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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2149件

プロフィール| 書評

No.569 8点 DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件
西尾維新
(2019/07/23 11:20登録)
 『DEATH NOTE』は熟読したので、名前を見ればキャラクターの顔が浮かぶ。そんなファンの性質を逆手に取って一本取られた。
 原典には“2年前にLの下で働いたことがある”と言う南空ナオミの台詞があるので、それがつまりコレなのだろう。人がポコポコ死ぬ『DEATH NOTE』の中でも、南空ナオミの死は理不尽かつ無念の最たるもので、多大な傷痕を読者(私)に残したものだが、その彼女に再登板の機会を用意するとは粋な真似をしてくれる。


No.568 7点 指名手配作家
藤崎翔
(2019/07/16 16:09登録)
 のっけからあからさまなB級臭に、それならそのつもりで行こうと思ったら、確かに安っぽいのだが存外にその要素は有効に働いていた。禍福は糾える縄の如しと言うが、善悪とか清濁とかをごっちゃにした展開には、なんじゃそりゃと突っ込みつつ楽しく読めた。設定上必然的に主人公には好感を持てないけれど、不覚にも幾度か涙したちょろい私。


No.567 7点 大幽霊烏賊 名探偵 面鏡真澄
首藤瓜於
(2019/07/16 16:08登録)
 最初の数章を読んだ時点で否応無しに想起させられるのは『ドグラ・マグラ』。衒学趣味は嫌いじゃないし、伏線回収など期待してはいなかったが、あっけなく不時着して四散したのは残念。作者は物分かりが良過ぎだ。ここまで飛び上がったのだから、狂人の論理を駆使して、もう少し踏ん張って欲しかった。


No.566 8点 殺人犯 対 殺人鬼
早坂吝
(2019/07/16 16:07登録)
 ネタを重ね合わせてレッド・ヘリングにする今回のトリックはかなり好み。みごとに騙され歓喜の白旗を掲げた。ただ、軽い文章なりにもう少しプラス・アルファが欲しいかも。もっと多くの子供達が現地にいる筈だが、その雰囲気が感じられない。いちいちモブに名前を付けて必要以上に読者を混乱させない親心、ってことでいいのかね。


No.565 8点 ヒト夜の永い夢
柴田勝家
(2019/07/09 10:49登録)
 『ドグラ・マグラ』を筆頭に先行する同系統(?)類似(?)作品は幾つも思い付くが、全然負けていない。内容が似ていると言う意味にあらず。博覧強記で広げる風呂敷は縦横無尽。さりとてきちんと着地を目指すでもなく、夢と現の間で右往左往するは奇天烈なエログロナンセンス。脱線した部分の方が楽しそうな筆致であることもこの手の奇書の共通点だ。


No.564 6点 リラと戦禍の風
上田早夕里
(2019/07/09 10:47登録)
 文章の力強さで読まされてしまうが、戦争を題材にすると或る程度はこうなるという定番みたいな部分もあって、ファンタジーを混ぜた割には地に足の着いた話に終始しており、力作であるがゆえの息苦しさが少々感じられた。後半で時間が2年飛んじゃうのは如何なものか。


No.563 8点 夫の骨
矢樹純
(2019/07/09 10:44登録)
 短編集としての欠点は、作風が一貫し過ぎていること。“家族”が主題。事件を探偵が解くのではなく、情報を制限し“読者に対して”謎を演出する形式。手堅く普遍的な文体や人物設定(“嫌な感じ”の匙加減が絶妙)……ゆえに非一気読み推奨、一話ずつばらして賞味するが吉。
 収録作品はどれもレヴェルが高くて正直びっくりした。一編選ぶなら「柔らかな背」(人殺しの場面が愉快)。
 因みにかなり毛色は違うが漫画原作者としての仕事もなかなか面白い。


No.562 5点 中野のお父さんは謎を解くか
北村薫
(2019/06/24 11:01登録)
 三択クイズの出来があまり良くない事が、凄く気になった。
 “『広辞苑』に載っている” は定義が曖昧。“夢野久作” の項を見ると『ドグラ・マグラ』に言及しているので、広義で “載っている” と言えなくもないのでは。厳密に “見出し語として採用されている” とすべき。
 “存在しないものはどれでしょう” は悪魔の証明であって、存在を自分が知らない、探しても見付からない、からと言って “存在しない” とは限らない。海賊版があるかもしれないし。翻訳の存在を確実に否定出来る立場の人っているのだろうか?


No.561 6点 こうして誰もいなくなった
有栖川有栖
(2019/06/24 10:58登録)
 文章が良いので読まされてしまうが、それほど決定的な短編は見当たらない。
 結局、表題作が最も面白いが、作者がこういう形の本歌取りを試みた意図はいまひとつ判らなかった。それと犯人が何か変な行動をしているが、少々アンフェアでは。何故そこで被害者を制止する? 何故せっかくの好機にさっさと殺さずお喋りしている?


