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ミステリの祭典

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take5さんの登録情報
平均点:6.61点 書評数:397件

プロフィール| 書評

No.97 8点 マリアビートル
伊坂幸太郎
(2018/07/28 21:54登録)
読む人によっては、
エンターテイメントの重奏曲。ハラハラドキドキが新幹線の駅毎にやってきます。

読む人によっては、
哲学の入り口。人は何のために生きるのか、悪とは死とは、をはじめとして考えるために。ドストエフスキーも出てくるので。

読む人によっては、
読者自身の在り方を省みる教材。現代社会の、特に政治に向き合う態度や諸問題に目を閉ざさないために。

という読み方ができると思わないと、自分が一気にページをめくった理由を正当化できないので(笑)

作中の人物、王子に嘲笑されそうな分析ですが
改めて読書は重要だと思いました。


No.96 7点 白光
連城三紀彦
(2018/07/17 06:32登録)
学生の時に芥川の『藪の中』を学びましたが、
正に多重の視点で物事を捉えると
真実と思われる物がいかに主観的かと気付かされます。
全ての登場人物に鬱屈、葛藤があり、
犯人の可能性がありますが、
この作品では、誰が犯人かよりも、
なぜこのような事が起こったのかに
重きを置いて読みました。


No.95 6点 ダブル・ジョーカー
柳広司
(2018/07/15 07:51登録)
ジョーカーゲームの方をお勧めします。
近代の歴史をおさらいするのには、
こちらもよいのですが、
基本D機関が一枚上を行く話なので、
反対側から書くと当事者の
思い込みや失敗が当初から目立つのです。
でもリーダビリティはすこぶる高いです。


No.94 6点 死者との誓い
ローレンス・ブロック
(2018/07/08 17:35登録)
これまでのスカダーシリーズの中では、
事件が激し過ぎずに私は好みです。
その分、スカダーの葛藤がよく描かれています。
最後の所だけ、伴侶と被害者未亡人とどう折り合いをつけるかだけ、やや残念ですが。
展開途中の人間の描かれ方はさすがです。
スカダーの年齢が、やはり時代に伴って進んでいる印象を受け、そこは好ましいです。


No.93 5点 ラプラスの魔女
東野圭吾
(2018/07/05 20:46登録)
東野圭吾さんの作品では、
五指には入らないですね。
私の中ではですが。
設定が一般の人間でないならば、
尚更悲哀をきちんと示さないと
入り込めないのです。
リーダビリティは相変わらず高いです。


No.92 7点 獣たちの墓
ローレンス・ブロック
(2018/06/26 23:01登録)
マットスカダーシリーズとして、時系列の中で紹介しますと、
スカダーが新たな相棒(TJ)と関わる中で事件を解決していく事と、
スカダーがヒロインと新たな関係を模索していく事が平行して描かれている作品です。
事件の内容そのものは、相変わらずグロテスク(私見)でアメリカって感じで好き分好きがありましょうが、やはりスカダー自身の人間がよく描かれているので読ませます。


No.91 6点 倒錯の舞踏
ローレンス・ブロック
(2018/06/08 20:16登録)
ぐいぐい読ませます。
登場人物の描写は分かりやすいですし、展開も早いです。
猟奇的な事件も、悪趣味に走らないので、社会の歪みとして真っ当に捉えられますし、
主人公のアルコール依存から脱却しようとする姿も話と平行して納得の描写です。
人物がかけている分、ラストのアクションが少し乱暴な展開かと…そこだけが惜しいかなあ。
しかし、読破後に「自分の人生恵まれているなあ」とか考えラれる位にはよい作品でした。


No.90 6点 限界点
ジェフリー・ディーヴァー
(2018/05/13 12:26登録)
読みやすいジェフリーディーヴァーの作品で、
いつもながらのドンデン返しですが、
主人公の一人称で語られる所に、
一長一短というか好みというかが出ます。
葛藤から一番遠い所に自身を置く必要がある
主人公が、
ゲーム理論を絡めて事件にあたる訳ですが、
エピローグのエピソードが割り切ることの出来ない
矛盾をはらんでいれば尚よかったと感じます。
うまくやれていすぎという感じがします。
それよりも一人称の語りを生かす方を、
ディーヴァーが選んだという事でしょうか。
私の好みでは、『赤毛の男の妻』のように、
主人公の悲哀や矛盾を、
読者に投げかけたまま終わる事が
よりよいと思います。


No.89 6点 顔のない肖像画
連城三紀彦
(2018/05/01 22:37登録)
連城三紀彦の短編集としては、
他の物よりもストーリーより
反転そのものに重きを置いたものです。
タイトルが既にparadoxですし、
技巧はうならされます。
ただ私には、戻り川の情緒とインパクトが強くて、
なかなかそれを超越するものがないというところが
現実です。


No.88 6点 ナミヤ雑貨店の奇蹟
東野圭吾
(2018/04/15 08:07登録)
読後感が清々しいので、
お勧めできる良作です。
各章がきちんとリンクしていて、
回収も納得。
しかし設定が時空を越えるという点、
やはりエンターテイメントの域を出ない
感覚を覚えてしまいます。
作り物のミステリーだからこそ、
場面設定、更に作者そのもの
本当を考えてしまうものなのではないでしょうか。


