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ミステリの祭典

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YMYさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:372件

プロフィール| 書評

No.112 5点 しゃもぬまの島
上畠菜緒
(2020/07/07 18:53登録)
人を天国へと導く動物「しゃもぬま」の訪れを受けた主人公は、しゃもぬまとの共同生活を始める。死を意識しながら過去を思い、他者を思う。込められた象徴や寓意には自由度があり、読者は自身を投影しながら読み進めることになる。


No.111 5点 深層地下4階
デヴィッド・コープ
(2020/06/29 19:55登録)
ある「怪物」との戦いを描く。
ティーケイクは倉庫番。ある夜、彼は存在しないはずの深層階の図面パネルを見つける。それは、宿主をコントロールする特異な菌類が密かに封じ込められた場所だった。
丁寧な人物描写を土台に、動物や人間を乗っ取って繁殖を目指す菌類の猛威を描く。スリルをたっぷり味わえるバイオホラー。


No.110 5点 不協和音
クリスティーン・ベル
(2020/06/29 19:51登録)
夫を亡くした女性を襲う奇怪な出来事を描いた物語。
夫の死からもうすぐ一年。リリーは、夫の元恋人を名乗る者から奇妙な手紙を受け取る。さらに、不可解な贈り物が届き、彼女の精神は徐々に追い詰められていく。
何かが起きそうな不吉な予感だけで読者を引っ張る、サスペンスに満ちた一冊。静かな筆致と丁寧な描写な描写で、ゾクゾクさせてくれる。


No.109 5点 彼女の体とその他の断片
カルメン・マリア・マチャド
(2020/06/23 20:36登録)
女性の身体がただそこにあるだけで生じる、煩わしさや被暴力の気配、そして喜びを、幻想的に、ユーモラスに、魔術的に描き出す多彩な8編が収録されている。
標準的で美しい身体という、どこにもない幻影にいつまで囚われるのか。文学は、自由と解放の側にあれ。そうメッセージする力強い小説。


No.108 6点 ホッグ連続殺人
ウィリアム・L・デアンドリア
(2020/06/16 20:38登録)
ミッシングリンクがテーマ。最後にどうしても露呈する不自然さをどうすれば解消できるかというとここに行き着いた。
通り魔殺人の真相だけではなく、ある男が●●●●の横で凍死していたのかの強烈な謎に対しても、しっかり目から鱗が落ちるような理由付けがされている。


No.107 5点 生き直し
岡部えつ
(2020/06/10 20:15登録)
第二の故郷であるQ県火海町を訪れた女性が主人公。
真帆は、小学生のとき学級委員を任されるほどの優等生だった。クラスのいじめをなくして英雄扱いされたものの、いじめの対象だった少女が自殺したばかりか、それが真帆のせいとされ、糾弾される立場に転じてしまった。マスコミに騒がれる事態にまで発展し、真帆は母と共に東京を離れ、遠く火海町へとやってきた。だが転校した学校ではクラスの女王ルミコに敵視され、居場所を失う。
学校での単なるいじめ小説に終わらせず、人間の「業」がもたらす闇に迫っているあたりが読みどころ。ムジナにまつわる民話と絡めて、集団における人間関係の醜悪な姿と、そこから逃げるためのやっかいな手続きやむなしさを描いている。


No.106 6点 11 eleven
津原泰水
(2020/06/03 20:16登録)
幻想的な作風で知られる著者の、そのエッセンスを堪能できる戦慄と感動に満ちた11編の短篇集。
話のトーンも各話ごとに全然違うタッチで描かれている。「五色の舟」がおすすめ。


No.105 5点 教会の悪魔
ポール・ドハティ
(2020/05/27 20:20登録)
妹を誘惑された金匠が相手の男を殺害して、教会に逃げ込んだ。だが、朝になって彼の首つり死体が発見された。国王じきじきの書記コーベットは、不審な点を発見し、じりじり真相に迫っていく。
読みどころは何といっても、中世ロンドンの猥雑極まりない生活ぶりでしょう。そして、妻子をペストで失い孤独なコーベットが魅かれる酒場の経営者の美女との恋愛も切ない。歴史ミステリ好きの方に是非。


No.104 5点 あの日に消えたエヴァ
レミギウシュ・ムルス
(2020/05/21 20:24登録)
レイプされ、姿を消した恋人エヴァ。彼女とおぼしきインターネット上の写真を親友から見せられたヴェルネルは、その行方を捜そうとする。
やや重苦しい物語。ミステリに意外性を求める方にとっては必読の一冊。丁寧な伏線による強烈な驚きが何度も押し寄せる。予想外の展開と、重い読後感が、忘れがたい余韻を残す。ただ、ややご都合主義か。


