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ミステリの祭典

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レッドキングさんの登録情報
平均点:5.28点 書評数:958件

プロフィール| 書評

No.818 6点 ハイヒールの死
クリスチアナ・ブランド
(2024/04/25 18:21登録)
クリスチアナ・ブランド処女作。高級ブティック舞台の毒殺事件。容疑者は、美女店員6人に美女でない少女1人、女たらしオーナー、おかまマネージャー(+お掃除オバさん)。毒薬の入手と仕込み、動機のWhoHow何よりWhyの見やすい一覧表付きパズルミステリで、Whoは納得、Why(Aでなく~Aの為)は面白く、Howは・・ちと後出しかな・・と。


No.817 4点 箱の中の書類
ドロシー・L・セイヤーズ
(2024/04/22 23:48登録)
手紙と供述書で叙述され、第一部の実に魅力的なサスペンスと、第二部の肩すかしHowミステリから成る、竜頭蛇尾の二部構成。被害者ジョージ・ハリスンで息子がポール・・Beatlesか(^^) あの貴族探偵、出て来ない方が面白いな、セイヤーズ。毒物がキノコか合成物質か解明するのに、生化学どころか、なんちゅう形而上学的、神学的会話・・ダンテ訳者の面目躍如か、セイヤーズ・・ああ、何とか言う著名人の協力付き作品なんだっけ。


No.816 4点 フレンチ警視最初の事件
F・W・クロフツ
(2024/04/19 23:14登録)
クロフツ第三十二作。如才なく世渡りする半汚れ色男と、少し愚かなお人好し女。犯罪には違いないが、断罪するにはイジマし過ぎる男女のピカレスク譚・・かと思いきや、自殺以外考えられない、「開かれた密室」殺人トリックのミステリへと、急速な方向転換。「密室」不可能トリックは、クロフツでなければ、リンゴぶつけたくなるレベルの後出し「機械」トリックで、ま、クロフツだからね。「判断材料は全て出したよー(犯人、当ててごらん)」てな、読者挑戦状付き。(ん、全て開示してるか?)


No.815 5点 ブラック・ハート
マイクル・コナリー
(2024/04/17 22:16登録)
ヒエロニムス・ボッシュシリーズ第三弾。今回は主役刑事が被告の法廷物、かつ、Whoダニットミステリ。敵は主張・戦略ともに「正しき」美人弁護士・・名前、ハニー・チャンドラー(^.^)って・・。刑事が4年前に射殺した殺人鬼の遺族による糾弾告訴と、既に亡き犯人と同手口の事件発生による冤罪疑惑。もしも裁判が、のっぴきならない刑事告訴で、解決困難な絶望的陥穽・・とかならば緊張感溢れる展開となったろうが、2$罰金を争う民事裁判で、ミステリとしてのWhoダニット解明も、あまり外連味の無い「意外な犯人」であった。話としては、一気読み出来る程に面白い文庫本上下の六百数十頁で、1点オマケ。※ところで前話までの憎まれ役ヤナ奴上司、すっかり丸くなっちゃったなぁ。


No.814 4点 牧神の影
ヘレン・マクロイ
(2024/04/14 19:10登録)
これも対独(チョびっと真珠湾)戦時下の匂いのする暗号解読・・ここまで行くともう数学(?_?)・・小説、かつ、山小屋舞台の暗闇と静寂の恐慌(パン-ニック)サスペンス、かつ、盲目の犬と暗号に絡めたWhoダニットミステリ。ところで、英語アルファベットに熟達した人なら、あのオチって愉しく理解できんの?


No.813 7点 水の墓碑銘
パトリシア・ハイスミス
(2024/04/12 20:35登録)
次々とオトコを拵える愛人依存症の妻と、それをシニカルに「許容」する夫。仏貴族のコキュ気取りや、我が国「スジモノ」が、女房にツバメや色事師持たせ悦に浸る「文化」とは違い、ピューリタン米国となると・・。ドストエフスキー的マゾヒズムの陰気な虚栄が、乱歩「踊る一寸法師」の狂気の狂喜へと暴発し・・ミステリとしては、言わば、ホワットダニットインサイド。この作家、「ミステリ」の尺度で採点するのは「勿体無い」思わせる人の一人。「本格」でなくとも、やはり点数オマケせざるを得ん。


No.812 5点 センチメンタル・シカゴ
サラ・パレツキー
(2024/04/08 07:07登録)
サラ・パレツキー第三作。カトリック大司教の不正資産マネーロンダリング目的の会社乗取り陰謀を巡る、教団秘密勢力 vs 一匹狼ハードボイルド女探偵の・・虚々実々駆け引きでなく・・超パワー肉弾バトル。カトリック vs 民主党王道(今で言う「リベラル穏健派」ね)価値観対立を背景に、愚直に明確に「リベラルかつフェミニズム(たーだ経済的エリート)」側へ肩入れしたバトル。面白い!断然点数オマケ。