No.560 5点 事故係 生稲昇太の多感
首藤瓜於
(2019/06/24 10:56登録)
 なにせ『脳男』の作者だからどんな大技を見せてくれるかと期待したら、そういうドカ~ンとした部分の全然無い地味な警察小説。何より主人公に殆ど共感出来なかったのは痛い。
 第四章に挿み込まれたレッカー業者のエピソードは良かった。


No.559 6点 怪物の木こり
倉井眉介
(2019/06/17 12:19登録)
 第17回このミス大賞受賞作。
 漫画ならもっと楽しめたかも。ストーリーは面白いが文章がスカスカ。と感じるのは“小説は深みのある文章で書かれるべき”との固定観念に縛られているせいか。“あくまでも虚構性の強い世界だからこそ成立する物語”との選評には同意するが、それがネガティヴな要素だとは思わない。それはそうと、乾が名刑事には全然見えないのは大問題だ。


No.558 4点 不見の月
菅浩江
(2019/06/17 12:17登録)
新人警備員が右往左往する連作集。どの話も“謎とその解明”が軸で、SFミステリという形態をかなり明確に意図しているようだ。しかし、アートにまつわる諸々の心情がやけに説明的に説明されており、どうにも硬い。菅浩江の作品はひととおり読んでいるが、もう少し繊細な筆致じゃなかったかなぁと首を傾げざるを得なかった。


No.557 5点 本と鍵の季節
米澤穂信
(2019/05/28 11:25登録)
 高校生が推理合戦に興じる状況設定に苦心している印象で、素直に読めたのは最後の“宝探し”くらい。また、私の読み方が浅いのか、二人の資質の差異があまり感じられなかった。
 “人気がない図書室”の読み方はどっちだ? (とわざわざ書くのも大人気ないが……)


No.556 6点 霧越邸殺人事件
綾辻行人
(2019/05/28 11:23登録)
 綾辻行人の一連の館ものは、どれも割と(叙述)トリックのコンセプトが明確でしかもそれらが上手く分散している為、個々の存在感が際立ったシリーズになっていると思う。
 それに対して本書の要素“ホラー”は物足りない。構成上の必然は判るし、本格との絡め方もこれはこれで上手い。しかし意地悪く言えば“暗号クイズがオマケとして付いている”に過ぎない。単独で読むならともかく、綾辻行人作品リスト中の一冊として見ると“良作だが地味”との印象。

 西條八十の自鳴琴は“読者には知り得ない手掛かり”と言うことでS.S.V.D. へのオマージュと言うかジョーク?
 “ウォークマン”と言う語を解説無しで使っているがいつまで通じるだろうか?


No.555 5点 刀と傘 明治京洛推理帖
伊吹亜門
(2019/05/22 11:33登録)
 第19回本格ミステリ大賞受賞作。
 舞台は明治維新前後の激動期。人々の行動原理も命の軽重も現代とは異なる時代設定を上手く謎に絡めている。ネタの見せ方を心得ている人だと思う。手堅い文章力で歴史小説としての読み応えも、多分あるのだろう。
 しかしそこが却って、ぶっ飛んだ部分の無さ、と言うことで私の嗜好とは食い違う原因にもなってしまった。


No.554 5点 泡坂妻夫引退公演
泡坂妻夫
(2019/05/20 10:35登録)
 私は泡坂妻夫の現代ミステリのみ愛しているので、否応なしに氏の全ジャンルを縦断して読まされるこの本は有難迷惑なのである。ファンらしからぬことを言うなら"コスト・パフォーマンスの悪い本”。
 ミステリ度低めな短編が多く話そのものにはあまり乗れなかった分、泡坂妻夫の文章の心地良さを再確認は出来たけれど、だからと言って今まで避けて来た時代物や職人物の本に手を伸ばそうと言う気にはならなかった。幾つかの現代ミステリの中では、『煙の殺意』あたりに収録されてもおかしくない「荼吉尼天」が収穫か。


No.553 5点 赤い館の秘密
A・A・ミルン
(2019/05/07 11:28登録)
 好感の持てる筆致でテンポ良く進む、のだが何だか薄味でいまひとつ乗り切れなかった。しかし真相には膝を打った。館の部屋の配置はしっかりイメージして読むべきだったか……。


No.552 7点 指し手の顔 脳男Ⅱ
首藤瓜於
(2019/05/07 11:27登録)
 もっと情報を整理して上手く刈り込む余地はあった気がする。しかし一方、ごちゃごちゃしたジャンク的な要素があってこそ作品世界の猥雑な空気感がこれだけ立ち上がるのだとも思う。まぁ読み易い文章なので、この長さもギリギリOKか。鈴木一郎って(表面上は)出来過ぎで意外と使いづらいキャラクターなのかも。


No.551 6点 大聖堂の殺人 ~The Books~
周木律
(2019/05/01 12:51登録)
 何故この人達は殺される危険性を承知の上で従容と成り行きに従うのか? の答として、登場人物(百合子も含む)の “狂信” がそれなりに感じられて良かった。
 しかし、ネタバレするが、トリックは不充分だ。温度が上下すれば水も影響を受けるわけで、大量の水蒸気が発生し体積の膨張により建物が壊れる? 注水口が凍りつく? といった問題が生じる筈だがそれについて言及されていない。


No.550 6点 鏡面堂の殺人~Theory of Relativity~
周木律
(2019/05/01 12:50登録)
 森博嗣の某作と某作と某作を混ぜたようなトリックで、驚きつつもがっかり。一方で、館モノは展開がパターン化しがち、という点を差し引けば、シリーズ初期に比べると小説の書き方がなかなか上達したように思う。登場人物の行動原理が矢鱈と形而上的で共感しづらい点は、慣れると面白くなってきた。

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