レッドキングさんの登録情報 | |
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平均点:5.27点 | 書評数:888件 |
No.848 | 5点 | サロメの断頭台 夕木春央 |
(2024/07/24 22:32登録) 大正の超美形元泥棒が探偵役の第三弾。己の作品の盗作者を捜す画家と、画壇グループ内で明らかになる贋作。盗作と贋作、二つの事象は、連続「サロメ見立て」殺人へと展開し、驚くべき殺人事件のWhyが明らかになる。やっぱり、この作者の本領は「驚愕Why」・・「Whoロジック」以上に・・であった。面白かったけど、ミステリ要点としては、都築道夫「砂絵」シリーズの、短編1.5作(1作とは言わんが)内に収まっちゃうかなあ。 |
No.847 | 6点 | 孤島の来訪者 方丈貴恵 |
(2024/07/20 22:22登録) 孤島もの倒叙で始まり、1/3まできて、突如、「プレデター」「遊星からの物体X」風SFホラーに転じるも、展開はひたすら、Who(犯人=化け物)本格ロジックミステリ。読者挑戦状(「データ全て出したよ」)と、ダミー2段階解決+ハーフサイズどんでん返し付き。処女作のテクニカルトリック(あれ、よかった)ないのが残念。 |
No.846 | 5点 | 犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー 早坂吝 |
(2024/07/19 22:08登録) AI探偵シリーズ第二弾。このシリーズ、らいちシリーズよりキャラ造形ナイスで面白い。本格ミステリとしては、庭密室(+不可能アリバイ)と公邸密室(-_-;)、そこに、マザコン三つ子ネタと国際陰謀ネタ、全部ひっくるめて、3~4点。でも、アニメ受けしそうなくらい面白いんで、1点オマケ。 |
No.845 | 7点 | 切断島の殺戮理論 森晶麿 |
(2024/07/16 23:08登録) おお、ピーター・ディキンスンに触発された麻耶雄嵩「木製の王子」系の、構造主義ミステリ?と思わせといて、最後の最後に一気に、SFファンタジーへ飛翔して・・それがまた本格ミステリの根幹に居座っちゃって・・ぶったまげた。麻耶がこれやったら怒っちゃうけどね(*^-^*) ※このタイトル、ちと生硬やねぇ、こんな改題どお?・・「鷲と鴉の葬送曲」「鷲と鴉と神々の島と」「鳥と島の神話」「そして鳥を見た」・・(無断使用OKよ(^o^)丿 ) " |
No.844 | 6点 | レディ・ハートブレイク サラ・パレツキー |
(2024/07/14 00:37登録) フェミニンハードボイルド第四作にして、更に露骨な構図・・フェミニズム=リベラリズム=善玉 vs 宗教右翼=男根保守主義=旧悪・・、ええぞええぞ、断固支持!(しちゃう) |
No.843 | 5点 | 贋作 パトリシア・ハイスミス |
(2024/07/07 20:58登録) 「太陽がいっぱい」の続編にしてリプリーシリーズその二。今回は、既に亡き伝説画家の死を隠し、ゴースト絵描きの贋作で世間を謀る、詐欺グループの片棒を担ぐリプリー。付け髭で画家の影武者を演じるまでは良かったが、あれよあれよ言う間に・・またも・・殺人に手を汚す羽目に。にしても、人殺しも、それを打ち明けるのも、無造作と言うか行き当たりばったりというか、やらかした事の重さに比べ何と軽い精神。そんな己の、「存在の耐えられない軽さ」に、自己消滅の衝動さえ明滅する描写が凄い。この「存在」はアラン・ドロンには演じられないな・・そもそも、映画「太陽がいっぱい」のラストシーンには、漫画「あしたのジョー」同様、およそ続編など考えられないし(それに、アランドロンの付け髭変装なんて、一目瞭然だし^^;) ・・。 |
No.842 | 6点 | 領主館の花嫁たち クリスチアナ・ブランド |
