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ミステリの祭典

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ミステリ初心者さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:388件

プロフィール| 書評

No.128 6点 碆霊の如き祀るもの
三津田信三
(2018/11/03 18:04登録)
ネタバレをしています。

 このシリーズは好きです。雰囲気がとても良く、すいすいページが進みます。また、今回は密室4連発であり、豪華です! いつもの多重解決→どんでん返しもあり、いままでの流れが踏襲されています。

 竹林宮の密室による餓死は好きです。偲との会話でヒント(もはや答え?)で気づきましたが、面白いですね。しかし、腕に縛り後など残らないものでしょうか?
 物見櫓のトリックも、自分は好きでした。人形的なものを使ったとばかり思っていたのですが、死後硬直は盲点でした。過去に、死後硬直を利用した作品を見ていたのに・・・ 死体が無いのもミスリードですかね。

以下、好みで無かった部分
・結局、四つの怪談に、何かしらの解決がなかったのは少し残念。竹林は途中会話にあった狼か何かかと思いましたw 
・リレーの様な殺人で、笹舟の理由も納得ですが、一人による犯行のほうが好み。
・絶海洞のトリックはいまいち・・・。
・他殺に見せかけた自殺→密室は嫌い。
・ラストのお決まりのホラー要素は、なぜか怖さを感じなかった。ラストの展開によって、ゲンヤの推理が破綻するようなものを期待していた。過去作品のように。

 同シリーズの過去作品に比べ、ホラー要素や意外な犯人や大どんでん返しの面でスケールダウン感は否めません。ただ、大掛かりな仕掛けがないため、逆に本格度が上がっている気もします。


No.127 6点 インシテミル
米澤穂信
(2018/10/31 16:26登録)
ネタバレをしています。

 この本を読む前に、テレビで映画をみてしまいました。しかも、ラストシーンだけを中途半端に見てしまった。かなり残念なことをしました。なので、中途半端にネタが割れた状態で読みました。

 設定がよく、引き込まれました。だれがどの凶器を持っているのか?を考えるのがたのしい。クローズドサークルはやはり楽しい。
 自殺の使い方がうまい。うまくミスリードされました。
 関水の自分の凶器の偽装が天才的。日数がたたないうちにあれだけのことが出来るとは。結城がメモランダムを見つけたとき、"タイプライターで打ったような"という記載があり、それを見逃してしまって悔しい。主人側が、凶器の偽装をさせるためにあえてワープロを用意させているのだと思うと、漫画のライアーゲームを思い出します。思えば、毒殺と薬殺は被っていて怪しいかったです。
 より多くの利益を出したいときは自分で殺し自分で暴くのが効率が良い、というのは盲点でした。ルールの裏をついていて、これまたライアーゲーム的です。

以下、好みでは無かった部分。
 実験的にも、小説的にも、最初の自殺はどうか? 関水のように、殺人してでも金が必要な参加者を募ったほうがよかったのでは。それとも、あまり殺人する必要が無い人のクローズドサークルでの行動を実験しているのか? さらに、自殺者が主人側の意図しない自殺の仕方をしてしまっている。これを推理するのは難しい。
 なぜはじめに全員の凶器を金庫に入れようとしないのか?(これは、護身用に取っておくということも考えられるが)
 急にIQが下がってしまう安東w

 続きがあったら買いますが、結城は次回の実験に絶対に出ないでしょうね・・・
 ごめんなさい岩井。僧正読んでいません・・・海外古典作品は翻訳が古くて読みづらくて(自分の読解力不足)。


No.126 6点 そして扉が閉ざされた
岡嶋二人
(2018/10/28 23:41登録)
ネタバレをしています。

 ほぼ事故のようですが、主観犯人に近い?タイプで、犯人が犯行に気づいていないパターンは面白かったです。誰一人、完全に真相を知る人物がいないのがミソで、それによってあれこれ考えて話し合う構図が成立するところは今まで見たことが無く、読了後2週目をみても面白いです。
 勘違いしている共犯者が2人いて、偶然に偶然が重なっているため、やや強引な印象がありますが、話として良かったです。


No.125 6点 パノラマ島奇談
江戸川乱歩
(2018/10/27 11:19登録)
ネタバレをしています。

 角川ホラー文庫の、江戸川乱歩ベストセレクション⑥のパノラマ島綺譚です。石榴も収録されていました。

○パノラマ島綺譚
 人見の作った人工楽園の描写が、なにかすごく不気味に感じられました。最後、人見の爆散自殺を前にしても、あまり騒がなかった楽園の人たちにも、妙に恐怖を感じました。
 その一方で、過去に見た江戸川乱歩の短編よりかは狂っている度合いが低く、割かし主人公もまとも(?)に思えました。また、私の読解力が低く、人工楽園の世界もどの程度頭の中で映像化できたかわかりません;; 

