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[ 本格 ]
厚かましいアリバイ
ABC3部作
C・デイリー・キング 出版月: 2016年05月 平均: 6.00点 書評数: 3件

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論創社
2016年05月

No.3 6点 nukkam 2017/02/05 06:27
(ネタバレなしです) 1938年に発表されたABC三部作の第2弾で、英語原題は「Arrogant Alibi」です。アリバイ崩しではありますが容疑者全員にアリバイが成立しているので犯人探しの面白さも両立しており終盤のどんでん返しが鮮やかです。このアリバイ、論創社版の巻末解説で紹介されているように「とうてい読者に解明できるとは思えない」のが弱点ではありますが、トリックが「実行不可能では」と思わせた前作の「いい加減な遺骸」(1937年)と比べるとかなり改善されていて、トリック成立のための伏線が(私は十分に理解できませんでしたけど)細か過ぎるぐらいに用意してあります。人並由真さんのご講評で「ほほえましい」と述べられているのに私も賛同します。もし同時代に山村美沙が活躍していたらきっと自作にアイデアを採用しただろうなと想像しました。

No.2 7点 人並由真 2016/07/06 08:02
(ネタバレなし)
 洪水で混乱する町、ややこしい設計の館での殺人劇、館の亡き主人の遺産の古代エジプトの文化資産、密室、そして主要人物を一覧表で検証する各人のアリバイ……と絢爛たる幕の内弁当のようなクラシックパズラー。
 さらには話に立体的なケレン味を託すためか、ちょっと黎明期ハードボイルド風味での政界の黒幕の顔出し&そのライバルの地方検事とのやりとりなんて糠味噌サービスまで盛り込まれ、とにかく読者を饗応しようとする作者のエンターテイナーぶりに本気で感動した。
 解決が「まぁそっちの方向でのトリックだろうな(でも普通の読者にはわからんよ)」とアレな感じなのは、前作『意外な遺骸』と同様。でもおそらくは、当時の作者が目に付いたか見知ったばかりのネタを、うぉぉおおと猛然と作中に取り込んだような感じが実にほほえましい。(密室の謎の方の真相は、単純にしょぼいけど。)
 個人的には、全体の完成度がどうとか、魅力的な謎の提示に比べてこの解決かぁという、ありきたりの不満はあんまり無い。どんなに勉強してもなかなか優等生になれない学生の、とにかくぎっしりと書き込んだテストの筆述答案が放つようなある種の熱量というか男らしさがこの作品にはある。
 こういうミステリは嫌いになれないよな。

No.1 5点 kanamori 2016/05/29 13:40
エジプト考古学者の未亡人ヴィクトリアが主催する音楽会に参加するため、彼女の邸宅を訪れたロード警視と友人のポンズ博士らは、休憩中に古代エジプトの短剣で刺殺された未亡人の死体を発見する。さらに、邸に併設された密室状況のエジプト博物館で第2の殺人が--------。

マイケル・ロード警視シリーズの第5弾。オベリスト三部作につづく通称〈ABC三部作〉の2作目にあたる本書は、洪水で孤立した高台の邸宅を舞台に、古代エジプト文明のペダントリーを散りばめたコテコテの館ミステリです。ツタンカーメンの墓の発掘以降、「カブト虫」(ヴァン・ダイン)、「エジプト十字架」(クイーン)と、1930年代の米国で古代エジプト文明をネタにした3作の本格ミステリが書かれているのは興味深いですね。
内容の方は、密室殺人あり、完璧なアリバイあり、ダイイングメッセージあり、邸の見取り図や登場人物のアリバイ一覧分析まで備え、本格ミステリのガジェットが盛りだくさんで興味を持たせるのですが........。解決編が近づくにつれて、読む方のテンションが段々に下がってきましたw
密室トリックの肩透かしはある程度は許容できるにしても、タイトルにあるメインの「アリバイ工作」が現代の読者には、そのシステムが分かりようがないのが致命的で、関係者を集めた真犯人を指摘するシーンでは一応ヒネリを入れてはいるものの、真相にあまりカタルシスを感じないのが残念なところです。


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C・デイリー・キング
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