皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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makomakoさん |
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平均点: 6.18点 | 書評数: 861件 |
No.28 | 7点 | 透明な螺旋- 東野圭吾 | 2024/10/14 07:56 |
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このサイトでは評価が低いようですが、私は気に入っています。
何を小説に求めるかによって当然評価は異なるのでしょう。 この小説に奇想天外な推理と本格推理にありがちなエキセントリックな探偵を期待すればこの小説の評価が下がるのでしょう。 作者はもともと本格推理でありがちな、ロジックだがとんでもなく、そして人間の情など全く考えたこともないといったお話から少し異なることがしばしばあり、そこが私としては好きなところ。 最近はちょっとこういった要素が薄くなり、若干冷たく薄利多売的小説が増えたような感じがしていましたが、これは推理とともに人間の情を訴えるところが強く出ています。 もちろん推理小説や実際の捜査なら問題となるところが大いにあるのですが、私はこういったところが好きなので、大いに感動しました。 |
No.27 | 8点 | 白鳥とコウモリ- 東野圭吾 | 2024/04/14 08:41 |
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まったく悪意のない評判の良い人が殺されて、それを自供した犯人と思われる人も好い人で、といった松本清張の砂の器を思わせるようなお話で始まっていくのですが、それにしてもずいぶん残りのページが多い。
東野氏の作品ですから、当然ひとひねりふたひねりしてあると思って読み続けていくと興味深い事実が次々と出てくる。 ところが司法関係者たちは裁判に勝つことが最優先で、自供があるのだからとほとんど受け付けない。そのうち犯人とされた男の息子と被害者の娘が親しくなってきて---。 こんな話は下手に描いたら全くの絵空事となりそうですが、作者は巧みに描くので、共感できてしまいます。 このお話の中で、法曹関係者には裁判で勝つことが一番で、裁判に勝つことの障害となるなら実際に弁護を依頼した人の都合などは後回しといった考えがあることがよくわかります。きっと作者がそういった経験をしたまたはそういった話を聞いたことがあるのでしょう。 それにしても久しぶりに東野氏の素晴らしい小説を読ませていただきました。 |
No.26 | 7点 | ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人- 東野圭吾 | 2024/01/02 17:38 |
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結構な長編だが、スラスラと読みやすい。
さすが東野圭吾。話のツボはきちんと心得ておられます。 こういった語り口のうまさがあるので、ちょっとしたお話でもそれなりの小説に仕上げてしえるのでしょう。 推理小説は常に新しい発想やトリックが求められるのに、これほど多くの作品を書き続けられること自体がすごい。 更にこの小説では新しい探偵が登場。 マジシャンが探偵というのはそれほど珍しいものではないと思いますが、性格がかなりユニーク。 頭は切れるが、ケチで嘘つきで、目的のためなら手段は選ばない。こう書くとむしろ悪役みたいですが、これがいちおう探偵でそれなりに良いところもある。 次作も期待できそうです。 |
No.25 | 7点 | 白銀ジャック- 東野圭吾 | 2023/11/10 18:53 |
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読者をひきつける物語の要素が過不足なく述べられています。
魅力的な謎、サスペンス、登場人物などこうすれば面白いよと言った要素がきっちり。 作者は素晴らしい才能の持ち主で、こういったお話を簡単に作ってしまう。 多少下手でも精一杯書きましたといった雰囲気は皆無で、スラスラと格好よく物語は述べられます。 従ってどうしても軽い感じは否めません。 こんな雰囲気が嫌いな方は評価が下がってしまうかもしれませんが、これ程多作で、しかも一定のレベルの作品を作るのは信じられないほどです。 ただ私としてはこういった誘拐もの(これは誘拐ではないが似た雰囲気)は本質的に好みではありません。うまく書けば書くほど苛立たしい。 でもまあ楽しんで読めたのですから、凄いものです。 |
No.24 | 7点 | クスノキの番人- 東野圭吾 | 2023/05/21 09:08 |
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東野氏が時々発表する推理小説ではない作品の一つです。
相変わらず上手な語り口なのでスラスラと読めます。 内容は結構地味風なのですが、興味深いところもあり、私は好きです。 読後感もよい。 最近の作品は読ませ方がうまいだけの感じがしないでもなかったのですが、これは氏の優しさが伝わってくる良い作品と思います。 |
No.23 | 8点 | 希望の糸- 東野圭吾 | 2022/09/03 07:11 |
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久しぶりに感動した東野氏の作品です。
氏は本来優しさと悲しみを本格推理小説としての形態で実に巧みに表現できる方と思っていますが、最近あまりにも多作で内容が薄まっているのが気になっていました。とにかく新作を発表すれば売れるのでどんどん書かざるを得ないのでしょうかね。作者の若い頃の作品は本当に素晴らしかった。リアルタイムで読んできたものとしては最近の傾向はちょっと心配な感じもしていました。 この作品は作者が初めから書き続けている加賀シリーズです。トリックとしてはさほどのことはないのかもしれませんので、がちがちトリック好きの方にはあまり評価されないかもしれません。 しかし人間のせつない望み、どうしようもないさだめや運の悪さ、それらから何とかもがいて脱出せんとする姿などを美しく描いている素敵な小説です。 |