○石榴
 個人的には、こちらのほうが好みでした。話の展開的には、旅館で知り合った猪股という紳士は"谷村"か"琴野"だと予想しましたが、結局はっきりとはわかりませんでした。自分の存在を消すために用意したトリックは面白かったです。実は途中、絹代が2人を殺した展開もあるのかとも思いましたw



No.124 6点 水族館の殺人
青崎有吾
(2018/10/25 23:29登録)
ネタバレをしています。

 前作に続いて、非常に読みやすかったです。本格度?の高い犯人当てもにくわえて、アリバイ崩しの要素も加わりました。

 評価の点数に迷いました。自分は犯人当ての解決編を読むときは、あたっていてもいなくても楽しいことが多いのですが、今作はいまいちピンときませんでした。それは自分の読解力の低さからくるもので、例えると、ウィキペディアの数学の定理の項目や物理学の項目ページを見ているときの理解できない感じと同じでした。そんな未熟な人間が、この作品を評価していいものやら;; 

 お蝶婦人的なキャラがでてきて、物語とどう絡んでくるか(天馬とも関係がありそうな描写)たのしみでしたが、そのまま終わって残念でした。たぶん、次あたりに出るのでしょうね?


No.123 7点 赤い密室 名探偵星影龍三全集(1)
鮎川哲也
(2018/10/23 17:51登録)
ネタバレをしています。

 全体的に満足度の高い短編集で、大満足でした。
①呪縛再現
 長編バージョンのあの作品を読んでいるので、ネタは割れた状態でした。長編よりもすっきりしていて、こちらも好きです。
 星影龍三短編集なのに、鬼貫警部にこてんぱんにされていて、顔真っ赤シーンは楽しいやらかわいそうやらでした。
②赤い密室
 卑怯なところの無い、納得感のある密室もので好きです。換気孔から死体の部位を入れたこと、胴体を棺を使って入れたことはなんとなく想像できたのですが、新聞の問題だけさっぱりわかりませんでしたw 一番単純なことが盲点でした。
 星影の台詞の"犯人がなにも密室にする必要が無いのに、わざわざ密室犯罪を作り上げている。言ってみれば作者が密室トリックを思いついたから、それを誇りたいために密室小説を書くのが大部分さ。"が強烈ですねw
③黄色い悪魔
 これって、星影の台詞の"密室にする必要が無い密室"じゃないですか?
④消えた奇術師
 読んでいると、すぐトリックがわかったのですが、トリック自体結構好きです。
⑤妖塔記
 他の作品と違って、怪奇小説っぽい雰囲気がある・・・? 鳴神の嘘話だったということですが、そのあとすぐ死んでしまったのが皮肉ですね。
⑥道化師の檻
 トリック自体はすぐにわかったのですが、これはかなり面白かったです。本来は共犯が嫌いな私ですが、全員が共犯でないと成立しないところがいいですね。

 文を短くしようとしたのに、まただらだら無駄なことを書いてしまいました。


No.122 7点 キングを探せ
法月綸太郎
(2018/10/17 20:30登録)
ネタバレをしています

 最初から最後まで騙されっぱなしでした! よく考えると、複線やミスリードがたくさんあって、楽しめました。
読んでいくと、自然にキングがあると勘違いしました。ラストのページの、アリは王がいないのくだりも、かなりセンスがあると思いました。

 妃名子の死が、他殺に見せかけた自殺で、そこがポイントだろうとは思いましたが、それいじょうのことは何もわかりませんでした。
また、4人が偽名をつかっているため、それを利用した叙述トリックの類も妄想しましたが、作者の手のひらで踊らされました(勝手に踊っただけかも…)


No.121 5点 白馬山荘殺人事件
東野圭吾
(2018/10/16 20:09登録)
ネタバレをしています

 非常に読みやすく、読了までさほど時間はかかりませんでした。密室の謎は、マジックのようで楽しめました。ただ、暗号解読の件は好みではありませんでした。長編にしてはすこし地味な印象があります。5にしました。

 私は最初、叙述トリックの類かと妄想しました。登場人物紹介の書き方が独特で、名字だけあるいは"マコト"や"ナオコ"など文中の表記と違うのがみそなのかな~と思いましたが、全然ちがいました。


