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[ 本格/新本格 ]
ネフェルティティの微笑
栗本薫 出版月: 1981年12月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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中央公論社
1981年12月

中央公論社
1983年08月

角川書店
1986年03月

No.1 6点 おっさん 2011/01/18 17:30
栗本薫がエネルギッシュに活躍していた、昭和56年(1981)――じつにこの年の著作、20冊!――のノン・シリーズ長篇です。

失恋の痛手を忘れるべく、未知の国エジプトへ渡った大学生・森岡秋生は、古代の王妃ネフェルティティを思わせる容姿の日本人女性・小笠原那智と出会う。
エジプト人と結婚しこの地で暮らす、那智の謎めいた魅力に惹かれていく秋生だったが、見学のため二人で訪れたピラミッドの中で、停電騒ぎの最中、那智は正体不明の男に襲われ、その犯人ともども不可解な消失をとげる。彼女は殺されたのか?
日本人留学生・佐伯の助けを借りて、秋生は謎の解明に奔走するが・・・

ピラミッドという密室、懐中電灯に浮かび上がる惨劇――道具立ては充分です。しかし、作者の自負(秋生いわく「すべて、理由なく、ミステリー・マニアのひねくりまわす無意味なパズルや、複雑な飾りものとしてだけつくりあげられた謎であるとは、ぼくには思えなかった」)とは裏腹に、不可能犯罪を演出する理由づけが弱いですし、血痕の問題等、齟齬も目につきます。
なにより犯行計画全体が、エジプトという国の(あくまで栗本ワールドの、異界としてのエジプトの)特殊性に立脚した、きわめて大味なものであるわけで――実際のエジプトにくわしい人がこのお話を読んだら、そのアバウトなエジプト観に腹を立てるんじゃないかな?
そういうわけで、作者の別な狙いがハウダニットとは別な部分のサプライズにある(栗本薫がクリスティーを好んでいたことがよくわかる)としても、これをミステリとして買うわけにはいきません。
けれども――例によって(デビューから数年の、この頃の栗本薫の)ドラマづくりと、それを生かす文章テクは、ホント、巧いんだよなあ。
クライマックスの祭りの場面の鮮やかさ。そのリズムとテンポ。喧騒と静寂。自由を求め飛び立った鳥と、あとに残された者の対比。
そしてエピローグ――余韻たっぷりに決めてくれます。作者のどや顔が見えるようですがw 心に残ります、ハイ。


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不明
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