No.22 | 7点 | 沈黙のパレード- 東野圭吾 | 2022/03/13 11:59 |
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初期の東野氏の作品はどれも本当に素晴らしかったのですが、このところ新作はでるが何となく薄利多売で、語り口のうまさで持たせているといった感じがしていました。
本作品も読み始めるとすぐに犯人がわかりこれを語りのうまさでカバーするものかなあとやや心配気味でしたが、見事に良いほうへ裏切られました。 凝ったトリックとそれだけで終わらない物語の真相。 なかなかよかった。 |
No.21 | 6点 | 聖女の救済- 東野圭吾 | 2021/02/27 21:47 |
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トリックが好きで、といった方には評価が高いのでしょう。
なんせ登場人物は少なく、ほとんど初めから犯人がわかっているのにどうやってが、なかなか分からない。作者は一つのトリックだけで長編を書いてしまったのです。 結果がわかると、まあこんなことはほとんど考えにくいのですが、なるほどと思ってしまう。ある意味お話としては全く単純。それを最後まで読ませてしまうのはさすがです。 |
No.20 | 7点 | 素敵な日本人- 東野圭吾 | 2020/05/03 08:32 |
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短編編集ですが、それぞれのお話が全く別のもので何のつながりもありません。
本格物から、SFまであります。 こういった内容ですと多くは出来不出来が気になることが多いのですが、さすが作者は語り口がうまくどの作品もスラスラと読めます。 逆に言えば、凄い、といったものもあまりないのですが、平均点高く粒ぞろいとも言えます。 |
No.19 | 6点 | ラプラスの魔女- 東野圭吾 | 2019/12/27 21:49 |
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これはSFというべき内容なのだが、作者の巧みな語り口で読んでいて現実に起こってしまうような感覚になってしまいました。そのあたりはさすがに東野氏の小説のうまさだと思います。
ただ読みやすく誰もがある程度楽しめると思いますが、特有の冷たい感覚があることは否めません。 多彩な作者は多くの作品を次々と発表し、ほとんどがベストセラーとなっています。確かにどの作品もまとまってはいますが、円熟というより悪い言い方をすれば薄利多売なに感じます。 初期の作品からファンでずっと読んできたものにとっては、じっくり時間をかけて中身の濃い長編を書いてほしいなあ。 |
No.18 | 4点 | 恋のゴンドラ- 東野圭吾 | 2019/10/20 09:18 |
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私が歳をとったのか作者が無理して若い世代を描いたのか、とにかくいまいちでした。
こんな薄利多売のような小説を書いているとそのうちいけなくなりそうな気がするのですが、意外にこのサイトの評価は高いのですね。 多分私の感覚がずれているのでしょう。 作者は名手なので読むのはすらすらと読めましたが、全然心に響いてこないなあ。 |
No.17 | 5点 | 危険なビーナス- 東野圭吾 | 2019/09/08 21:04 |
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例によって東野氏の作品はとても読みやすい。
本作は比較的長い長編ではありますが、長さをあまり感じさせないところはさすがです。 ところどころに伏線も張って会ってまあ不足はないように見えますが、内容は長さの割にちょっと薄い。恋も謎もスリリングな絶品ミステリーと帯には書いてありますが、色々盛り込んで読者にサービスしようとした意思が透けて見えるような感じがして、もう一つでした。 売れっ子の作者は、薄利多売でもある程度の内容を作って読ませるといったテクニックがあるので読んで損はないのです。 私としては、作者にはじっくり時間を取ってがっちりした作品を書いていただきたいのですが。 |
No.16 | 7点 | 祈りの幕が下りる時- 東野圭吾 | 2017/01/04 18:41 |
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面白いというより相当に悲しい物語でした。東野氏はこれ程多作なのによくもこんなストーリーをかけるものだと改めて感心しました。
一見無関係な話が最後にはきちんと決着してくるところは見事なものです。ただとても暗い話で、やりきれないなあ。 加賀警部補もだんだん偏屈で暗くなってきている。はじめは相当好きなキャラクターだったけど、こういった話を見せつけられるとちょっとつらい。 最後の決着がどうなったかははっきり書いていないけど、推理小説としては完結しているのでしょう。 |
No.15 | 6点 | 麒麟の翼- 東野圭吾 | 2016/11/16 21:47 |
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作者は話の始め方がとても上手な作家と思っていますが、このお話はそれほどでもない。初めのほうは加害者とされている人物や彼を愛する女性の悲惨な状態、そして被害者の家族がいじめにあったりしてちょっとやりきれない。