(2024/07/05 21:17登録) 荒地の呪われた旧名家、衰弱した若き当主、屋敷を仕切る遠縁の外国人女、双子の美少女、顔面に傷を持つ美人教師、痩せこけた管理人青年、数百年にわたり一族代々の花嫁に憑りつく姉弟亡霊・・ん?ミステリ作家生涯の白鳥の歌は、「嵐が丘」・・悍ましくも美しい陰惨な悲劇・・やりたいのか?思わせて、そこはクリスチアナ・ブランド、入代りトリックネタで亡霊(なんと!)を嵌める、耽美ホラーファンタジーを決めてくれる。 |
No.841 | 4点 | 真夜中の客―コナン・ドイル未紹介作品集2 アーサー・コナン・ドイル |
(2024/06/29 21:39登録) ドイルの「未紹介作品集」そのニ いくつかはミステリっぽいが、ほとんどは、チョビっとサスペンスな小噺的冒険譚。 「ダレンマハウリー村の跡とり娘」 謎の富豪娘の屋敷に侵入した二人の若者の冒険のオチは・・ 「辻馬車屋の話」 老御者が語る三つの犯罪ショートショート奇譚。 「悲劇役者」 シェイクスピア悲劇役者達の勧善懲悪喜劇。 「ハンプシャー州の淋しい家」 落魄した初老夫婦と家出息子の落し噺。 「エヴァンジェリン号の運命」 ちょっとした海洋奇譚に乗った男女浪漫。 「危機一髪」 三人の少年少女の海難スペクタクル奇譚。面白い。 「ボックスマンズドリフトの宝石」 宝石採掘に夢をかけたコンビのハッピーエンドお伽噺。 「真夜中の客」 北海孤島を舞台に謎の船難者と強欲な老人の宝石を巡る悍ましき執念の行き着く果ては・・ ※その他、「ジェレミー伯父の家」「田園の恐怖」二編は、その後、「ドイル傑作集1(まだらの紐)」に収録され、既にそっちの評で取り上げてしまってた。先に、この「未紹介作品集」評で挙げるべきだったなぁ。 |
No.840 | 6点 | 赤い霧 ポール・アルテ |
(2024/06/26 22:32登録) 二部構成のミステリ。第一部(分量にして2/3あるが)は、娘の誕生会に手品を披露する父親の衆視「密室」刺殺事件と、その10年後にぶり返される不可解な連続刺殺事件。第二部(分量は1/3だが)は一部の続編にして、その上に、十九世紀英国の2大スーパースター・・あの名探偵と、あの名殺人鬼・・を登場させて、あの名事件を「解決」して見せる。なんと、サービス満載な一冊(^.^)。密室・消失トリックは・・(*_*;)、まあ、アルテだし。※そう言えば、島荘もあの事件を解決させてたなぁ。 |
No.839 | 6点 | 猫とねずみ クリスチアナ・ブランド |
(2024/06/20 22:30登録) 婦人誌の相談欄に常連の投稿女。その女の嫁ぎ先を訪ねる担当者の女。投稿家が嫁いだ山地古屋敷に住まうは奇怪な三人の男女。彼らは女の存在を否定するが、女の居る痕跡は明らかだった・・・。ホラー風味からドタバタ落ち、幻想ロマンからホラー急転、またもやドタバタ展開・・ちょっとしたジェットコースター・ディクスン・カー。「殺人鬼青髭」風味の男の真情に浪漫を抱く女、女の幻想を打ち砕く真相の証拠、その真相のどんでん返し、そして更なる・・・て、作家十八番の多重改釈解釈の波状展開がミステリアス。 |
No.838 | 3点 | 陸の海賊 アーサー・コナン・ドイル |
(2024/06/15 21:01登録) コナン・ドイルの非ミステリ短編集。拳闘ネタ( 正当試合もの、ファルス、幽霊ネタ、変則試合もの )4短編に、騎馬キツネ狩りとクリケットネタの2編、それに、海賊船長奇譚とタイトル作・・この二つは少々ミステリぽい・・と、ジェラールシリーズ拾遺コントのオマケ付き。現代でも少年漫画の原作並みに面白く読めて、「非」ミステリだが、3点オマケで付けちゃう。 |
No.837 | 4点 | 関税品はありませんか? F・W・クロフツ |
