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[ ホラー ] 地球最後の男 人類SOS 旧訳『吸血鬼』/新訳『アイ・アム・レジェンド』 |
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リチャード・マシスン | 出版月: 1958年01月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 2件 |
早川書房 1958年01月 |
早川書房 1971年01月 |
早川書房 1977年09月 |
早川書房 1977年09月 |
早川書房 2007年11月 |
No.2 | 7点 | クリスティ再読 | 2022/09/05 17:38 |
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SF吸血鬼モノの古典。原作のこのオチというのは、実は吸血鬼モノでは有名で、ネタバレをされてたのを目にしたことがある。でも「この俺が伝説の存在なのだ」という最後の決めセリフの苦さは少しも損なわれずに、幾度でも噛みしめるべき結末である。
というかね、原作を読むと「アメリカ的だな~」と強く思うのだ。ソローの「森の生活」なんかに典型的に表現されるような、自給自足で森の中で孤立して暮らすライフスタイルに対する憧れみたいなものが、アメリカ人にあるんだよね。だから本作の主人公の孤立したサバイバルにも、そういう「自分の力だけを頼りに生き抜く開拓者=アメリカ人」の幻想が付きまとっている。これは絶対の自由を固守するアナーキズムと言えば、まさにそう。 だからこそ、主人公が「地球最後の男」としての矜持から維持してきた「個我」と社会性というものの関係が問われることになる。主人公は自分が想定しない「別な社会」に裁かれることになるわけで、このアメリカ人の原像に対する作者の批判的な目が窺える、といえば読み過ぎだろうか? 本作の「伝説=レジェンド」というのは、アメリカ人の原像として今もある「独立独歩の人間」というもの、なのかもしれないよ。 |
No.1 | 7点 | tider-tiger | 2017/01/15 13:01 |
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ハリウッドの中心で「映画でしか本作を知らない方 是非とも原作をお読み下さい!」と、声を大にして言いたいのです。
では、内容紹介をば。 「ロバート出て来い!」 「イヤだ便所!」 突如蔓延した疫病により、人類はみな吸血鬼になってしまった。そんな世界に一人生き残ったロバート・ネヴィルは奴らとの絶望的な戦いに明け暮れていた。いや、戦いなんかじゃない。奴らはロバートを狩り出そうとしている。ロバートは生き残ることができるのか。吸血鬼と化した人々を元の姿に戻すことができるのか。 高校生の頃に読みました。その当時としてもちょっと古臭い吸血鬼小説。ロバートの孤独な戦いと侘しい生活が綴られ、まあまあ面白いという程度。 このまま終われば6点くらいですが、ですが……ラストに痺れました。 答えははっきり提示されているのに、人(読者である自分)って自分に都合の悪いことは見えないわけです。このラストで点数繰り上げ7点とします。 本作は十年ほど前に『アイ・アム・レジェンド』として映画化されました。映画化に当たって、原作にはわずか数頁しか登場しない犬に焦点が当てられました。そんなことにばかり無駄な力を使い、肝腎要のレジェンドの意味は改竄されました。悪い意味でアメリカ的な、みんなが喜ぶような、そんなしようもない映画になってしまいました。これ、マシスン生きてたら映画化は許さなかったと思う。俺だって許せないくらいなのに。 ※すみません マシスン 2013年まで生きてました。 なんで許可してしまったのか……。 私の持っている本は邦題が『地球最後の男』で田中小実昌訳 訳文古く、ウィルスがビールスと訳されています。でも新訳よりこちらの旧訳を薦めます。 ちなみに原題は I am legend です。このタイトルは素晴らしい。これしかない。 ※ネットで得た映画のラストに関する情報 当初は原作の精神に則ったラストだったらしいんです。ところが、スクリーンテストをしてみたところ、観客の多くがその価値観の逆転についていけず不満が続出。50年前の作品なのに、ですよ。これって凄いことじゃないですか。 藤子不二雄がオマージュとして『流血鬼』という短編を描いていますが、マシスンの意図を汲んだうえで、さらなる捻りを加えて読後感を変えています。こっちはマシスンも支持してくれそうな気がする。 |