No.103 5点 白い悪魔
ドメニック・スタンズベリー
(2020/05/15 20:06登録)
ローマで暮らす若く美しい女性ヴィッキーと兄ジョニーは、政治家と有名女優の夫婦に近づくが、やがてヴィッキーの周辺で不審な死が...。
ローマから米国のリゾート地と、華やかな舞台で繰り広げられる物語だが、人々の運命が狂っていく様子と、その奥底に流れる歪んだ心情の救いのなさが、冷え冷えとした印象を刻む。


No.102 6点 ヘッドハンターズ
ジョー・ネスボ
(2020/05/06 19:06登録)
北欧発の痛快なクライムノベル。やり手のヘッドハンター、ロジャーは妻が経営する画廊の赤字を埋め合わせするため、絵画の窃盗を副業にしていた。
そんな時、顧客企業の重役候補にうってつけの男が現れ、しかも幻の名画を持っていることも分かった。一石二鳥の幸運に有頂天のロジャーだったが、甘くはなかった。
アクション、知恵比べ、どんでん返しなどお楽しみが詰まっている。


No.101 6点 義弟
永井するみ
(2020/04/26 17:32登録)
血のつながっていないい姉弟の危機とその切迫した状況の推移がサスペンスプルに展開していく。個々のエピソードが丁寧に描写されているため、心の機微やとっさの行動について不自然さがない。まるで、自分の身に起きた悲劇のように読み進んでいってしまう。
また家族や恋愛の形が複雑だったり不確かだったりする現代ならではの要素を多く備えている。深い読み応えのある大人のミステリ。


No.100 5点 奇岩城
モーリス・ルブラン
(2020/04/19 18:16登録)
古い暗号文書に隠された歴史上の秘密をめぐって、怪盗ルパンとボートルレ少年が繰り広げる丁々発止の知恵比べがこの作品の面白さである点。
盗みの天才でありながら、愛のために「まっとうな人間」たろうとするルパンの苦悩が、波乱万丈の冒険譚に深みを与えている。


No.99 5点 テンペスト
池上永一
(2020/04/13 19:41登録)
二つの強国(清と薩摩藩)との二面外交を強いられ欧米列強からの開国までも迫られていた十九世紀後半の琉球王国を舞台に、宦官と偽り王宮に身を投じた天才少女の活躍を描いている。
男と女、二つの性を生きたヒロインのジェットコースターのように乱高下する半生は特筆もの。


No.98 5点 敵は海賊・正義の眼
神林長平
(2020/04/07 19:20登録)
コミカルかつ軽快な宇宙活劇の背後で哲学的、本質的な問題を考察するスタイル。この作品では「正義」が徹底的に解剖される。
主な舞台はタイタンの首都メカルーク。市警の警部や実習生が準主役で登場するため、所轄署と本庁の特殊捜査班の合同捜査を描くユニークな警察小説とも読める。


No.97 8点 僧正殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2020/03/31 19:07登録)
マザー・グースの歌詞に合わせて人が殺されていく、いわゆる童話殺人もの。本作はその嚆矢となった傑作。犯人は正気なのか。とにかく犯人の狙いが分からないことで恐怖感が増す。もし現実の事件だったとしたら、こんにちでいう劇場型犯罪の元祖的な犯罪。


No.96 6点 美しい嘘
リザ・ウンガー
(2020/03/25 19:34登録)
スピーディーな展開、謎の存在、ジェイクとのロマンス、喜怒哀楽の感情のジェットコースター、複雑なプロット、意外なエンディングなど、さまざまな要素が揃ったエキサイティングな娯楽作品。


No.95 6点 都市と都市
チャイナ・ミエヴィル
(2020/03/16 19:20登録)
登場人物やプロットではなく、二つの都市の世界観を楽しむべきSFで、通常のSFや犯罪小説を期待しない方がいいかもしれない。文章はシンプルだが、状況を理解するのがやや困難。


No.94 5点 わたしが眠りにつく前に
SJ・ワトソン
(2020/03/11 19:46登録)
消えた過去を取り戻そうとする主人公の葛藤を読み進めてゆくうちに、読者まで自分自身の記憶を疑ってしまうような臨場感がある。謎の数々が恐ろしい真実を少しずつ浮かび上がらせてゆく。


No.93 6点 007/ロシアから愛をこめて
イアン・フレミング
(2020/03/11 19:43登録)
他のスパイ小説のような暗さがなく、奇抜な悪役と美女、アクション満載の本シリーズは、男性にとってのロマンス本として楽しめる。今となっては歴史小説さながらのロマンチックさも。ボンドシリーズの中では5作目の本作が最高傑作とみなされている。

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