蟷螂の斧さんの登録情報 | |
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平均点:6.10点 | 書評数:1696件 |
No.536 | 6点 | 迷走パズル パトリック・クェンティン |
(2014/01/10 21:50登録) 精神病院での殺人劇に、アルコール依存症で入院した主人公が、にわか探偵として活躍します。ハウダニットについては、年代(発表1936)を感じてしまいますが、フーダニットは結構楽しめました。伏線はかなりちりばめられていましたね。精神病院が舞台なので、変わった雰囲気を味わえました。最後の博士の告白には、ニヤリとしてしまいます。翻訳も読みやすいです。 |
No.535 | 7点 | 黒き舞楽 泡坂妻夫 |
(2014/01/07 18:33登録) (ネタバレあり)裏表紙「謎と官能に彩られた男女の異形の愛を描き出した禁断の恋愛ミステリー」とありますが、異形の愛というより、異形の性の印象が強かったですね。小学生時代の出来事が、うまい伏線になっていました。浄瑠璃人形の因縁がうまく絡み合っていると思います。 |
No.534 | 4点 | 黒衣の女 折原一 |
(2014/01/06 19:19登録) 「死の変奏曲」(1991)の改題。叙述をこねくり回してしまった印象です。犯人らしい人物をもっとミスリードしてもらえば、サスペンス感も盛りあがったような気がします。 |
No.533 | 6点 | 首断ち六地蔵 霞流一 |
(2014/01/06 09:01登録) 連作短編、見立て殺人、多重解決とあまり好みでない分野でした。フィクションなので、物語全体が荒唐無稽なのは良いのですが、細部にはリアリティ(納得性)があってほしいと願う者の一人です。その点で、やや突っ込みどころが多いような気がします。ラストの反転は古典的ではありますが、構成はよく考えられていると思いますのでやや甘めの採点となりました。 |
No.532 | 4点 | 牙王城の殺劇 霞流一 |
(2014/01/05 14:22登録) ヤングアダルト向きです。雪密室、UFO、ゾンビ等々謎の提示はてんこ盛りなのですが、突っ込みどころもかなりありますね。まあ、バカミスっぽい?ので許容範囲となるのでしょう(苦笑)。次は、氏の「本格」を追求したとする「首断ち六地蔵」を読みたいと思います。 |
No.531 | 4点 | 壺中の天国 倉知淳 |
(2014/01/04 11:15登録) 副題に「家庭諧謔探偵小説」とあり、日常のユーモア?を描きつつという趣旨なのか?。ミステリー的要素(特にミッシング・リンク)は弱い感じがしました。第1回本格ミステリー大賞とのことですが、選出理由がよくわかりませんでした。何しろ長過ぎますね・・・。 |
No.530 | 7点 | 妖女のねむり 泡坂妻夫 |
(2013/12/31 09:59登録) ”わたしたちは結ばれることなく死んでいった恋人たちの生まれかわりよ。十五世紀のフィレンツェで巡りあったジュリアーノとシモネッタは悲恋に終わり、西原牧湖だった二十二年前のわたしは、平吹貢一郎だったあなたを殺してしまったの。今度こそ幸せになりましょう…。初対面のはずが深いところで響き合う真一と麻芸。前世をたどる二人が解き明かしていく秘められた事実とは。”・・・輪廻転生という幻想的な恋物語でもあるが、物語全体に仕掛けられた罠を評価したい。心中事件や殺人事件にかかるトリックは、二次的要素に過ぎないのではないかと思う。このような物語をよく思いついたものと感心する。作中に登場する作品「春」(ボッティチェリ~作中ではボッティチェルリ)は好きな絵の一つで服部まゆみ氏の「この闇と光」にも登場する。作品「シモネッタ」(当時の絶世の美女?~ダビンチも描いている)がヒロイン麻芸に似ていることから物語は始まる。シモネッタが「春」の女神フローラであるという説を作者は取っているが、諸説紛々である。この辺もミステリアスであります。 |
