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ミステリの祭典

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まだ中学生(仮)さんの登録情報
平均点:6.60点 書評数:115件

プロフィール| 書評

No.35 6点 七不思議探偵アマデウス! モーツァルトはミステリーがお好き?
如月かずさ
(2020/04/05 09:25登録)
「音楽室の肖像画の目が動く」「校庭の銅像は夜中になると歩き出す」など、皆さんの学校にも「七不思議」のような噂はなかったでしょうか?
本書はまさにその妖しい「七不思議」と一緒に、小学6年生の浅里エリカが学校で起こるさまざまな事件を解決するコミカルなミステリシリーズの第一巻。
転校生のエリカが音楽室の壁の肖像画モーツァルトに話しかけられることから始まり、美しい音楽教師の悩みや校庭に捨てられたラブレターの謎など3事件を解決する。幽霊司書や開かずの教室の少女など七不思議の面々もユニークで楽しいが、悩める誰かのために真剣に謎に取り組むエリカの優しさにほっとさせられる。


No.34 8点 ブラック・トムのバラード
ヴィクター・ラヴァル
(2020/03/29 10:45登録)
恐怖・幻想小説で有名なH・Pラブクラフトの短編「レッド・フックの恐怖」を大胆に書き換えた作品。
舞台は1924年のニューヨーク。主人公はアフリカ系米国人の青年、トミー。墓地の前でギターを弾いていたところ、老人が「我が家でパーティーを開く予定でね。来客のために演奏してもらえないかな」、と話しかけ、望外な謝金を約束して去っていく。トミーは嫌な予感がした。
ハードボイルド風のミステリが後半いきなり暴力的な幻想小説に展開していくところが凄い。
人種差別主義者ラブクラフトの差別的な作品を、彼の作品を愛するアフリカ系の作家が鮮やかにひっくり返して見せている。


No.33 6点 お屋敷の謎
ジュディス・ロッセル
(2020/03/08 10:57登録)
幼い頃を過ごしたアームウッド・マイアの屋敷に戻ったことから、ステラの過去の秘密が明らかになっていく。
今回もまた、作者自ら描くイラストがほぼ全てのページを飾る。ヴィクトリア調が舞台とあって古めかしいお屋敷や冒険家だったひいひいおじいさんの日記、子供部屋に残された昔の玩具など雰囲気も魅力的。写真に写っている女の子は自分の姉妹なのか、ママはどこに消えたのか。新たな謎が浮上する。3巻完結で、原書は今春刊行予定。


No.32 6点 ムジナ探偵局 完璧な双子
富安陽子
(2020/02/27 19:20登録)
古書店ムジナ堂には別の顔がある。店主の嶋雄太朗は怪事件しか依頼を受けないムジナ探偵だ。自称おしかけ助手の源太少年との迷コンビが常識では解決できない奇妙な事件を、常識外れの名推理で解決していく。探偵小説の醍醐味と、妖怪や幽霊の出る奇妙な世界を存分に味わえる。


No.31 6点 復讐プランナー
あさのあつこ
(2020/02/02 20:32登録)
いじめは誰にでも起こり得る。主人公雄哉は周りを刺激しない普通の中学一年生だが、そんな生徒にも常にリスクはある。「悔しいなら復讐計画を立ててみればいい」と物騒なことを薦める先輩が現れ、物語は驚くような解決方法を経て意外な方向へと進んで行く。
中高生に社会問題や人間関係の指南をする教養書シリーズ「14歳の世渡り術」の初めての小説。「いじめに復讐で対抗するのを薦める本では」と誤解を招くかもしれないが、雄哉は最後までいじめを許さない。いじめっ子を憎んでもいない。そこに到達するまでの事件と変化はドラマティックで、いじめを通して人が何をもって大人になるのかを追体験できる青春小説。


