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ミステリの祭典

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まだ中学生(仮)さんの登録情報
平均点:6.61点 書評数:119件

プロフィール| 書評

No.99 7点 are you listening? アー・ユー・リスニング
ティリ―・ウォルデン
(2023/10/25 22:38登録)
前半は現代米国を舞台にしたヤングアダルト小説そのままの展開。主人公は家にいられなくなった、自称18歳の女の子ビーと20代の初めから働き続けたあげく「今は麻痺したみたいに動けなくなったって」という車の整備工で27歳の女性ルー。
二人はルーの車でテキサス州を走ることになるのだが、お互い自分のことはあまり話さず、ぎこちない関係が続く。やがて少しずつ打ち解けそうになった時、不思議な猫を拾ったことがきっかけで、不気味な連中に追いかけられるようになる。
こういった流れに乗って、空や町や道など、まわりの情景が生き物のように動き、色がダイナミックに変わっていく。特に中盤当たり、派手なカーチェイスの場面から、二人が理解し合う廃屋のプールへの転換は息をのむほど見事。相手を思う気持ちが言葉にも絵にも美しく映し出される。「小説+絵」の楽しさがここにある。


No.98 7点 ペピーク・ストジェハの大冒険
パヴェル・チェフ
(2023/10/25 22:26登録)
いつも同級生にいじめられている男の子が青い石を拾い、青い本を手に入れ、転校してきた青い目の少女に出会うところから物語が始まる。
少女と町を冒険するうちに男の子は少しずつ自信を持つようになるのだが、川に張った氷の割れ目に落ちて肺炎になってしまい、一カ月寝込んで学校に戻ると、少女は消えていた。やがてその子から助けを求める手紙が。男の子は、目的地の灯台へ。
ある意味、子供っぽいファンタジーが、額縁に入れれば一枚の絵として飾られそうなくらい見事に描き込まれた絵でつづられていく。吹きだしの言葉にしがみついていないと、目眩のするような深みに引きずり込まれそうな気さえする。これこそ、グラフィックノベルならではの魅力だ。


No.97 7点 放課後レシピで謎解きを うつむきがちな探偵と駆け抜ける少女の秘密
友井羊
(2023/09/30 21:50登録)
夏希は高校二年生。陸上部を辞めた彼女は、同級生の結と調理部に入る。結は極度のあがり症で、人との会話も一苦労。二人が日常で遭遇する料理が絡む事件の謎を解き明かす中で、二人と周囲の人間関係も変わっていく。
猪突猛進タイプの夏希と、おとなしい結。対照的な二人のバディものであり、二人が事件と向き合うことで周囲と向き合い、他者との関係を、そして自身を変えていく物語。
料理のプロセスが、登場人物たちの抱えた悩みや秘密とも重なり合い、謎解きを支える。真摯なテーマを扱いつつ、爽やかな読後感を残す。


No.96 9点 ラブカは静かに弓を持つ
安壇美緒
(2023/09/06 22:06登録)
舞台は現代日本。主人公の橘は、音楽著作権管理団体に勤め、ごく平凡に日々の業務をこなしている会社員。
ある時、上司から呼び出された橘が、音楽教室への二年間の「潜入調査」を命じられるところから、物語の幕が開く。調査の目的は、著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。
人と人とが出会い、時を重ねて生み出される信頼という感情。そのかけがえのなさが、チェロの深い響きと共に真っすぐに胸を打つ。橘が最後に何を選び取るのか、ぜひ見届けて欲しい。


No.95 6点 ウィンダム図書館の奇妙な事件
ジル・ペイトン・ウォルシュ
(2023/08/10 23:42登録)
イモージェン・クワイの本職はカレッジ付きナースだが、学寮長から学生、時には警察に至るまで頼られ、ほとんど悩み事相談係になっている。
学生が図書館で変死を遂げ、折しも資産家からの寄付を受ける直前とあって、何よりもスキャンダルを恐れる学寮長が、イモージェンのもとに駆け込んでくるところから物語は始まる。
運営に四苦八苦する貧乏カレッジの苦労や、いじめやドラッグ、階級の問題など、現代イギリスの抱える問題がこの物語にも及んでいるが、この物語の主人公は、あくまで「ウィンダム図書館」なのだ。イモージェンが大切なものを手放すラストはビターだが、少し光明も感じさせてくれる。


