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ミステリの祭典

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殺人展示室
アダム・ダルグリッシュ

作家 P・D・ジェイムズ
出版日2005年02月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 7点 ことは
(2023/11/13 00:38登録)
出だしの第1部では、例によって、事件発生前の関係者が、だいたいひとり1章かけて、じっくりと描かれる。濃密な描写でひとりずつキャラを立てていくのは、いつものジェイムズ節だ。
事件発生後の第2部では、事件関係者のひとりひとりを、ダルグリッシュ・チームのメンバーが訪ね歩く。ここは私立探偵小説のようで、なかなか楽しい。関係者が一堂に会する設定ではないので、ロンドンの街を訪ね歩くのだが、その街がそれぞれ個性があり、ロンドン探訪記の趣なのもよい。
ただ、前作までより、いくつかの点で、描写に緊密感がなくなっていると感じた。(ジェイムズの濃密な描写が苦手な人には、かえって読みやすいかもしれないが)
1つは、関係者を訪ね歩くときの日時が、明確でないこと。何人もの元を訪ねるのだが、同一日なのか、翌日なのか、昼か夜か、曖昧なところがおおい。また、登場人物の背景描写も、いつもより薄い。例えば、ベントン・スミスは今回が初登場だが、初登場のチーム・メンバーならば、いつもなら、どんな経歴かを数ページにわたって書いていたのに、今回はない。外見描写くらいだ。(まあ、ここは、描写が普通の作家並みになっただけだが)
今回、後半になって、ミステリ的興趣が強くなって、面白かった。2つめの事件の絡み方がジェイムズらしくなく劇的だし、ほぼ最終章で明かされる事件の経過には、犯人特定のロジックがさらりと書かれている。それも、クイーンならば、「なぜ逃げなかったのでしょうか?」と劇的にプレゼンテーションしそうなもので、ここは、かなり好み。
他、著者82歳のときの作品とのことだが、背景のクラブの話はそんな年齢を感じさせないもので、なんかすごいなと思う。しかも、これが「特別班に要請がきた背景と絡む」というのが終盤で明かされるのは、ちょっとした皮肉がきいていて、楽しい。
それにしても、思ったより、ダルグリッシュのプライベートの話がなかった。ほんの数シーンしかないぞ。もっとがっつりあることを期待していたのに。他レギュラー・メンバーについても、ミスキン警部も含めて、見せ場は少なめ。心理描写も、いつもより少ないのは、ちょっと残念。そういえば、「死の味」でいい味を出していたコンラッド・アクロイドが本作には顔を出すのは、ファン向けのサービスでしょう。

No.1 5点 江守森江
(2010/12/29 05:47登録)
先・今週とAXNミステリーで二週に渡り放送されたのを視聴したので、年内開館最終日な図書館に出向きおさらいして来た。
ポケミスで450ページ強なのは最近おさらいした「ダルジール警視」シリーズ同様だが「ダルジール」のドラマは端折るべきは端折り非常に楽しいが、此方のドラマ版は人間描写の比重が高く端折れないからか正味190分と観るのも疲れる。
ユニークな博物館や過去の焼殺事件に類似した事件でつかみはOKだが、ジックリと書かれた怪しい人々の描写と実質自白による解決は私的なミステリ嗜好からはかけ離れていて、分厚さと相俟っておさらいもしんどかった(本が綺麗なのがダルジールと違い救いではある)
では何故水準レベルな5点なのか?
ダルグリッシュの恋愛小説としては、ベタだが面白いので、その辺をジックリおさらいして楽しんだから。
※余談
私は嫁に「釣りバカ日誌」の浜ちゃん同様に「君を幸せにする自信は無いが、自分が幸せになる確信がある」とプロポーズした。

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