No.529 | 4点 | 不気味で素朴な囲われた世界 西尾維新 |
(2013/12/29 19:46登録) この題名の世界は、ちょっとついていけない世界でした(苦笑)。「クビキリサイクル」が良かったので、引き続き読んでみたのですが・・・。アンチミステリー的な雰囲気か?。 |
No.528 | 7点 | 巡礼者パズル パトリック・クェンティン |
(2013/12/27 14:18登録) 登場人物は6人。一癖も二癖もある6人がおりなす愛憎劇。サスペンスものと思いきや、不審な転落死事件から、”多重解決”風な展開となります。5人がそれぞれ犯人を思い描くが、愛情が絡みあい、お互いかばいあったりし、犯人を捜すより、事件をもみ消すような共同犯的な雰囲気となります。このあたりが楽しめますね。真相もユニークです。本作1947年。日本ではA氏の作品M(1977年)を思い起こします。 |
No.527 | 5点 | エチュード 今野敏 |
(2013/12/26 09:21登録) 裏表紙より「繁華街で相次いで発生した通り魔殺人事件で、警察は誤認逮捕を繰り返す。警視庁捜査一課・碓氷弘一は心理調査官・藤森紗英を相棒に巧妙な「犯人すり替え」トリックの真相に迫る。」会話主体の文章で読みやすいし、スピード感もあり楽しめました。犯人対心理調査官(プロファイリング)紗英との知恵比べといった内容です。 |
No.526 | 4点 | 悪魔を呼び起こせ デレック・スミス |
(2013/12/25 10:03登録) 厳重な監視下、内部から施錠された密室での殺人。機械的密室でもなければ、自殺でもない。さて・・・。密室の定義を一つ一つ潰していくあたりまでは楽しめたのですが・・・。う~ん、これは自分にとって駄目なパターンの典型でした。残念。 |
No.525 | 5点 | ローラ殺人事件 ヴェラ・キャスパリ |
(2013/12/22 18:36登録) 米ベスト44位(サスペンス部門5位)広告会社の美人文案家ローラが殺された。捜査部長マークは捜査にあたる。ローラを崇拝する評論家・ワルドーがこの事件を小説にする。一部はワルドーとマークのやり取りを軸に物語は展開するのですが、やや退屈(翻訳のせい?)です。二部はマークの一人称となり、ここでサプライズがあります。しかし、これはメインではありません。ワルドーの言葉「探偵小説というよりは、恋愛小説としてものしたいと思う」とのとおり、サスペンスとしては弱い感じがしました。映画化されているようですが、米国と日本の嗜好の差が歴然とした一冊となりそうです。別サイトでの書評が見つけられませんでした。 |
No.524 | 5点 | 緋色の囁き 綾辻行人 |
(2013/12/20 19:34登録) フーダニットを絡めたホラー系サスペンスですね。どっちつかずの中途半端な感じがしました。まあ読みやすいですが・・・。 |
No.523 | 8点 | クビキリサイクル 西尾維新 |
(2013/12/19 09:09登録) 第1の密室は簡単すぎるので、この先どうなんだろう(面白いのかな?)と思いつつ、ページをめくる。コンピュータ破壊事件あたりから本格化し始めましたね。全員アリバイがあったりして・・・。不要なように思えるこの事件が、次に起きる密室・首切りにつながる。また、伏線になっているところがうまい!。トリックは初めての経験(前例の有無は不明)なので高評価としたい。題名および天才画家伊吹かなみ(IBUKIKANAMI)のネーミングも凝っている。 |
No.522 | 5点 | 三つの棺 ジョン・ディクスン・カー |
(2013/12/15 22:49登録) 著者の作品はまだ6冊目ですが、高評価が3冊、低評価が3冊です。結局、低評価は真相にがっかりしてしまうということに尽きます。期待が大きいだけに・・・。「それはなし(駄目)でしょ!!」というのが続いています(苦笑)。ご都合主義と思うものは、時計、証言、強靭な体力、降雪などです。 |