No.94 8点 アディ・ラルーの誰も知らない人生
V・E・シュワブ
(2023/07/19 22:11登録)
一七一四年のある日、二十三歳の女性アディ・ラルーは強制的に結婚されそうになり、神々に自由と時間が欲しいと祈ったばかりに、無限の生と誰にも記憶されない呪いを与えられてしまう。家に帰っても両親すら彼女のことを覚えておらず、金を稼ぐことも難しいので、最初は売春でしのぐなど苦難の連続。だが、彼女は屈服せずに生活の基盤をととのえ、身近な芸術家たちと話をし、時にモデルになることで、キャンバスに、音楽に、物語に、自分自身の生きた証を織り込んでいく。
そうして三百年の月日が経った二〇一四年の古書店で、彼女は何日経っても自分のことを忘れない、奇跡の男性と出会う。なぜそんな男性が現れ、彼だけが記憶できるのか、と様々な疑問が湧いてくるが、読み進めるたびに答えが与えられていく。一度読み始めたら止められない推進力を持った、忘れられない物語だ。


No.93 7点 捜し物屋まやま2
木原音瀬
(2023/06/25 21:28登録)
占いで捜し物をする間山和樹と白雄の兄弟、ドルオタの徳広弁護士、元ひきこもりの三井が織り成す、少し怖くて愉快な事件簿「捜し物屋まやま」シリーズの第二弾。
小説家でもある和樹の担当編集者・松崎伊緒利の幽霊騒ぎから始まる。引っ越した新居で女の幽霊を見てしまった松崎。どうも前にその部屋に住んでいたシングルマザーで、今は失踪中らしい。彼女の小学生の子供は児童養護施設に預けられているという。その子から「ママは死んでない、ママを捜して」と頼まれたのだが。
コミカルな乗りで、実に楽しい。だが目を引くのは、その楽しさの中に忍び込む「異質なものの排除」の描写だ。しかし、その線を消したり飛び越えたりするのもまた人なのだと、本書は力強く且つ軽やかに伝えてくる。「エピローグ1」には感動。


No.92 8点 神様ゲーム
麻耶雄嵩
(2023/05/30 23:28登録)
ヒーローの否定、生々しい動機、衝撃的な結末、ネガティブな不条理感など、一部の子供には毒が強すぎるきらいもあるが、これが巧みに作られた本格ミステリであることは明らかだ。
この作者らしい過激な逸脱ぶりは、良くも悪くも強烈なインパクトがある。


No.91 7点 水の時計
初野晴
(2023/05/06 22:31登録)
童話の見立てになっている。童話とはオスカー・ワイルドの「幸福の王子」。だが、作中で起こる事件は見立て殺人などではない。なんと見立て臓器移植。貧しい人々のために自らのサファイアの瞳や全身の金箔を与えるという「幸福の王子」の行為は、云われてみれば、まさに臓器の提供に違いない。現実にはあり得そうもないはずの見立ての手法が、ここでは臓器移植というぎりぎりの現実を描くための武器になっている。
まさに本作における、脳死と診断されながら意識を保つ少女と暴走族の少年の関係は、幸福の王子とその瞳や皮膚を命懸けで運んだツバメとの愛の見立てにもなっている。その絆の煌めきに衝撃を受けた。


No.90 7点 深夜0時の司書見習い
近江泉美
(2023/04/09 22:19登録)
物語の舞台は、本を読んだ人の「登場人物」や「著者」に対するイメージが反映された架空の人物が出没する暗く怪しげな「図書迷宮」。ただしそれは深夜の話で、昼間は小さな私立図書館だ。
そこに夏休みの間ホームステイすることになった主人公は、図書迷宮を復興する役目をいやいや引き受けたのだが、そのためには寂れた市立図書館の利用者を増やし、本を読んでもらわなくてはならない。
高校生でベストセラー小説を一作出したきり姿を消した正体不明の作家と図書迷宮の関係など、いくつかの謎をめぐりながら、ユーモラスかつスリリングに物語が展開する。有名作品の世界を巧みに取り込みながら、謎解きもきれいに決まっている。