No.30 5点 雨の恐竜
山田正紀
(2020/01/09 20:27登録)
恐竜の化石発掘現場がある田舎町で、20年の時を隔て2つの不可解な死亡事故が起こった。いずれも死体の近くに恐竜の形跡が発見され、恐竜が犯人だという噂まで流れる。
14歳の少女ヒトミ、サヤカ、アユミは幼馴染だが、疎遠になっていた。しかし3人とも事件に関心を持っていた。少女たちには、夕焼けを背にゆっくり歩いて行く恐竜を見たという忘れられない記憶があった。恐竜が犯人の筈はないと信じる少女たちが真相究明に乗り出す。
物語の展開とともに大人の世界の狡さ、いやらしさと、思春期の少女たちのピュアな想いがぶつかる。ミステリアスな謎解きと、少女たちの心の成長が絡んだ青春ミステリ。


No.29 5点 首七つ
ひろのみずえ
(2019/12/26 19:15登録)
陰湿で奇怪な7作品が収まった短編集。
いつの間にか不可解な出来事に巻き込まれていく多感な世代の少女たちが登場、虚実背中合わせの現代の怖さを淡々と描いている。7編読み終えると、じわりと怖さがこみ上げてくる。


No.28 6点 船乗りサッカレーの怖い話
クリス・プリーストリー
(2019/12/15 20:31登録)
嵐の夜、断崖の上に立つ古い宿屋に「あわれな船乗りを助けてくれないか」と、ずぶ濡れの男がやってきた。迎え入れたのはイーサンとキャシーの兄妹。父親は留守だった。
サッカレーと名乗る男は嵐が止むまで船乗り仲間から聞いたことをポツリポツリと語り始める。世にも美しい魔物、ジャングルからやってきた正体不明の生き物、密輸人や海賊などが登場する不思議な話ばかり。
それでも怖い話が大好きな兄妹はいつしかサッカレーの話に惹かれていく。さらに恐ろしい秘密が隠されているとも知らずに。前作「モンタギューおじさんの怖い話」同様に、巧みに仕掛けられた怖さが味わえる。


No.27 6点 危険ないとこ
ナンシー・ワーリン
(2019/11/30 10:40登録)
あやまってガールフレンドを死なせてしまったデイヴィッド。事故と認められ無罪になるが、故郷の街にはいられない。高校生活をやり直すため伯父の家に預けられるが、従妹のリリーの様子がどこかおかしい。
伯父も伯母も周囲の大人たちは誰も異常さに気づかず、彼だけが精神的に追い詰められていく。11歳の少女に一体どんな秘密があるのか。
99年エドガー・アラン・ポー賞YA小説部門受賞のサイコサスペンス。主人公をめぐる若者たちが魅力的で、一陣の涼風とも言える。美大生の少女、スキンヘッドの少年の個性が光る。児童向けとはいえ、緊迫感が伝わる心理状態も丁寧に描かれており楽しめる。


No.26 7点 月の光を飲んだ少女
ケリー・バーンヒル
(2019/11/10 10:03登録)
ファンタジーでありながら一風変わった物語。類を見ない着想、破綻のない構成、魅力的なキャラクター、内包する思想性などで2017年ニューベリー賞に輝いた。
毎年魔女に赤ん坊を捧げなければならない町があり、悲しみに閉ざされていた。だが事実は、赤ん坊は心優しい魔女たちに助けられ他の町で幸せに暮らしていた。ある年、助けた赤ん坊にうっかり月の光を飲ませてしまい魔力を持つようになって・・・。
魔法使い=卓越した能力の持ち主とはいえ幸せとは限らず、権力者は人知れぬ不幸を背負っている。「力」は使い方によって人々の幸不幸を左右する。本書の示唆するところは深く、優れたエンターテインメントの要素も併せ持ち、比類のない面白さ。


No.25 6点 キャットと王立劇場のダイヤモンド
ジュリア・ゴールディング
(2019/11/03 09:50登録)
18世紀末のロンドン。少女キャットは王立ドルリー・レーン劇場の支配人に拾われて育つ。劇場にダイヤモンドが隠されているという秘密を知ったことから、ギャングや公爵家を巻き込んだ大騒動が幕を開ける。
実在するロンドンの最古の劇場を舞台に、印象的なキャラクターが登場するシリーズ全9作の第一弾。キャットの恩人となるシェリダン支配人、看板俳優ケンブル、その姉で名女優のシドンズ夫人も実在の人物。
史実をスパイスに、何事もめげず立ち向かうキャット、バイオリン少年のペドロ、新入りで美青年のジョニー、正体不明の風刺漫画家キャプテン・スパークラーが活躍する冒険物語。


