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ミステリの祭典

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レッドキングさんの登録情報
平均点:5.27点 書評数:888件

プロフィール| 書評

No.748 3点 五匹の赤い鰊
ドロシー・L・セイヤーズ
(2023/09/29 06:52登録)
ドロシー・セイヤーズ第六作。釣り人か絵描きしかいない(!)村。トラベルメーカーの画家が撲殺されて、容疑者は6つの原因・・民族感情、妻を巡る嫉妬、名誉、釣り場争い、敷地境界抗争、他一つ・・による六人の画家だが、うち五人はニセ物=「赤い鰊」。ニセ油絵アリバイ工作、巻頭詳細地図、丁寧な時刻表、オマケに異色の読者挑戦状まで付いている。にしても、超クロフツ、なんと退屈(必ずしも否定だけの意味でなく)なミステリ小説・・「黄色い部屋」「学寮祭の夜」なみに・・英国の暇な読書士ならば余裕演じて楽しめるだろうが・・
※「わっしは捜査しとるがです」「けんど濃厚だがでのう」等、和訳者工夫してるが、スコットランド方言のニュアンス再現難しいなぁ。我が国で、小地方の方言を笑い嚙み殺して「見下す」のと同様なのか、イングランド - スコットランド関係。なんか、違う気が・・・。


No.747 7点 黒い塔
P・D・ジェイムズ
(2023/09/24 22:07登録)
海と霧の断崖に建てられた、曰くある”黒い塔”付き半宗教的介護施設。自己陶酔信仰の経営者、狷介・奇矯・固陋な男女入所者と看護介護者たち。病気療養を兼ねて訪れた詩人警視が出会う、過去現在の”怪死”・・自殺?事故?の連続。ベートーヴェン弦楽四重奏15番あたりの最も"シブい"部分だけで奏でられるような、気だるく重苦しく、かつグロコミカルな小説。いったい何が起きているの?Whatダニットが、僅か最終部で一気にミステリ解明しながらサスペンスエンドする。サスペンスともかくミステリ真相は肩透かしで、”黒い塔”はじめトリッキー味もなく残念。が、小説としてのシブみ味に点数オマケ加算。ドロシー・ジェイムズなんで。


No.746 4点 暗黒女子
秋吉理香子
(2023/09/23 16:48登録)
おおおお、探してみたら、この文庫本は家の本箱にあった!
(よく見ると「殺人鬼フジコ」「鬼畜の家」とか他作家のもいろいろあるなあ。何で採点してないんだろ。)


No.745 5点 聖母
秋吉理香子
(2023/09/23 16:28登録)
おお、こんなのあったなあ。何年か前、図書館で「一気読み」した記憶が。テクニカルな「叙述もの」だったはず。
あの頃、この手のや、女流イヤミスもの・・フジコなんたら・・とかに凝ってたなぁ。
※記憶なんで、点数は暫定でご勘弁を m(__)m


No.744 6点 ささやく真実
ヘレン・マクロイ
(2023/09/19 22:48登録)
ヘレン・マクロイ第三作。被害者は富豪の超美魔女。海辺の屋敷に集った、と言うより、集わされた容疑者の男女・・ジゴロの如き美形年下夫、夫の元妻、女の会社の支配人、冴えない科学者、ワケあり風の娘・・。殺人事件が起こり、全ての容疑者には、それぞれにもっともな動機があり、タイトでロジカルでスリリングで、しかも情感タップリなWhoダニットミステリ。偶々、殺人現場を「目撃(実は耳撃)」した探偵の摘発したWhoと、その根拠や如何に・・・
※ 時期を逸したロマンは「グロテスクに堕ちる」・・哀れやのう、老いらくの恋・・男女問わず。
※ 「恥(はじ)」と「始(はじ)まる」・・訳者、工夫したなぁ。


No.743 5点 大菩薩峠
中里介山
(2023/09/18 20:46登録)
ついでにこれも。これは凄い。文庫本数十冊に及ぶ超大長編浪漫。剣豪小説・・ほぼチャンバラ劇画・・に始まり、信じがたいまでに複雑壮大化して行く主題・・ついには、ファンタジー・信仰書のレベルに・・結局、未完・・ミステリアスに終わるけれどね。そこがまたよい。


No.742 4点 邪宗門
高橋和巳
(2023/09/18 20:44登録)
「飢餓海峡」の事書いてたら突然これも思いだした。こっちは、明治期に誕生し、昭和にかけて大教団化しながら、国より凄惨な弾圧を受けて崩壊した新興宗教「ひのもと救霊会」(大本教て言う実際のモデルあり)の群像劇。もちろん本格でもなんでもないが、宗教自体がミステリなんで、そのテーマの稀有壮大さに敬意を表して・・でも、山本周五郎水上勉なんかより小説は下手だなあ、高橋和巳。


