前作と共通していますが前作が後半になるとミステリー要素が薄くなるのとは対照に、本書は後半になるほど本格派推理小説として充実したものとなり、最終章では豊富な伏線に基づく推理が披露されています。容疑者の中に進駐軍所属の外国人が登場するためか英語交じりの会話が多いですが、現在の日常会話には定着しなかった単語が結構多いですね。

No.313 5点 罪深き眺め- ピーター・ロビンスン 2012/07/12 20:17
(ネタバレなしです) 英国に生まれ、カナダに在住しているミステリー作家ピーター・ロビンスン(1950-2022)の1987年発表のデビュー作です。殺人事件、のぞき事件、盗難事件の3つの事件を同時並行的に扱いながら混乱させない筆づかいはお見事です。人物描写に秀でており、バンクス首席警部が妻サンドラと心理学者ジェニーとの間で気持ちが揺れ動く様子を繊細に描き、それが捜査にも微妙に影響するところも巧妙なプロットづくりが光ります。推理が弱いのと、メインとなるべき殺人事件があっさりした扱いなのが少々惜しまれますが。

No.312 5点 アルキメデスは手を汚さない- 小峰元 2012/07/11 14:19
(ネタバレなしです) 小峰元(こみねはじめ)(1921-1994)は鮎川哲也や高木彬光に近い世代で、1940年代後半から活動しているのですが短編作品が中心だったためか長らく知る人ぞ知る存在でした。有名になったのは長編第1作である本書を1973年に発表してからで、某出版業界サイト情報によると1974年のベストセラートップ10にランクイン(ミステリー作品としては珍しい)したほどの成功作です。この成功に自信を得た作者は青春ミステリーの書き手として東野圭吾に影響を与えるほどの存在になりました。本書は本格派推理小説ではありますが本格派としての評価は難しく、色々と謎はあるのですがメインの謎が何かについてはやや焦点が定まっていないこと、読者が推理に参加する余地があまりないこともあって謎解きとしてはそれほど楽しめませんでした。やはり青春小説要素の方がこの作品の価値を高めているのでしょう。某サイトの感想で「ふてぶてしい」と表現していましたがまさにその通りで、本書の高校生は「大人になろうと背伸び」しているのでも「大人を拒絶」しているのでもなく、今の自分が人生のピークであるかのように堂々としています。こういう高校生にリアリティを感じるかは意見が分かれるでしょうし、読者にあれこれ考えさせているところに人気の秘密があったのではと思います。

No.311 10点 五匹の子豚- アガサ・クリスティー 2012/06/17 11:25
(ネタバレなしです) 1942年発表のエルキュール・ポアロシリーズ第21作の本格派推理小説です。既に有罪判決まで出た16年前の事件の再調査という難題にポアロが挑みます。ポアロはそれぞれの事件関係者(容疑者でもある)に事件の再構成をさせているのですが、ある意味繰り返しの連続です。しかしこれが全く退屈しないのですからすごい筆力です。味気のない証言ではなく、登場人物の心理状態もたっぷり織り込まれた物語となっているので読者が感情移入しやすくなっているのが成功の理由の一つでしょう。プロット、人物描写、謎解きと三拍子が揃った完成度の高い大傑作で、最後の一行も何とも言えぬ余韻を残して印象的でした。

No.310 5点 出雲伝説7/8の殺人- 島田荘司 2012/06/17 10:04
(ネタバレなしです) バラバラにされた女性の死体が7つの駅で発見されるという衝撃的な事件の起きる、1984年発表の吉敷竹史シリーズ第2作です。犯人の正体は中盤頃には判明しており(推理としては粗いと思いますが他に有力容疑者がいません)、アリバイ崩しの本格派推理小説となっています。複数の駅と路線が登場し、時刻表、路線図、駅や車両の配置図なども豊富に揃えており、いかにも「鉄道ミステリ」の雰囲気が濃厚な作品です。推理は丁寧だしトリックも細かいレベルまで考えてはいますが、そもそも犯人がここまでする必要があったのかという点に関しては疑問が残りました(結構綱渡り的なトリックだと思います)。

No.309 8点 花面祭- 山田正紀 2012/06/07 20:12
(ネタバレなしです) 元々は1990年に発表された主人公の異なる4つの短編で、それらを合体させて加筆して1995年に長編化したそうですがつぎはぎ感は全くなく、実に完成度の高い本格派推理小説に仕上がっています。戦時中の密室からの人間消失トリックには驚きました。このトリック自体はアガサ・クリスティーの作品に前例があります。クリスティーは密室でない用途でこのアイデアを使い、それも結構巧妙でしたがこれを密室トリックに流用した山田のアイデアもすごいと思います。この作者ならではの幻想的雰囲気も女性と花との組み合わせにマッチしていると思います。

No.308 6点 迷走パズル- パトリック・クェンティン 2012/06/07 18:11
(ネタバレなしです) リチャード・ウエッブ(1901-1966)とヒュー・ウィーラー(1912-1987)の黄金コンビ時代の幕開けを飾る、1936年発表のダルース夫妻シリーズ第1作(但し本書ではまだ夫妻ではない)の本格派推理小説です。このシリーズは主人公が名探偵役とは限らなかったり、ダルース夫妻の関係が山あり谷ありだったり、後期作品ではサスペンス小説要素が濃くなってきたりと実に変化に富んでいます。精神病院を舞台にしていますが、舞台や人物の特殊性をそれほど強調しておらず謎解きの面白さを損ねない範囲で留まっているのがいいですね。リアリティを重視する読者にはそこのところの評価が微妙かもしれませんが。終盤のどんでん返しが鮮やかです。

