レッドキングさんの登録情報 | |
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平均点:5.28点 | 書評数:958件 |
No.918 | 4点 | ウォッチメイカーの罠 ジェフリー・ディーヴァー |
(2025/03/01 12:05登録) ライムシリーズ第十六弾。「チャールズ・ヴェスパシアン・ヘイルがNYにやって来たのは、リンカーン・ライムを殺すためであった」・・・ついに来てしまいました「ウォッチメーカー最後の事件」。長年、そろそろだと思ってはいたが・・・お別れは突然にやってきて、すぐにすんでしまった。ウォッチメーカー最後の陽動は、必殺凶器「フッ化水素酸」と大型クレーン倒壊惨事を利用したスクリーンプレイ。初っ端から、Who(= ウォッチメーカー)、Why(= ライム殺し)を声高に謳うため、その後のツイスト展開、ネタは派手なのに驚き効果はギクシャクしちゃって、そこは残念。シリーズのラスボス、ライムのモリアーティ、その最後は、ライムとの以心伝心の元に、ニヒリズムの海に沈む、静かなる落陽であった。 ※ところで、このシリーズ、次作からは「ウーマンX」てのがラスボスになんのかな? 愉しみ(^o^)丿 |
No.917 | 4点 | 死体を買う男 歌野晶午 |
(2025/02/24 23:07登録) 「語り手:江戸川乱歩、探偵役:萩原朔太郎 」 てな設定の作中作(白骨鬼)と、その出版の顛末を語る「額縁」部分から成り、終わりに作中作が這い出して来て額縁部と融合する。双子トリックひねりネタなかなかだが、読ませ処は作中作の「乱歩風」文体。 ※え! 遠い過去を慕うぅぅ?・・(タイトル、そっちの方がイイじゃん(^_-) ) |
No.916 | 6点 | 0の殺人 我孫子武丸 |
(2025/02/22 06:14登録) 冒頭、作者に限定提示された容疑者は4人。それが、ひとりふたりと死んでゆき・・そして誰もいなくなって・・・。 標準レベルの短編3作ネタを、「タイトル通り」の顛末解明のWhatダニット長編に纏め上げてあって、Goodよ。 |
No.915 | 5点 | 俳優パズル パトリック・クェンティン |
(2025/02/20 07:06登録) 舞台は「舞台」、役者は「役者」、幽霊屋敷の如き劇場で、開演に向け稽古する演劇関係者・・アル中上がり演出家・精神病上がり女優・脚本家・舞台監督・曲者揃いの俳優女優・・達に起きる奇怪(カー「鏡」ネタ+「闇からの声」複合技ナカナカ)な連続事件のWhy・Who。事件の顛末に平行描写される演劇進行もナカナカ魅力的。(コンサートともかく、演劇で観客が大興奮するって感覚、チト分らんが・・) |
No.914 | 3点 | 迷走パズル パトリック・クェンティン |
(2025/02/16 05:08登録) 舞台は精神病院、役者は院長はじめ医療関係者と、曲者揃い(そりゃ、まあねぇ)の入院患者達。奇怪な「声」現象と連続殺人が起きて、どうやら莫大な遺産の由来が濃厚で、はたして犯人やWho? ※ " 犯人は君以外にはないと思っていたのだよ "・・「探偵役」と知らなければ一番ウサン臭かった奴に言われてる。 |
No.913 | 6点 | 殺す者と殺される者 ヘレン・マクロイ |
(2025/02/12 06:31登録) このネタを使った絶妙な密室モノができそう。あと・・明確な記載はないが・・これ、操りモノとしても読めるなぁ ※ミステリのネタとしては魅惑的だが、どれ位「現実性」があるのか疑問の領分が二種あって、一つは、知覚異常・認識異常(古典的「赤緑色盲」等からSF設定、京極「姑獲鳥」「陰摩羅鬼」、最近出会った「左右把握異常」ってのまで)のネタ。で、もう一つが、この作品の領域。現代の精神医学で、この手の現象って、どこまで「認められ」てんだろ。 |
No.912 | 4点 | 隠蔽捜査 今野敏 |
(2025/02/11 12:47登録) 警察小説て言うより警察官僚小説。ミステリでないとは言えず、面白くなくもなかったんで、点数オマケ。 人間的弱さに揺らぎながらも、組織にも己自身に対しても峻厳な主人公の意志やよし。たーだ、息子に対する姿勢は・・うーん(-_-;)・・孔子曰く「吾が党の直き者は、是に異なり。父は子の為に隠し、子は父の為に隠す。直きこと其の中に在り。」だしねぇ・・・ ※ところで、警視庁の部長より、警察庁の課長の方が、格が上なのね、勉強になりました。 |