※わが日本では、カトリックのみならず耶蘇教全般(及び某左翼政党)は、マイナーであることで、「腐敗」から免れていて幸運だったね・・メジャーになれば、それまでだけどね。

※ある種の女流作家に点数オマケし過ぎのMy傾向を、フカク反省<(_ _)> し、点数調整。


No.811 5点 私が捜した少年
二階堂黎人
(2024/04/04 20:22登録)
幼稚園児にして「ハードボイルド」口調探偵:シンちゃんシリーズ短編集。
 「私が捜した少年」 女子大生アパートからのヤクザ消失。カー名作の応用ナカナカ(パクリ言ったらそれまでだが) 7点
 「アリバイのア」 レコード演奏時間のアリバイトリック・・んなもん、知らんわ! 2点
 「キリタンポ村から消えた男」 失踪した殺人犯ヤクザの行方と消失トリック・・女紛れネタならなぁ(アキレスか) 5点
 「センチメンタル・ハートブレイク」 愛人殺し航空機アリバイトリック・・クロフツか!5点
 「渋柿とマックスの山」 スキーゲレンデを舞台にした殺人アリバイトリック。6点 ・・・で、全体平均で5点。

蘭子ちゃんシリーズの本格風味は良いが、サトル君物の痛くスベるギャグセンスから、懸念して読んだが、ナカナカに面白いジャン!はーどぼいるどシンちゃん。


No.810 5点 ミステリー・オーバードーズ
白井智之
(2024/04/03 21:27登録)
五編からなる短編集。
「げろがげり、げりがげろ」:平行世界SF設定・・これがまた感官にエゲツなくねじ込んでくるグロコミカルなトンデモ設定で・・の二重時間トリック(ま、錯覚やね)に、7点。
「隣の部屋の女」:マンション住まい妊婦の日常サスペンスが、叙述トリック転倒して女流イヤミス風エンドに。6点。 
「ディテクティブ・オーバードーズ」:4人の手記から2×2の事象を挙げての、あまりにもマニアックなロジック展開・・せっかくなので最後まで付き合った・・で、取りあえず感服<(_ _)>。(麻耶雄嵩「木製の王子」のあのアホみたいに精緻な時刻表も改めて追ってみるか(*_*; )・・。この人のロジック力、麻耶雄嵩夕木春央早坂吝等より凄いかもね。もっとも、この作に限ってみても、①犯人は一人 ②同じ幻覚は二人以上は見ない てな大前提が条件の、「穴」あるロジックだけどね・・オマケして8点付けちゃう。
その他、「グルメ探偵が消えた」「ちびまんとジャンボ」は各2点、で、平均で、5点。


No.809 8点 罪なき血
P・D・ジェイムズ
(2024/03/30 01:52登録)
学者で不妊症の養父と赤面症の養母に育てられ、大学入学を前にした18歳少女が知る事になる実親の正体は、通りがかりの幼女を犯した男とその幼女を殺した妻であった。無期刑釈放の実母を引き取り共同生活を始めるヒロインと、犯人の「処刑」に余世を賭ける殺された娘の父親。二人の交互視点で進む、暗く虚無的な小説にして、詩的で変に美しい濃密なロマン・・かつ、物語の骨格にさえなるWhatダニットどんでん返し(及び伏線)・・嗚呼! げにフィリス・ドロシー・ジェイムズ真骨頂此処に在らず哉?


No.808 4点 メーラーデーモンの戦慄
早坂吝
(2024/03/25 20:46登録)
娼婦にして女子高生探偵:上木らいちシリーズ第五弾は、「ガラケーユーザー」連続殺人事件。Why(ガラケー撲滅)のWho? 真相は・・まあ想定内のヒネリであった。主役キャラにしては、ちとエロチシズムに欠けるSMネタと、麻耶雄嵩「木製の王子」等同様に、まともに追う気にもなれない程マニアック・・良くも悪くもすげえなあ、京大ミス研卒・・なロジック。
(※実は、自分も「ガラパゴス・ケータイユーザー」なんだよ、とこっそりカミングアウト(^^) )


No.807 2点 少年探偵ロビンの冒険
F・W・クロフツ
(2024/03/22 21:34登録)
クロフツ第三十一作は、少年向け(ジュヴナイル言う奴ね)探偵物。といっても、そこはクロフツ、十八番どころか三十六番位の鉄道ネタが、相も変わらず執拗に詳細にマニアックに、ブレない言うか、大人げない言うか。「トムソーヤーの冒険」「スタンドバイミー」の「かつて少年だった君たちへ・・」郷愁センチメンタリズムには、遥かに遠かったが。


No.806 6点 妻を殺したかった男
パトリシア・ハイスミス
(2024/03/20 22:32登録)
パトリシア・ハイスミス第三作。原題は「粗忽の人」。気分の起伏が激しい男が捕われる空想上の妻殺しと「憤怒」という大罪。現実の殺人者や偏執狂刑事と演じられる・・まるでラスコーリニコフとスヴィドリガイロフ、ポルフィーリーの関係の様な・・共振と嫌悪、嗜虐と自虐の悲喜劇が、カフカやディクスン・カーレベルのグロテスクなシュール劇へと飛翔して・・すげえなあ、パトリシア・ハイスミス。点数オマケ。


