皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ SF/ファンタジー ] ミステリアム |
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ディーン・クーンツ | 出版月: 2021年04月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
ハーパーコリンズ・ジャパン 2021年04月 |
No.1 | 8点 | 人並由真 | 2022/01/29 08:54 |
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(ネタバレなし)
余命いくばくもない老婦人ドロシー・ハメルの愛犬で、ゴールデンレトリバーの「キップ」。先天的に通常の犬とは違う資質を備えたキップはドロシーとの死別後、何かを知覚してある人物のもとに旅立つ。一方その頃、カリフォルニア州の一角にあるブックマン家では、高機能自閉症(特化した能力を持つ、自閉症)で大学生以上の天才的な頭脳を持つ11歳の少年ウッドロウ(ウッディ)が、ハッキングを通じてさる秘められた悪事に接近していた。だがそんなブックマン家に近づく、恐怖の影が……。 2020年のアメリカ作品。 邦訳も昨年に出たばかりで、評者にとっては久々のクーンツ、なんか面白そうなので、手にとってみる。 ほぼ30年前の人気作『ウォッチャーズ』の系譜を継ぐ、スーパードッグからみのストーリーだが、世界観そのものは……これは読んでのお楽しみ? 実のところ、評者は『ウォッチャーズ』に多くのファンがいることは認めるものの、個人的にはいまひとつ思い入れがないのだけど、はたして今回はずっと楽しめた。 終盤、残りページが少なくなるなか、まだ複数のかなりの事態が未解決のまま。これはどうすんだろ? 少なくとも<あの手>は使うだろうな、とも予想し、とりあえずソレは当たった。 が、残りのあれやこれやの局面をまとめたり結着づけたりの手際がとにかく無手勝流かつパワフルで、その辺はじつにオモシロイ。 個人的には、断続的に三件ばかり「アア、ソウクルカ」という感慨を覚えた。 特にアウトロー連中への対処ぶりは、ブラックユーモア的な興趣でニンマリさせられる。 あえて不満を言うなら、未来を展望するSFビジョン的なメインテーマが、本来はもっと物語の軸に据えられるべきところ、ちょっと中心からずれちゃったみたいな印象を受けるところで。まあ(中略)化したあのキャラクターの存在も、主題の対比になっているともいえるかな。 あと、メインヒロインが風来坊的に現れた男性キャラを、非常事態のなかで緊張している割に、あまりに軽く受け入れすぎるよね。そこは気になった。 というわけで個人的には、作品トータルの完成度はソコソコなれど、なんやかんやの得点の累乗で面白く読めた一冊。 おおざっぱに言えば、いかにも実質B級の、大冊エンターテイメント(クーンツにはまだまだもっと長い作品があると思うが)。 でもこれはこれで、色んな興味が満たされて、なかなか楽しかった。 評点はちょっとオマケ。 |