No.911 | 4点 | 白い女の謎 ポール・アルテ |
(2025/02/08 14:57登録) 待ってました!ポール・アルテの新翻訳。心臓病の初老富豪をめぐる、ソフトオカルトWhoダニットのオチは・・カー密室(てっきり「鏡」トリックかと・)ではなくて、クリスティ十八番の「あれ」と「あの」トリックであった(^'^)。クイーンオマージュとしか思えないネタも付く。「幻影風味」バーンズシリーズも悪くないが、「ド本格」ツイスト博士シリーズの未訳分を、ドンドン出してチョおーだい(財津一郎風) 。 |
No.910 | 6点 | しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人 早坂吝 |
(2025/02/04 22:48登録) タイトルの「しおかぜ市」と「迷宮」、内容の陰惨な一家強殺事件とバーチャルゲーム風連続殺人、この「と」をどやってつなげんだ?は、ま、そんなところかな、だった。それよりも、あのネタ・・あまりに古典的な「あのネタ」の変形・・が作品のキモ。この為の迷路設定にはカンプク。 そもそも、この類のネタに、どこまで現実性あるのか知らないが、これを上手く工夫した密室トリック作品の出現に期待しちゃう。 |
No.909 | 6点 | 止まった時計 ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ |
(2025/02/04 07:02登録) あの素晴らしき怪作「赤い右手」の作者に、別のミステリ本があったとは! (ひょっとすると夏来健次って訳者の詩的センス文体力のタマモノなのかもしれん・・) |
No.908 | 7点 | 少女には向かない完全犯罪 方丈貴恵 |
(2025/01/31 17:52登録) 小六少女と幽霊青年の探偵コンビってな、とんでも設定にして、少女の両親殺しと幽霊自身の殺害事件を解明して行く、地道ロジックのミステリ・・かと思いきや、多重ドンデン返し「チョコレート殺人事件」(文字通りなんだなぁ、これが)の展開、そして、くどいまでのドンデンどんでんエンド。 最初から「うゆうさん」「からす」「まほろ市」出て来て、ん?麻耶雄嵩ネタ?おもったら「母が新本格ミステリ大好き人間」て、やっぱり(^O^)そうか。作者、早坂吝同様、麻耶の京大後輩だったなぁ・・おもったら、単なるくすぐりネタどころか、主人公青年、「夏と冬の奏鳴曲」から「木製の王子」に至る「如月烏有物語」のオマージュの如きヤツであった(なんと、嬉しや 1点オマケ)。 |
No.907 | 5点 | ゆがんだ光輪 クリスチアナ・ブランド |
(2025/01/26 10:11登録) 前回、パトリシア・ハイスミスの「プロテスタント vs カトリック」テーマに濃厚に覆われた作品の事を書いたんで、これも。元々、ジョン・ディクスン・カーに、このテーマに拘った「歴史」ミステリがあるが、カーの場合は両勢力の政治的対立・・主に英国の・・における、カトリック贔屓の表現だった。「生者たちのゲーム」では、倫理的テーマが深層を成してたが、この作品は、もっぱら、社会的構造テーマの物語。カトリック・・「美」と「儀式」と「共同体」の宗教・・に対する、プロテスタント・・「倫理」と「実存」と「権威」の信仰・・の側からの(クリスチアナ・ブランド、一応、プロテスタントの人だよなあ)クェッション(= 謎 =Why)。そりゃ、ミステリにならざるを得んよなぁ、ヒトゴトだけど。 |
No.906 | 5点 | 生者たちのゲーム パトリシア・ハイスミス |
(2025/01/24 22:55登録) メキシコが舞台の女性惨殺事件で、登場人物は、主役以外ほぼ全員・・探偵警官含め・・メキシコ人。キルケゴール的プロテスタント信仰への絶対的拒否(= 一致)に生きる虚無的な画家と、ラテン系カトリック&ロシア正教の「原罪共産主義」(ドミートリー・カラマーゾフの「誰もが誰もに対して罪びと」のあれね)に溺れる自虐的にして攻撃的な職人。殺された女を愛人として「共有」した(された)二人の魂の、嫌悪と共振の軋轢。イタリアむろんスペイン超えて、どラテン匂うメキシコ風光譚としても、充分に愉しめる。(もちろん、whoダニットミステリでもあるのだが・・そこは、まあ・・・点数オマケ付き。) |
