ロマンさんの登録情報 | |
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平均点:8.08点 | 書評数:177件 |
No.97 | 9点 | 幻惑の死と使途 森博嗣 |
(2015/10/20 23:18登録) マジシャンが脱出マジックの最中にナイフで殺され、葬儀の時に棺桶から消える。その謎に迫る萌絵と犀川。そのマジシャンの弟子も別のビル爆破からの脱出ショーで殺されるという第2の殺人事件が発生する。意外な人物が犯人でその正体と緻密な計画には驚かされた。確かに森博嗣の「ミスディレクション」の素晴らしさだろう。 |
No.96 | 6点 | ベンスン殺人事件 S・S・ヴァン・ダイン |
(2015/10/20 23:14登録) 事件の捜査に興味のあった彼は、友人のマーカム検事のツテで、自宅の椅子で射殺されたベンスンの捜査に同行させてもらったヴァンス(&ヴァン)弾道上のなどの考察で犯人の性別や身長を割り出したものの、中々解決には結びつかず、検事とヒース部長刑事協力の元、入念にアリバイと動機を探り、消去法で犯人の正体を追い詰めていく。容姿端麗で美的知識に強く、ユーモアラスで冷笑的、遺産でお金に苦労しない、古典的かつ推理小説のお手本のような黄金時代の心理的探偵の作品。 |
No.95 | 7点 | 愛国殺人 アガサ・クリスティー |
(2015/10/20 23:09登録) 老いも若きも地位も名誉も関係ない場所、それは歯医者。半年に一度の定期健診を嫌々受けにいったポアロ。晴れ晴れとしてそこを去った数時間後に歯医者が死んだ。一見自殺に見える現場だが、患者に英国随一の経済界の重鎮がいたことで殺人の疑いも出てくる。医者はテロに巻き込まれたのか、それとも…。複雑に織られた布の中の1本の糸を辿っていくような事件だった。 |
No.94 | 7点 | 真っ暗な夜明け 氷川透 |
(2015/10/20 23:05登録) 大学時代のバンド仲間との同窓会の帰り、終電を待つ駅で殺人事件が発生。被害者は改札前で別れたはずのバンド仲間。改札内にいたのはみんな同窓会出席者。。 駅の改札内での密室状態での殺人事件ということで、犯人は限られてしまうが第二の事件が起こって不可解に。地味な感じの事件だが、細かい論理の連続で楽しめた。凶器の謎も面白かった。 |
No.93 | 10点 | 双頭の悪魔 有栖川有栖 |
(2015/10/20 23:02登録) 学生アリス第三弾。大傑作。今回は二つの村に分断されたマリアとアリスが語り手となり、それぞれが出会う事件が綴られる。途中の時点で贅沢なほどロジカルな推理が披露されるが、やはり特筆すべきは後半。二つの語り手が見届けてきたはずの事件が突然出会う展開、そして放たれる江神の論理の一撃は計り知れない衝撃。江神二郎VS犯人の論理対決には思わず震えた。そこに至るまでに築き上げられた丹念な推理と議論は、あらゆるフーダニットの技巧と工夫が込められ、ミステリの上限を押し上げたとさえ感じる。エピローグも印象的。 |
No.92 | 7点 | 名探偵に薔薇を 城平京 |
(2015/10/20 22:57登録) 完全な毒薬『小人地獄』にまつわる二部構成の物語。創作童話による見立て連続殺人の第一部では、真実が次々と明らかになるにもかかわらず真相に近づけない構成の巧さに唸る。そして解決した事件が二部へ繋がり再び起こる毒殺。猟奇的な毒薬と探偵の苦悩という二つの面を描いて、血の気の引くような真相に後味の悪さを感じながらも探偵の魅力に惹きつけられる面白さだった。著者のことは、まんが原作者としての印象が強かったけれど、表現豊かですらすらと読めた。『小人地獄』には作中でルールが明記されているので特殊設定下での事件として楽しめた。 |
No.91 | 7点 | 赤い館の秘密 A・A・ミルン |
