皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 短編集(分類不能) ] ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで |
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真梨幸子 | 出版月: 2018年01月 | 平均: 6.50点 | 書評数: 4件 |
幻冬舎 2018年01月 |
幻冬舎 2020年04月 |
No.4 | 6点 | E-BANKER | 2021/07/01 20:51 |
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舞台は業界でも老舗の「万両百貨店」。その中でも特に優秀な社員が集められた『外商部』!
お客様のためなら、「ゆりかごから墓場まで」用意することも辞さない。まさにプロの営業職。そんな方々が巻き込まれる事件の数々を描く連作短編集。 2018年の発表。 ①「タニマチ」=その名も「熱海乙女歌劇団」の冴えないメンバーを応援するコアな団体。そんな冴えない団体のメンバーは実は・・・。そして、本作の主人公「大塚佐知子」は更なるタニマチを探して・・・ ②「トイチ」=作中でも触れられてるが、「トイチ」とは法外な利息のことではなく、百貨店の隠語で「上客」のことを指す(らしい)。初めてデパチカで働くことになった三十路女性をめぐるあれやこれやが本編の中身。そして、周りの人々も徐々に巻き込まれていくことに・・・ ③「インゴ」=大事に育てたはずの娘が妙な方向にねじ曲がっていく・・・。そんな女性もひょんなことから、万両百貨店のデパチカへ派遣されることに・・・。②の続きで妙なことになっているデパチカでまたまた事件は起こる。 ④「イッピン」=外商部は某有名芸能人の話し相手にもなる! そんなことも現実には起こるんだろうか? そんな我儘芸能人がスキャンダルのすえ徐々に狂っていく。そして、最後に明かされる「イッピン」とは・・・これ? ⑤「ゾンビ」=桁違いの金持ちの気持ちはよく分からん、って思わせる一編。そんな世間の感覚とかけ離れた相手も外商部にとっては一番の上客なわけで。 ⑥「ニンビー」=連作の終盤に来て不穏な空気が!って感じの第6編。「ニンビー」=not in my back yardということで、白金にある事故物件がクローズアップされる。この事故物件に纏わる過去の一家心中事件に大塚佐知子が関わっているらしい・・・ ⑦「マネキン」=デパートに派遣された売り子(死語?)さんのこと。珍しいほどの美女のマネキンが失踪。事件に巻き込まれたようなのだが、⑥の事件も関わっているらしく・・・ラストスパートへ ⑧「コドク」=「孤独」ではなく「蟲毒」の意。外商のことを「蟲毒」と称しているのだが、そんなにスゴイ職業なんだろうか? 一応、連作の結末が付く。 以上8編。 プロット&仕掛けは面白いと思った。連作らしく徐々に深まった謎が終盤にかけ、一気に解きほぐされ、頭の中の霧が晴れていく感覚。それは本作でも味わうことは可能。 ただ、もうひと捻りあればなぁーという気にはなった。特に大塚佐知子については、”黒い疑惑”が徐々に高まっていただけに、更なるサプライズがあっても良かったな。 まぁ全般的には水準級の面白さはあるという評価。 |
No.3 | 7点 | ミステリーオタク | 2020/10/15 23:59 |
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この春文庫化された、真梨先生の何冊目かの短編集。
大手百貨店の外商部が絡んだ奇妙な話が並ぶ連作作品集になっている。 《タニマチ》 全く前情報なしで入った本なので、どんなものかとチョットわくわくしながら読み進めたが・・・うん、途中少しダラついている感も否めなかったが、小気味いい「トリック」が効いている。 《トイチ》 これも凶悪犯罪が起こるわけではないが、それなりにミステリーしている。 おひい様はだーれ? 《インゴ》 何という展開。 《イッピン》 ちょっとグロい描写もあったりして、大部いつもの真梨ミステリーになってきた感じ。 《ゾンビ》 なるほど、そう来たか。でも、なぜかさほど斬新さを感じないんだよな。 《ニンビー》 没落、意外な人間関係、凝った構成・・・前作と少しテイストが似たストーリーで、コレもよくできているとは思うが、やはり個人的には大きなサプライズはもたらされなかった。 《マネキン》 面白くてバカバカしくて、かつ本書の真髄も垣間見られるが、まとめずに最終話へと続く。 《コドク》 いくら何でもソリャネ・・・いや、マリワールドならアリか。そして、ある意味マリらしくまとめたね。 大体「薄→濃」の順に並んでいると言っていいだろうか。でもって「グロさ」や「不快感」といった調味料をドバっとかけることなくストーリーの素材と捻りで勝負している。 今まで読んだ作者の短編集の中では最も高い完成度を感じた。 |
No.2 | 6点 | まさむね | 2019/10/23 21:00 |
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百貨店の外商部(時に地下食品売り場)を舞台にした連作短編集。著者初の「笑えるイヤミス」と紹介されているのですが、確かに、これまでの作品のような「ドロドロ感」は薄まっています。とは言え、最終的にはやっぱり真梨幸子だったなぁ。
サクサク読み進めつつ、頭の中では裏の裏を想定。それでも斜め上から持ってこられる…という楽しさがありましたね。 |
No.1 | 7点 | HORNET | 2018/06/10 11:34 |
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大塚佐恵子は、万両百貨店外商部のトップコンシェルジュ。顧客に呼ばれればすぐに行き、「いついつまでに何々を用意してほしい」という注文に、たとえそれが難題であっても必ず応えることで絶大な信頼を得ている。注文は商品購入にとどまらず、「何々を調べてほしい」「誰誰を説得してほしい」など、もはや何でも屋の域に達するときもあるが、大事な顧客のため、可能な限りそれらにも応える。そうした外商部の顧客対応の奇譚を集めた連作短編集。
作者の作品はこれまでも読んだが、どちらかというとホラーテイストで劇場的な作品が主だったので、このようなパターンは意外な感じがしたが、一つ一つの話のオチと、それらを絡ませて全体でまとめ上げる術は非常に巧みで、とてもよかった。 最初はデパート外商を舞台とした「日常の謎」のような雰囲気だったのだが、最後まで読むとさすが真梨幸子、それだけでは終わらなかった。 面白かった。 |