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ミステリの祭典

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パメルさんの登録情報
平均点:6.11点 書評数:746件

プロフィール| 書評

No.186 5点 魔術師の弟子たち
井上夢人
(2017/12/19 01:22登録)
超能力をめぐるSFサスペンス。
パンデミック(感染症大流行)パニックものとしての緊迫感あふれる場面がいきなり冒頭から描かれ、たちまち物語に引き込まれてしまう。
中盤以降は、まさに魔法使いさながらの超能力を高め自分のものとしていく3人の姿がじっくり描かれると同時に、奇妙で異常な出来事が重なりサスペンスが増していく。どこに着地するのか、全く予想できない。
さらに後半、ウイルスと超能力の謎にまつわる生死をかけた闘いが、時空を超えてスペクタルに展開する。
奇妙なアイデア、いま目の前で起きているかのような緻密でリアルな描写、そしてあっと驚く意外性と良い所ばかり並べてきたが・・・。
謎解きのようなミステリとしての魅力は皆無に等しいし、(SFエンターテインメント作品と割り切れば良いのだが)冗長のため途中で飽きてきてしまう点が残念。(もう少しコンパクトにまとめられたはず)


No.185 7点 叫びと祈り
梓崎優
(2017/12/12 13:58登録)
世界を旅するジャーナリスト・斉木が遭遇した奇妙な事件をめぐる物語が5編収録されている連作集。
苛酷な環境や、特異な集団内で起こる出来事に対して、まずは謎とその推理が次々と示されていく。異国の気候や風景を記す文章も臨場感があり鮮やか。広大な砂漠、夏のスペイン、秋の修道院と毎回場所や季節は違っても、たちまち物語に引き込まれてしまう。
作者は、それぞれの土地の風俗や伝説、人々の習慣や信仰などをもとに、残酷な殺人、ロマンチックな謎、狂気の世界を用意し、毎回ラストで驚くべき真相を明かしている。日本人旅行者の視点を巧みに生かした語りもお見事。


No.184 6点 高層の死角
森村誠一
(2017/12/04 12:46登録)
企業間争いという社会的背景と怨恨、愛憎、金銭以外の動機を示した社会派ミステリのモチーフの中に、外側と内側の両方に鍵がかかった状態での二重の密室、アリバイ崩しという本格ミステリとが融合している。
乱歩賞選考委員は、密室トリックを褒めていたらしいですが、後半からの容疑者の鉄壁のアリバイを崩していくところが、やはり読みどころでしょう。
アリバイ崩しの攻略のヒントとなる発想も、特に不自然に感じることなく、刑事の執念による追及の演出の描き方は素晴らしい。
ただ、●●●を利用したアリバイに、少々不都合に思える点が残念。


No.183 5点 暗い宿
有栖川有栖
(2017/11/29 01:10登録)
取り壊し寸前の民宿、南の島のリゾートホテル、冬の温泉旅館、都心のシティホテルと宿屋ホテルを舞台にした事件を描いた四編からなる短編集。
雰囲気を味あわせて読ませる作品集で、ミステリとして秀でた作品は無く、また短編ならではの切れ味の鋭さを感じることは出来なかった。
特に残念だったのが「201号室の災厄」で、その場しのぎのパターンでのオチになっており、ロジックが売り?の作者とは思えない作品。


No.182 5点 真実の10メートル手前
米澤穂信
(2017/11/24 01:12登録)
「王とサーカス」のヒロイン、フリージャーナリストの太刀洗万智を主人公にした短編集。
ミステリ的には、電車の人身事故の背景を探る「正義漢」と高校生の心中事件に迫る「恋累心中」が良く出来ているが、ベストは豪雨による土砂崩れで孤立した家の老夫妻の秘密をめぐる「綱渡りの成功例」。
救出された夫婦を取材する話で、食事という、とりあげれば何でもない日常の出来事なのに、特殊な状況下では意味合いが異なる。あたかも罪のように捉え、人間がもつ営みの重さを静かに提示している。
アイデアが練られ、筆致は繊細で、プロットは驚きを秘めている。
ただどの作品も、テーマ・ストーリー共に地味すぎて「巧い」と感心させられる部分はあったが、「面白かった」という感覚は残念ながら少なかった。


No.181 8点 冤罪者
折原一
(2017/11/19 01:04登録)
このサイトで評価が高かったので読んでみた。
全体にわたり不穏な空気と緊迫感に包まれている。この何とも言えない雰囲気があるため、分厚い本でありながら長さを感じさせず、とにかく先を読み進めたくなる。
登場人物も個性的というか、胡散臭い人物が多く、誰もが怪しい人物と思わせるような描き方も上手く、意外性のある真相と結末は衝撃的。
多少ではあるが、エログロ描写があるため、それを受け入れられない人にはおすすめ出来ないが、サスペンスとしてとても優れた作品だと思う。