No.307 6点 殺人配線図- 仁木悦子 2012/06/07 17:51
(ネタバレなしです) 1960年発表の長編第3作の本格派推理小説で、ちょっと理系要素がありますが(実際に配線図も2つ登場)、そういうのが苦手な読者(私もそうです)でもそれほど抵抗なく読めると思います。主人公が謎解きする理由が自分の不注意で父親が死んだと思い込んでいる従姉妹の心の重荷を取り除くというのがユニークで、こういうハッピーエンド狙いのミステリーを(しかもわざとらしさを感じさせずに)書ける作家は案外そうはいないでしょう。探偵役の吉村俊作は本書以外に短編4作に登場するそうです(仁木兄妹や三影潤に比べると地味ですが)。

No.306 6点 エドウィン・ドルードの謎- チャールズ・ディケンズ 2012/04/29 15:33
(ネタバレなしです) 19世紀英国を代表する作家チャールズ・ディケンズ(1812-1870)は友人でもあったウィルキー・コリンズから「月長石」(1868年)を献呈されたことに刺激を受けたか自らもミステリーを書こうとしました。しかし残念なことに全体の30%程度を発表したところで1870年に作者が死去してしまい、未完の作となってしまいました。20分冊予定の6分冊までしか書かれなかったのですが、この6分冊分だけで創元推理文庫版で23章400ページ以上あるのですからもし完成したらコリンズの「月長石」(1868年)を上回る(当時としては)「世界最長のミステリー」になったかもしれません。物語としては14章でようやく事件(それも失踪)が起きるというゆっくりした展開で、23章で謎解きの雰囲気が盛り上がり始めたところで絶筆。うーん、消化不良だ(笑)。ちなみに創元推理文庫版の巻末解説では、ディケンズの友人の伝記作家の証言(ディケンズから聞いたという伝聞証拠)に基づいて完成したらこういう謎解きになっていたはずだと紹介しています。物語中の伏線と整合がとれており説得力はそれなりに高いですが、まだ物語は30%程度の段階ですからここから(新証拠や新容疑者が登場して)二転三転する予定ではと期待もしたくなります。いずれにしても全ては永遠の謎になってしまいましたが。

No.305 4点 海のある奈良に死す- 有栖川有栖 2012/04/29 15:09
(ネタバレなしです) サラリーマン作家だった有栖川が専業になって初めて書いた、1995年発表の火村英生シリーズ第3作の本格派推理小説で、「行ってくる。『海のある奈良』へ」と言い残して去っていった男の死を扱っています。派手な演出を排したプロットで、トリックは色々と用意してあるのですがあまりにも全体が地味で謎自体の焦点が定まっていません。そのためか最後にトリック説明されてもインパクトに欠けてしまうのが惜しいところです。トリックも成功するのかおぼつかないようなところがあって説得力も弱いような気がします。

No.304 6点 ドーヴァー10/昇進- ジョイス・ポーター 2012/04/29 14:52
(ネタバレなしです) シリーズ第10作の本書は結果としてドーヴァー主任警部シリーズの最後の長編作品となった本格派推理小説で、1980年に発表されました(但し短編はこの後も書かれ、ポーター(1924-1990)の死後の1996年にはシリーズ短編集が出版されています)。シリーズ前期に比べるとどたばたは影を潜め、ドーヴァーのやる気のなさが目立つ程度です。とはいえ本格派推理小説としてはしっかり作られていて、ドーヴァーの推理はマグレガーがびっくりするほど冴えています。ドーヴァーのどたばたを期待する読者には物足りなく映るかもしれませんが。

No.303 5点 運命交響曲殺人事件- 由良三郎 2012/04/24 16:38
(ネタバレなしです) 由良三郎(1921-2004)が本書でミステリーデビューしたのは1984年です。もともとは医学者で、引退してミステリー作家に転身しました。世代的には高木彬光(1920-1995)と同年代で、高木が作家生活の晩年を迎えていた時期に作家キャリアをスタートさせたのですからびっくりです。クラシック音楽が好きでない読者はタイトルだけで敬遠しそうですけど、それほど音楽趣味べったりの作品ではありませんのでその点はご安心下さい。爆殺トリックは非常に細かいレベルで分析しているし、それ以外の謎解きも丁寧な本格派推理小説なんですが、語り口が単調に過ぎて物語としてのメリハリに乏しく、読みやすいかというと微妙です。

No.302 7点 顔に傷のある男- イェジイ・エディゲイ 2012/04/23 17:56
(ネタバレなしです) 1970年発表の本書はジャンル的には警察小説のミステリーですが謎解き伏線もしっかり張ってあって犯人当て本格派推理小説としても楽しめる内容です。同時代の英米の本格派と比べると古い作風(つまり黄金時代の作品の雰囲気を持っている)に感じられますが、この種の作品が好きな私にとっては全く問題ありません(むしろ大歓迎)。なじみのないポーランド人の名前には苦労しますが丁寧な推理説明は読みやすいです。大変ユニークなのが犯人が2人組であることを最初から提示して容疑者もほとんどが何らかのペアになるようにしてあること。最後になって実は共犯者がいましたという、往々にして不満を覚える謎解きとは違います。

キーワードから探す
nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー、D・M・ディヴ...
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2921件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(84)
アガサ・クリスティー(57)
ジョン・ディクスン・カー(44)
エラリイ・クイーン(43)
F・W・クロフツ(33)
A・A・フェア(28)
レックス・スタウト(28)
ローラ・チャイルズ(26)
カーター・ディクスン(24)
横溝正史(23)