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ミステリの祭典

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神の値段

作家 一色さゆり
出版日2016年02月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 5点 YMY
(2020/10/12 18:32登録)
専門知識に彩られた美術関連のディテールには厚みがあり、人物造形を含め、筋の運びも巧み。
美術界をめぐるエピソードの数々が興味深く、それらを生かした不可解な謎をめぐりサスペンスとしていい味を出している。

No.2 5点 HORNET
(2019/09/01 21:19登録)
 オークションで高値がいくらつこうが作家には全く利益はないこととか、「プライマリーギャラリー」とか、美術界の構造や仕組みを「へぇー」と思いながら読めて面白かった。オークションの様子も。

 そうした美術世界の設定に彩られていることがかなり後押ししていて、ミステリとしての内容は平均的では。真犯人よりも、無名の過去の作品が送られてきたことの真相の方が興味深かった。

No.1 5点 人並由真
(2017/03/11 02:25登録)
(ネタバレなし)
 世間はおろか、関係者にも現在の存在を頑なに秘匿する現代美術家・川田無名(かわたむめい)。彼の才能は国際的な評価を受け、作品はものによっては億単位で売買されるが、その一次流通は無名のアトリエ工房と特約した美術ディーラー・永井智子のギャラリーを通じてのみ行われていた。「私」こと二十代前半の女性・田中佐和子は智子のアシストの業務に励むが、勤続三年目の佐和子もまだ無名と対面の機会はなかった。そんななか、無名が青春時代に描いたはずの大作がギャラリーに急に運び込まれ、それに続くように智子が何者かに殺される。

 第14回「このミス大賞」受賞作品(その二本のうちの片方)。智子殺しの謎が終盤まで持ち越される一応はフーダニットだが、正直犯人捜しのミステリとしての興味は希薄(ジャンルは一応「本格/新本格」に分類したが)。
 実際には美術界についての話題を饒舌に語る情報小説としての趣が強く、それはそれで楽しめる(一時期の乱歩賞作品風というか)。
 もちろん<なぜ無名が隠れるのか><そもそも彼は今も健在なのか>の興味の方も物語の上で語られる。ぶっちゃけ智子殺しの犯人捜しより、読者の関心を引く謎の提示としてはこれらの方が大きいだろう。

 果たして残りページがわずかになっても犯人捜しの方はギリギリまで放っておかれ、終盤にかなり凝縮した紙幅で、ようやく謎解きが行われる。犯人の意外性はほとんどなく、探偵役の人物がかんじんのポイントをそれまであまり話題にしてなかったのもちょっと乱暴という印象も受ける。それでもラストの前向きな感じは悪くはなく、ジャンルもののキャラクタードラマ作品としてはこれはこれでいいという思いもあった。ミステリとしては薄口なれど、嫌いになれない感触の佳作。

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