No.180 6点 真夜中の詩人
笹沢左保
(2017/11/13 01:08登録)
幼児誘拐事件が発生する。普通ならここで、犯人と警察との身代金の受け渡しなどでの駆け引きで、楽しませる展開なのだろうが、この作品は毛色が違う。
犯人は、何も要求しないどころか、さらに誘拐事件が発生するという展開で惹きつけられる。
ストーリーは進行するとともに、過去の人間関係が浮かび上がり、少しづつ謎が明らかになっていくが、肝心の誘拐の目的はなかなか見えてこない。
この作品は、誘拐された母親が探偵役となっているが、些細な手掛かりから真相に迫っていく姿は魅力的。
意外性があるといえばあるのだが、結末はあっさりしていて衝撃度は低い。


No.179 6点 人それを情死と呼ぶ
鮎川哲也
(2017/11/07 00:58登録)
汚職問題といった社会的な題材が扱われているが、単なる社会派の作風にはなっておらず、あくまでも本格志向の鮎川氏らしい作品であるといえるでしょう。
この作品も作者が得意としているアリバイ崩しの系列に属しており、捜査の進展につれ容疑者が絞られるが、その人物には鉄壁のアリバイがあるという設定で、これをどう崩していくのかが楽しみになってくる。
また女性が一種の探偵役として大きな役割を演じているが、これがなかなか魅力的。
ただアリバイ工作は、あまりにも偶然性に支えられていて危うい感じが残念。


No.178 6点 楽園のカンヴァス
原田マハ
(2017/11/01 01:14登録)
幻想的な画風と鮮やかな色彩で知られる素朴派の画家、アンリ・ルソーをめぐる極上の美術サスペンス。
大原美術館で監視員をする織絵は、ある時学芸課に呼び出された。日本で大規模なルソー展が企画されており、ニューヨーク美術館のチーフ・キュレーターであるブラウンが、代表作「夢」の貸し出し交渉人として織絵を指名してきたという。
物語は1983年にさかのぼり、スイスの大邸宅で繰り広げられた、風変わりな競い合いの一週間をたどる。ある大富豪がブラウンと織絵に対し、ルソーの「夢」とほぼ同じ構図やタッチを持つ作品「夢を見た」の真贋を判定せよと命じ、手掛かりとなる謎の古書を手渡したのだ。
本作は、単に幻の名画をめぐる鑑定対決にとどまらず、ルソーが「日曜画家」だった頃から晩年に至るまで、ピカソをはじめ彼らを取り巻く人々の物語が挿入されており、重層的な仕掛けがほどこされている。章が移るごとに意外な真実が明らかになるなど巧みな構成に舌を巻くばかりか、登場人物たちが抱くルソーへの思いも熱く伝わってくる。驚きと愛に満ちたミステリ。


No.177 6点 さらわれたい女
歌野晶午
(2017/10/26 01:33登録)
便利屋の主人公は、夫の愛を確かめるためだと狂言誘拐を依頼され、思わぬ方向に巻き込まれていくストーリー。犯人と便利屋の駆け引きには、惹きつけらるし二転三転する展開で飽きさせない。またリーダビリティーが高くスラスラ読める。伝言ダイヤル・ダイヤルQ2・転送サービス・自動車電話など当時としては最新の通信手段の小物の使い方も上手い。
ただ、犯人の計画のある部分があまりにも杜撰な点と、結末が予測出来てしまう点が残念。


No.176 7点 そして誰もいなくなる
今邑彩
(2017/10/20 01:01登録)
クリスティの名作「そして誰もいなくなった」をモチーフにした学園ミステリ。
見立て殺人にこだわりながらも、意表を突く展開に意外な真相、そしてどんでん返しも用意されている。
変な言い方だが、「そして誰もいなくなった」の内容を記憶している人ほど、作者の巧みなミスディレクションの罠に嵌ることが出来て楽しめると思う。
テンポも良くリーダビリティが高いため、ミステリ初心者におすすめしたい作品。


No.175 6点 ユリゴコロ
沼田まほかる
(2017/10/14 01:08登録)
ホラーやサスペンスのジャンルには、声色や体温といったものさえ伝わってくるように、人間の姿を生々しく描く作家がいる。読み手は、登場人物の隠された本性ばかりか、魂の奥底まで暴かれているような気持になり、知らず知らずおののいてしまう。そんな作家の一人がこの人だと思う。
主人公の亮介は、ある時父の書斎で奇妙なノートを見つけ、そこに書かれていた文章を読んで驚く。これを書いたのは一体誰なのか。まずは「ユリゴコロ」と呼ぶ得体の知れない思いを抱え、幼い頃から犯行を繰り返してきたと告白が小説内小説のように記されていく。これがとても具体的で真に迫っている。
内なる声に身をまかせ、落ちるところまで落ちていくかのようなおぞましい殺人者の半生がそこにある。やがて、亮介の両親に関する過去が次第に明らかになっていくとともに、亮介の恋人が失踪した事件と絡み、物語は大きく転調する。
秘められた家族の謎が明らかになるとき、驚愕せずにはおれない胸をえぐるような凄味をたたえた作品。


