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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2254件

プロフィール| 書評

No.634 7点 カナダ金貨の謎
有栖川有栖
(2019/12/19 10:58登録)
 短編2編の “謎そのものよりも謎の出し方がメタ的なヒントになっている” 状態が面白い。表題作中の “キャメルの由来” も同様。
 「船長が死んだ夜」。犯人の肉体的特徴の描写が少なくて読み流していた為、解決編で “アレッ、この人はそういうキャラだっけ?” とキョトンとしてしまった。ええ私の読み方が悪いんです。それを除けば、とても良い。


No.633 8点 レームダックの村
神林長平
(2019/12/19 10:54登録)
 巫女。ムラオサ。穢れたら埋められる。受け入れを拒否されたら生きて出られないよ……ホラー系ミステリのような導入部だが、間違いなく神林長平の長編SF、しかも『オーバーロードの街』に連なる作品である。比較的きちんとまとめて終わっている、と思ったら続きがあった。
 タイトルが内容をそのまま示している。街(都市圏)がああいうことになっている時、田舎の村では何が起きるか。様々な思惑が絡み合い、国家論が右往左往し、ラストは結構な力技に呆然。そして話は全然終わっていない。人類はどうなるのか?


No.632 8点 ×××HOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル
西尾維新
(2019/12/12 10:58登録)
 CLAMP のコミックをネタに西尾維新が書いた小説。そりゃ当然面白い。実はストーリー性は希薄で、御題を右から左へ動かしているだけなのだが、それでこんなに読ませるとは一体どういう仕掛けなんだか。
 しかし短編3本をこのサイズの豪華な書籍に仕立ててこの値段。売れっ子同士の組み合わせなんだからボってやれと言う版元の狙いが透けて見えるような気がする。(ビジネスのことは言うな!)


No.631 7点 ベンスン殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2019/12/12 10:48登録)
 思うに、最低限の作品なら或る程度スタイルを整えれば成立するミステリと言うジャンルは、気を抜くと堕し易い? あと、読者のマニア度が人それぞれなので、B級品の需要も常に存在する?
 つまりは、論理的なものと通俗的なものを巡る構造は当時も現在も変わっていないと言うことか、本作の批評性の強い書きっぷりが、90年以上過ぎた今読んでもそれなりに面白い。
 饒舌なファイロ・ヴァンスは知的と言うより道化だが、それはそれで楽しめた。なんで最初からあんなに自信満々なの。


No.630 8点 神狩り
山田正紀
(2019/12/05 12:50登録)
 いや~、スッキリした小説である。余計な重複が無いし、多面性に欠ける一本気キャラばかりだし。かと言って貧弱なわけではなく、頑健な骨格に引き締まった筋肉を具えたアスリートの力強さだ。
 一方で、“説明出来ないことは説明出来ないのだ”と言う説明で押し切ろうとしているのは、若書きと言うかまだ手持ちの駒が少なかったんだなぁと感じる。それを形にしようと徐々に饒舌になったのかもしれない。
 まぁ読書に関して一神教である必要など無いのだ。熱いデビュー作と厚い近作と、面白さの質は変わったが山田正紀はどちらも面白い。


No.629 5点 虚空から現れた死
クレイトン・ロースン
(2019/12/05 12:48登録)
 スラップスティックな筆致で不可能犯罪が描かれるところまではいいが、トリックは物足りない。チーム・ディアボロやチャーチ警視のキャラクターは好き。
 主人公の名前 “ニック” と “ディアボロ” を意味もなく(?)混用するのはやめて欲しい(※両方とも “悪魔” の意味を持つ語であるとの由)。


No.628 5点 吸血鬼飼育法
都筑道夫
(2019/12/05 12:47登録)
 期待した程ではなかった。トラブルをアッと驚く奇策で解決、するかと思ったら結構な泥縄式対応。キャラクターが違えばもっと楽しめそうな気もするし、基本設定と持ち込まれるネタがマッチしていないのでは。特に、多数の共犯者で事件を演出する話は、それなりに捻ってあっても首肯しがたいな~。


No.627 6点 監禁探偵
我孫子武丸
(2019/12/05 12:45登録)
 あざとい設定、だけどまぁいい。ミステリ要素としては小粒なものをキャラクターで引っ張っている、のは方法論としてアリだろう。しかし最終話でここまで強引にまとめる必要はなかったと強く思う。妙な性癖の謎の少女が理由もなくあちこち渡り歩いている、で押し切った方が良かったのではないか。