No.89 8点 辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿
莫理斯
(2023/03/16 22:32登録)
手柄を狙うインド人と中国人の警部や、部屋を貸した「後家さん」の生活が気になる大家、ライバル会社のたくらみを暴きたい商人。様々な人々が持ち込んでくる奇妙な事件を、諸葛孔明の再来と噂される名探偵、福邇が鮮やかに解決していく。
特に皇帝の従兄が血眼になって探す盗品を持つ女の秘密に迫る「親王府の醜聞」と、誘拐されたベトナム華僑の行方を追う「ベトナム語通訳」の2編は展開がスピーディーで読みやすく、謎解きにも捻りが効いている。
実在の人物や歴史的な出来事も織り交ぜながら展開される物語は、時代の空気や異国情緒もよく描かれ、シャーロキアンならずとも楽しめるでしょう。


No.88 5点 ブート・バザールの少年探偵
ディーパ・アーナパーラ
(2023/02/14 22:49登録)
架空の場所を舞台にしているが、スラム街、バザール、地下鉄の駅などの雑多でにぎやかな様子が少年の目を通して生き生きと描かれている。
少年ジャイが名探偵たらんと行動する、ワクワクした愉快さに満ちている一方、インド社会の複雑で悲惨な状況を見てとれ、やりきれない現実の厳しさや哀しさが漂っている。


No.87 7点 うそうそ
畠中恵
(2023/01/24 21:47登録)
舞台は江戸、廻船問屋兼種問屋・長崎屋の跡取り息子の「若だんな」こと一太郎は、体が弱くて伏せりがち。心配する親や手代の甘やかしぶりや気遣いときたら並大抵じゃない。でもそんな環境にあっても、若だんなは意外としっかり者。何より彼には、妖怪が見えて話ができる特別な力があった。そんな設定で、ミステリ仕立てのストーリーが展開する時代物「しゃばけ」シリーズの五作目。
地震の続く江戸から、箱根へ湯治に出かけた若だんな。誘拐されたり天狗に襲われたり、散々な目に遭いながら人間たち、そして人間ならざる者たちの抱える思いや悩みを解決へと導いていく。温かい気持ちになれる作品。


No.86 6点 菓子屋横丁月光荘 歌う家
ほしおさなえ
(2023/01/03 22:26登録)
埼玉県川越市が舞台。家の声が聞こえる不思議な力を持つ青年を軸に、過去と現在が緩やかに交錯していく。心に傷を負い、人と関わらないように生きてきた守人だが、縁あって蓄70年の古民家の管理人をすることに。
川越という街並み、そこに流れる穏やかな時間、古いものの美しさ、人のつながりの豊かさ。本を片手に川越を歩いてみたくなるファンタジーミステリ。


No.85 7点 空き家課まぼろし譚
ほしおさなえ
(2022/12/13 21:16登録)
「海市」という架空の街の空き家をめぐる物語。建物には、様々な人の営みの歴史がある。一枚の写真から、撮影の瞬間を映像として再現する力を持つ少女が登場して謎を解く。
ファンタジーやミステリの要素に引き込まれつつ、不可逆的な時間への切なさが滲む。