No.24 7点 羊の告解
いとうみく
(2019/10/27 09:56登録)
「告解」とは罪を告白し神に許しを求めること。だが物語の主人公である中学三年の少年の父親が犯した罪はとても許されるものではなかった。人の命を奪ってしまったのだから。
何かの間違いか、事故だったと信じたい涼平だったが、逮捕された父親は家族との面会をかたくなに拒む。真相も知らされないまま突如「加害者家族」となった彼は父の罪を背負うべき加害者なのか、それとも父に重荷を課せられた被害者なのか。
家族が友人が重大な事件を起こしてしまったら自分はどうあるべきか、その家族がもしもいじめられていたら・・・。罪を犯した人間が許されることを願うのは間違いか。「自分は絶対に罪は犯さない」と言い切れる人がどのくらいいるだろう。それぞれの立場になって考えながら読んでほしい作品。


No.23 7点 オリシャ戦記
トミ・アデイェミ
(2019/10/06 14:08登録)
オリシャ王国のサラン王は「魔師」たちから魔法を取り上げ、彼らを支配し、徹底的に抑圧する。ところが、魔法の復活を可能にする巻物が発見される。
父サランに大切な友人を殺された王女アマリは、その巻物を盗んで逃亡。そして、魔師の血を引くゼイン、ゼリィの兄妹と出会い、3人は、あらゆる魔力をよみがえらせようとする。その中でゼリィが魔法の力に目覚めていく。ところがアマリの兄イナンが父親の命を受けて3人を追ってくる。
行く先々で武力と魔法の戦いが繰り広げられるが、途中でイナンが自分の内にひそむ魔力に気づき、ゼリィに心をひかれるところから物語が暴れ始め、思いもよらない方向に走り出す。エンディングで驚き、著者のあとがきを読んで「この本に描かれた痛みや恐れや悲しみや喪失はすべて現実です」という言葉にはハッとさせられた。


No.22 7点 サリー・ジョーンズの伝説
ヤコブ・ヴェゲリウス
(2019/09/29 10:22登録)
今から百年前、アフリカの熱帯雨林の奥深くでゴリラの女の子サリー・ジョーンズが生まれた。嵐だったため、群れの長老はサリーが数々の不幸に見舞われるだろうと予言した。
それまでジャングルで幸せに暮らしていたサリーを突然、大きな不幸が襲う。密猟者に捕らえられ、町に送られて競りに掛けられたところから運命は狂いはじめる。周囲で起きる数々の未解決事件、出会いと別れ、繰り返される裏切りに孤独を感じる日々。それでも人を信じ愛したサリーは、幸せを手にすることが出来るのか。
友情と愛情、悪と犯罪、裏切り、憧れと希望、夢と冒険と独特なイラストが物語をさらに盛り上げる。絵本になりますが、絵本としてはかなり長めです。


No.21 7点 やまわろ
釛子ふたみ
(2019/09/17 20:58登録)
極限状態に置かれた思春期の繊細で折れそうな心を持つ少女たちの感情の起伏を克明に描いている。
希望もなく、無気力に生きてきた少女絆奈。体育の授業で一泊の登山をするが、土砂崩れで山小屋は崩壊。かろうじて脱出した絆奈たち高校生は霧の闇を彷徨う。
そんな中で山の妖怪「やまわろ」を耳にした絆奈たちは互いの存在に疑念を持ち始め、加速度的に妄想を膨らませていく。この災難は誰のせい?「やまわろ」に取り込まれた誰かが何かを仕掛けた?狙いは何なのか?
実態は定かでは無いが確かに存在する「やまわろ」と巧みに仕立てられた状況設定が恐怖を植え付け、絆奈と一緒に闇夜の山中を迷っている錯覚を覚えさせる。