No.805 6点 ブラック・アイス
マイクル・コナリー
(2024/03/17 21:25登録)
ヒエロニムス・ボッシュシリーズ第二弾。「ブラック・アイス」・・コカインにヘロイン+1種ブレンドの「スーパー麻薬カクテル」と、「凍った道路」のダブルミーニング。カルフォルニアとメキシコ繋ぐ麻薬コネクションを巡る一匹狼刑事のハードボイルドで、闘牛アクションのオマケ付き。ミステリとしては、絵に描いた様な「あの」古典ネタだが、「あれは、今では通用しないゾ」クレームを逆手に取ったトリックであった・・使い様だな「科学的」証拠。


No.804 5点 キャロル
パトリシア・ハイスミス
(2024/03/09 12:30登録)
パトリシア・ハイスミス第二作。ミステリどころかクライムですらなく、相手が異性だったら「ふつう」の恋愛小説。アガサ・クリスティーの非ミステリ諸作同様、このサイトで挙げるべき作ではなかろうが、せっかく登録したんで大いにオマケして5点も盛っちゃおう・・チョビっーとだけ、さすぺんすフルでもあるし・・。

※以前に我が国で、ある中年女が、女友達の幼い娘(だったか)を殺害した事件があった。女の夫である寺住職は、「妻は殺した子の母親の事を、とても好きだったんだと思います。」と述懐した。(松浦理英子には無理でも、沼田まほかるなら、この事件を小説にできただろうか)


No.803 7点 エレファントヘッド
白井智之
(2024/03/06 08:41登録)
「縦系列タイムワープ」ではなく「横並列パラレル世界」が主ネタの「SF」と、作者十八番の超絶ブっ飛びトンデモトリックの結合具合が半端なく凄い。元々、脱力レベルの「SF」設定と、笑いたくなる位のグロヘド描写が「ウリ」の作家だが、今回、また輪をかけて・・・。真相より一つ前のダミー解釈、「寒暖」「満空」パラレルパラドックスのトリックがグンバツに面白く\(^o^)/。(真相は結局、パラレルよりタイムワープに比重傾いちゃうもんね)
※にしても、こんな事言うの野暮だが、「哲学」やイデオロギーを現実政治に持ち込む愚かさに比べれば、全然、罪ないけれども、理論物理学の、「数学」または「形而上学」的論拠から、小説拵えちゃうってのはなぁ・・・やっぱヤボだな、やめとこ。


No.802 6点 見知らぬ乗客
パトリシア・ハイスミス
(2024/03/03 22:31登録)
パトリシア・ハイスミス処女作にして、この手のネタの元祖とか。それだけでも「心理的密室」「顔無し殺人」「葉を隠すなら森」等の、「ビッグボウ」、ドイル?、チェスタトン等と並べられる資格ありと言えますまいか? 情緒不安定な建築家が、偶然列車に乗り合わせた中退学生の狂気に巻き込まれて行く、そのイカれ具合・・「六号病棟」やイワン・カラマーゾフ思い出す・・が痛ましくも悍ましい。


No.801 5点 双蛇密室
早坂吝
(2024/03/02 20:35登録)
娼婦女子高生探偵:上木らいちシリーズ第四弾。「双蛇密室」て、ん?新機軸の和風ホラー系狙い?思いきや、標題通り「ヘビ密室」2部屋付きミステリ。これがまた、超々トンデモな、しかも白井智之風「SF」設定でない「バカリアル」ネタで。この作者、展開はブッ飛んでるが、文章簡明で、描写がグロ汚くならない・・含蓄なく平板とも言える・・ね。


No.800 2点 列車の死
F・W・クロフツ
(2024/02/28 23:14登録)
クロフツ第三十作。タイトルの「列車の死」、”列車「での」死" (On a train)・・十八番トラベル犯罪物・・ではなくて、”列車「の」死" (Of a train)・・まんま列車が死んじゃう話・・だった。英米にとって、ヒトラーとの原爆開発競争は、愛国どころか死活問題なの分るが、落とされた日本国民としては、素直に感動はデキンよ、フレンチの「特攻」。


No.799 5点 小鬼の市
ヘレン・マクロイ
(2024/02/22 21:54登録)
いかにもな本格風タイトルだが、第二次大戦下カリブ海を舞台にした、ハードボイルド風味スパイサスペンス。米国作家だから、当然にドイツ主敵、日本副敵(決して「反日」ではない)、対スペインあんびばれんと。インディオにラテン及びカトリックが混合した、中南米独特の血生臭さい切なさ・・ブードゥー教・マカロニウエスタン・「百年の孤独」にも通底した・・が匂い立つ。ミステリとしては、「驚き」の人物ツイストてところか。

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