No.120 7点 密室殺人ゲーム2.0
歌野晶午
(2018/10/05 19:19登録)
ネタバレをしています。

 長い停電のときに読んだためか(多分関係ない)やたら面白く感じました。 

 前作もそうでしたが、ザンギャ君の殺人が面白かったです。被害者の娘が脈を確かめるところまでいったので、結構きわどいと思いますがw
 次に、コロンボの問題も面白かったです。普段、密室殺人と見せかけての自殺は嫌いな私ですが、設定が生きていてよかったです。ただ、殺す対象を顔写真付きで予告や、コロンボの受け答えが一方通行(コロンボのキャラがミスリード?)なことから、自殺であることがうすうす予想できてしまいました。土嚢がどうとか、細かい点は一切わかりませんが。
 頭狂人のアリバイトリックは、なぜか前作も今作も気づいてしまいまた。なんとなく映像を使わせたこと、被害者をコントロールできる立場の人間が犯人であることなど。
 aXe?の問題は、自分にはよくわかりませんでしたw
 教授の癒し系問題の発展型問題を頭狂人が出していましたが、どっかでみたことあるな~と思ったら、近いものを同作者が書いていましたね。

 そういえば、前作頭狂人は自爆して死んだぽいですが、他人を巻き込んでしまっていますね。直接爆弾を取り除こうとしたのでしょうか?
 あと、前作教授は死んでいない…?ので、最後のページは教授なのでしょうか??


No.119 7点 鳴風荘事件
綾辻行人
(2018/10/05 19:03登録)
ネタバレをしています。

 自分の好みの作品でした!
 かなり熱心に読み直し、響の言っていた"犯人がだれもいない"状態まで推理することができました。しかし、犬アレルギーのミスリードにひっかかり、犯人を特定できず。悔しいッッ
 読者と作者の勝負を楽しめる、本格度の高い良い作品でした! 館シリーズよりもこっちの続編を書いてほしいのですが…w 

 難癖をつけるとすれば、ペンキの香りで発作が起きることが若干想像しづらかったです。


No.118 7点 法月綸太郎の冒険
法月綸太郎
(2018/09/15 17:27登録)
ネタバレをしています。

 かなり面白かったです。死刑囚パズルが一番好きで、そのまま順番に好きです。カニバリズムと緑の扉は過去に読んだことがあります。

 前の3作は、動機の部分も納得が行くというか、変わっていて良かったです。
 死刑囚パズルにもっと肉付けし、デビュー作にすればよかったのでは・・・?と思うほど。
 黒衣の家は、少年犯罪者のテスト?の話を思い出しました。

 後の4作から沢田さんがでて雰囲気が軽くなり、とても読みやすかったです。
 ただ、50円20枚の謎については、解かれてなかったのが残念でした。他の作家の方の同テーマの小説を集めたアンソロジーがあるようなので、そっちも気になります。
 過ぎにし薔薇は・・・は個人的にいまいちでした。


No.117 6点 日本殺人事件
山口雅也
(2018/09/08 23:37登録)
ネタバレを含みます。

 設定に個性があって読みやすく、楽しめました。ギャグだけでなく、ちゃんとした本格推理小説としてもよかったです。

 侘の密室は、私の脳では理解できませんでした。あと、"日本に行った事のない、偏った知識の作者によって書かれた日本が舞台の小説"という設定を、トリックかロジックか叙述かなにかしら組み込んであるかと思いきや別にそういうことがなかったのは残念でした。


No.116 6点 霧越邸殺人事件
綾辻行人
(2018/08/21 16:56登録)
 ネタバレを含みます


 連続殺人は、一人の犯行であるパターンが多いことを逆手に取ったミスリード的なものが良かったです。自分は、なんとなく"どうせ犯人っぽい槍中犯人だろう"と決め付けていたのですが、最初のアリバイが完璧すぎて頭を悩ませていましたw
 主人公の独白?の"彼は見事に犯人を言い当てた"的記述にも嘘がなく、よかったです。

 以下好みではなかった部分。
・余分な文章がおおく、無駄に長い気がする
・複数犯人を示唆する部分があり、フェア度が高いが、すべてを推理するには難易度が高すぎると思う。
 甲斐は睡眠薬を見ていない→どれが睡眠薬かわからない→甲斐は犯人ではないという良いロジックがありましたが、甲斐は医学の知識もあるんですよね? 睡眠薬は医師忍冬しかわからないもんでしょうか?
・槍中視点で見ると、都合の良い偶然と都合の悪い偶然がおきすぎている。
・死体を冷凍して、犯行時間を偽装するトリックは簡単すぎてあまり魅力に感じなかった。

 ページ数の割りに地味な印象を持ちました。


No.115 7点 贈る物語 Mystery
アンソロジー(国内編集者)
(2018/08/13 01:29登録)
ネタバレをしています。面白かったり、気になった作品の感想を書きます。


○暗黒の館の冒険
 面白かったのですが、犯人本人が自分の色覚異常に気づかないということはありえるのでしょうか?