No.741 3点 飢餓海峡
水上勉
(2023/09/18 20:39登録)
「飢餓海峡」! おお懐かしい。松本清張「ゼロの焦点」や映画(清張でなく)「砂の器」、「白夜行」や「火車」なんかと同様に、The twilight(darkでなく) Side of The modan日本 の半ピカレスク浪漫やね。


No.740 4点 毒を食らわば
ドロシー・L・セイヤーズ
(2023/09/16 23:06登録)
ドロシー・セイヤーズ第五作。最近評したクロフツ諸作や、それ以上に後期クイーン作品に頻出する有罪判決条件の、必要条件:「犯人で在り得る(その可能性がある)」と、十分条件:「犯人でない事は在り得ない(明晰判明である)」の問題が、冒頭の裁判シーンで鮮やかに描かれる。判事自身、被告側には無罪証明(=必要条件の否定=「在り得ない」の証明)の義務はなく、検察にこそ有罪の十分条件(=明晰判明)の証明が求められると宣言をする・・・すなわち、「疑わしき状況」だけでは無罪、があくまでも大原則だ、と。が、そんな裁判の大原則では話にならず、主役「貴族探偵」は、被告以外の真犯人の有罪を明晰判明にする事(できたか?)で、被告の無罪を証明せざるを得ない、そりゃ、ミステリ小説だからね。


No.739 7点 殺す手紙
ポール・アルテ
(2023/09/15 22:55登録)
ヘレン・マクロイ「月明かりの男」同様、これまたナチススパイもの。親友からの手紙に書かれた奇怪な指示どおりに、目的の見えない行動を起こす傷心の男。幻覚の如き危機展開と悪夢の様な逃走劇。舞台ドンデン返しに予期せぬ殺人事件が混入し、ディーヴァーツイストをテンポ良くショートカットさせたジェットコースター展開が、あっと言う間に二重三重返りして、ラスト落ちも決まる。こういうのも書くんだな、ポール・アルテ。


No.738 6点 月明かりの男
ヘレン・マクロイ
(2023/09/15 22:54登録)
ヘレン・マクロイ第二作。対独(対日もオマケ)戦時下の米国大学で起きる連続殺人のWho・Whyミステリ。加えて全編被うナチススパイねたがサスペンスしてて面白い。如何にもクセある教官、理事、学生ら容疑者達。逃走者の風体が目撃者三人三様に異なる「心理」ロジックや、供述の虚偽を見破る客観的ロジック・・読み返せば見取図ないままにキチンと描写されてた・・が、美味しい。「事実を述べる時には心情は隠されるが、本音が出て来ると物語=噓が始まる」・心理的推理良いが、客観的証拠のタイピングネタがいまいち。


No.737 2点 ベローナ・クラブの不愉快な事件
ドロシー・L・セイヤーズ
(2023/09/12 23:03登録)
ドロシー・セイヤーズ第四作。前作「不自然な死」に続き相続殺人もの。クラブで死体で見つかった老軍人。当初見立てられた自然死が、「捻くれた」遺言書に死亡順番が絡む毒殺疑惑へと変じ、居合わせた「貴族探偵」が首を突っ込み、真相は、前作に輪をかけてシンプル(=ひねり無さすぎ)な相続金目当Whoダニットだった。
※英国の「クラブ」って、男性専用かつ極めて階級的な存在に思えるが、大富豪貴族ボンボンとカミさんに喰わせて貰ってる失業軍人上がりが、一緒のクラブに加入しているって普通なのか? 会費、どれ位なんだろ。


No.736 4点 死の舞踏
ヘレン・マクロイ
(2023/09/09 22:36登録)
ヘレン・マクロイ処女作。怪死した社交界(どんな世界じゃ)売出しの少女。容疑者・・影武者の従妹、少女の継母、そのツバメの画家、伯父、執事、コンサルタントの女、求婚実業家、ゴシップ屋・・達によるWho・Whyミステリ。
※クリスティ「鏡は横にひび割れて」、て言うより、映画「クリスタル殺人事件」思い出す。動機は「違う」けどね。


No.735 3点 不自然な死
ドロシー・L・セイヤーズ
(2023/09/07 20:37登録)
ドロシー・セイヤーズ第三作。暇つぶしの好奇心から、自身には何の関係もない老婆の死に、犯罪の臭いを嗅ぎ付けて嗅ぎまわる「貴族探偵」。しかも、公僕の友だち巻き込み、女スパイまで雇って・・都合よく別件起きるけどね(*^^*)
※この作の、真の主題=裏のテーマは、lesbian版「Farewell, My Lovely」だな。