No.87 6点 もうひとつの恋文
連城三紀彦
(2017/08/16 22:01登録)
恋文とセットで。
楽しめた短編集でした。
場面終盤の反転が気持ちよい(気持ち分かる)
ものでした。
いつでも人と人の関係はミステリー的に
スタートして、やがて何かしらを得るものです。


No.86 6点 過ぎ行く風はみどり色
倉知淳
(2017/08/14 23:07登録)
まずタイトルが秀逸です。
そして叙述トリックとしてもなかなか読ませます。
しかし、私にはエンターテイメント性が高すぎて、
逃亡の仕方とかもうびっくり…です。
終盤、胡散臭いおじさんの人間をしっかり書いてくれようとしていて、
好感が持てるのですが、
もっともっと人物描写に走って欲しかったです。
リーダビリティーが高い分、
厚みが欲しかった。


No.85 8点 恋文
連城三紀彦
(2017/08/10 19:34登録)
後から真相が明らかになるものあり、
真相は藪の中のままのものあり、
人の心や生き様がミステリーなのだから、
これは下手なトリックを読むよりも、
ずっとずっとミステリーの採点が高くて当然かと思います。
主観ですが。


No.84 4点 どんどん橋、落ちた
綾辻行人
(2017/08/05 07:31登録)
体調がよく、寛容な心があれば、もう少し高い評価でもよいのでしょうが、
ドンドン橋とぼうぼう森だけ読んで、図書館の返却日が来た、私にとって珍しい作品です。
叙述に驚きはあれど感心はしないのは何故でしょうか。主観です(o_ _)o

いずれちゃんと読破して正当に評価致します。


No.83 7点 十角館の殺人
綾辻行人
(2017/08/05 07:25登録)
まず、構成が島と本土の往復で、とてもスピーディーに読めるところがよいです。(これってネタバレですか?)
しかしコナン君の相方にあの表記は、余りにも誤誘導狙い過ぎるかと。小学生でももっていかれますね。そこがいまいち…もう一人、島田+潔って最初から微笑ましいくらいです。
ラスト瓶のくだりは説得力が占星術ほど無いと感じました。主観です。
改訂版は読みやすく、3時間ほどで一気に読みました。
好みの問題で、東の島田に一票の私です。


No.82 5点 笑うハーレキン
道尾秀介
(2017/07/16 06:45登録)
道尾作品らしい反転はありますが、
ミステリーらしさは薄いです。
人の弱さはよく描けています。
まあ楽しめたの5点です。


No.81 6点 ロートレック荘事件
筒井康隆
(2017/05/23 06:07登録)
ロートレックの絵が挿入されている事が大きいです。私自身妻と美術館によく行くのですが、絵画の鑑賞者として、読み手の私自身が作品中にあたかも入り込んで全ての登場人物と共に絵画を見ていると誤認してミスリードを招くのだと解釈しました。第一人称の私が読み手の私とシンクロするのです。
後半の一人語りの解説は、やや饒舌に過ぎると言えますが、作者の作家としてのフェアさが表れています。
装丁も素晴らしい作品でした。


No.80 7点 スキン・コレクター
ジェフリー・ディーヴァー
(2017/03/30 08:00登録)
これまでのライムシリーズを楽しんできた身として、
終盤のライムと●●のやりとりは、
次への期待を含めて良かったです。
が、お酒やミステリーは刺激に慣れてしまうものですね。
二十年近く経ち、ドンデン返しのインパクトが薄く感じられるようになりました…
パムとアメリアの葛藤も、やがてこうなるかもと見えてしまうし…
『イリュージョニスト』『ウォッチメイカー』辺りまでが新鮮でした。


No.79 8点 未練
乃南アサ
(2017/03/25 11:08登録)
『凍える牙』は名作でしたが、乃南アサは短編も素晴らしいです。
主観ですがミステリーではないと思います。
しかし主人公のサイドストーリー集という枠に留まらない考えさせられる作品ばかりなので、こちらのサイトで紹介して頂けて良かったです。
登場人物とシンクロして自戒の念を呼び起こすのは読者としても辛いのですが、
読書の意義は、暇つぶしだけではないと信じています。
そして主人公を始めとする人物の真っ直ぐの美しさや真っ直ぐ故の苦悩に触れる事が意義そのものと思いますので、
ミステリーサイトなのに高評価をつけました。


No.78 6点 むかし僕が死んだ家
東野圭吾
(2017/03/18 21:39登録)
終盤までの雰囲気と伏線の張り方が素晴らしいです。
ほぼ300ページ一気に読めます。
教育関係者の知人が「経験上、医学的でない支援を要する児童の問題のほとんどが、保護者の育ち方や思考の問題と密接に関わっている」と言っていました。文中のデータとシンクロしました。
※医学的な問題は統計、確率の問題だそうです。

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