皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
makomakoさん |
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平均点: 6.17点 | 書評数: 876件 |
No.736 | 6点 | 聖女の救済- 東野圭吾 | 2021/02/27 21:47 |
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トリックが好きで、といった方には評価が高いのでしょう。
なんせ登場人物は少なく、ほとんど初めから犯人がわかっているのにどうやってが、なかなか分からない。作者は一つのトリックだけで長編を書いてしまったのです。 結果がわかると、まあこんなことはほとんど考えにくいのですが、なるほどと思ってしまう。ある意味お話としては全く単純。それを最後まで読ませてしまうのはさすがです。 |
No.735 | 4点 | 死者はよみがえる- ジョン・ディクスン・カー | 2021/02/21 13:48 |
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この作品はサイトの書評でも評価がかなり分かれています。私にはあまりあわなかった。
登場人物がそれほど多くなく、どう考えてもその中の誰かが犯人でないとおかしいのですが、全く怪しい人がいないなあ--、と思っていたら色々後付けのエピソードが出てきて、犯人がいそうな感じともなってきます。さらに最後は絶対無理そうな展開となり、博士の長々とした講釈が始まります。 こんなのあり? このお話のテンポももう一つだったが、我慢して読んできたのにこれはちょっとねえ。 これじゃあそりゃあ犯人がわかるわけないでしょう。 この作品に高い評価を与えている方もあるので、やっぱり好みの問題なのでしょうね。 |
No.734 | 7点 | フォックス家の殺人- エラリイ・クイーン | 2021/02/11 16:15 |
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このお話は10年以上前にあった女性の死亡事件ですでに有罪確定している夫の罪の見直しをエラリーが依頼されるといった内容。
10年以上たっているのだからエラリー得意の細かいことまで検証するといっても無理なことが多いように思うが、なぜか登場人物の皆さん印象が強烈であったせいか事件の詳細までよく覚えている。まあ都合の悪そうなところは忘れたということにもできるので、お話を書く方は都合がよいかもしれない。 登場人物は少ない。 犯人探しとしてはとても限られた人物だけなので簡単そうなのだが、なかなかそうはいかない。 さすがクイーンといったところではありますが、結論から言うとちょっと肩透かしな感じを受けました。こういった結論しかないのではないかとも思っていたのですが。 もちろん推理小説として立派なもので、読みやすく楽しめることは請け合いでしょう。 |
No.733 | 6点 | 湖の男- アーナルデュル・インドリダソン | 2021/02/06 19:56 |
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アイスランドの小説は初めて読みました。名前になじみがなく、男か女かわからない。親子兄弟なのに全然違う名前なのはどうして?地名もやたら長くてとても覚えられないなど初めはかなり戸惑いましたが、しばらくすれば慣れてそれほど読みにくくはありませんでした。
以前にスウェーデンの小説を読んだときも感じたのですが、北欧の人たちは親子関係が薄いのでしょうかイタリアのような家族主体といった感じが全くありません。 気候が寒くて暗い冬が長いせいか、全体に重苦しい雰囲気です。登場人物たちもすべからく暗い雰囲気をまとっています。 お話は初めはどうもしっくりこないのですが、中盤からはがぜん面白くなります。犯人探しといった感じは少なく、冒険小説的でもありませんが、翻訳がよいせいもあり興味深く読むことができました。 ただやっぱり全体として暗い感じは否めず、人物がみなあまり快活でなく運もよくない。 メインストーリに関係ないところも暗いのです。この辺りをもっと明るくしたらもっと楽しく読めそうですが。 |
No.732 | 6点 | 鏡館の殺人- 月原渉 | 2021/01/25 21:04 |
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作者の本格物を追及する姿勢は評価しています。
