蟷螂の斧さんの登録情報 | |
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平均点:6.09点 | 書評数:1660件 |
No.1040 | 8点 | 赤い帆船(クルーザー) 西村京太郎 |
(2017/09/05 13:58登録) 十津川警部のデビュー作とのこと。松本清張氏の「火と汐」が出てきた辺りで、オリジナリティの観点から、かなり心が折れてしまいました。ところがどっこい、○○○○でした。この反転。かなりハイレベルなトリックには感心しました。もう一つのトリックもオリジナリティがあります。チョット危ういところもあるのですが、スケールが大きく、また発想もいい。なお、犯人像はこの人以外考えられないし、もしそれ以外の人物であれば、面白くもなんともない作品になってしまいます。よって倒叙式に近いものだと思います。時刻表トリックが苦手なので、トラベル・ミステリー以前の作品を何点か読んでみたい。 |
No.1039 | 6点 | 一本の鉛 佐野洋 |
(2017/08/31 19:11登録) 東西ミステリーベスト100(1986年版)の55位。1959年の作品です。30代の人には、この題名の意味が判らないかもしれませんね。昔はこのような誤りがあったのかも?。今だったら大変なことに?!。題名、動機の隠蔽、犯人像に特徴がある作品でした。 |
No.1038 | 5点 | ローズマリーの息子 アイラ・レヴィン |
(2017/08/28 17:21登録) 「ローズマリーの赤ちゃん」(1967年)の30年後に発表された続編。前作でローズマリーは悪魔教団に呪いをかけられ昏睡状態となったのですが、27年ぶりに目を覚まします。当時6歳だった息子は33歳に。そして悪魔の子であるアンディは平和運動組織の指導者として全世界の人々から愛されていました。しかし、ローズマリーは、アンディに悪魔の血が半分流れていることが不安であり、またアンディが時々本性を現すことで徐々に疑心暗鬼になっていきます。やがて2000年の祭典(全世界同時にローソクを灯す)でクライマックスを迎えるのですが・・・。結構楽しめたのですが、ラストが残念です。 |
No.1037 | 7点 | リリアンと悪党ども トニー・ケンリック |
(2017/08/27 19:29登録) 東西ミステリーベスト100(1986年版)の89位。あるトラブルで主人公バニーとエラとは天敵になった。しかし、孤児のリリアンと3人で大富豪の親子役を引き受ける羽目になる。バニーはエラを口説くがそっぽを向かれっぱなし。リリアンは9歳でタバコを吸うのである。こんな3人が大富豪の親子を演じられるのか?といったドタバタ喜劇です。後半は誘拐劇でバニーと誘拐犯と情報局の知恵比べのコンゲームになります。海外ものでは、中々笑いのツボに嵌まるものがないのですが、本作は笑えました。ただ、もう少しリリアンに活躍してほしかった気持ちはありますね。 |
No.1036 | 6点 | 壁-旅芝居殺人事件 皆川博子 |
(2017/08/20 21:59登録) 裏表紙より~『芝居小屋桔梗座の最後の日、特別出演をした役者の立花が四綱渡りで落ち死んだ。そして奈落からは絞殺死体が発見される。じつは15年前の桔梗座でも、落下事件があり、奈落で殺人が起こり、役者が一人姿を消していた。小屋主の娘・秋子が時を隔てて起こった事件の真相に迫る。』~ 第38回(昭和60年)日本推理作家協会賞作品。160頁の中編ですが、少し苦労しました。芝居用語、特に奈落の構造がいま一つ頭に入ってきませんでした(苦笑)。ラストのオチは「お初」かもしれません。推理小説としては初期の作品で、皆川ワールド(幻想的雰囲気)がまだ表現されていなかったですね。 |
No.1035 | 6点 | 真昼に別れるのはいや 笹沢左保 |
