皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
makomakoさん |
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平均点: 6.17点 | 書評数: 891件 |
No.251 | 6点 | 生霊の如き重るもの- 三津田信三 | 2012/01/29 21:27 |
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刀城言耶シリーズは長編が向いているように思います。あの特異な雰囲気が短編ではもうひとつ味わえない。阿武隈川のばかばかしいほどの傍若無人も短編だと余計に鼻につく。
全体としてなずまず粒ぞろいといえる内容でしたが、いずれも一応すっきりした解決が提示された後でわざと(と思いますが)割り切れないお話が追加されています。作者の好みなのでしょうが私はなくても良いような気もしました。 作品としては「生霊」が一番良かった。「天魔」はあまり好みでない上にどうもどこかで読んだ気がすると思ったら、「凶鳥」のおまけのようについていた作品でした。 |
No.250 | 7点 | 奇面館の殺人- 綾辻行人 | 2012/01/21 19:33 |
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待ちに待った綾辻氏の館シリーズの最新版。わけのわからない招待状や館では全員が仮面をかぶらないといけないなんてーーー。
よ!でました本格推理小説!!。といった始まりにこころが浮き立つ。 物語はミステリーマニアが気づきそうな事柄については丁寧に否定しながら展開する。実に創の少ない推理小説で、作者は時間をかけ細心の注意を払って書いたのでしょう。きちんとした本格物なので当然あちこちに伏線も張ってありそうと思って読むこととなる。 ただ仮面をかぶっているので人物が実に分かり難く説明はくどいのですらすらとはとても読めなかった。 私は鹿谷の推理がそんなに弱いとは思わなかった。 綾辻氏はもうこんな小説は書かないと思いつつあったのをきっちりと裏切ってくれた。 次作が楽しみ。なるべく早めに書いてほしいものです。 |
No.249 | 7点 | 花園の迷宮- 山崎洋子 | 2012/01/21 19:07 |
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奇抜なトリックがあるわけではないが、謎はそれなりに面白い。昭和初期の遊郭ってこんなんだったのかと納得しながら読んだ。そのままだと滅入ってしまいそうな暗い雰囲気だが、主人公の明るい性格が小説を照らして最後まですらすらと読めた。
乱歩賞のなかでも好きなほうの小説です。 |
No.248 | 7点 | ピース- 樋口有介 | 2012/01/07 20:43 |
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無口な店員とマスター、そして食事のレシピなどなんだか北森鴻の世界みたいだなと思っていたら、途中からしっかりミステリーとなる。
連続ばらばら殺人が起きるが、被害者にまったく関連性がなく登場するおじん刑事もぜんぜんさえないなあと思っていたら、警察とは無縁の人物から急遽犯人が指摘される。なるほどこういったこともありかな、でもまだ大分ページが残っているのに解決というもの変だなあと思っていると、話はさらにひねくれて意外な結論(だいたい私はこういった展開は推定できていません。だから面白く読んでもいるのですが)となる。ただ最後にいたってもマスターの八田やバーテンダーの梢路にはまだ謎の影が残る。 なかなか楽しめました。 |
No.247 | 7点 | 繭の密室- 今邑彩 | 2012/01/03 17:55 |
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今邑彩の本格物としてはちょっとさえないかな。メイントリックはちょっと本格物が好きなものにとってはどこかで読んだぞといったもの。もちろん作者はそれだけではダメなことを承知しているのでずいぶんひねってはある。
犯人は以外だった。女性は恐ろしいねえ。 |
No.246 | 3点 | 九月が永遠に続けば- 沼田まほかる | 2011/12/31 15:38 |
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第5回ホラーサスペンス賞受賞作で国内ミステリー部門第1位という帯がついて本屋に山済みされていたので、ミーハー心を刺激されてどんなものかと読んでみたが、残念ながらはずれ。
文章はまずまずだが話の内容が全く好みではない。登場人物はある面で普通の人だが一皮向くとどろどろのごてごて。妙に気の強くそして切れやすい女が主人公で、不自然と思えるほど親切で鈍感なおとこが助けてくれる。こんな話は女性にしか書けないだろう。それにしても女性から見た世界はこんな風になっているのかと思うとちょっと驚く。 全体として救いようのない話がねちねちと続きうんざりしたといった印象でした。 私の感性が古いのかもしれませんが、これが本当にベストセラーになっているのですかねえ。 |
No.245 | 7点 | 水車館の殺人- 綾辻行人 | 2011/12/28 21:46 |
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これは本格物の備えているロジックと幻想のぎりぎりの妥協点であることを良く示している小説だと思う。そういった意味では本格推理小説の見本のような小説。若き作者ががちがちの本格物を書こうとした意図がうかがえて読んでいてとても好ましい。