今回はとてもできそうもない密室が出てきましたが、トリックはなんと禁じ手の一つではありませんか。他の方もおっしゃっているようにこれは綾辻氏の館シリーズにかなり影響を受けた内容のようです。館シリーズもある意味で禁じ手を使っているのですが、お約束として館に何らかの仕掛けがあることが前提のようになっているので、まあ許せるのですがね。 ところで探偵役のシズカさんは残酷な殺人シーンとなると冷たい喜びがあるような、相当に冷酷でいやなところがあります。 作者は大きなトリックを仕掛けてきそうですので、いずれシリーズのすべての犯人はシズカさんでしたなんて作品が出てくるかも。 |
No.731 | 4点 | 東海道五十三次殺人事件 歴史探偵・月村弘平の事件簿- 風野真知雄 | 2021/01/23 08:04 |
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歴史を専門とする探偵と恋人の捜査一課の女性が活躍する、猟奇でしかも歴史に関連したような連続殺人のお話です。こういった設定は私にはとても興味がわき期待して読んでみました。
なるほど事件は歴史、ことに浮世絵などが関連しており、犯人もトリックもとてもユニークなものでした。犯人と思われる人が見つかり解決と思いきや全く違う方向に転換、さらに真犯人がわかってからもさらに話は転換。本格物とすれば最高の展開なのです。 それならこんな低い評価ではないと思うのですが、はっきり言って私はこのお話ではあまり楽しめなかったのです。 犯人は確かに以外なのです。ところがその登場が話が大分過ぎたあたりで全然関係ないところからひょっこり現れます。伏線のようなものはほとんどなく意外というよりインチキの感じがします。探偵とその恋人も設定はとても良いのです。でも描写があまりにさらりとしており愛着がわきにくい。もうちょっとかわいく書かれていたら好きになりそうなのに。作者は歴史小説などを書いておられたとのことですので文章がたどたどしいわけではないのですが、上手とはいいがたく趣が少ない。 筋立ては良いのですからもっと素晴らしい本格になったと思うのです。残念です。 |
No.730 | 6点 | 犬神館の殺人- 月原渉 | 2021/01/19 21:06 |
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首なし館の殺人でもうこのシリーズはないかと思っていましたが、嬉しいことに続編が出ました。さらにそのまた次も出ているようですので、とても楽しみです。
ところでこの作品について。 前作と大分感じが異なってかなりシュールな雰囲気です。 本格は同じトリックが許されないため突き詰めていくとネタ切れとなり、無理に新しいトリックを作ろうとすると、現実とはかけ離れたお話となってしまうのは避けられないのかもしれません。 事実本格推理小説が一時衰退したのはこういった状況が打開できなかったからなのでしょう。 作者は本格推理小説にこだわった作品を新しく読ませてくださる作家さんとして期待しておりますが、この作品ではあまりに密室にこだわりすぎて、登場人物がまるで将棋の駒のような印象を受けてしまいます。とんでもない建物ととんでもない発想の人物が登場して、人の命など密室の理論が成立するためにはどんどん切って構わないといった印象を受けてしまいます。 本作では読んでいてそのあたりが気になりました。 |
No.729 | 7点 | ビッグ・ボウの殺人- イズレイル・ザングウィル | 2021/01/17 09:03 |
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中編というべき比較的短いお話の中のほとんどが、密室の推理にあてられているといってよいでしょう。
100年以上前にこんな密室を考え出したことは誠にすごいことです。十分に楽しめました。 そして私の常ですが、密室のからくりは見破れず、犯人も全く分からずでした。 以下ややネタバレ 密室の回答は二つ示されます。二つ目が正解で、これが錯覚を利用した密室の最初とされるものなのだそうです。 私には初めに示された回答のほうが穴がなくてすっきりしましたね。これも錯覚を利用したといえばそうなのですが、ありうる方法なのではないでしょうか。 最終回答は実は医学的には成り立たなさそうに思えてしまいます。 いくら即死でも出血がほとんどないのはあり得ない。首を切って死に至らせるには動脈を記っての失血死か首の骨の中にある神経ごときっての即死かのいずれかと思いますが、神経ごと切るには剃刀では難しそうだし、剃刀の達人だったとしても相当に勢いよくやらないと無理であろうから、このシチュエーションでは必ずきずかれてしまいそうです。またどんなにやっても心臓が少しの間は動いているのでやっぱり大量に手が飛び散るものと思いますので、やっぱり気付かれるのでは。 ああ。こんなこと言っていないで、古典的作品に敬意を表すべきなのでしょう。 |
No.728 | 7点 | サーチライトと誘蛾灯- 櫻田智也 | 2021/01/10 09:47 |
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私は小説を読む際に登場人物の性格や周囲の雰囲気を感じながら読む傾向にあるので、短編の推理小説はあまり得意ではないのですが、この作品はなかなか楽しめました。