(2017/08/16 21:55登録) 有栖川有栖氏のアリバイ講義で紹介された作品の最終回。「アリバイがない場合」のカテゴリに属する作例として挙げられています。どういうこと?と思いましたが、普通に第3者の証言によるアリバイがないということでした。アリバイに関しては、面白い試みではありますが、「うーん」とうなるほどではなかったですね。最初から犯人はこの人物しかいない状況なので倒叙に近い物語です。よって、犯人が言うところの「ある場所にいた」という「アリバイ崩し」と動機探しがメインでした。デビュー間もない作品で、著者曰く「本格味とロマンを融合させようと努力した」ということです。当時は本格味のある推理小説に恋愛要素を含ませることは、タブーとされていたとあり時代の変遷を感じさせられます。 |
No.1034 | 5点 | 津和野殺人事件 内田康夫 |
(2017/08/14 19:58登録) 友人との会話で私が「ミステリーを読んでいる」というと、「誰の本をよんでいるの?、西村京太郎?内田康夫?」との質問。友人はミステリーは特に読んでいないのですが、やはりTVドラマ(十津川警部、浅見光彦シリーズ)の影響で両氏の名前が出てきたようです。ということで、まだ一冊も読んでいなかった内田康夫氏の作品。旅情ミステリーと銘打っているとおり、その雰囲気は良いと思います。津和野の歴史や、キリシタン弾圧の背景が物語に結びつき、よく溶け合っていました。ミステリー的には、犯人に関するプロットが好みでなく、そこが残念な点でした。 |
No.1033 | 4点 | 倒錯のオブジェ 天井男の奇想 折原一 |
(2017/08/11 10:54登録) 同じような題名が多く紛らわしい。また改題も多いし・・・。てっきり読んでいるものと勘違いしてました。天井裏の男、一階の大家の老女、二階の暴力男から逃げている人妻の各視点で語られるのですが、遅々として話が進みません。繰り返しの表現が著者の特徴でもあるのですが、本作はサスペンス感がないため、かなりイライラ(苦笑)。叙述もスッキリ感がなかったので辛目の評価です。 |
No.1032 | 4点 | 黒いアリバイ ウィリアム・アイリッシュ |
(2017/08/06 13:31登録) 邦題の「黒」シリーズは4作で、本作が未読でしたので手に取りました。しかし、あとがきによると原題でのBLACKものは6作あるとのこと。調べたら「喪服のランデヴー」と「恐怖の冥路」の原題がBLACKものでした。サスペンスものなので、真相は期待していませんでしたが、あまりにも予想通りで拍子抜け(苦笑)。本作は短編を寄せ集めたようで、味気なく物足りませんでした。何故かと考えたのですが、それは背景に恋愛が絡んでいなかったからかもしれません。 |
No.1031 | 8点 | 火の虚像 笹沢左保 |
(2017/08/04 13:12登録) 有栖川有栖氏のアリバイ講義で紹介された作品。あまり読まれていない作品のようです。有栖川氏は当然読んでいるわけで、氏の読書量はどれだけのものなのか?と変な感心をしてしまいました。なお「炎の虚像」と改題されています。どちらかというと犯人はすぐ推測できるので、倒叙形式に近い作品ですね。よってアリバイ崩しが主体。テレビ業界の仕組みをうまく利用した殺人事件であると思います。トリックが解明され、成る程と思っていたところ、さらにもう一つのサプライズが用意されていました。何とこれが「善意」であるところが憎らしい。拾い物をしたという感じの佳作です。 |
No.1030 | 7点 | 暗い傾斜 笹沢左保 |
(2017/07/30 10:32登録) 有栖川有栖氏のアリバイ講義(「マジックミラー」)で紹介された作品。トリック自体は先例がありますが、それをアリバイトリックに応用したのは初めてかもしれません。高知の室戸岬で事件が起き、一方東京でも同じ日に事件が起きる。この場合、実は共犯者がいたでは面白くとも何ともないので、読者は犯人の移動方法を考えるのですが・・・といった作品です。笹沢左保氏の数作品が、前記のアリバイ講義で紹介されていますので続けて読んでみるつもりです。 |
No.1029 | 4点 | 闇のよぶ声 遠藤周作 |
(2017/07/23 13:38登録) 謳い文句に「心理的探偵法を用いた著者唯一の推理小説」とあります。探偵側からの心理的探偵法なるものは、神経科医による予知夢を利用したもの。これは非科学的であり、導入部分で読者に対し不信感を持たせてしまい、失敗であったかもしれません。まあ、実は裏はあるのですが・・・。犯人側からは完全犯罪を狙ったもので、そ自体は成功しています。こちらも心理的な操作でのトリックですが、先例はありましたね。本作での疑問点は被害者の立場です。クリスティ氏の「ABC殺人事件」での被害者ABはそれ自体がトリックなので理解できるのですが、本作における被害者4人のうち3人については、必然性の面でどうも理解することができませんでした。また、真相の判明が犯人の告白によるもので、推理小説としては残念な点です。以上、ミステリー要素だけに絞った書評でした。 |