(2015/10/20 22:15登録) 暖かみのあるテンポのよい会話と分かりやすい背景や状況の表現によって、作品全体が殺人事件にも関わらずユーモアに包まれている。この作品が名作と云われる理由は、殺害された遺体のトリックを初めて創作した事でしょう。今では何と言う事もないトリックと思うが、それだけにたくさんの作品に影響を与えたと言える。そして素人コンビのやり取りが、陰惨さを感じさせないメルヘンチックな雰囲気をかもし出している。児童文学を書くのは高いセンスを必用とするのだと認識した。 |
No.90 | 7点 | ホッグズ・バックの怪事件 F・W・クロフツ |
(2015/10/20 22:10登録) 大傑作と言えるような華やかさはないが、非常に丹念に構成された秀作(とは言え、クロフツにしては珍しく犠牲者が多い)。フレンチが手に入れる情報が、読者に対しても同時に、フェアに与えられるので、謎解きを自分でも楽しめる。謎解き編の解説も丁寧なので、遡って確認ができる。また、赤いニシンの使い方が巧妙で、初読の際、犯人と犯行手段は概ね解ったにも関わらず、最後まで迷っていたことを思い出した。 |
No.89 | 8点 | フローテ公園の殺人 F・W・クロフツ |
(2015/10/20 22:08登録) 第一部は南アフリカのフローテ公園殺人事件、第二部はスコットランド・イギリスに舞台を移して二つの事件が一つにつながる。登場する警部たちは終始一貫して 地味に 根気強く捜査を続ける。現場検証、アリバイ、粘り強い捜査と 推理が 延々繰り返されていく。最後のどんでん返しにはびっくり。 |
No.88 | 8点 | エンジェル家の殺人 ロジャー・スカーレット |
(2015/10/20 22:05登録) 先代当主が残した奇妙な遺言をめぐり、エンジェル家で連続殺人事件が発生。その捜査を通じて、屋敷内に別居する二家族の人間関係が浮かびあがる。なるほどツッコミ所はあるけれど、アイディア自体は面白いと思う。謎の来訪者が消失した理由とか(これはちと無理があるかも)。密室となったエレベーターでの殺害方法とか。単なる金銭欲にとどまらない犯行動機とか。何より事件の舞台である屋敷の造形が、現実離れしていて素晴らしい。古き佳き館ものミステリの傑作といえる。 |
No.87 | 8点 | 哲学者の密室 笠井潔 |
(2015/10/20 22:02登録) 序盤はナディアと駆のアントワーヌの死を巡る会話など興味を惹かれる部分もあったものの、なかなか事件の全体像が見えず、ペースが上がらず…。しかし、第二部で突如舞台が三十年前の収容所に移行、そこからの展開が素晴らしく面白い。後半は一気読みした。現在と三十年前の二つの『三重密室』の本質的な違い、ジークフリートの密室と竜の密室、それらと密接に絡み合う『死の哲学』、そして意外な犯人…と、もの凄く濃厚で贅沢な一冊。 |
No.86 | 9点 | 乱れからくり 泡坂妻夫 |
(2015/10/20 20:39登録) 冒頭の隕石の落下という出来事から引きこまれ、からくり人形やネジ屋敷などガジェットも非常に魅力的。それらを無駄なく活かした事件の構図が素晴らしい。一つ一つのトリックも良くてきているが、それら支えるための張り巡らせている伏線が秀逸で、ここまで無駄のない構成は凄い。個人的に一番感心したのは、隕石の活かし方。まさかこのように活かしてくるとは思ってもおらず素直に脱帽した。ミステリだけじゃなく、泡坂妻夫らしい物語や登場人物もよかったし、最後まで゛からくり゛に拘ったオチも見事。本格ミステリ好きにはぜひ読んで欲しい傑作。 |
No.85 | 8点 | ABC殺人事件 アガサ・クリスティー |
(2015/10/20 20:35登録) クリスティーを「読んだ事がない」という人でも、『ABC殺人事件』の名前くらいは聞いたことがあるだろうか。灰色の脳細胞を持つ、名探偵エルキュール・ポアロ。そのポアロの元に、ある日届けられた「ABC」を名のる人物からの手紙。ABCのイニシャルを持つ人間が次々と殺され、現場に残された「ABC鉄道案内」。やがて、ABC殺人事件と名づけられたその事件は、大衆を揺るがす騒ぎとなっていく。「有名すぎるから」という理由で、手に取らないのはあまりに勿体ない面白さ。クリスティーの傑作ミステリ。 |
