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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2224件

プロフィール| 書評

No.644 9点 法月綸太郎の新冒険
法月綸太郎
(2020/01/05 12:35登録)
 法月綸太郎の小説作品は概ね読んでいると思う。最も印象深かったのが本書に収録の「身投げ女のブルース」である。起点に偶然を含む点はちょっと引っ掛かるが、真相として提示される鮮やかな反転がそれを補って余りある。
 他の収録作も作者のポテンシャルを遺憾なく発揮した(もしくは、余計な寄り道で浪費することを上手く回避出来た)名品が揃っていると思う。

 ただ、以下ネタバレするけれども、「リターン・ザ・ギフト」の最終章を読んでいる途中で、穂波が“腑に落ちない”と言ったことと同じ疑問を私も抱き、それに対する回答には得心が行かない。ところが考えてみれば、偽装交換殺人(未遂)によって、弟を妻殺し犯に見せかけているわけで、理由としてはそれで充分な気もする


No.643 7点 いざ言問はむ都鳥
澤木喬
(2019/12/30 10:46登録)
 分類学者の視点で世界を切り取る豊穣な筆致は、回りくどさも含めて大変心地良い。一方、掘り出される謎については、論理の面白さと同時に強引さも感じる。
 差し引きすると後者のほうが勝ってしまい、ミステリとしてはいまひとつ、なんだけどそう斬って捨ててしまうには惜しい魅力があった。


No.642 6点 天井の足跡
クレイトン・ロースン
(2019/12/30 10:41登録)
 記述者が地の文に挿むユーモアが良い。ストーリーはちょっとごちゃごちゃしている。これは書き方次第でもっと読み易くならないかなぁ。
 “天井の足跡”は事件に於いてさほど大きなウェイトを占める謎ではない。それがタイトルでなければ、あのトリックでもそこまでがっかりしなかったかも。私は、先入観で作品の総合的な傾向を見誤ったまま読み進んでしまった感がある。


No.641 7点 賞金稼ぎスリーサム!
川瀬七緒
(2019/12/30 10:37登録)
 推理力ではなく調査内容から一歩一歩核心に迫る展開、はみ出し者が集まったチーム、結構唐突に出て来る犯人の異物感など、『法医昆虫学捜査官』に準ずるものではある。但し本書の主人公達は警察官ではないので、バックアップが少ない反面、行動の自由度は高い。そのへんの設定の違いを上手く使い分けられれば、前述のシリーズと並んで作者の二本柱になるポテンシャルはあると思う。個人的にはもう少し捻って欲しいけど……。


No.640 7点 マジックミラー
有栖川有栖
(2019/12/30 10:32登録)
 ネタバレしつつ書くが、アリバイ・トリックで良く判らない点がある。某が、白鳥を小松で降りずに、わざわざ金沢まで行って小松へ引き返す手間をかけた理由は? 少しでも長く白鳥に乗っていたかった? どこかに書いてあるのを私が見落とした?


No.639 6点 気まぐれ指数
星新一
(2019/12/26 11:49登録)
 都筑道夫みたい。星新一はエログロ書かないから、都筑道夫を漂白した感じ、とでも言おうか。謎と論理を重視する為に、過剰なメロドラマ性を排した都筑。無個性なキャラクターを多用し、“人間”を描く方法が必ずしも“人物”を描くことだけとは限らない、と語った星。両者が近いところに着地したのは、考えてみれば納得出来る。
 毒の無い世界観を一旦受け入れてしまえば、このイノセントな騙し合いも楽しめた。矢鱈と繰り出される様々な比喩が、長編で読むととても目立って苦笑。


No.638 7点 ドラゴンの歯
エラリイ・クイーン
(2019/12/26 11:48登録)
 遺産相続を巡るあれこれは、書き方が巧みなので飽きずに読めるが、飽くまで想定の範囲内に終始している気もする。ようやく事態が動くのは物語の半ばあたり、そこを過ぎて俄然面白くなるものの、最後に物凄い偶然による人間関係が発覚して呆然。国名シリーズにも似たようなサプライズがあったね。あと、前作『ハートの4』と同じような“雇用者と使用人の関係性”を連続して使い回すのは如何なものか。


No.637 8点 美少年蜥蜴
西尾維新
(2019/12/26 11:42登録)
 講談社タイガ創刊ラインアップの1冊として始まったこのシリーズは、“薄っぺらい文庫本”というレーベル・コンセプト(?)を体現するかの如く、短編サイズのアイデアを舌先三寸で引き伸ばした作品に終始した観がある。そしてそれは、作者の言葉そのものに対する信頼を裏付けとした、少ない材料でどれだけ膨らませることが出来るか、と言う或る種倒錯的ながらも前向きな挑戦だったように思う。次々広げられる無茶な風呂敷にニヤニヤしつつ楽しませて貰いました。
 本作でもそれを反省するどころかますますエスカレートさせて天晴れ完結。殆どストーリーはありません、良い意味で。尚、【光編】【影編】とあるが要は上下巻。


No.636 7点 七十五羽の烏
都筑道夫
(2019/12/26 11:36登録)
 他者の為に○○した、という真相の話は読んで辛いし、そこまでするキャラクターの心が怖い。
 “走り火”の情景描写は圧巻。縦横に火花が閃く夜の闇の中へトリップしてきた。個人的にはあの場面が本書の主役。