No.905 | 7点 | トランク・ミュージック マイクル・コナリー |
(2025/01/20 23:49登録) ヒエロニムス・ボッシュシリーズ第五弾。マフィアのマネーロンダリングをウラ稼業にする映画製作者の射殺事件。警察機構と諸官憲、マフィアにFBI、潜入捜査官に汚職警官・・複雑に絡み合う組織内外の、Whatダニット(「何が起きた?」言うより「コトの構図は何?」)ツイスト活劇。おもしれぇ! ※警察の不法行為を取り締まる警察、だがその「警察を取り締まる警察」は、どこが取り締まるのか・・って、米国のみならず隣国の権力対権力の騒動見るにつけ、まだマシなのかな、我が国の治安機能情況(いや、どう考えても、警察・検察の行き過ぎに対する抑制機能は欠落していると思われるのだが・・) |
No.904 | 5点 | 濃霧は危険 クリスチアナ・ブランド |
(2025/01/19 22:58登録) 「宝島」「トム・ソーヤ」の香り漂う少年向け冒険ロマン(ジュブナイルって言うのか)。少年二人とネコ一匹のサスペンス道中に、暗号ネタと人物トリック付きのプチミステリでもある上、初恋ロマン萌芽へのキャラどんでん返しエンドが、なかなかに、よく(^O^)。点数、オマケ付けちゃう。 |
No.903 | 4点 | 二人の妻をもつ男 パトリック・クェンティン |
(2025/01/14 22:45登録) 前回ヘレン・マクロイ「悪意の夜」の事を書いたんで、同じ55年刊行つながりでこれを。挫折した作家が主役の、前妻の愛人の射殺事件。容疑者は六人・・前妻・現妻・義父・義妹・親友・親友の妻。犯人倒叙ではないが、倒叙サスペンス風味のWho・Whyミステリ。容疑者全員イカにもなウサン臭ささで・・ま、そりゃそうだ (^^;)・・「幻の女」風"悪魔は傍らに居た"パターンか・・思ってたら・・一番胡散臭いのが犯人であった。 |
No.902 | 6点 | 悪意の夜 ヘレン・マクロイ |
(2025/01/11 23:29登録) 一気読み急かされるほど軽快な・・マクロイらしからぬ・・面白さでオマケ加点。三部構成をとり、サイコミステリの「序」、サイコサスペンスな「破」、ほんで、カタストロフの「急」・・とは行かず、第三部はドイル風味因縁奇譚。夢遊病ネタを逆手にとって、意識の上での倫理規制は、夢想状態での悪事執行も拒否する(ほんとか?)て解釈がユニーク。 ※この作家、40年代作品群では、ちょくちょく対ナチ陰謀に拘ってたが、55年のこの小説には、対赤(東側)ネタが顔出しちゃってる(^O^) |
No.901 | 6点 | 殺人展示室 P・D・ジェイムズ |
(2025/01/10 19:32登録) 私立の小博物館で起きた二重殺人。容疑者は、オーナーの三兄妹に館長、職員及びボランティア達。博物館存廃を廻る思惑対立の中、兄妹の一人が焼殺され、さらに関係者とは言えない外部の娘の扼殺死体が見つかる。容疑者のみならず警官や脇役に至るまで、一人一人に頁を費やし濃密描写を施して進む、息づまる様なWho・Whyミステリ。その、行きついた真相は・・おぞましくも説得力ある多重Whyだった。 ※「年を取るとそう簡単に過去を振り切れない・・昔犯した罪が重みを増して戻って来る」 「罪の意識にとらわれるのは破壊的な惑溺だ・・最悪の失敗は真っ赤な炎となって戻って来る」 |
No.900 | 8点 | 密室偏愛時代の殺人 閉ざされた村と八つのトリック 鴨崎暖炉 |
(2024/12/31 23:50登録) 機械密室に特化したミステリ第三弾。ここまで来ると、「密室教」の「密室狂」による「密室信仰」のための「密室讃歌」 ! そのセンスとレベルにおいて、近似の存在であろう、早坂吝に比して、何故に高評価せざるを得ないのか・・それは、ひとえに、その、密室への偏(変)愛ゆえに・・・ |
No.899 | 3点 | アリス・ザ・ワンダーキラー 早坂吝 |
(2024/12/31 23:47登録) 「不思議の国のアリス」に擬えた、バーチャルゲームのミステリ5短編を、額縁メタ設定に嵌め込んで、綺麗に長編に纏めてある。いまいちチンケなトリックともかく、この作家のロジックや伏線の驚くべき精緻さを認めるのは、まったく、吝かではない。(ただ、もし、最初に読んだのがこれだったら、この作者の小説は二度と・・・) |