No.1028 | 5点 | セイレーンの懺悔 中山七里 |
(2017/07/19 18:38登録) 入社2年目の女性TVレポーターの成長物語でもあり、TV報道の在り方について批判的立場での物語でもありました。全体的にもっと毒々しさがあっても良かったのかなとの印象です。ラストの宮藤刑事の一言に変な感動をしてしまいました(苦笑)。 |
No.1027 | 5点 | カササギの計略 才羽楽 |
(2017/07/14 12:44登録) 恋愛小説としては、とても楽しめました。ミステリーとして評価すると、まあ普通かな~といったところ。「ホワイト」より「ブラック」の方が大好物なもんで・・・。 |
No.1026 | 5点 | アポロンの嘲笑 中山七里 |
(2017/07/08 19:11登録) 本作の後に発表された「月光スティグマ」も阪神淡路大震災と東日本大震災を扱っており、社会派的要素が強い作品でした。「アポロン(太陽神)」、「月」と続いたわけで、次は「星」?と思っていたら、今月発売される「ネメシスの使者」が「仮説上の恒星」という意味もあるみたい。ギリシャ神話の「女神」が正解みたいですが・・・。本作は逃亡劇を中心とした社会派人間ドラマといったところ。その面では筆力で読ませてくれ高評価です。しかしミステリーの面ではやや物足りません。著者の専売特許「どんでん返し」を期待し過ぎたか?(苦笑)。 |
No.1025 | 5点 | テミスの剣 中山七里 |
(2017/07/04 13:46登録) あらすじが物語全体の半分まで紹介されています。これは読むのに辛い。これからどうなるのか?の楽しみを奪われてしまう・・・。最近の著者の作品は社会派よりのミステリーが多いような気がします。本作も冤罪がらみ。後半、物語が急展開するのですが、既視感がありあり(苦笑)。他作品に比べインパクトは弱かったかも。 |
No.1024 | 6点 | ヒポクラテスの誓い 中山七里 |
(2017/07/01 14:25登録) 内容紹介では短篇とは記載されておらず、途中まで読んで短編と知る(苦笑)。一篇毎はそれほどのオチもなく、凍死は○○であった、交通事故は○○であったと続く。それだけかい!?・・・。しかし、ラストは連作短編ということで、うまく纏まっていました。主人公の真琴と古手川刑事との絡みがあるのですが、さてどうなるのか?。続編の「ヒポクラテスの憂鬱」(未読)でもコンビを組んでいるようです。著者のインタヴューでは「古手川は女性に対して完全に不信感を抱いているタイプ」としているので、先が楽しみです。 |
No.1023 | 7点 | 神様の裏の顔 藤崎翔 |
(2017/06/24 17:49登録) 最後の一行的な終わり方であれば、もっとインパクトがあり評価はアップしたと思います。ラストは一件一件丁寧な説明ではあるのですが、一件のみで、あとは読者の想像にお任せでもよかったのかも?。神様と呼ばれた元教師もアッチ系は人間的でよかった(笑)。適度のユーモアがあり楽しめました。 |
No.1022 | 4点 | 三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人 倉阪鬼一郎 |
(2017/06/19 21:10登録) 「四神金赤館銀青館不可能殺人」を読んでいたため、かなり身構えての読書となりました。大胆な伏線が多く、早い段階でトリックは判明(笑)。トリック以外の仕掛けの努力は買いますが、小説自体の評価とは別なので、この評価です。 |
No.1021 | 6点 | ビロードの悪魔 ジョン・ディクスン・カー |
(2017/06/17 10:53登録) 伏線があるので、ある程度予想できたのですが、一点だけ盲点がありました。思い込みをうまく利用したもので、やられた感がありますね。 |