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ミステリの祭典

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あかずの扉の鍵貸します

作家 谷瑞恵
出版日2021年10月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 まだ中学生(仮)
(2022/11/22 23:04登録)
人の心には記憶が蓄積していくが、それは家もまた同じ。この作品は、さまざまな人の大切な記憶を閉じ込めた、奇妙な洋館の温かい物語。
洋館の作り方や室内のレリーフの描写が非常に楽しく、こんな屋敷があるなら行ってみたいと思わせる。下宿人たちが抱える事情はみな複雑だが、困っている人に手を差し伸べずにはいられない朔実と、距離を置いて冷静に見守る風彦、どちらのスタンスも思いやりがあって心地よい。朔実が少しずつ風彦に恋心を抱く過程や、謎めいて見えた彼の人間味が見えてくる様子も胸をくすぐり、作者ならではの醍醐味がある。
人の心の「あかずの扉も、無理やりこじ開けようとせず、開かれるタイミングを待つことが肝要と感じさせてくれる。心優しい「館もの」として楽しませてくれる。

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