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ミステリの祭典

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黒い福音

作家 松本清張
出版日1961年01月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 斎藤警部
(2017/12/23 11:02登録)
斎藤警部なる人物が一瞬登場。坂口良子氏と、Roxanne(ポリースの歌でおなじみ)らしき人物も登場、特に後者は重要人物。新聞記者佐野はまさか洋チャンの事ではあるまいか。
時折神視点の作者目線が闖入する上、読者目線での憶測主役が不規則に入り乱れるドキュメンタリ風の造りがスリルを齎(もたら)している(元より実話ベースの作品ですが)。本格の味もほんの微(かす)かに掠(かす)るけどこれはやっぱり冷気吹き荒れるドサスペンス押しの一品。舞台はキリスト教某一派日本拠点。「われわれの歴史は迫害の歴史だ」ですってよ。。。作者の被害者意識も高く、告発に撓(たわ)み無しのストレートな社会派ですが、下ネタユーモア溢れる傍流逆伏線エピソードには微笑ませてもらいました。

No.2 4点 パメル
(2016/12/28 12:59登録)
序盤から200ページ付近までこれといった事件は発生しない
あるのは救援物資の横流しと麻薬の密輸の噂がチラホラであとは男女の色恋沙汰と退屈
また気に入らない点も多い
盗聴に気付くのが遅すぎるし最後の電話も内容が直接話法になっているのは倒叙法としておかしいし捜査当局の推測にした方が良かったはず
また密輸品における運び屋の選択にも疑問が残るし麻薬と明かす必要は全くなかったと思う
最後も偶然が幸運一方に働いた点も不満

No.1 8点
(2010/02/22 21:30登録)
作者の代表作の一つとされる作品ではありますが、今回再読してみて、意外なほどのおもしろさを感じました。
現実に昭和34年に起こったスチュワーデス殺人事件をモデルに、キリスト教会の暗部を暴き出した本作は2部構成になっています。全体の6割を占める第1部では、第二次世界大戦直後、砂糖の闇販売に手を染めたことから犯罪の深みにはまっていく教会の状況が描かれていきます。第1部後半はほとんど、途中から登場する若い神父の視点になります。視点をいつの間にかその神父に持っていく手際も巧みで、殺人に至る心理サスペンスが見事。
第2部では一転して、スチュワーデスの死体発見から警察の調査が中心になります。容疑者が単に外国人というだけでなく聖職者であるからこそ、当時の警察の神経の使い方も並ではありません。
第2の精液など実際の事件の手がかりにあまりに忠実すぎて、作者の想像した「真相」に矛盾点が出てきているところは少々気になりますが、それでも特に第1部の迫力には圧倒されました。

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