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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
過去からの狙撃者
ジェフ・ソーンダーズ
マイケル・バー=ゾウハー 出版月: 1978年01月 平均: 6.50点 書評数: 2件

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早川書房
1978年01月

No.2 6点 mini 2014/10/10 09:56
* 台風クル―――(°∀°)――― !!

本日10日に早川文庫からマイケル・バー=ゾウハー「モサド・ファイル」が刊行される、モサドとはイスラエル版CIAみたいな組織で、どうやら某ジャーナリストとの共著のノンフィクションらしい
紹介文を見てもイスラエルからの一方的視点に立った取材リポートな感じなのでコメントは差し控えたい、その手の知識も無いしね

イスラエル作家のバー=ゾウハーはパリ大学で学び小説の原文もフランス語である
つまり邦訳された多くは英語版からの二重翻訳で、道理で訳文があっさりして平易な文章だと思った
読み易いのは良いのだが、本来の仏語の原文はもっと凝った文体なのかも知れないのが気になる、でもジャーナリスティックな経歴を考えると訳文通りの割と素っ気無い文章なのかも

私はバー=ゾウハーに関してはこれまで食わず嫌いだった、今人気のディーヴァーのようなジェットコースター式スリラーがあまり好みで無いので、何となくそんな感じの作家との先入観を持っていたのだ
デビュー作「過去からの狙撃者」を読んでみて意外にイメージと違い地味な作風だと思った、それも私好みの地道な捜査小説的趣が有る
よく終盤のどんでん返しばかりが喧伝されるバー=ゾウハーだが、たしかに綿密に計算された二重のどんでん返しは有るが、その真相の暴露は案外とケレン味を排した地味なシチュエーションで行なわれる
終盤に関係者一堂を集めて謎解きが行なわれるような展開が嫌いな私としてはなかなか好ましい
今回初めて読んでみたバー=ゾウハーだが悪くない、この「過去からの狙撃者」は謎解き興味が強く本格派しか読まないような読者にも楽しめる作品で、作者後続の作品群と比べると異色作なのかも知れないが、今後も読んでみたい作家である

No.1 7点 Tetchy 2013/07/07 07:02
マイケル・バー=ゾウハーのデビュー作。舞台は事件の起きたアメリカからドイツ、フランス、イスラエル、ポーランドと実に目まぐるしく変わる。たった280ページの物語にこれだけの舞台転換が込められており、しかも物語は重層的だ。スパイ小説隆盛時期の小説とはこれだ!と云わんばかりの充実ぶりだ。
この重層的な物語こそマイケル・バー=ゾウハーの職人技。デビュー作からこんな物語を見せてくれるとは恐るべし。

そして主人公ソーンダーズがCIA工作員だった頃に親友ともいうべき有能な工作員を自分の失敗から亡くしてしまうという苦い過去も織り込まれている。そこにはジェイムズ・ボンドのような任務先で知り合った女性と懇ろになるという優雅なスパイの姿が描かれている。これはバー=ゾウハーによる一種の007シリーズへの皮肉なのかもしれない。

またこれら複雑な物語は世界を股に掛けた大規模な一種の操りのトリックでもある。つまり根っこは本格ミステリ、特に後期のクイーンが取り組み、そして悩むこととなった後期クイーン問題に繋がっている。特に『間違いの悲劇』を読んだ後であったためか、近似性を強く感じた。

しかしデビュー作もナチス時代の復讐譚が絡む物語ならば現時点での最新作『ベルリン・コンスピラシー』もナチス時代の事件の物語。どうやらバー=ゾウハーにとってナチスとは現代社会にも根ざす戦争の亡霊でありながら忘れてはならない過ちであり、生涯語るべきライフワーク的なテーマなのかもしれない。


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マイケル・バー=ゾウハー
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