(2024/06/12 21:50登録) クロフツ第三十四作。密輸の為に船舶旅行業を始める犯罪グループの倒叙譚で、海中の遺体捜し「黄金虫」付き。これはクロフツの最終作にして「白鳥の歌」。 フリーマン・ウィルス・クロフツ・・・結局のところ、処女作「樽」が名作として知られるだけで、我が国のみならず(おそらくは)本国ミステリファンからも興味を持たれること稀な・・にも拘らずミステリ史に残るべき「大」作家。主役警官のみならず、犯人・被害者・共犯・脇役ことごとくが「普通の人」で、ありふれているが犯行に至らざるを得ない説得力ある動機、ミステリマニアの耽美刺激をそそる事ない「平凡」な殺人、愚直な捜査手順の描写、脇役を含め登場人物達の丁寧な経歴叙述、主に鉄道と船のトラフィックネタの頻出、あまり面白くない地味なアリバイトリック、公平な正しき人だらけの官憲達・・と、同じ様な作風を繰返し続けた。齢四十から執筆を始め、数十年間、ほぼ毎年、ほぼボルテージの下がらない(上がらない)ミステリを拵え続けたその人生に、惜しみない賛辞を! |
No.836 | 5点 | 探偵AIのリアル・ディープラーニング 早坂吝 |
(2024/06/10 21:18登録) AI探偵シリーズ第一弾は短編集。 「フレーム問題」 あ然(;O;)失笑の密室殺人トリックに 7点・・「後期クィーン問題」ネタはどうでもよく。 「シンボルグラウンディング問題」 クィーン名作オマージュだが、ロバの英訳知らなきゃワカらん。2点 「不気味の谷」 読み返せばきちんと揃えられたデータ、AI推理の挫折を超える人間推理ロジック。5点 「不気味の谷2」 山小屋密室殺人のチト無理矢理トリック・・面白いんだけどねぇ。4点 「中国語の部屋」 対話相手「存在」の真偽を決める限界時間ゲーム。解明どんでん返し見事で 7点。 で、五作平均 5点。 本格ミステリ短編集としては、平均5点だが、三人のAI少女や、右龍に左虎(!)両男女刑事など、キャラ立ち実に良く、これ、漫画やアニメにしたら映えるんじゃね? このシリーズ愉しみ(^^♪ ※肯定否定取り混ぜ、世界中あちこちで騒いでいるAIだけどねぇ、何だかシュワちゃん「I'll be back」超えて、SF「ハイペリオン」さえ現実味(さすがにタイムワープは在り得ないだろが)を帯びて来て。でーも、「生命科学の倫理」云々同様、余りにも過大評価し過ぎなんでないの? そりゃあ、人間能力超えた途轍もない学習能力持った存在に成り得るんだろうがさ、人口知能が「自然な」感情や意志を持つなんてことまでは在り得んだろう・・それもまた、「生の人間」によるプログラミングなんでないの?・・なんて、あまり固いこと言わんとこ、シラけるし(^_-) |
No.835 | 7点 | ラスト・コヨーテ マイクル・コナリー |
(2024/06/08 20:29登録) ヒエロニムス・ボッシュシリーズ第四弾。街娼の私生児が長じて一匹狼刑事となり、数十年前に起きた母親の惨殺事件の真相を求めるハードボイルド浪漫。自身にも把握できない「憤怒」に焼かれつつ、絶望と諦念を辛うじて抑え込んで進む真相解明への情動。一旦は綺麗に嵌まる人間関係パズルを、更に嵌め直しして見事なるミステリ画が完成する。 「過去はこん棒の様な物、深刻なダメージにならないうちは、何度でも自分の頭を殴る事ができる・・・」主役刑事の「心の闇」に対峙する、カウンセラーの女がよい。※本来5~6点のところ1点ほどオマケ。 |
No.834 | 7点 | 宇宙戦争 ハーバート・ジョージ・ウェルズ |
(2024/06/05 08:00登録) このサイト読んでて、またもまたもまたも、おおおお!となり・・。SF入れるなら何をおいてもこれ入れんとなぁ。子供の頃、親父が買ってくれた河出書房「少年少女世界の文学」てな全集の何巻だかに、たしか「シャーロックホームズの冒険(なんちゅう組み合わせだ)」とカップリングで入ってた。今では神話にすらなっている " 何故に、かくも優れた火星人が地球人に敗北したのか "のWhy、かつ、" 誰が火星人を滅ぼしたのか "のWhoダニットミステリとして評価しちゃう。 (同日追記) え?