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[ その他 ] 夜の冒険者たち |
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ジャック・フィニイ | 出版月: 1980年09月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1980年09月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2022/06/27 13:38 |
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フィニイの冒険小説系列の作品だと、ラストになるのかな。冒険小説、といっても、今回はカジノや豪華客船を襲撃するみたいな、クライムノヴェル風の事件ではない、というのがキモの小説。ミステリというよりも青春小説に近いんだが、それでもしっかり「冒険小説」だったりするのが、最大の手柄。
サンフランシスコで弁護士をするリュウとハリーは同級生で、それぞれジョーとシャーリーというパートナーを持ってこの四人ぐるみで仲のいい友達だった。ある夜、眠れないリュウは真夜中の散歩に出た...日常とは全く別の表情を見せる真夜中の世界。これに魅せられたジョーは偶然夜の高速道路でシャーリーに出会い、この2組の夫婦は揃って真夜中の冒険に乗り出すのだった。高速道路の路上で寝転ぶ、といったことから始まり、ショッピングセンターの駐車場のベンチでシャンパンを抜いたダンスパーティ....しかし、警察官に見つかって追っかけっこの末逃れるが、この警官パーリーは4人組を目の敵にしだした。しだいにエスカレートする4人の冒険と警官との攻防の行方は? ラストなんてゴールデンゲートブリッジを舞台にした、かなり大掛かりなプラクティカル・ジョークになるわけで、フィニイのケイパー小説に共通する「大仕掛けで、凝ったアマチュアの冒険」という要素は本作も健在。とはいえ、本作にも「夢の10セント銀貨」と共通する、アメリカ人のちょっとイヤな気風、というのも感じられて、評者はある意味、ノレないところもある。 確かに、1970年代の西海岸、ヒッピーからヤッピーへの自由な空気を感じさせるのだが、いささかハメを外しすぎて「笑えないジョークを無理して笑わせる」ような面があるし、リュウとハリーの間での「度胸比べ」がエスカレーションしていくことに、マチズムの香りを嗅ぐこともある。そして、彼らがバカにする警官との間にある「階級的」な敵対心..そう見ると、手放しで「かっこいい」冒険と捉えるのも難しい。困っちゃう。そもそもこういったプラクティカル・ジョークというのは、アメリカのエリート大学生の特権みたいな側面があるからねえ,,,日本人から見たら、イヤな側面が目に付くのも仕方ない。 「ゲイルズバーグの春を愛す」収録の、気球を発明してそれによる夜の街の散歩とロマンスを描いた「大胆不敵な気球乗り」の拡張版みたいな作品なんだけども、甘やかでシンプルでロマンチックな冒険、というフィニイの一番イイ面が薄れてきているのに、何か残念な気持ちがある。 |