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ミステリの祭典

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アリス・ザ・ワンダーキラー

作家 早坂吝
出版日2016年09月
平均点6.17点
書評数6人

No.6 7点 ミステリーオタク
(2022/08/15 18:03登録)
 少女アリスが主人公の、5つのクイズという形式の連作短編集。

 所々で『不思議の国のアリス』のシーンが紹介されるが、子供の頃に読んだ薄っぺらい絵本では記憶にないものがたくさんあり、あのおとぎ噺の原作は実はかなり盛り沢山の内容があったんだな、と思い知る。ハンプティ・ダンプティが『アリス』に出ていたことも初めて知った。
 本書の内容も子供の絵本より、大人になってから見た盛り盛りの映画『アリス・イン・ワンダーランド』の方に遥かに近い。いや、それ以上と言えるだろう。

 ミステリとしては面白いロジックが使われている所もあるが、殆ど読者が解けるようにはできていない。

 全体としても何とかまとめた感はあるが、その形が何とも・・・。

No.5 7点 メルカトル
(2021/02/21 22:40登録)
十歳の誕生日を迎えたアリスは、父親から「極上の謎」をプレゼントされた。それは、ウサ耳形ヘッドギア“ホワイトラビット”を着けて、『不思議の国のアリス』の仮想空間で謎を解くこと。待ち受けるのは五つの問い、制限時間は二十四時間。父親のような名探偵になりたいアリスは、コーモラント・イーグレットという青年に導かれ、このゲームに挑むのだが―。
『BOOK』データベースより。

かなりの変化球ながら、私のストライクゾーンの真ん中付近に突き刺さりました。『不思議の国のアリス』に関しては無知ですし興味もない私でも、問題なく楽しめました。仮想空間での問題はそれぞれ趣向が変わっていて、単体でも十分面白いと思います。第一問では図解入りで、なるほどそちらから攻めてきたかと感心させられます。まるで手品のような感触もあり、トリックと言うよりパズルに近い解答ですね。第二問の伏線を回収しての犯人指摘、第三問の意表を突くダイイングメッセージの謎解き、いずれも捻りが効いていて好感度が高いです。第四問第五問と更に本格度が増していきます。

これこそ早坂吝の底力を見せつけた、本領発揮渾身の一冊であると断言しても良いでしょう。
勿論バーチャル体験をした後がいよいよ本番となり、最後の最後まで凝りに凝ったパズルミステリで、文句なく楽しめる作品だと思います。こういうオチは個人的に好きです。まあ、こういうのは余計だという意見もあるかも知れませんがね。

No.4 7点 虫暮部
(2020/03/02 10:30登録)
 面白かった。
 イチャモンを付けるなら、アリスの二次創作は食傷気味、と言うこと。原典を有機的に謎に結び付ける手腕は認めるに吝かでないが、あと一歩だけ乗り切れない気分が残った。しかし、このパズル世界をすんなり許容出来たのは元ネタを作者と読者が共有しているおかげであって、そこは良し悪しだと考えるべきか。

No.3 4点 ia
(2017/10/23 16:29登録)
相手の思惑通りになり手に汗握るシーンになったのに
そこからどうするのか?という期待に対してしょーもないどんでん返しを入れた事ですべてが茶番臭くなった

主人公が十歳なのに三十歳レベルの会話の駆け引きをしてるのも違和感

No.2 6点 名探偵ジャパン
(2017/07/28 22:39登録)
VR世界で出題される謎を解くという、ある種の特殊設定ものです。
提示される謎は、現実世界では到底為し得ない特殊設定を盛り込んだものが多く、こういった舞台条件であることを生かしています。
最後に全体を通した謎が待ち構えていて「どんでん返し」が待っているのも、連作短編集のお約束です。むしろ、もう連作短編集では、こういったことをやらないといけない。みたいな必須科目になっていますね。個人的には、あまりやりすぎると「クドいな」と思ってしまうのですが、帯に「驚愕のラスト!」的な煽りを入れるためには仕方ないのでしょうね。
もはや、書店に並んでるミステリで、「驚愕のラスト!」という帯が掛かっていない作品を探すほうが難しいような。

No.1 6点 人並由真
(2016/10/15 15:21登録)
(ネタバレなし)
 アリスは高名な名探偵を父に持つ10歳の少女。彼女は将来、父のような名探偵になるのが目標だったが、母は探偵の収入が不安定、身が危険などを理由に掲げて反対。アリスは母が自分の愛読書、キャロルの『アリス』シリーズを軽視することにも不満を抱く。そんなアリスの前に現れたのは、父の友人と称する発明家の美青年コーモラント・イーグレット。彼は自分が創造した特殊な装置「ホワイトラビット」でアリスを『アリス』の世界と似通うヴァーチャルリアリティの異世界に誘う。そこでアリスは、出会ったゲームマスターの「白ウサギ」によって名探偵の資質を試される五つのクエストを出されるが…。

 仮想空間の異世界でアリスに出される五つの謎を連作短編集風にひとつずつ語りながら、最後にはそれらを擁して入れ子式に長編ミステリとしての結構が顕現する仕様。ここまではその主旨のことが帯にも書いてあるので、語っていいだろう。
 一本一本のクエストは、密室からの脱出、奇妙な誘拐事件、ダイイングメッセージ、不審な転落死…などなどにからむ謎を自称「名探偵」のアリスが解いていくもの。中学生向けパズルのような形質のものもあるが、各々の謎や解法はそれなりになかなか創意や工夫がある。ただしそれらのどこかで常に感じさせるおとぎ話のようなふんわかしたムードが、やがて終盤どのように破砕されるのだろ、こうなるのかな、いやああかも、という緊張感。そのゾクゾク感が何よりもたまらない。
 結果、明かされる真相の大枠は、こちらの想定のほぼ範囲内でちょっとパンチ不足だが、作者もそれはわかっているのか、細部にひと工夫ふた工夫設け、ロジック立てにも力を入れている。
 活字が大きめで紙幅も全270頁強とほどほどの長さで一気に読めるし、なんとなく軽めの一冊という印象も生じるが、総体として見るなら中身はそれなりにある。佳作~秀作。
 ところで、たぶんシリーズ化は無いだろうね。やろうと思えばできるとは思うけれど。

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