No.635 7点 不動カリンは一切動ぜず
森田季節
(2019/12/19 11:03登録)
 青春小説。性・家族・コミュニケーション等の形が変化した時代が舞台で、発達したITがバックアップする殺し屋の手が迫ったり、変な宗教が神に迫ったりと、SF的ガジェットの面白さもあるが、それら全てを突き抜けて少女達の真摯な思いが光る。
 少女の一人、“言葉(ときは)”と言う名が、文中に混ざると読みづらい割にその命名による効果が無いのは失点。


No.634 7点 カナダ金貨の謎
有栖川有栖
(2019/12/19 10:58登録)
 短編2編の“謎そのものよりも謎の出し方がメタ的なヒントになっている”状態が面白い。表題作中の“キャメルの由来”も同様。
 「船長が死んだ夜」。犯人の肉体的特徴の描写が少なくて読み流していた為、解決編で“アレッ、この人はそういうキャラだっけ?”とキョトンとしてしまった。ええ私の読み方が悪いんです。それを除けば、とても良い。


No.633 8点 レームダックの村
神林長平
(2019/12/19 10:54登録)
 巫女。ムラオサ。穢れたら埋められる。受け入れを拒否されたら生きて出られないよ……ホラー系ミステリのような導入部だが、間違いなく神林長平の長編SF、しかも『オーバーロードの街』に連なる作品である。比較的きちんとまとめて終わっている、と思ったら続きがあった。
 タイトルが内容をそのまま示している。街(都市圏)がああいうことになっている時、田舎の村では何が起きるか。様々な思惑が絡み合い、国家論が右往左往し、ラストは結構な力技に呆然。そして話は全然終わっていない。人類はどうなるのか?


No.632 8点 ×××HOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル
西尾維新
(2019/12/12 10:58登録)
 CLAMP のコミックをネタに西尾維新が書いた小説。そりゃ当然面白い。実はストーリー性は希薄で、御題を右から左へ動かしているだけなのだが、それでこんなに読ませるとは一体どういう仕掛けなんだか。
 しかし短編3本をこのサイズの豪華な書籍に仕立ててこの値段。売れっ子同士の組み合わせなんだからボってやれと言う版元の狙いが透けて見えるような気がする。(ビジネスのことは言うな!)


No.631 7点 ベンスン殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2019/12/12 10:48登録)
 思うに、最低限の作品なら或る程度スタイルを整えれば成立するミステリと言うジャンルは、気を抜くと堕し易い? あと、読者のマニア度が人それぞれなので、B級品の需要も常に存在する?
 つまりは、論理的なものと通俗的なものを巡る構造は当時も現在も変わっていないと言うことか、本作の批評性の強い書きっぷりが、90年以上過ぎた今読んでもそれなりに面白い。
 饒舌なファイロ・ヴァンスは知的と言うより道化だが、それはそれで楽しめた。なんで最初からあんなに自信満々なの。


No.630 8点 神狩り
山田正紀
(2019/12/05 12:50登録)
 いや~、スッキリした小説である。余計な重複が無いし、多面性に欠ける一本気キャラばかりだし。かと言って貧弱なわけではなく、頑健な骨格に引き締まった筋肉を具えたアスリートの力強さだ。
 一方で、“説明出来ないことは説明出来ないのだ”と言う説明で押し切ろうとしているのは、若書きと言うかまだ手持ちの駒が少なかったんだなぁと感じる。それを形にしようと徐々に饒舌になったのかもしれない。
 まぁ読書に関して一神教である必要など無いのだ。熱いデビュー作と厚い近作と、面白さの質は変わったが山田正紀はどちらも面白い。


No.629 5点 虚空から現れた死
クレイトン・ロースン
(2019/12/05 12:48登録)
 スラップスティックな筆致で不可能犯罪が描かれるところまではいいが、トリックは物足りない。チーム・ディアボロやチャーチ警視のキャラクターは好き。
 主人公の名前 “ニック” と “ディアボロ” を意味もなく(?)混用するのはやめて欲しい(※両方とも “悪魔” の意味を持つ語であるとの由)。


No.628 5点 吸血鬼飼育法
都筑道夫
(2019/12/05 12:47登録)
 期待した程ではなかった。トラブルをアッと驚く奇策で解決、するかと思ったら結構な泥縄式対応。キャラクターが違えばもっと楽しめそうな気もするし、基本設定と持ち込まれるネタがマッチしていないのでは。特に、多数の共犯者で事件を演出する話は、それなりに捻ってあっても首肯しがたいな~。


No.627 6点 監禁探偵
我孫子武丸
(2019/12/05 12:45登録)
 あざとい設定、だけどまぁいい。ミステリ要素としては小粒なものをキャラクターで引っ張っている、のは方法論としてアリだろう。しかし最終話でここまで強引にまとめる必要はなかったと強く思う。妙な性癖の謎の少女が理由もなくあちこち渡り歩いている、で押し切った方が良かったのではないか。


No.626 7点 斜光
泡坂妻夫
(2019/12/05 12:40登録)
 泡坂妻夫の描くエロスはあまり好きではない。基本的な趣味の違いでこれはどうしようもない。
 本作は良く出来たプロットだし(しかし姿を消した原因が判らないってことはないだろう)、御都合主義的偶然が運命的な天の配剤のように読めるのは人物造形の確かさ故だろうか。それでも濡れ場になるとフッと冷静になってしまう自分がいる。


No.625 7点 法月綸太郎の冒険
法月綸太郎
(2019/12/05 12:39登録)
 悩みながらも一つ一つ的を定め、的中に至らずとも丁寧に矢を放つような、パズラーに対する誠意が、長編よりも判り易く感じられて好感が持てる。但し悪ふざけめいた「土曜日の本」は余計だな~。ああいうのはエッセイ集とかのオマケにそっと忍ばせるものでしょう。

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