No.521 | 4点 | 曲った蝶番 ジョン・ディクスン・カー |
(2013/12/10 19:59登録) 導入部分は非常に惹かれ期待が高まりましたが、読むうちに、だんだん中だるみの感が強くなってしまいました。1年前の殺人事件が、何回も中途半端に語られるのでメインの事件に集中できませんでした。人形の登場も今一つピンときませんでしたし、オカルトチックな雰囲気もあまり伝わってきませんでした。犯人像の伏線もほとんどないし、証言は?????。要は肌に合わなかったということです。 |
No.520 | 5点 | 時を盗む者 トニイ・ヒラーマン |
(2013/12/07 08:49登録) 英米ベスト100・ランクイン作品。インディアン遺跡の発掘現場から行方不明になった女性人類学者を探すリープホーン警部。掘削機盗難事件を追うチー巡査。その後、殺人事件が起こり、二人は共同で捜査にあたる。リープホーン警部は妻を亡くしており、その回想シーンや、チー巡査の恋を絡めて物語は進行します。心象風景や、広大な自然の描写、インディアン文化の紹介などが評価されているのか? |
No.519 | 6点 | 騙し絵の檻 ジル・マゴーン |
(2013/12/05 11:23登録) ビルは、幼馴染の人妻・アリソン、およびその浮気調査をしていた私立探偵を殺害したとして服役する。釈放後、女性記者・ジャンが現れ行動をともにする。ビルは復讐のためにはジャンが邪魔であるが、ジャンはビルを慕う。この辺のやり取りは楽しめました。男冥利に尽きる?(笑)。アリソン殺しをメインに物語は進行するが、容疑者全員にアリバイがあり、動機も見つからない。さて・・・。解説で法月綸太郎氏が、最後10頁の解決篇、、下手に説明しすぎると、あまりにもあくどすぎる印象を与えかねないと誉めていますが、逆にもう少しアリバイや目撃した情景を詳細に描いて欲しかった。さらりと読む私にとっては、本作の良さが判らない。(作者からは、伏線があるじゃないか言われそうですが・・・)。過去と現在が読みにくい点については、時間軸の不明さ(混乱)と、真相の不明さ(メインである逆転)を掛け、あえてそうしているのでは?と深読みしてしまいました(笑)。 |
No.518 | 6点 | 子供たちはどこにいる メアリ・H・クラーク |
(2013/12/04 09:20登録) 米ベスト100の50位(サスペンス部門4位)裏表紙より「夫の声がきこえる―ナンシー、どうしたんだ?子供たちはどこにいる?七年前の実子殺害容疑は、証人が姿を消したため、かろうじて有罪を免れた。頼もしい男と出会い、二人の子供に恵まれ、忌まわしい過去を振り捨てて、新しい生活が始まった。しかし、またもや子供たちは、いなくなった。」・・・警察はナンシーを疑い、物語は進行するのですが、誘拐犯(ロリコン)が当初から登場しますので、ナンシーの容疑の有無については読者にとって問題となりません。従って、どこに犯人が潜んでいるのか、子供たちの運命は?ということを中心に物語は進行します。登場人物の心象もよく描かれていますし、風景も頭に入ってきます。非常に読みやすいし、テンポもいいですね。また、ちょっとしたサプライズも用意されています。アメリカではサスペンスの女王と呼ばれているそうですが、日本での知名度は?。 |
No.517 | 8点 | 永遠の館の殺人 黒田研二 |
(2013/12/01 18:15登録) ラスト(キラーXの生い立ち、題名の意味が判明)で久しぶりにゾッとしましたね。シリーズ完結編ということで黒田氏、二階堂氏の意気込みが伝わってきました。サイコ+館ものの夫々いいとこどり(雰囲気)、倒叙形式でスタート、その後叙述へ、殺人者が視点主人公であり、犯人が真相を推理するといった異例展開のオンパレードでした。真相は、前年度発表されたある作品と被ってしまったらしいのですが、サイコ系としては秀逸だと思います。 |