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[ ホラー ]
地獄の家
リチャード・マシスン 出版月: 1972年01月 平均: 6.50点 書評数: 2件

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早川書房
1972年01月

早川書房
1977年08月

No.2 6点 クリスティ再読 2022/07/26 21:52
吸血鬼モノの「血の末裔」がナイスだったし、マシスンやろうか。「地球最後の男」もやりたいし。

映画「ヘルハウス」は大好き!美しいホラーとしては「サスペリア」と双璧じゃないかしら。モダンな美意識が発揮された「サスペリア」に対して、こっちは王道のゴシックをセンス良く演出したうまさが光る。構図のキメ方やら広角レンズの効果やら評者は総ツボ。シネフィル好みの一作であることは間違いなくて昔から「信者」がついている作品。でもショッカーじゃなくて怖くないから、イマドキはウケづらいかな。

「幽霊屋敷のエベレスト」ベラスコ邸に挑む超心理学者夫妻・女性霊能者・前回探検隊の唯一の生き残りの4人組のアタック話である。映画は結構原作に忠実。原作でのヘルハウスのしつこいエロ攻撃は映画にしたら「成人向け」になっちゃうから、ほどほどに自粛したようだ(でもロリ系のパメラ・フランクリンがエロい)。ヘルハウスが四人組に仕掛ける罠に知恵比べみたいな側面があるから、その妙味は小説の方が伝わりやすいかな。ヘルハウスの呪いの正体とその除霊方法の探求に、ちょっとしたSFミステリ風の味わいがある。ダイイング・メッセージと言えばなるほど、そう。超心理学やらエクトプラズムやら「クラシックな心霊ホラー」のギミックいろいろ。

結論としてはエロをカットした映画の方がテンポがいい。沼に落とす手口を小説は何回も繰り返すあたり冗長。前回の探検隊唯一の生き残りのフィッシャーは、映画(ロディ・マクドウォール)はオタクっぽいけど、原作の方がしっかりした感じ。映画の原題が「The Legend of Hell House」なのに、原作はシンプルに「Hell House」。これが何となく不思議。「ヘルハウスの伝説」の方がカッコいい。

No.1 7点 人並由真 2019/04/08 22:50
(ネタバレなし)
 1970年12月の中旬。50代半ばの物理学者ライオネル・パレット博士は87歳の大富豪ルドルフ・ドイッチェに呼び出され、成功報酬10万ドルの約束である依頼を受ける。それは「死後の世界」が実在するかを実証するため、メイン州の幽霊屋敷「ベラスコ・ハウス」の真実を一週間以内に見極めることだった。「地獄の家(ヘル・ハウス)」として知られる同屋敷は1879年生まれの奇人エメリック・ベラスコの所有物だったが、奇行が繰り返された邸内では過去二度にわたって大流血の惨劇が生じ、そしてベラスコ自身も屋内から謎の失踪を遂げていた。パレットは20歳年下の妻エディス、さらにドイッチェの指示するまま、元女優で美貌の霊媒フローレンス・ターナー、30年前の流血事件からの唯一の生還者ベンジャミン・フランクリン・フィッシャーとともに、全4人の調査チームで地獄の家に乗り込むが……。

 1971年のアメリカ作品。20世紀後半のモダンホラー史を大雑把に概観すれば、『ローズマリー』以降でキング登場の前夜、本作や『エクソシスト』(の映画版、あと映画『オーメン』とか)で日本にも70年代前半期の代表的な一冊ということになるんだろうか。
 読んでる途中までは忘れていたが、当時のポルノブーム? を背景にし、さらには『エクソシスト』(すみません。実は映画も小説も未着手です)同様に不可思議なものに迫る疑似科学性を導入、旧来からの幽霊屋敷譚にそういう2つの趣向で新味を出そうとしていた作品であった。特に魔性のものが表向きばかり、科学検査の前に素顔をさらしたように見せかけておいて(あるいは本当に実態を晒して)、そののちに反撃にくるというのは70年代からのムーブメントだったのだろうか。厳密な検証なんかとてもしてないけれど、モダンホラーの歩みを探るひとつの手がかりにはなるかもしれない。
 古い皮袋に新しい酒を盛ってやるという作者の気概は今読んでも響いてくるようで、そういう意味では期待通りに面白かった。「地獄の家」側が来訪者であるパレットたちに(中略)という終盤のツイストも、当時としてはよく練られていた文芸だと思う。
 ちょっと驚いたのは本当にほぼ全編がワンロケーションで、限られた頭数の登場人物の間でドラマが進行することだが、まあ幽霊屋敷ものと考えれば当然か。キングの『シャイニング』みたいに随時遠方に描写のカメラが切り替わる方が特殊だろうし。

 ところで本作の映画版『ヘルハウス』はまだまともに一度も観てないんだけれど、大昔に木曜映画劇場あたりで終盤だけ断片的に目に入ってしまい、どういうビジュアルがラストの方に来るのかだけは覚えていた。それでちょっと最後の方のショックが薄れてしまったのは残念。まあそれでも十分に面白かったけれど。
 評点は直球のプロットをどう取るか迷うところもあるが、本当にちょっとおまけしてこの点数で。


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リチャード・マシスン
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