はじめはちょっと変わった虫好きの男が変な推理をするなあといった感じでしたが、読んでいるうちにひょうひょうとした感じがだんだん好ましく思えるようになり、結構楽しめました。 こういった連作型の短編だと主たる登場人物が同一であるため、お話に入りやすくなってくるからなのでしょうか。 |
No.727 | 6点 | その裁きは死- アンソニー・ホロヴィッツ | 2020/12/27 16:32 |
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本格推理小説としてはまずまず良かったのですが、登場人物が感じ悪い。
むちゃくちゃな女警部と部下(イギリスではこんな警官がまかり通っているのでしょうか。日本でこんな事したら絶対告訴になるぞ)、傲慢でヒステリックな日本人作家のアキラアンノ、そして探偵のホーソーンも感じ悪い。 それとともに筋ジストロフィーに関してはきちんと書かれているのに、エーラスダンロス症候群は作者がなにか勘違いしているのでしょうか、通常の病態とはかなり違うように思えます。違う病気としたほうがよかった。 こういったところが私にはとても気になりました。 これを気にしないならホーソーンのシャーロックホームスを思わせるような発言なんかはとても興味深いし、何となくYの悲劇のような感じもうかがわれて、本格推理として楽しめると思います。 ただ「カササギ」よりはちょっとおちるかな。 |
No.726 | 5点 | 殺人者の顔- ヘニング・マンケル | 2020/12/14 19:06 |
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スウェーデンのミステリーは初めて読みました。主人公はかなりいい加減なところがある警察官。日本だったら絶対懲戒免職ですが、スウェーデンではこれでよいということでしょうか。
世界的に売れたところからみて世界基準ではこんなもんなのかなあ。 ちょうどこの小説が書かれたころにスウェーデンにしばらく行ったのですが、こんな感じは受けなかった。まあ私が外国人であったからかもしれませんが。 いずれにせよ本格推理の枠に入るものではなく、警察小説で主人公のキャラクターで読ませるといったところでしょうか。 |
No.725 | 6点 | 心霊探偵八雲2/魂をつなぐもの- 神永学 | 2020/12/11 18:45 |
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このシリーズは不思議な魅力があるのかもしれません。そうでなければ10巻以上も続編が次々と発行されることはないでしょうから。
かくいう私も1巻目はさほどの印象がなかったのですが、2巻目の「魂をつなぐもの」ははるかに楽しく読みました。登場人物のキャラクターがわかりオカルト的要素を受け入れると、かなり読みやすくなってきた。 ことにヒロインの春香はなかなかかわいいねえ。 もうちょっと読み込んでいきます。 |
No.724 | 6点 | アルファベット・パズラーズ- 大山誠一郎 | 2020/11/29 16:36 |
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この作品に関しては好き嫌いで、かなり評価が分かれるのでしょう。
本格物が好きなら、こんなに凝ったお話で意外性もあり素晴らしいということとなりそうですが、現実性を重視したり、物語に文学性や情緒などを求めようとするとひどい評価となるのだと思います。 このサイトはミステリーのサイトですので、評価が高い方が多いのでしょう。 私は本格物の凝った内容や練り上げたお話が好きなので、結構面白かったです。 ただ評価が高いYの誘拐はちょっと悲惨すぎて私には読みにくい。卑劣な誘拐のお話は基本的に好きではない。 |
No.723 | 5点 | ライオンの棲む街- 東川篤哉 | 2020/11/29 08:41 |
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東川氏の作品はいつもサービス精神にあふれ、楽しませてもらっているのですが、このお話はユーモアも内容も今一つといった感じでした。
トリックはそこそこ、それをユーモアで補うといった作品なのでユーモア度が下がると作品の価値も下がってしまいます。 何より探偵のエルザがあまりにも言葉使いが悪すぎる。勿論そういったキャラクターなのでしょうが、ちょっとやりすぎなのでは。本当は上品な家庭で育って、時々すごく丁寧な言葉でしょべるようなキャラクターのほうがよかったかも。 |
No.722 | 7点 | 致死量未満の殺人- 三沢陽一 | 2020/11/01 08:47 |
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非常に綿密に考えられた本格推理小説です。
