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[ 社会派 ] 逃亡者は北へ向かう |
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柚月裕子 | 出版月: 2025年02月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 新潮社 2025年02月 |
No.1 | 7点 | HORNET | 2025/07/06 19:04 |
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時は2011年3月、東日本大震災が起きた福島県。母を亡くし、天涯孤独の身で工場に勤務していた折に、不運から警察に拘留され、震災の混乱の中誤って人を殺めてしまった真柴亮。震災で幼い娘が行方不明となるが、事件捜査のために娘を捜すこともままならず、親族に責められ続ける さつき東署刑事第一課の警部補・陣内康介。震災で妻と親を亡くしつつ、幼い一人息子だけが見つからず、生存を信じて探し続ける漁師・村木圭祐。三者それぞれの切実な生き様が、震災後の混乱の中切り結ばれ、それぞれに昇華していく―
あまりに理不尽を強いられた真柴亮の人生に、同情と憤りを禁じ得ない。が、不可抗力ながらも殺人を犯してしまったという事実に、警察として立ち向かう刑事・陣内の怒りと苦悩にも、最愛の我が子の命を思う村木の心にも共感する。 天災という、誰も抗えないという意味ではこれもまた「理不尽」な不幸を突然負わされ、心が乱れたまま毎日を乗り越えていくしかない、人生の切実さを著者らしい筆致で描いた作品。 読み応えがあった。 |