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[ SF/ファンタジー ] 魔都 恐怖仮面之巻 |
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栗本薫 | 出版月: 1989年07月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
講談社 1989年07月 |
講談社 1992年08月 |
No.1 | 5点 | おっさん | 2011/01/07 14:16 |
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久生十蘭からの、“魔都”つながり。
講談社の<創業八十周年記念推理特別書き下ろし>の一冊として、平成1年(1989)の6月に刊行された、ノン・シリーズ長編です。 じつは同年に作者が制作した(上演は8月)、同題のミュージカルの宣伝のために書き下ろしたw 一篇なのですが。 現実世界に絶望した、孤独な作家・武智小五郎が、深い霧の中をさまよい迷い込んだ、彼のインナー・スペース――それは明治四十七年(現実の明治は四十五年で終わり)の帝都。 その世界での彼は、数々の難事件を解決した名探偵だった。 そしていま、すべてが彼好みにデフォルメされた異世界で、友人である警視総監の依頼を受けた武智は、次々に街娼を惨殺していく猟奇殺人犯・恐怖仮面の探求にあたることになるのだが・・・ 推理の要素は皆無。武智は直感的に恐怖仮面のアタリをつけ、そこに論理の介在する余地はありません。 作者が書きたかったのは、結局、レトロな舞台で展開する、探偵と○○の恋なのですね。乱歩原作、三島由紀夫脚色の名篇『黒蜥蜴』、あのセンです。 しかし、いちおうは○人○役ないし○重○格という趣向を持ち込んでいるのですから、そこにもう少し説得力を持たせて欲しかった。その努力を放棄している点で、ミステリとしては失格。 いっぽうで――異世界への憧憬、そこでの冒険、そして現実へ帰還してからも消えぬ“望郷”の念を描いたファンタジーとしては、胸打たれるものがあります(採点はそちらのファクターによる)。 作者の生地がむき出しになって、読者に迫って来る感があり、正直、そこに描きだされた安っぽい明治のイメージが素晴らしい(自分も行ってみたい)とは思えないのですが、この頃の栗本薫には(ギリギリまだ)、そういう読者をもねじ伏せるだけの文章の工夫と、パワーがありました。 |