No.626 7点 斜光
泡坂妻夫
(2019/12/05 12:40登録)
 泡坂妻夫の描くエロスはあまり好きではない。基本的な趣味の違いでこれはどうしようもない。
 本作は良く出来たプロットだし(しかし姿を消した原因が判らないってことはないだろう)、御都合主義的偶然が運命的な天の配剤のように読めるのは人物造形の確かさ故だろうか。それでも濡れ場になるとフッと冷静になってしまう自分がいる。


No.625 7点 法月綸太郎の冒険
法月綸太郎
(2019/12/05 12:39登録)
 悩みながらも一つ一つ的を定め、的中に至らずとも丁寧に矢を放つような、パズラーに対する誠意が、長編よりも判り易く感じられて好感が持てる。但し悪ふざけめいた「土曜日の本」は余計だな~。ああいうのはエッセイ集とかのオマケにそっと忍ばせるものでしょう。


No.624 7点 戦争獣戦争
山田正紀
(2019/11/30 16:14登録)
 現世と重なり合いつつ微妙に違う世界で戦いに明け暮れる種族、と言った設定は目新しくもないが、山田正紀は巧みなエピソード構築、鮮やかな視覚的イメージ、そして言葉自体の存在感で厚みの付与に成功している。でも腐肉や糞便に関するイメージ喚起力は困るな~。
 惜しむらくは少々贅肉を付け過ぎてリーダビリティが犠牲になっている嫌いがある。3分の2を過ぎて読み疲れた頃にググッと話が収斂して(中原さんのエピソードは泣けた)オオッと来た後がまた長い。もう少し流れが良くなれば結末のカタルシスも増すと思うのだが、この作者の大作主義は良し悪しなので全部込みで付き合うしかないのだろう。


No.623 7点 48億の妄想
筒井康隆
(2019/11/30 16:13登録)
 テレビ文化の爛熟、インターネットの普及、動画サイトやSNSの台頭――おそらくこの作品はことあるごとに“未来を予見していた”と評され続けてきただろう。私も同じことを呟いて溜息を吐くしかない。
 冷静に考えれば、テレビと言うメディアの性質からして、それをデフォルメして現実と虚構の混乱を描く作品が登場するのは時間の問題だったと思うが、最初の矢で正鵠を射抜いた本作はやはり見事だ。
 個人的にツボだったのは某若手スターの喋り方。“欣喜雀躍神社仏閣!”ラッパーかい。


No.622 7点 叙述トリック短編集
似鳥鶏
(2019/11/30 16:12登録)
 私が叙述トリックを好むのは、やはりその一行を境に頭の中のヴィジュアル的イメージが一変する快楽ゆえである。
 細心の注意を払ってアウトにならないギリギリのラインに配置された言葉をドミノ倒しの如く崩さぬよう慎重に読み取るスリル。そこに於いて作者と読者は出題者 vs 回答者と言うよりも緩やかな共犯者になる。真相を見破る悪意ではなく、上手く騙される読者としてのスキルも重要だと思う。
 但し、叙述トリックがあると言う予備知識が無いとその共犯関係は築きにくく、かと言って予備知識があるとネタバレで面白さを殺ぐ、と言うジレンマがあり、解決策として予め『叙述トリック短編集』と名乗ってしまうのはコロンブスの卵だ。しかも個々の短編がハズレ無しでこの身も蓋もない企画に見合ったレヴェルを維持出来ている。拍手。


No.621 7点 悲しみの時計少女
谷山浩子
(2019/11/25 13:31登録)
 作者曰く、綾辻行人『時計館の殺人』と本作は“作者同士のアイディアや趣味が混ざりあった結果、兄妹のような関係の作品になりました”。その綾辻行人は推薦文で“同じ「時計屋敷」をモチーフにしたこの作品を読んで、正直なところ打ちのめされてしまった”と吐露。更に、竹本健治が“自宅をカンヅメ会場として提供”と言う微笑ましいエピソードも添付。話半分と考えても素通りは出来まい。
 『時計館の殺人』と通底しているのはロジックやトリックではなくルナティックなエレメント。となれば『霧越邸殺人事件』や『囁き』シリーズにより強い共振を見るべきか。とは言え中村某を髣髴させる人物も登場し不可解な場所を幾つも巡る構成は、館シリーズを駆け足で一冊に凝縮した野心作と言えなくもない、と言っても過言ではないかもしれない。
 実はこの度読み返して小林泰三みたいだと思った。これは両者とも『不思議の国のアリス』の子供だから。但し“サカナの目の男”が『クトゥルー』ネタだと言うのは考え過ぎだろう。サカナはもともと谷山浩子が多用する言葉なのである。