○密室の行者
 まったくわかりませんでした。今読んでも新しさを感じます。アニメ日本昔話の吉作落としを思い出しました。

○長方形の部屋
  ちょっと私のおつむが追いついていません。ラルフは、トムに何と言って刺すことを指示したのでしょうかね? トムはラルフを神格化?してたのはわかりましたが、自分自身も神だと思っていて、復活する気だったのでしょうか? 部屋を墓と見立てていたのは? LSDの影響は? ちょっとよくわかりませんでしたw

○カニバリズムの小論
 食人に関する話も面白く、だれなかったです。排泄物が必要でなにかしたのかと思ってましたが、排泄自体が目的だったんですね。
 238ページの主人公が秋山駿だ!と反応するシーンが好きです。あそこで、"あれ?秋山駿ばかり読んでいるのはだれだっけ?"とページをめくって読み直すと、大久保信で、あっ…みたいなw
 こういう叙述ものは割とよく見ますが、それでも短編にかかわらず2度おいしい作品でした。

○達也が笑う
 こんな面白い催し物があったとはw 内容も、短編であるにもかかわらず長編本格並みの面白さでした!
 自分は、芳江と部屋で会話したにもかかわらず嫉妬しない兵太郎の様子から、浦和が女性と予想して、"性別を隠すように書いているのならどうせ犯人だろう"と論理もへったくれもないことを考えていましたw 浦和の義兄の事件は、密室状況が完璧すぎたため、おそらく自殺を他殺にしているのだろうとは予想しましたが、細かい点はわかりませんでした。女性は3人→ミミは男性も予想外でした。

 ちなみに、犯人が主観もので、犯人の不利な情報を書かないのは、犯人自体が文を書いたから…という解釈でいいのでしょうか? だとすると、これ系がもう4作目であり(それぞれオリジナリティーはありますが)ちょっと食傷気味ですw


No.114 6点 シャッター・アイランド
デニス・ルヘイン
(2018/08/10 02:32登録)
ネタバレを含みます。

 設定に引き込まれました。精神病棟の島、患者や医者だれがうそをついているのかわからない。ロボトミー手術などのホラー的な要素(過去に実際やっていた手術だそうですが、とても怖いですね)やサスペンス的な要素。だれない展開のため、2~3日で読了できました。

 ただ、最後の展開は、これ系小説にはありがちなラストであり、この小説ならではの個性やどんでん返しに乏しかった印象でした。主人公の夢?にでてくる暗示が、ヒント過剰なのかもしれません。作品の紹介文に"密室"と書かれていましたが、まったく密室ではなく、さらにそこにはほとんど触れられずにスルーされています。
いっそ、偽のレイチェル(エミリー)の語った、病院が人体実験を行っていて~主人公を薬でおかしくさせて~という展開のほうがぞっとする怖さはあったかもしれません。


No.113 7点 生ける屍の死
山口雅也
(2018/08/06 03:19登録)
ネタバレをしています。



 紹介文をみてすぐ買いましたw ちょうど新装文庫版が発売されていました。
 人を殺しても生き返る(?)世界でのミステリはオリジナリティが高く、かつ登場人物も面白い人が多く、単純に読み物としての評価が高いです! しかし、上巻途中までの衒学がすこしだけ冗長に感じることもありました。ほとんどは楽しく読めましたが・・・ 逆に、衒学の中にヒントがあるのなら、仮死状態→復活を何かトリックに使ったのか?とか序盤は考えていました。

 この本はいろいろな要素が入っていますが、もっとも大きい謎は、生き返るのになぜ殺すのか?ということだと思ってます。
ジョンの、遺産相続のなんやかんやで殺されたことを演出することは生ける屍についての法律がよくわからなかったのでピンとはきませんでした(記述があったら申し訳ありません)。 
モニカのほうは、納得がいきました。モニカの殺害動機がこの作品のなかでもっとも好きな部分です。

 あまり不満がありません。
あえてあげるなら、生ける屍がその1度目の死を隠し、生きている人間ではおこるデメリット(睡眠薬で眠らないなど)を回避することやそれを使ったトリックはあまり驚きがなかったです。
生ける屍を化したモニカの身体能力も、生ける屍のサンプルがグリンだけであったためピンときません(最初にすこしありましたね)。さらにモニカの痴呆具合もやや不明で、スマイリー達がモニカの足の不自由を隠していたとしても急にたってしまったりしないのか疑問でした。
と、文句を書きましたが、かなり楽しめた作品でした! 次は日本殺人事件を買おう!