No.734 4点 すり替えられた誘拐
D・M・ディヴァイン
(2023/09/05 21:37登録)
ディヴァイン第八作(これで全13作の邦訳揃った)。原題は、"Death Is My Bridegroom"=「死が我が花婿」。詩的な死を感傷しながら、身体の痛みを恐怖した女子大生の悲惨な最後。実の花婿と名目の花婿、二人の死を迎えた大学職員の女。初めての男に宿命の花婿を重ねた少女。そして、最後のヒロインが、人を愛せなかった学者の男の心の壁を砕き、死ではない生きた花婿を得るのか、の希望は余韻として残る。サスペンスロマンとしては見事。ミステリとしては・・あと、一トリック、一捻りあれば・・6~7点だった(かな)。
※てことで、ディヴァイン全十三作の採点を完了したが・・順位付けは止めとこ・・


No.733 7点 死体の汁を啜れ
白井智之
(2023/09/02 22:19登録)
識字力喪失のミステリ作家、守銭奴(「パンツ売ろうかナ」)女子高生、悪徳の美人刑事、深夜ラジオマニアのヤクザ・・奇矯極まる面子による、架空小都市を舞台にした連作短編集。
   「豚の顔をした死体」・・皮を剝がされ豚の頭を被せられたヤクザ組長死体のWhy。5点 
   「何もない死体」・・手製ギロチン惨殺巡るトリック解釈のファンキー三段落ち。8点(長編に膨らませてほしい) 
   「血を抜かれた死体」・・逆さ吊り男女惨殺死体と仰天密室How(斬新な密室ネタに間違いなし)。8点 
   「膨れた死体と萎んだ死体」・・アリバイトリックのトンデモ(笑)顛末のロジック。6点 
   「折り畳まれた死体」・・展示処刑具で死んだ少年・・からのツイストちょっとイイ話、からのbadな・・ 6点 
   「屋上で溺れた死体」・・水無き屋上で水死したカルト教祖の謎(これワラける)。5点 
   「死体の中の死体」・・大女の屍体に縫い込まれた子供の死体のWhy・What。8点(これも長編にできるな)
   「生きている死体」・・四肢切断され眼球抉られ鼓膜破られ・・残虐ここに極まる殺人未遂事件の顛末。5点
各編冒頭に付く、探偵役作家のライバル(と言うより宿敵)ミステリ作家の事件コメントが、中学生レベルなのに、一回りして「正解」着地てな趣向に唸らせられる。全体で、7点。


No.732 8点 イン・ザ・ブラッド
ジャック・カーリイ
(2023/08/30 20:59登録)
作者第五作。「毒蛇の園」は、「リベラル派」富豪一族の偽善を嘲る劇画だったが、これは、「白人至上主義・宗教右翼」の偽善(むしろ偽悪かな)を暴く戯画。ミステリであり、かつ、SFを掠めたファンタジー、いやもう、メルヘン! この、信じられないまでの「希望」は、信じたい気にさせられる。
※ミステリとしてはオマケしても、5点だが・・もう、おーまけにオマケ(^^♪・・8点!


No.731 2点 雲なす証言
ドロシー・L・セイヤーズ
(2023/08/28 00:01登録)
ドロシー・セイヤーズ(ミドルネーム「L」入れないと作者お冠だったらしい)第二作。主人公「貴族探偵」の妹の婚約者が「射殺」され、主人公の兄にあたる「公爵」に殺人容疑が。兄を絞首刑から救うべく奔走(どう見ても愉しみ半分)する弟「貴族探偵」。だが、肝心なアンちゃん本人がアリバイ証言を頑なに拒み・・真相は「本陣殺人」「そして誰も~」等であった・・・なかなかに面白く、でも、「密室」「不可能」じゃないのがねぇ・・


No.730 3点 誰の死体?
ドロシー・L・セイヤーズ
(2023/08/24 20:53登録)
ある朝、民家の風呂場に突如出現した死体と、離れた屋敷から消えた金融家ユダヤ人。二人の相貌は似て非なる・・・
ん?「唇の捩れた男」オマージュ?てワクワクさせといて・・・ありゃりゃあ・・(+o+)。
※「貴族探偵」のおカアちゃん(先代公妃!)とイカにもな英国執事キャラがgood、1点オマケ。


No.729 5点 蜘蛛と蠅
F・W・クロフツ
(2023/08/22 22:05登録)
クロフツ第二十六作。邦題「蜘蛛と蠅」。蜘蛛=金貸し・恐喝者。惨めな蠅達が絡み取られる蜘蛛の巣は、賭博と情事と「好事魔多し」・・いつの世も。十八番のアリバイトリックに犯人Whoネタがタイトに決まり、素人女探偵達のプチ冒険譚も付く。前作同様、必要条件=「犯人であり得る」だけで、確証のないまま、有罪=絞死刑の危機が迫る被告。しかも官憲に悪意はない(こういうのは、もう勘弁してほしく)。今回、フレンチは救い主役だが、活躍は脇役。

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