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ミステリの祭典

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動脈列島

作家 清水一行
出版日1975年01月
平均点6.00点
書評数4人

No.4 7点 斎藤警部
(2024/08/05 20:20登録)
「犯罪者というのは常にクリエーターだからね」

騒音・振動公害問題に立脚し(当時は東海道しかなかった)新幹線の転覆テロを賭けたタイムリミット・サスペンス。 犯人側/体制側(警察・国鉄・政府等)の切っ先鋭いカットバックでしぶきを上げて走り去るストーリー前半は思わせぶりな謎もたっぷりで真夏の生ビール+一品みたいな魅力が満載。 だが、中盤に至り或る事のバレるタイミングが早いというか、犯人が何もかも妙にフェアプレー過ぎ(古畑任三郎のイチロー篇思い出す)というか、て事はまだまだ奥がありそうなんかどうか・・というか・・ちょっと「あれっ?」と思う所あり。 だが、後半はみるみると前半とはまた別のよりストレートなサスペンス感覚で盛り返し、あれとあれよと二人の女まで巻き込んで終結の「X時刻」に向かい激しくもステディな爆走を見せる。

最後の、落とし所と、そのための或るトリック。 このドラマ性は唸りました。 つまり犯人は◯◯で◯◯つもりだった、って事ですよねえ・・・・ いやはや。

大掛かりなもの含むいくつかのアリバイトリックは、トリックそのものに驚きはしませんが、その醸し出す物語性とスリルの加速性から見て、有効度は高かったと思います。 また、グリーン車の事件は、読者と捜査陣それぞれへ向けたベクトル異なる淡いミスディレクションだったのでしょうか。
警察の相談相手でもある大学教授が終盤に至りやたら犯人に肩入れし出すのは可笑しかった。 GSブームも去った折、“沢田研二というテレビタレント” が妙にディスリスペクトの対象になってたのは何だかな。
タイトルですが、意味的にはむしろ『列島動脈』が通じそうな所、ハマり具合でここは『動脈列島』一択でしょうね。 言葉のルッキズムというか、表題のポエティック・ライセンスというか。

No.3 6点 パメル
(2016/11/30 01:08登録)
新幹線の騒音・振動公害を許せない主人公は公害を根本的に解決するためにいくつかの
要求をし受け入れられないならば✖月✖日に新幹線を転覆させるという予告があるタイムリミットサスペンス
Xデーに目的の犯行をやり遂げるのかもしくは阻止させるのか警察組織との知恵比べは読み応え十分
また非常線を突破するトリックも中々良いアイデアだと思う
楽しめる部分も多いのだが犯人が運が良すぎるというか警察が無能すぎるというかそういう箇所がいくつかあり今一つのめり込めなかった

No.2 6点
(2009/05/31 09:58登録)
社会性たっぷりの倒叙サスペンス作品です。
騒音公害に義憤を覚える犯人が様々な手段を使って新幹線を止めようとする展開には、引き込まれます。アリバイトリックもあり、いちおうミステリ形式は保っています。
社会派ミステリには、後半で唐突に社会的真相(例えば、グリ森事件が背景にあるとか)が明かされ、それまでの内容の雰囲気が崩れてしまって、しらけてしまうものも多いのですが、本作はそういった駄作群とは違って、無理なくストーリーが組み立てられていて、好感が持てます。

No.1 5点 江守森江
(2009/05/30 22:30登録)
日本推理作家協会賞受賞作。
現在では対策済み?な新幹線騒音問題から派生した脅迫事件を追うサスペンス。高度経済成長期を知るにはもってこいの作品。
但し、作者の真骨頂は経済小説や一代記にあるので、ミステリにこだわらない方には、そちらをお薦めしたい。

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