こういったお話には登場人物がいかにも非人間的で嫌いといった評価がよくありますが、このお話では初めのうちは多少の違和感がありますが、まあ許容範囲でしょう。殺された弥生がいかにも嫌なやつなのはお話の性格上やむを得ない。 話の内容は実にこみいっており、まず初めに犯人が自白してしまう。当然これで終わるわけはないのですが、その後精緻な検証が登場人物たちによって行われます。これがなかなか微に入り際にわたっているので、まさに数学の問題を解いているような感じにもなります。 本格推理が好きな方には実に興味深く、そうでない人には何ともめんどくさいということとなりそう。 私は本格物が好きなので、こういった小説に久しぶりに出会えたといった感じで興味深く読みました。 |
No.721 | 5点 | 心霊探偵八雲1/赤い瞳は知っている- 神永学 | 2020/10/31 07:26 |
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推理小説よりもオカルトの方に振れているお話です。
作者が書いているように、初めは全然評判にならなかったのに、なぜか当たりだして現在は10作を超えるシリーズとなっています。 そんなに面白いかというと私の好みとしてはそこまではと思うのですが、読んでいくと大変読みやすく(最初は決して読みやすくはないのです)最後まですらすら読めてしまいました。 不思議な小説ではあります。 このシリーズにのめり込むことはないように思いますが、次のお話も読んでみたいといった気になりました。 |
No.720 | 6点 | 探偵少女アリサの事件簿 今回は泣かずにやってます- 東川篤哉 | 2020/10/31 07:19 |
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東川氏のユーモアミステリーは最近キャラクターをどんどん増やしているようです。
探偵少女アリサもその一人。 氏は純粋推理としては問題があるが、そこをユーモア小説だからこんなもんで許してね、といったお話なのでかえって大胆なトリックが出てきたりして毎回楽しませてくれます。 今回もその系統のお話ですが、ちょっとユーモア度が足りないかな。 この子を主人公とすればまだ何作も書けそう。次回を期待しましょう。 |
No.719 | 5点 | 田舎の刑事の好敵手- 滝田務雄 | 2020/10/31 07:12 |
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このシリーズは初めて読みました。
脱力系ミステリーとのことです。 初めのほうはまさに脱力が行き届き、ばかばかしくてこんなことで大丈夫かと心配になるほどでしたが、読んでいくにしたがって登場人物のバカらしさにも慣れてきて次第に普通に読めてくるから不思議です。 途中からは普通のミステリーとなり、黒川鈴木巡査部長の鮮やかな?推理が展開されます。 ちょっと読むには良いかもしれません。 お話になれたので、違う作品も読んでみようかな。 |
No.718 | 6点 | 閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室- 木元哉多 | 2020/10/11 13:05 |
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このシリーズ初めて読みました。どれが第1作かわからなかったので、適当に買ったらシリーズ2番目でした。
どこから読んでもよいとのことです。実際一話完結の話のようなので一作目を読んでいなくても問題ありませんでした。 なかなか奇抜な設定。 でもとても読みやすく、漫画チックでもあるが、結構本格でもある。 作者はかなり才能がありそうな感じがしました。 私も作者のがちがち本格も読んでみたい。 |
No.717 | 7点 | ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ扉子と空白の時- 三上延 | 2020/09/20 07:57 |
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ビブリア古書堂の事件手帖シリーズも扉子が生まれて新しいシリーズとなったとされていますが、このお話には扉子はほとんど関係ないただのスパイス程度の扱いです。
珍しく3つの中編が一つのお話となっており、内容は栞子と結婚した夫が中心で、以前のシリーズと変わりがありません。単に主人公が年を重ねた時のお話です。 今回は私もよく知っている横溝正史にちなんだお話なので、より親密な感じがしました。 話としてよくできており、面白かった。 ビブリア古書堂の事件手帖シリーズが今でも人気があるので、もう一度書いてみましたというより、書き残したテーマがあったのでしっかり書きましたといった感じです。 |