1年前と現在が交互に語られそれが複雑に絡み合って最後に意外な結果となっていくストーリーは、本格物として読む分には実に興味深い。 でもよく考えると、いくら衝撃的な出来事といっても1年前のことを些細な出来事まで正確な時間をみんなが記憶していることなんて本当は絶対無理なんだ。 好みとしては第1作の十字館のほうが好きなのだがこれも悪くはない。 |
No.244 | 9点 | 十角館の殺人- 綾辻行人 | 2011/12/24 14:30 |
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この作品は昔発表された直後に読み、私に本格物に興味を持たせてくれた作品でした。綾辻氏は当時の新本格作家といわれた作者の中で抜群に文章が良く、内容も実に凝っておりいっぺんにファンとなってしまいました。
でも当時の採点なら多分8点ぐらい。時を経てずいぶん本格物を呼んだ後で再読すると、その雰囲気はさらに好ましく、トリックもほとんど忘れていたので(この点私は再読に向いているのす。今後年のせいでさらに覚えが悪くなると思われるので今もっている本でひょっとしたら生涯楽しめるかも)本当に楽しめた。減点は最後のところが理解し難いところぐらい。 本格物の多くの名作が発売されておらず、本屋で手に入らないのはまことに残念だが、館シリーズは文庫本が再販され手に入れやすい。それだけ人気が有るということなのでしょう。 |
No.243 | 4点 | 人形館の殺人- 綾辻行人 | 2011/12/17 14:53 |
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綾辻の館シリーズの異色作ではあるが、好みではない。
こういった設定ならある意味どんなことでもありとなるのではないでしょうか。初めて読んだときには大分がっかりしたことのみ覚えていたが、作者が思い入れのある作品としてあげているのでもう一度読んでみた。 やっぱり私にはあいませんでした。 |
No.242 | 10点 | 時計館の殺人- 綾辻行人 | 2011/12/12 21:42 |
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綾辻の館シリーズ私にとって推理小説にのめり込見始めた頃に読んで十角館以来館シリーズはすべてリアルタイムで読んできた。20年ぶりに読み直してみたが、雰囲気といい堅固で独創的なトリックといい、ほんとうにすばらしい。
思えばこの頃の作者は人形館、霧越邸と年に1作ぐらいの割ではあったがきわめて質の高い本格推理小説を発表しており、まさに絶頂期であった。綾辻の新作が出ると聞いたら書店へ飛んでいったものだ。 このところの作品は当時の勢いが低下気味なのはまことに残念なのだが、思えばこんな作品を何作も書くこと自体が無理なのかもしれない。 |
No.241 | 5点 | 弁護側の証人- 小泉喜美子 | 2011/12/06 20:45 |
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これは評価が分かれる作品だと思います。まず文章。翻訳家なのだからなのでしょうか、外国作品の翻訳文そのままの文体で味も素っ気もない。こんな文が嫌いだから外国小説は読みたくないという人も多いと思います(私もどちらかというとそっちのほう)。こういった方にはこの作品は全くだめでしょう。
さらにミステリーの面白さが「だまし」にあると感じている人にはこんな面白い小説はないと感じそうですが、そうでなければただだまされただけでばからしいかぎりなのでしょう。 確かにこの小説にはきれいにだまされました。まあ許せる程度なので酷評はしませんが、だますだけの小説なんてあんまり好みではありませんな。 |
No.240 | 8点 | 空飛ぶタイヤ- 池井戸潤 | 2011/12/03 09:20 |
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かなりの長編だが読み始めれば長さは全く気にならずにぐいぐい引き込んでいく迫力のある作品でした。登場人物が結構多いが巧みに描かれており作者の筆力を感じる。ストーリーは突発事故から始まり次々と強烈な試練が立ちはだかりまさにジェットコースターミステリーといった趣のなかに、主人公赤松の強くて弱くて人情的で実に泥臭い生き様がよく描かれている。若造の金髪門田もいいじゃないか。
物語の結末は簡単に予測できてしうある意味で単純なお話なのだが、ぴったりと思ったとうりの結末に共感し感動する。こんな話が好きなんです。 ただPTAの話は余分かなあ。 それにしても悪役の大企業のモデルはすぐに見当がついてしまう。読んでいる間は実話を基にしたお話と思っていたが(以前自分が勤めていた会社関連?)、解説を読むと完全なフィクションなのだそうだ。ーー自動車、重工関係の人はどんな感じがするのかなあ。 |
No.239 | 7点 | ビブリア古書堂の事件手帖2- 三上延 | 2011/11/27 10:05 |
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本書は売れ行きがよいようでamazonでは品切れ。こうなると読みたいもので近くの大型書店へ行ったら正面になんと山積みとなっていたので早速買っ読んでみた。
内容は相変わらず感じのよいストーリーですらすらと読める。前回と同じように大胆なトリックや残酷シーン、殺人などはない。でも雰囲気がよくだんだんにこのシリーズが好きになりそうな気がする。 いったいシリーズ物は2作目の出来がかぎのようで、前作よりつまらないとまず3作目はもっとダメになるようです。 2作目はたいてい1作目で分からなかった主人公の秘密などがちょっとづつ明らかになるものだが(本作も然り)、このことにより主人公たちに愛着が増すのか、この秘密がさらに知りたくなるか、あたりが分かれ目かもしれない。 栞子さんとても魅力的、今回はお母さんの秘密も出てきてなかなか興味深い。次が楽しみとなってきた。 |
