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[ 本格 ]
カリブ諸島の手がかり
ヘンリー・ポジオリ教授
T・S・ストリブリング 出版月: 1997年05月 平均: 6.57点 書評数: 7件

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国書刊行会
1997年05月

河出書房新社
2008年08月

No.7 6点 ◇・・ 2020/05/16 18:01
舞台がエキゾチックでトロピカルな幻想味というか、そういうのが当時強烈にアピールしていたんでしょう。今読んでもけっこう楽しい。なんといっても「ベナレスへの道」という短編は突出した異様な印象を受ける。

No.6 9点 クリスティ再読 2018/10/21 11:26
日本人は奇書とかアンチ・ミステリとか大好きなんだけど、海外作品でそれっぽい作品が...となると、本作はオススメである。というか、ミステリマニアの玩弄物で終わるは勿体なすぎるくらいの名作だと思う。ポスト・コロニアルとかそういう視点で、広く読まれていい一般性のある作品だと思うよ。
本作のイイ点は、主人公ポジオリ教授の「迷探偵」ぶりである。要するに「迷う探偵」なんだよね。カリブ諸島というさまざまな文化が雑居し混淆するクレオールな社会に、旅行者として紛れ込んだイタリア系アメリカ人のポジオリ教授なので、植民地支配者の側にいながらも、植民地主義には批判的であり、かといって現地の土俗文化に入り込むこともできず、しかもカリブ海域の政治情勢のややこしさも、ポジオリの立場を定めづらいものにしかならない。1920年代だから、長らく続いたヨーロッパの列強のナマな植民地支配がそろそろ終わりを告げて、そのかわりにアメリカの「ソフトな植民地主義」に取って代わろうという時期だ。しかしそれぞれの島で宗主国由来の文化と、原住民駆逐後に導入された黒人奴隷文化、あるいはその後に導入されたインド人・中国人のクーリーたち、と島によってその配合が全く異なることで、「島々の個性」が複雑怪奇を極めている。そこに(ある意味単純な)アメリカ文化を背負ったポジオリが、身に余る「名探偵の名声」をひっさげて、多様な文化を巡礼する話なのである。ポジオリはどの文化にも帰属できない「マージナル・マン」なのである。評者は「名探偵はマージナル・マンであるべきだ」と思ったりするから、ある意味ポジオリは評者の「理想の探偵像」に近いものがある...
まあだから、謎解きは実のところ、何の役にも立たないようなものだ。事件は勝手に起き、迷探偵は途方に暮れ、その意図から外れたような解決をする。本書を絶賛するクイーンは、中期以降「迷探偵エラリイ」像を確立して、ついには「第八の日」で本当にポジオリ的なポジションにエラリイを立たせることになるけども、やはり本作が大きなヒントを与えているんじゃないかな。
そういう作品なので、実のところ「ベナレスへの道」だけがクローズアップされて取り上げられるのは間違いだと思うよ。全体の「名探偵の失敗」構図の中でやはりあのオチも理解されるべきなので、そのために前半4作があるんだからね。短編集トータルで理解すべき作品だと思う。個人的には「カバイシアンの長官」のポワロン長官に惚れる。粗野にして賢明で、パワフルで獰猛な黒人国家ハイチの行政官!

No.5 8点 蟷螂の斧 2014/10/18 08:08
裏表紙より~『殺人容疑を受けた亡命中の元独裁者、ヴードゥー教司祭の呪術、ヒンドゥー寺院の死体…多様な異文化が交錯するカリブ諸島を舞台に、アメリカ人心理学者ポジオリ教授が怪事件の数々に遭遇する、皮肉とユーモアに満ちた探偵譚。“クィーンの定員”にも選ばれた、ミステリ史上前代未聞の衝撃的名作。』~                                バラエティに富んだ連作短編集です。やはり「ベナリスへの道」が秀逸。同じようなモチーフで既読のものは、島田荘司氏、乾くるみ氏の作品がありましたが、どちらも衝撃を受けました。本作は1929年で先駆的な役割を果たしており、高く評価したいと思います。

No.4 5点 nukkam 2014/09/02 18:32
(ネタバレなしです) 米国のT・S・ストリブリング(1881-1965)は純文学の作家としてもピューリッツアー賞を獲得するほど成功した作家で、ミステリー作家としては短編で50編以上書かれたポジオリ教授シリーズで有名です。この短編集は1925年から26年にかけて発表した第一期の作品をまとめて1929年に出版されました。本格派推理小説作品が多いのですが、中編の「カバイシアンの冒険」は冒険スリラーに分類すべきでしょう。なぜ密偵が正体を見破られてのかという謎解きはありますけど真相は腰砕けです。本格派としてまあまあと思うのは「亡命者たち」と「アントゥンの指紋」です(後者のトリックはB級ミステリー的ですが)。ポジオリ教授が作品によって役回りが変化するのも本書の特徴で、これをバラエティーに富んで面白いと解釈するか統一感がなくてすっきり読めないと解釈するかは分かれそうです。全作品中最も有名で短編アンソロジーに何度も選ばれる「ベナレスへの道」は世評に違わず、規格外の凄さを見せつける作品です。何度も読み返すに値するかと訊かれれば答えに悩みますが、一度は読むべき作品かと訊かれれば絶対に「イエス」です。

No.3 5点 ミステリーオタク 2012/09/07 06:37
最後あっと驚くという感じではなかった

No.2 7点 kanamori 2010/08/09 18:27
心理学者ポジオリ教授シリーズの連作短編集。
西インド諸島の島々を舞台に、教授が遭遇する5つの事件が収録されていますが、ちょっと不思議なテイストの作品集です。
カリブ諸島の風習、宗教、人種などは興味深く読めますが、はたして、これが名探偵もののミステリといえるのかという感じを持ちながら、最後の「ペナレスへの道」で吃驚仰天。
かなり衝撃的な結末で、印象に残る問題作と言っていいでしょう。

No.1 6点 給食番長 2009/05/08 22:41
この本は最後の話だけがやたらと有名だけど、結局単に「なんだ、そっち系の話だったのか」としか思えなかった。


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T・S・ストリブリング
2008年11月
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1997年05月
カリブ諸島の手がかり
平均:6.57 / 書評数:7