No.84 | 9点 | 災厄の町 エラリイ・クイーン |
(2015/10/20 20:33登録) 狂気と沈黙が生むすれ違いの悲劇。事件そのものよりも、事件によって昨日の友が今日の敵となるムラ社会の閉鎖性と、犯人が犯人となるに至った心理に焦点がある。この事件においては、クイーン氏はほとんど傍観者に過ぎず、真相の解明に至っても、残酷な運命のいたずらと自らの無力にうちひしがれるのみだ。長い長い裁判の描写も、いくら策を尽くそうが、変わることのない運命を前にして無駄な抵抗を繰り返すライト家の人々の努力のむなしさばかりがにじむ。 |
No.83 | 9点 | 頼子のために 法月綸太郎 |
(2015/10/20 20:27登録) 高2の娘を殺された父親が、自らの手で犯人を割り出し殺害した顛末を綴った「手記」を残し、自殺を図る。これで終わったかに見えた事件だったが、関係者の思惑に巻き込まれ推理作家の法月綸太郎が再捜査に着手するやいなや、複雑な様相を見せ始めていく。さまざまな思惑を絡ませながら二転三転していくスリリングな展開の果てに、当初の人物像をガラリと変えていく“真実”もさることながら、そこから浮かび上がる不憫なまでの悲しき人間ドラマが読み応え十分。その静かで重い余韻が衝撃的に残る傑作。 |
No.82 | 7点 | 黄色い部屋の謎 ガストン・ルルー |
(2015/10/20 20:23登録) 完全な密室。二人の探偵による推理合戦。そして廊下の謎。。。 廊下の謎から犯人の予想および特定が出来るがとても信じられないものだった。 言い回しやくどく感じる場面も多々あるが最後に明かされる謎たちを読んだ時の面白さがいっそう引き立てられると考えるとそれでよかった。 確かにこれはミステリの古典的作品だと感じる代物で是非一読すべきものだったと感じる。 |
No.81 | 9点 | さむけ ロス・マクドナルド |
(2015/10/20 20:21登録) 自身の背景や心情をあまり覗かせない傍観者めいた探偵に案内され、人間関係の因果の迷路へと踏み入っていく。おきまりの人捜しから始まるきわめて型通りのハードボイルド。そしてその雰囲気こそがある意味犯人の隠れ蓑として最大限に機能している。ブラウン神父風に言えば「……は……の中に隠せ」とでもなるだろうか。意外なトリッキーさに驚かされてしまった。鋭角的な断面を見せるラストの途絶感もかっこよく、お話の悲劇性に比し、すこぶる爽快な読後感をもった一冊だった。 |
No.80 | 8点 | 歴史街道殺人事件 芦辺拓 |
(2015/10/20 20:20登録) 弁護士となった森江春策が、歴史街道上の各地を舞台とした、バラバラ死体遺棄と連続殺人の謎に挑む。とにかくトリックが衝撃的。このトリックはエグい。 |
No.79 | 7点 | 幻惑密室 西澤保彦 |
(2015/10/20 20:17登録) 密室を超能力で作り上げてしまう事件が、当たり前のようにある世界のお話。ミステリ小説の掟破りを平気でやっている本作を初めて読んだ時はびっくりしたが、逆に超能力者のいる世界で、どうやって犯人をつきとめるのかを、実に上手く書いており、非常に新鮮である。 |
No.78 | 9点 | すべてがFになる 森博嗣 |
(2015/10/20 20:14登録) ある夏の日、孤島の科学技術研究所で天才プログラマが殺された。現場は密室、死体は両手両足が切断され、コンピュータのメッセージには「すべてがFになる」と書かれていた。登場人物は個性的かつ要領を得て、無駄のない説明と描写は突きぬけるように美しい。なぜ研究所の密室で殺人が発生したのか?なぜ両手両足が切断されていたのか?その答えはすべてがFになった時に明かされる。 |