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[ 警察小説 ] 慈雨 |
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柚月裕子 | 出版月: 2016年10月 | 平均: 5.67点 | 書評数: 3件 |
集英社 2016年10月 |
集英社 2019年04月 |
No.3 | 4点 | パメル | 2023/04/19 07:27 |
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定年退職後まもなく、妻と四国八十八カ所の寺をめぐる遍路に出た元警察官。かつて捜査に関わった、幼女殺害事件の被害者の供養のためという。DNA鑑定を決め手に逮捕された犯人には懲役二十年の判決が下った。しかしなぜか以来、男の心は休まるどころか悔恨の念が増すばかり。
遍路一日目。男は投宿先で別の幼女殺害事件のニュースを目にし、たまらず元部下に電話する。遺体が発見されたのは群馬県の山中。その現場や展開は四十二年の警察官人生を否定しかねない。終わったはずの事件と酷似していた。 二つの事件を重ねつつ、部下と捜査に関わる電話をしながらの夫婦二人旅は続くが、遍路の描写はやや淡白だ。夏場にかけての遍路は歩き通すには相当な体力と集中力が必要なはず。あっけなく過ぎる難所の記述に拍子抜けの感がある。 とはいえ、妻にいぶかしがられつつ独白を繰り返す道中、男は内省を深めてゆく。台詞に強度が増し、舞台としての四国遍路が小説と絡み合ってくる。被害者と家族、保身に走る組織、凶刃に倒れた同僚など、人間模様の回想を尽くした終盤、胸のすくような展開が待っている。 想像した通りの展開、結末とミステリ小説としての驚きはなく読みどころは少ない。家族や同僚との絆の小説としてはまずまず。 |
No.2 | 7点 | 測量ボ-イ | 2023/01/01 16:30 |
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期待以上の良作でした。
この作者は、女性なのに男性の心理を書くのに 長けているかと思います。採点は、 7点(基礎点)-1点(本格とは言いづらい)+1点 (四国八十八ヶ所巡りの参考になりそう) <少しネタばれ> 八十八ヶ所巡りで出会った人か犯人かとにらみ ましたが、考えすぎだったようです 笑 |
No.1 | 6点 | HORNET | 2017/10/09 10:09 |
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警察を退職した神場智則は、退職したら行こうと兼ねてから決めていた四国の霊場巡りに、妻と共に赴く。刑事として数々の事件捜査に携わってきた神場には、その事件に関わった被害者たちの弔いという思いがあったのだが、その中に一つ、心の重しとなっている事件があった。それは16年前に起きた幼女誘拐殺人事件。現場付近に残っていた乗用車の類似性と、DNA鑑定の結果から犯人は逮捕され、実刑を受けて現在収監中なのだが、当時のDNA鑑定の精度などを踏まえると、不安の残る捜査だった。
そんな折、宿泊先の宿で、似たような手口の幼女誘拐殺人のニュースを見る。16年前の事件は冤罪だったのではないか、その犯人が同じ愚行を繰り返したのではないか―。思わずかつての部下、緒方に連絡をした神場は、離れた地で事件の捜査を手伝うこととなる。 警察小説のパターンの一つとも言えるであろう、「過去の冤罪」モノ。既に「犯人」をとらえ、実刑に処している以上、警察としてはタブー中のタブー。しかも今回の場合、もし冤罪であったならば、同時期のDNA鑑定を証拠として解決を見た数々の事件にまで累を及ぼすことが考えられ、その破壊力は想像を絶する。 寝た子を起こしたくない組織と、人としての真実を全うし、ケジメをつけたい元刑事。現役の元同僚たちにとっては、神場に協力することは自殺行為にも等しい。だが、刑事としての矜持を同じくする「同志」たちとの熱い絆が、真相を暴いていく。 こういう組織に立ち向かうタイプの警察小説は、やや気恥ずかしくなるような「熱い」やりとりがなされるが、それが醍醐味でもあるので、刑事たちの同僚、師弟の強い絆、刑事の家族の潔さと強さを存分に楽しめる小説ではあった。 |