No.20 6点 世界を救う100歳老人
ヨナス・ヨナソン
(2019/09/10 19:25登録)
世界1000万部超の大ベストセラーとなったデビュー作「窓から逃げた100歳老人」の続編。101歳の誕生日パーティーで熱気球に乗ったアランはアクシデントのためインド洋を漂流。北朝鮮の船に拾われたものの、瞬く間にブリーフケースいっぱいの密輸ウランを巡る地球規模のトップシークレットに巻き込まれる。
紙ナプキンに書かれた機密文書、ナチとの遭遇。怒涛の大冒険の間も覚え立てのタブレットは手放さない。トランプやメルケルら各国リーダーを翻弄、ユーモアと皮肉と爆弾の知識で乗り越えていく。流儀は空気は読まない(読めない?)、好きなことをしゃべる。混迷する世界に生きる人間の憂いを笑いに転じるドタバタ痛快アドベンチャー。


No.19 6点 リヴァイアサン クジラと蒸気機関
スコット・ウエスターフェルド
(2019/08/26 20:02登録)
1941年のサラエボ事件で幕を開ける。暗殺された大公夫妻の息子アレックスは忠実な家臣と共にストームウォーカー(二足歩行戦闘メカ)で脱出。一方、男装して英国海軍航空隊に志願した少女デリンは、クジラを遺伝子改造した巨大飛行獣リヴァイアサンに搭乗。やがて二人は意外な場所で出会う。
遺伝子改造兵器に頼る(ダーウィニスト)陣営と蒸気機関を発達させた(クランカー)陣営が対立するもうひとつの第一次世界大戦を背景に、血湧き肉躍る冒険が展開する。米国版ライトノベルと言えなくもないが、史実をうまく使い、大人の読者も楽しませてくれる。


No.18 6点 暗闇のファントム
イアン・ベック
(2019/08/14 10:52登録)
深井霧の夜、幽霊がロンドンを徘徊していた。タワーの屋上で男の生首が発見され、人々は震え上がった。家出少女は知らなかった。なぜ育ての親のもとで人目を避けて暮らさなければならなかったのか、幽霊と恐れられるファントムと自分との間にどんな宿命があるのか。ロンドンが本当はどんな場所なのか。
大道芸人の仲間となったイヴのもとへ通うバイブル・Jや、イヴと同じ青い瞳の青年ケイレブと出会い、謎は次第に明らかになっていく。ヴィクトリア朝時代を模したテーマパーク、パスとワールドを舞台に繰り広げられる近未来サスペンス・スリラー。


No.17 7点 美術館にもぐりこめ!
さがらあつこ
(2019/08/06 20:37登録)
ふしぎ美術館のお宝を狙って忍び込んだちょっとドジな泥棒3人組。彼らと一緒に美術館の裏側をのぞいてみましょう・・・そんなストーリーに乗せて紹介する美術館職業ガイド。
企画展がどのようにスタートするのか、絵や彫刻など美術品がどうやって運ばれ、展示されるのか、絵の並べ方や照明の工夫、収蔵庫の秘密。学芸員や警備員、空調管理や清掃員、受付や監視員など「美術館のプロ」たちの仕事ぶりから、美術館が誰でも訪れることが出来る公共施設として成り立っていることを立体的に知ることが出来る。「モナ・リザ」がトマトを持ち、マネ「笛吹き」は笛の代わりにきゅうりをかじって・・・作中描かれる展示品はさりげない世界的名画のパロディーになっており楽しい。


No.16 8点 戦火の馬
マイケル・モーバーゴ
(2019/07/27 09:21登録)
主人公は英国の片田舎の農場で暮らす美しい馬ジョーイ。第一次世界大戦勃発とともに愛する少年と引き離され、戦場の最前線に送られてしまう。
大地を引き裂く砲弾、鉄条網に引っ掛かりもだえ苦しむ仲間の馬たち。悲惨な現実が続く中でも、敵味方を問わず優しい人々との触れ合いも体験・・・。命を懸けた旅路の末にもたらされたのは「奇跡」。
物語はジョーイの一人称で進む。著者のライフワークでもある戦争の残酷さ、愚かさを馬の目を通して描いた卓抜なアイデアは舞台化され、高い評価を得た。スピルバーグが監督をし、映画化もされている。

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