No.620 7点 ユキのバースデイシアター
谷山浩子
(2019/11/25 13:28登録)
 谷山浩子は、1972年にデビューして以来、40枚を超えるアルバムを発表しているシンガーソングライター。ヒット曲は……あるのかなぁ? 「河のほとりに」のオリコン29位が最高位。知名度を考慮すると、斉藤由貴「MAY」(2位)の作詞者、手嶌葵「テルーの唄」(5位)の作曲者、と言った方がいいか。小説家としてもファンタジーや少女小説を10冊以上上梓している。歌詞の内容とリンクしていたり、そこまでいかずとも世界観が共通だったりで、彼女の歌のファンに向けたもう一つのアウトプット、という側面は否めず、そして私もファンの端くれであるので文芸作品として純粋に評価するのは困難だが、決して馬鹿にしたものではない(と信じたい)。

 さて本作は、綾辻行人との交流によってにわかミステリファンとなった谷山浩子渾身のトリックが炸裂する連作長編。勿論ベースはファンタジーなので、ふわふわりんでパセリパセリなバカミスなのだが、意外とメフィスト賞系作品あたりにこんな話が混ざっていてもおかしくないと思う。“謎々好きの妻”がキュートで不気味。


No.619 7点 ベーシックインカム
井上真偽
(2019/11/25 13:24登録)
 まず、表紙背表紙裏表紙総動員して“SFミステリ”と謳っているが、つい“SF要素探し”をしてしまうので、これは素直な読み方を邪魔する余計な先入観。売る為のラベルが商品の質を損なうと言うのも可笑しな話だ。少し未来のテクノロジーが登場するのでSF宣言しておかないとアンフェア認定される?
 そして、本作は良く出来た短編集だが、今コレを書きそうな作家を思い浮かべれば十指に余る。つまり、作品としてのレヴェルはアップした反面(と言うかそれ故に?)、個性はダウンしている嫌いがある。講談社からの過去作は、論理を徒に錯綜させて判りにくくしているだけだと思っていたが、“だけ”ではなくそれが井上真偽の紛れもない作風であると逆説的に実感した。しかし作品としてはあくまで本作が上。ままならないものだ。


No.618 8点 盲剣楼奇譚
島田荘司
(2019/11/25 13:22登録)
 差別云々が出て来て嗚呼またこの作者の悪癖が、と頭を抱えたものの、豈図らんや「疾風無双剣」の章が滅法面白い。ミステリの面白さではないんだけど面白いなら何でも良い。


No.617 5点 囲碁殺人事件
竹本健治
(2019/11/18 11:40登録)
 中途半端なジュヴナイル、と言う印象。主人公が小学生だからそう感じるのか? 世界の上の方に境界線が引いてあって、ハイここまで~と規制した結果、妙に品良く収まってしまって全力で読めなかった。そしてそれが、作品に対してプラスには働いていないと思った。


No.616 6点 絞首商會
夕木春央
(2019/11/18 11:39登録)
 一点突破主義ではなく、ストーリー展開・キャラクター造形・文章力等を組み合わせて異世界を構築しようとするこの手の作品は、諸要素のレヴェルが或る閾値を超えると途端に活発な反応を起こして相乗効果が跳ね上がるものだが、その点で本作は惜しくも一歩及ばなかった。何か少しだけ足りない感じで隔靴掻痒。良く出来ているし真相のアイデアもなかなかだが、コレならもっと面白くなる筈なんだけどな~と首を捻りながら読み終えた。


No.615 3点 ポアロ登場
アガサ・クリスティー
(2019/11/14 10:41登録)
 この中の一編が雑誌に混ざっていたなら、枯れ木も山の賑わいと言えないこともない(誤用ではない)。しかしこうして一冊にまとめて枯れ木だらけの山にしちゃうと……面白い部分が皆無と言うわけではないが、これがいいねとタイトルを挙げるほどのものは見当たらなかった。

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