No.174 6点 鳴風荘事件
綾辻行人
(2017/10/08 01:05登録)
なぜ犯人は被害者の髪を切ったのか?そして持ち物を多数持ち去ったのか?と謎多き殺人事件を解決に導く伏線の回収が見事。
また明日香井兄弟と深雪の会話は前作同様可愛らしくて楽しい。
「殺人方程式」から6年経ってやっと発表された作品で、あとがきに構想に四苦八苦していたと書かれていた割には、ストーリー、トリックともに落ちる印象。


No.173 6点 火刑都市
島田荘司
(2017/10/03 01:05登録)
密室状態での放火はどのように行われたのか?連続して発生する放火事件の犯人の意図は?そして現場に残された張り紙の意味は?と謎が多く楽しめる。
そして江戸から東京へと近代化が進み失われてしまったものを作者なりに警鐘を鳴らしている感じが伺える点からも本格派と社会派が融合しているミステリ。
この作品のポイントは犯人の動機だと思うが、犯人にその動機を抱かせた背景は共感出来る部分もあるが納得は出来ない。
またこの作者にしては、登場人物のキャラクター・ストーリー・トリックともに地味なため、その点を期待していると肩透かしを食らうと思います。


No.172 6点 黒龍荘の惨劇
岡田秀文
(2017/09/27 01:19登録)
探偵の月輪龍太郎と友人の杉山潤之助が難事件に挑む時代ミステリの第二弾。
元首相の山縣有朋の金庫番ともいわれる漆原安之丞に脅迫状が届き、その数日後、漆原が首を切られた死体となって発見される。
やがて事件は連続殺人事件に発展し、被害者は漆原の故郷に伝わるわらべ唄に見立てられ、首や手足を切断されるなど、物語は本格ミステリの王道ともいえる道具立てを使いながら進む。
本当に解決するのかと思わせる終盤まで殺人が続き、月輪は16もの疑問点に頭を悩ませる。
事件が複雑怪奇なだけに、たった一つのカギで謎が一気に解ける最終章には圧倒的カタルシスがあり満足。
驚くべきどんでん返しから浮かび上がるのは法律やモラルなど歯牙にもかけない怪物の存在。この怪物は、現代とも共通する虚無を象徴しているので背筋がゾッとする。
ただプロットに関しては他作品での既読感があるのが残念。


No.171 6点 妖婦の宿
高木彬光
(2017/09/21 01:06登録)
四編からなる短編集だが「妖婦の宿」の出来が抜きんでている
被害者が殺される前に人形が殺されるという設定といえばこの作者の「人形はなぜ殺される」が有名ですが、この作品では違った意味で人形が重要な鍵を握っている
犯人を一人に絞る緻密なロジック、心理的盲点を巧妙に突く仕掛けがお見事
密室殺人を扱った短編では必ずと言っていいほど取り上げられるのも納得
ただし他の三編を合わせての総合評価となるとこの点数になってしまう


No.170 5点 コンピュータの熱い罠
岡嶋二人
(2017/09/15 13:11登録)
まだパソコンもあまり普及していなかった時代に書かれたとは思えないほど、コンピュータや情報に関わる事件の先見性に驚かされる。
ただ彼らの良さが発揮されているかといえば疑問が残る。
トリックなど謎解きの面白さは味わえないし、サスペンスのジャンルにしては肝心の緊迫感が足りない。
ストーリーの構成も冒頭部分では引き込まれるが、起伏が少なく淡々と進行するため、展開力に不満が残る。
真犯人に意外性はあるが、推理する余地は無いし登場人物が少ないこともあり、ピンとくる人も多いでしょう。


No.169 6点 消失!
中西智明
(2017/09/10 01:06登録)
今現在の採点が2点から10点と幅広い評価を受けている作品
好き嫌いがはっきりする作品だとは思うが、個人的には絶賛するほどではないと思う反面、酷評するほどでもないといった感想
違和感はあると思いながらも、不可解な消失と事件の真相は看破できなかったのも事実
再読すると所々に散りばめられた伏線や、巧みなミスディレクションが使われているのがわかる
一種の叙述トリックだと思うが、単なる叙述トリックにおさまらない鮮やかさに驚かされる


No.168 5点 死体を買う男
歌野晶午
(2017/09/04 01:15登録)
松の木で首を吊って自殺している人物を発見するが自殺に疑問を抱いていた江戸川乱歩と萩原朔太郎が真相を追及していくという探偵小説「白骨鬼」の内容が現実の世界の事件に繋がっていくという構成
乱歩風の文体で描かれ江戸川乱歩・萩原朔太郎の推理合戦は楽しませてくれたがミステリとしての驚きは残念ながら小さい


No.167 8点 造花の蜜
連城三紀彦
(2017/08/29 01:01登録)
嘘なのか?真実なのか?敵なのか?味方なのか?
複雑な人間関係が露になる中犯人は身代金を減額してきたりして意味がわからなくなってくる
犯人の真の目的は何か?この犯罪の裏に隠されたものは何か?と先の読めない展開に読み進めていっても頭の中はクエッションだらけになる
また大胆かつ緻密な劇場型犯罪にアッと驚かされるしどんでん返しの連続で翻弄される快感が残る
最後の最後まで気の抜けない展開に楽しめました

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