No.84 7点 あかずの扉の鍵貸します
谷瑞恵
(2022/11/22 23:04登録)
人の心には記憶が蓄積していくが、それは家もまた同じ。この作品は、さまざまな人の大切な記憶を閉じ込めた、奇妙な洋館の温かい物語。
洋館の作り方や室内のレリーフの描写が非常に楽しく、こんな屋敷があるなら行ってみたいと思わせる。下宿人たちが抱える事情はみな複雑だが、困っている人に手を差し伸べずにはいられない朔実と、距離を置いて冷静に見守る風彦、どちらのスタンスも思いやりがあって心地よい。朔実が少しずつ風彦に恋心を抱く過程や、謎めいて見えた彼の人間味が見えてくる様子も胸をくすぐり、作者ならではの醍醐味がある。
人の心の「あかずの扉も、無理やりこじ開けようとせず、開かれるタイミングを待つことが肝要と感じさせてくれる。心優しい「館もの」として楽しませてくれる。


No.83 7点 天方家女中のふしぎ暦
黒崎リク
(2022/11/07 22:12登録)
舞台は昭和五年。主人公の結月は、16歳にして天涯孤独で訳ありの少女。霊感が強いことから周囲から気味悪がられていた。奉公先を追い出され、田舎から都会に出て仕事を探し、天方家で女中として雇われることになる。
天方家は穏やかな主人の涼と朗らかで天然な閑子夫人、素っ気ない14歳の息子漣の一見普通の三人家族。しかし、実は怪現象が次々起こることから、女中がすぐに辞めてしまう、いわくつきの家であった。
結月は主人の怪しい仕事を手伝わされたり、息子の式神に見張られたり、子犬の霊につきまとわれたりと、奇怪な出来事に大忙し。さらに何か大きな秘密があるようで。不思議な日常と奇妙な事件を描く昭和ロマンあふれる和風ファンタジー。


No.82 5点 コカチン 草原の姫、海原をゆく
佐和みずえ
(2022/10/15 22:11登録)
モンゴルの史実から着想を得て生まれたファンタジー小説。元の皇帝フビライ・ハンの愛娘コカチン姫はおてんばな性格。タカ狩りを楽しみ、草原を駆け回る彼女はある日、遠方にあるイル・ハンの国の王の花嫁にと望まれる。
姫たち一行は海路でイル・ハン国に向かうが、海賊や鬼女、悪魔が道中で待ち受ける。持ち前の勇敢さで困難を切り抜ける姫の姿が痛快だ。
ただ、正義感から先々で事件に首を突っ込み、危険にさらされることも。姫の窮地を救うのは、旅の随行者でイル・ハン国からの使者パルス。当初は反感を抱く姫だったが、交流を重ねるうち彼の存在が大きくなっていく。ヒロインの心の成長も読みどころ。


No.81 7点 夏休みの空欄探し
似鳥鶏
(2022/09/18 21:49登録)
部員二人のクイズ研究会会長で高校二年の成田頼伸(ライ)は、クラスで「じゃない方」と呼ばれている。同じ名字でダンス部所属の人気者、清春(キヨ)が同級生だからだ。キヨとは仲良くできないと感じていたライだったが、夏休みのある日、ひょんな縁で出会った姉妹も一緒に、四人で暗号を解くことになる。
謎の人物が作成したクイズに挑む青春恋愛ミステリ。問いの答えは次の問題の在りかを示し、四人は各地を移動しながら出題者を追うこととなる。
友達が少なく、会話も苦手なライはキヨに劣等感を抱き、一方のキヨは自分にライほどの豊富な知識がないことを嘆く。友情を深める過程で互いの長所を発見し、それぞれの恋を応援する様子がほほえましい。


No.80 6点 ガラスの魚
山下明生
(2022/08/26 22:36登録)
戦後7~8年がたった瀬戸内の島が舞台。足の怪我をこじらせて夏休みを棒に振った中学生のアキラが、夏休み最終日に校門前で謎の死体を発見するところから始まる。
事故か事件か。捜査が始まるが、松葉づえ姿を「かかし」とからかわれたり、父らしき人物が島に現れたり、1学年上の少女に夜釣りを教えたり、ヤクザに命を狙われる青年をかくまったり。次々と起こる出来事に心は泣いたり笑ったり、絶望と希望の間を揺れ動く。
最終章で級友と自転車のチキンレースの結末が清々しい。思春期に差し掛かり、壁を乗り越えていく少年の心模様に共感する。

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