No.238 | 8点 | ビブリア古書堂の事件手帖- 三上延 | 2011/11/24 07:50 |
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こんな雰囲気の小説好きです。奇抜なトリックや連続殺人などはまったくなし。きわめて不器用な美人の女性が一冊の古書から隠されていた過去を推理していく。4つの古書にかかわる話が有機的に絡み合ってなかなか面白い。繊細な栞子さんと普通の大男大輔の掛け合いもほほえましい。 |
No.237 | 6点 | 咸陽の闇- 丸山天寿 | 2011/11/23 15:36 |
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シリーズ第3弾。前作がぱっとしなかったが本作品は第2弾よりは楽しめた。このシリーズは中国歴史とミステリー,SFの合体のような小説で、解明不可能と思われる現象や事件が呈示され、全く混迷にいたってしまう。そこで無心が登場して快刀乱麻を断つがごとく解決する。無心の謎解きは一見理論的のようだがSF的要素を交えた相当無理な話なのだが、とにかくそのとうりになってしまうのだ。
本格物のように謎を解く鍵が述べられているようにもみえるがこの程度の鍵で結論を推理することは全く無理でしょう。前作よりは趙軍の戦いや兵馬俑の謎など楽しませる要素が多かった分楽しめたと思います。中国古代史が好きならまあ楽しめそうです。 この先話は続きそうですが、この先続編が出てきたら読もうと思うかはちょっとね。項羽でも出てきたら読んでしまいそう。 |
No.236 | 4点 | 琅邪の虎- 丸山天寿 | 2011/11/09 21:06 |
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前作よりもだいぶ落ちる。「鬼」ではシチュエーションも登場人物も新鮮でトリックもまずまずだったのだが、今回はどうもぱっとしない。読んでいてつまらないのだ。それなりに謎もあり、登場人物も二度目なので愛着が湧きそうなのだが、なんだか話がごちゃごちゃとしていて最後の謎解きではまあご苦労様でしたといった感じとなってしまった。面白くなる要素は沢山あると思うのだが。 |
No.235 | 7点 | 赤い館の秘密- A・A・ミルン | 2011/11/06 13:56 |
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すごいトリックやおどろおどろしい雰囲気もなく、いたって平凡といえば平凡。連続殺人などは起きず、一人の殺人事件を解決していく物語。でも翻訳物独特の変な人物ばかり登場ということはなく、むしろ登場人物の巧妙な会話や雰囲気を楽しむといった嗜好となっていることは私にとっては好ましいことでした。
ずいぶん昔に読んだときはやっぱり変なやつが登場する違和感のある小説といった感じを受けたことを思い出しますが、最近は日本のミステリーでも変な人間がやたら出るし、文体も翻訳文のようなものも結構あるので慣れてきたのかもしれません。 |
No.234 | 6点 | てとろどときしん- 黒川博行 | 2011/10/26 21:13 |
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黒川氏の小説ははじめて読みました。くろマメのコンビは多少の違和感があったが慣れてくるとそれなりに面白い。あまり派手なトリックなどはなく、もっぱら現実的な警察小説集というべき内容だが、そこにユーモアや登場人物の個性がうまく描かれているので、退屈せずに読める。もうちょっと刺激的なお話しだとなお良いのだが。 |
No.233 | 7点 | 琅邪の鬼- 丸山天寿 | 2011/10/22 07:54 |
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ミステリー仕立ての歴史ファンタジーといったお話は個人的に好きなので、この話も楽しく読んだ。作者が自分でほら吹きおやじといっているのが、なるほど歴史とうそをうまく混ぜて本当らしい話に出来上がっている。大掛かりな謎と不可能と思われる謎が沢山ちりばめられ、これを合理的に解決するのは大変そう。ひょっとしたら「怪しい術を使ってしまいました、おしまい」。とならないか心配でしたが、ちゃんとした(ような)結論が得られすっきりしました。本当はところどころうそをつかれた感じはするのですが、まあよいでしょう。
ちょっと歴史好きなら探偵役の無心は誰であるかは見当がついてしまうが、これもご愛嬌。次の作品が読んでみたい。 |
No.232 | 5点 | 真夜中の探偵- 有栖川有栖 | 2011/10/17 19:09 |
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どうもこのシリーズは余り面白くない。長いお話になるようなのでこれだけでは解決していないところが沢山あるが、これから読み進んでいこうという気になりにくいなあ。有栖川氏の小説は登場人物とトリックそれにかすかに臭う文学性に惹かれるのだが、本作品はトリックがいただけない。
以下ネタバレ気味。 こんな大きな木箱で水も漏れないようなものを作れるなら犯人は間違いなく木材をあつかっている腕利きの職人でしょう。他人に依頼はしていないようだから自分で作ったんですよ。それに相当する人物は残念ながら登場していない。ああ無理だ。 さらにこれがとても丈夫なんだなあ。水が入っていたらすごく重いよ。このトリック絶対無理。 作者が殻を破って大きく広がりたいのは分かるのだが、残念ながら成功しているとは言いがたい。ごひいきの作家さんなのでちょっと辛口となったかもしれないけど、こういった作品を書く時間があるのならぜひ学生アリスシリーズの続きを書いてほしいのだが。 |