「 滅びた原因は明確に示されてない」?・・てことは、あれだ、H・G・ウェルズには、未発表の続編があるんだ!・・・地球上で死体となったかに見えた火星人たちは、前段階のタコ型生物から昇華して、百数十年の時を経て、高次元の存在地平を切り開き・・・てな、「火星幼年期の終わり」と言った題で。 2024/6/25追記 わかった! 火星人を滅ぼしたのは「細菌」ではなく「ウィルス」だ! そして、この「宇宙戦争」の十九世紀末の段階では、「ウィルス」を発見する科学技術はなかったんだ! だから、火星人の死骸を解剖したところで、「死因となった細菌」などは見つからなかったんだ! |
No.833 | 7点 | 暗闇の薔薇 クリスチアナ・ブランド |
(2024/06/02 22:13登録) 嵐の夜の道路に横倒しになった木、道を塞ぐ倒木の両側には通行を遮断された二台の同型車、車を交換し各々の目的地にUターン発車する男女。翌日、女が運転して来た車の後部座席から出て来た死体は知人の女だった・・・能天気にしてメンヘラな美人女優と、遊び仲間のシネマ界隈の男女容疑者達。ブラックでポップでコミカルで、熱に浮かされた様な、ややサイコかつサスペンスな、死体移動トリックWhoミステリ。「共犯者なし」条件が効いてる。 |
No.832 | 3点 | 増加博士の事件簿 二階堂黎人 |
(2024/05/28 06:09登録) 並の文庫本に27話(!)ぶち込んだショートショート集で、大半がシラけ落ちダイイングメッセージ物。密室トリック作家としては、ホント素晴らしいが、こんなのやる程の、「唖然」「脱力」ナンセンスの高み、には登れない二階堂黎人。 |
No.831 | 8点 | 増加博士と目減卿 二階堂黎人 |
(2024/05/28 06:06登録) 作者言うところの「メタミステリ」(正しい定義なのか?)設定の、密室トリック特化の中短編集、よいなぁ。 「Yがふえる」 核シェルター密室(そりゃそうだ)殺人。空前(間違いなく)絶後(?)の凶器ネタに 8点(10点満点) 「最高にして最良の密室」 足跡無き砂浜に、内と外から目張りされた車内での殺人・・模範的三重密室に 8点 「雷鳴の轟く塔の秘密」 10年隔てた二つの塔密室殺人に、ピラミッド謎解明オマケ付で 8点。で、平均 8点。 ※点数は、「メタ」でなく「ちゃんと虚構された世界」での密室であった場合の点数、すなわちオマケ付き、と言う事ね。 |
No.830 | 4点 | 絞首人 シャーリイ・ジャクスン |
(2024/05/24 23:19登録) 自分には、"(本格)ミステリとは言えないが点数オマケ" てなパターン結構多いんだが、これは、そのオマケさえ不可能な程の「大学生文学」・・「三四郎」「二十歳の原点」etcと同様・・であった。狷介で衒学的な小説家の父・・17歳の娘に「おまえから自殺寸前の精神状態という輝きを奪いたくないのだ」なんて言葉を悦悦と垂れる様な父・・から、詩的哲学的な個人教育を受けて育った、のっぽで痩せた娘の寄宿大学入学。まっとうな対人関係を持つこと遥かに遠い女学生の、幻想的と言うより、ほとんど狂気に近い、意識の流れの文学であった(でも、やっぱりオマケ(^^)・・) |
No.829 | 5点 | かいぶつのまち 水生大海 |
(2024/05/23 11:52登録) サイト見てたら、珍しくこの作家の評があり(「ランチ探偵」て短編集だが)、何か懐かしかった。以前、沼田まほかるや「殺人鬼フジコ」作家と同括りに「女流イヤミス」と言われてた(・・たしか)。でも、べつに「イヤな感じ」はなく、むしろ「ライト爽やか」でさえあり、なんか好感覚える作家で、ほとんどの作品読んだはず。が、短編集は内容ほとんど忘れてしまい、評に次韻できず、で、処女作の続編にあたるこの長編をと。こっちは犯人も動機も覚えている。前作より明らかに劣り、3~4点だけれども、この作家好きなので、点数オマケ。 |