次第に加賀の地道な捜査から、意外な結末が浮かび上がってくる。最後には何となくよかったといった終わり方なのだが、あまりすっきりしないのです。 この結末ではとても重く取り返しのつかないことが残ったままで、全然すっきりとはしない。まあそこが物語の重さともいえるのですが。 それにしても被害者が突然刺されたときに、瀕死の重傷を負いながら急に思いついて必死に歩いて日本橋まで行くというのがちょっと無理がある気もします。 |
No.14 | 6点 | 新参者- 東野圭吾 | 2016/10/30 15:23 |
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加賀恭一郎は東野氏の作品の中でも好きなキャラクターです。今回も彼らしいというか、彼らし過ぎる展開でした。
物語の初めは淡々とした感じで、でも作者の巧みな導入でとても面白く読めます。 一章ごとが連作風となっていて、いずれもそれなりの解決を見る。なかなか人情もあって興味深い。どうしてこれが全体の話となるのか心配になるのだが、そこは東野氏で実に巧みに最終結末へと導かれる。 なるほどね。よくできたお話。でも加賀がこんななんでもないことばかりやっていたのが、全部ストライクというのもできすぎな感じ。勿論そうでないと話としてまとまりがつかないのでありますが。 ということで一つずつの話はかなり良いのですが、全体としてみるとなんだかこじんまりとまとまってしまった感じがして、私としてはやや評価が低くなりました。 |
No.13 | 7点 | 夢幻花- 東野圭吾 | 2016/10/16 11:30 |
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この小説は推理小説として謎の殺人事件、不可解な人物の登場、一見つながりのないように見えるお話、ちょっとしたラブストーリー、最終的に矛盾がない解決と爽やかな読後感がある、など名作となりうる要素はきちんと入っている。さらに作者の巧みな筆さばきですらすらと読んでしまえる。
素晴らしい作品とも思えるのだが、その割に感動はやや少ない。作者の物語の語り口が巧みすぎてもいけないのだろうか。いかにもお話がうまくできているが、すらすらと書かれたような感じ(そんなことはないのかもしれないが)がして、ちょっと重みが少ないのでしょうか。 近年の作者は相変わらず多作でしかも一定の水準を保っているのは立派だと思いますが、少しじっくりと書いたものが読みたいというのは読者のわがままかな。 |
No.12 | 8点 | ナミヤ雑貨店の奇蹟- 東野圭吾 | 2016/09/20 19:39 |
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東野氏はやはりとても才能のある物書きさんなのっすが、最近相変わらずの多作でそれなりに売れる作品を書いてはいるのですが、何となくちょっと冷たくて薄味な感じが否めないと思っていました。
なんせ小説を書くテクニックがあるので、どんな話を書いても一応面白く読めてしまうのです。これはこれですごいと思いますが、初期の作品のような情熱や優しさが少なくなっていると感じていました。読めば面白いが初期の作品のような情熱が不足していると思ってしまうのです。 この作品も何となく買ってしまったのですが、これは近年になく面白い。 氏の優しさが伝わってくるようです。一気読みしてしまいました。 |
No.11 | 6点 | マスカレード・イブ- 東野圭吾 | 2014/10/25 08:03 |
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マスカレードホテルでは連作風のエピソードを詰め込み過ぎて肝心のメインストーリーが薄められてしまったのの反省?からか、今回は連作でしかも分量も数なく、サクサク読めます。
それぞれの話も語り上手で、それなりに興味をひき一気に読んでしまいました。 だからとても感動したとかすごいといったことはありませんが、読んで不快というものでもなく一般的に言えばまあ良かったということでしょう。 しかし私としては作者はもっと才能ある方と思いますので、こういった薄い作品を多量に書くのはそろそろやめて、じっくりと重厚な作品を書いてほしいのですが。 |
No.10 | 6点 | マスカレード・ホテル- 東野圭吾 | 2014/10/21 19:47 |
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さすが東野氏は語りがうまい。一つ一つのエピソードがなかなか興味を引くのです。でも味が薄い。どうなることかと思えるようなシチュエーションを設定してくれるので、読むには退屈しないのですが、最終的にはえらくうまくいってめでたしめでたし。まあそれでも良いのですが、話を長引かせるために巧みに小話を追加したようで。
売れっ子作家は色々と大変なのでしょうが、もう少し腰を据えて作品の質を高めてほしい。長編小説なのだが、連作集のような感じです。そのためメインの話がずい分薄められてしまい、心に響かない。 それなりに面白くかけているのは才能でしょうが、作者が持っている冷たさが透けて見えてしまいます。初期の作品のような一途さを求めるのはもう無理なのでしょうか。 |
No.9 | 6点 | 疾風ロンド- 東野圭吾 | 2013/12/15 14:27 |
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東野圭吾氏は話題作を次々にかけるということだけでも本当にすごい才能だと思いますが、やはり多作すぎると内容は薄いものが出てきてしまうのは避けられないのでしょうか。
本作品は細菌学兵器開発についてのお話なのですが、以前の氏の作品であったらもっと凝った内容となったのではと思われます。 本格推理度はきわめて薄く、冒険物というほどでもありません。話の進行は二転三転しますが、どこか行き当たりばったりでご都合主義なのです。 それでもさすがに物語を語る手腕があるのでなんとか最後まで読ませてしまいますが、帯にあるようなぶっとびとは程遠いのは残念です。 まあ暇つぶし程度なら問題ない作品ですが。 |