No.112 8点 ある閉ざされた雪の山荘で
東野圭吾
(2018/08/06 02:56登録)
ネタバレをしています



 以前、東野圭吾さんの本を読んだときには相性がわるいと感じたのですが、この作品はとても面白くかつほぼ1晩で読めてしまいましたw クローズドサークルということもあったんでしょうが。

 こってこてのクローズドサークルのように描かれたようで、設定からラストまで実はお約束を裏切る展開で好きです。誰も山荘を出ないがクローズドサークルではないことや、全員役者、舞台稽古風(?)とお決まりの展開から外れたオリジナリティがすばらしかったです。特に、感動的なラストのクローズドサークルは見たことがなく、いい意味で違和感がすごい!
推理小説は普通、犯人が探偵やそれ以外をだますためにトリックをつかったり、作者が読者を直接だますためにトリックをつかったりします(この作品もそうですが)。が、犯人が第三者をだますために演技をしているのは新しいな!と感動しました。そのために犯人と被害者が協力関係にあり、犯人と神の視点はある意味で協力関係でない。

 神の視点=登場人物主観系は、他にも読んだことがあり、その作品よりもこの作品のほうが早く出たということに驚きましたw 他の作品も大好きなのですが、そちらのほうがそのトリック自身を生かしており、お互いにオリジナリティがあると思っています。

 自分は、独白のある久我のみ事情を知らされていない探偵で、その他の人物はすべて演技であり、カメラで撮っているのでは?と、論理も動機もまったく無視した的外れなことを考えていましたw 一種の作中作のような感じの考え方ですが、よく考えたら久我が探偵役として無能でも優秀すぎても成り立たず・・・


 あえて気に入らない点を上げるとすれば、由梨江殺害役が雨宮をがやっていること。ただ、これも、犯人がこれからの被害者に犯行を依頼するという、この作品でないと見られないような変わった光景がみれるという意味ではすばらしかったです。


No.111 7点 夜歩く
横溝正史
(2018/07/18 16:38登録)
 自分が過去に読んだ他の横溝作品よりも本格度が高く、楽しめました。


 以下、ネタバレを含む、ちょっと気になる点
 直記の部屋から取り出した日本刀で首をちょん切ったようですが、日本刀である必要があったんですかね? 念密な計画を練ったようだし、もっといい凶器があったのではw
 あと、血のついた凶器をそのまま直記の部屋の部屋においておくのはリスキーでは・・・? 金庫にしまうときも、犯行時間をずらすトリックが矛盾するとは思わなかったんでしょうか? 探偵小説家のサガでしょうか?

 他、細かい不満がありますが、楽しかったです。高木作品に似た雰囲気のものがありましたね!


No.110 7点 屍人荘の殺人
今村昌弘
(2018/06/06 01:47登録)
ネタバレをしています。※無駄に長い書評になってしまったため、大幅削減しました(笑)

 クローズドサークル×ゾンビパニックという、いままで読んだことのないミステリでした。非常に読み易い文章ですいすい読めてしました。現実にはありえない状況のミステリにもかかわらず、その作風はきわめて強い本格であり、大変満足です。こんなに若く、オリジナリティーを出し、それでいて本格度の高い作品が書ける作家が世に出て興奮します(笑)。

 満足度の高い作品ではありますが、難癖ポイントもあります。それは、無駄に叙述トリックが使われています。ミスリードに使われていますが、本格度が高いフーダニットと叙述トリック・意外な犯人・どんでん返しは相性が悪いと自分では思っています。つまり、叙述トリック部分は無かったほうが良かったと思います。


No.109 7点 体育館の殺人
青崎有吾
(2018/04/28 10:56登録)
 若干のネタバレがあります


 犯人を一人に断定できる、本格度の高い作品でした。帯に書いてあった、"クイーンの論理+学園もの"の看板に偽りはありませんでした。

 難癖をつけるとしたら、犯人の手際がよすぎて、まるでアサシンクリード。他の方のレビューでも指摘されていた点ですが、被害者は悲鳴とか抵抗とかなかったんでしょうか?
 あと、探偵のキャラクターが好きになれないというか、苦手でした。ネタのわからないことばかり喋っていて、さっぱり?でした。唯一理解できたネタは、バキとジョジョの"!"と"ツ"のつけ方のくだりだけでした。

 表紙の傘をさした女性は誰だったんでしょうか? 柚乃…?

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