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ミステリの祭典

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見知らぬ乗客

作家 パトリシア・ハイスミス
出版日1972年02月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 6点 レッドキング
(2024/03/03 22:31登録)
パトリシア・ハイスミス処女作にして、この手のネタの元祖とか。それだけでも「心理的密室」「顔無し殺人」「葉を隠すなら森」等の、「ビッグボウ」、ドイル?、チェスタトン等と並べられる資格ありと言えますまいか? 情緒不安定な建築家が、偶然列車に乗り合わせた中退学生の狂気に巻き込まれて行く、そのイカれ具合・・「六号病棟」やイワン・カラマーゾフ思い出す・・が痛ましくも悍ましい。

No.2 5点 E-BANKER
(2017/09/22 21:52登録)
「リプリー」(「太陽がいっぱい」)で広く知られるP.ハイスミスのデビュー長編がコレ。
発表の翌年にはヒッチコック監督で映画化もされた作品。
1951年の発表。

~新進建築家のガイは、妻と離婚するために故郷へと向かう列車のなかで、ひとりの青年と出会う。ブルーノーと名乗るその男は富豪の息子で、父親を偏執的に嫌悪していた。ガイが彼に妻とのトラブルについて打ち明けると、ブルーノーは驚くべき計画・・・『交換殺人』を持ちかけた。心理サスペンスの金字塔として読み継がれるハイスミスの処女長編~

本作のテーマは紹介文のとおり『交換殺人』。
昨今では『交換殺人』をテーマとするミステリーも増殖していて特に珍しくもない。
書き方としては、犯人視点となるのが殆どだから、どうしたって「倒叙形式」になる。
だから、フーダニットはもちろん、ハウダニットやホワイダニットという部分の興味は最初から期待薄となってしまう。
それは本作も同様。
ということで、心理サスペンス的なアプローチとなるわけだろう。

それ自体はまぁいいか・・・という感想になるんだけど、最近の「交換殺人」テーマっていうと、某法月氏の「キングを探せ」をはじめ、トリッキーで捻りの効いたものを期待してしまうだけに、本作に対してはどうしても「地味ィー」って思ってしまう。
でもそれは、“ないものねだり”っていうこと。
こういうテーマを生み出してくれたor広めてくれた作者には感謝。

本筋としては、う~ん・・・如何せん中盤がまだるっこしいよなぁー
ブルーノーがアルコールに溺れて狂っていく様子や、罪の意識に犯されるガイの心理などなどが手を変え品を変え表現されていくんだよねぇ・・・
これは文章で追っていくというよりは、映像化に向いた作品なんだろうね。
その方が「余韻」というか、微妙な表現ができるように思えた。
でも本作は作者二十九歳の時の作品だって! それを考えればスゴイと思える。

No.1 6点 蟷螂の斧
(2014/09/10 20:58登録)
(英ベスト100の38位)著者の処女長編(1950年)。著者は、「アガサ・クリスティもコナン・ドイルも読んだことはない。ミステリもサスペンス小説も書いているつもりはない」旨発言しています(解説より)。人間の心理行動を描いた文芸作品と言えるのかも。「罪と罰」を意識して書かれたのかもしれません。主人公の崩れてゆく心理描写はさすがと思います。本書は翌年(1951)にヒッチコックにより映画化されました。「太陽がいっぱい」も同様で翻訳より映画の方が先行して有名になってしまったようですね。交換殺人というテーマとしては本書が元祖になるみたいです。

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