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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.22点 書評数:1848件

プロフィール| 書評

No.948 4点 リアル鬼ごっこ
山田悠介
(2021/04/10 12:46登録)
どんでん返しがいつ来るかいつ来るかとドキドキしながら読み進んだが結局来なかった。奇抜な設定と、奇抜ではない展開。


No.947 5点 わが師はサタン
天藤真
(2021/04/10 12:45登録)
 予想を裏切るストーリー展開は良いけれど、辿り着く真相があまり面白くない。“丸ごと偽装だった”ってのをやり過ぎるとこうなる、と私は思う。
 第二の目標は友人経由で選ばれたのに、それが黒幕にとって都合の良い人物であるのはおかしい。彼女は相手に協力しているわけで、心情的に一貫していない、もしくは記述不足。暗闇の中で手に触れただけで性別を確信出来る……のはまぁ、ミステリと言うファンタジー世界ゆえだと大目に見てもいいか。


No.946 6点 妃は船を沈める
有栖川有栖
(2021/04/04 11:49登録)
 良く出来たパズラーだとは思うが、「猿の手」を引用する必要がどれだけあるのか。こういう使い方は好きではない。
 催眠術云々が本格的に絡んで来ないのは残念。この作者は某長編(1995年)でアレを使った前科があるので期待(心配)したんだけど。
 “催眠術で自殺はさせられない”説に私は懐疑的。試したんですか? と突っ込んでしまう。


No.945 4点 涼宮ハルヒの消失
谷川流
(2021/04/04 11:45登録)
 始まりがこうなら、どうなって終わるかは概ね決まっているわけで、そこに至るまでのジタバタの描き方として、物凄く面白いと言うわけでは、まぁない。一応“犯人”に関する手掛かりは提示されていて、それはなかなかの盲点だったかも。


No.944 7点 殺意の構図 探偵の依頼人
深木章子
(2021/04/03 13:05登録)
 最後に出て来る“現場にあるべき物が無い”のロジックは浮いている気がする。探偵の推理の為には犯人のこういう行動が必要、と逆算して付け加えたような。そして、榊原の意図した落としどころは少々不安定では(しかしダディよく我慢した)。
 元弁護士の経歴のおかげで法律関係について安心して読めるのはこの作者の強みだな~。


No.943 4点 奇憶
小林泰三
(2021/04/03 12:59登録)
 作者の持ちネタを組み合わせただけ。お約束の面白さみたいなものはあるが、強い核が欠けており残念。


No.942 5点 バビロニア・ウェーブ
堀晃
(2021/04/03 12:55登録)
 星雲賞受賞作。あっ、この人も小林泰三のように“物理計算しながら書く人”だ。J・P・ホーガンばりの宇宙規模の謎。基地内での秘密めかした展開。
 素材としては充分。ただ、なんかどうも、どんくさい。
 ハードSFとしての誠実な書き方が、しかし作品の足許に絡みついて、スピード感を殺いでしまった部分がある。同系統でグイグイ読める作品もあるのだから、私のおつむのせいではないぞと自己弁護。


No.941 8点 謀殺のチェス・ゲーム
山田正紀
(2021/04/01 10:46登録)
 若人2人の逃避行が、物語中盤の“ゲーム”とあまり有機的に結び付いていない。
 勝敗の基準が今一つ解りづらい。
 両陣営とも似たようなキャラクターが多く紛らわしい。
 題名に“謀殺”は変じゃない?

 しかしグッジョブ。息を詰めて一気に読みました。


No.940 4点 大富豪殺人事件
エラリイ・クイーン
(2021/04/01 10:42登録)
 表題作。犯人は、忘れ物を回収しようとして、却ってソレが手掛かりだと教えてしまった。
 「ペントハウスの謎」。中国人が登場するのは、ノックスの十戒に対する諧謔?
 文庫版解説は面白かった。


No.939 7点 烏は主を選ばない
阿部智里
(2021/03/30 12:30登録)
 権謀術数渦巻く謀略サスペンスは苦手。否応無しに群像劇になるけれど、私は勢力図の把握が下手だから。
 本書でもそれは変わらず、結末の多分大いに驚ける筈のところでピンと来なかった。
 面白かったのはやはり含むところ大アリの主従のキャラクター。思惑の交錯。練り込まれた文章は隅々まで余さず味わいたい。


No.938 6点 なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?
アガサ・クリスティー
(2021/03/30 12:28登録)
 なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?
 と言う疑問はなかなか鋭いではないか。そこを疑問として抱けた時点で、(その部分の)真相まであと一歩だ。逆に言うと、死に際にそんな絶妙なヒントを残すのはかなりわざとらしい。
 それに限らず全体的に、入り組んだ要素の間をギリギリで御都合主義的に綱渡りしている感じ。但し、なんとなくそれを許容出来てしまう良い意味で緩い雰囲気はあるな~。
 
 ところで、原題は“ Why Didn't They Ask Evans? ”で主語は They 。
 これを(早川書房版)“なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?”と訳すと主語が二人称みたいじゃない? 被害者が目の前の相手(=ボビイ)に対して“なぜ、あなたは~?”と問うたみたいじゃない?
 勿論、日本語と英語の構造の違いのせいではある。しかし、そもそも読者は翻訳文であることを承知で読んでいるわけで、日本語として不自然になっても原文のニュアンスを優先すべきポイントはあると思う。映えの必要な題名はともかく、本文中の台詞では、二人称ではなく第三者について語っているのだと明確にすべき。他の訳ではどうなんだろう?


No.937 6点 涼宮ハルヒの退屈
谷川流
(2021/03/30 12:27登録)
 短編集。表題作は馬鹿馬鹿しいけど素直に笑えた。
 そして「孤島症候群」が題名通りのミステリなのであった。この(ダミーの)トリック、少なくとも私は今までにお目にかかった記憶無し。更に、基本設定ゆえに、どんな不条理な真相が待っているか判らないスリルを読者は(勝手に)味わえる。動機に説得力がある(?)点も良い。但しコレをいわゆる一般向けにやってもなかなか成立しがたいわけで、ライトノベルと言う枠組みを積極的に有効利用した佳作と評価しても言い過ぎではないかも知れないような気がしたりしなかったり。


No.936 6点 間違いの悲劇
エラリイ・クイーン
(2021/03/30 12:26登録)
 「動機」は凄く良い。こういうノン・シリーズ作品をもっと書いていれば、探偵エラリーの苦悩でブルーにこんがらがった後期にも、そこから自由な佳作をもう少し遺せたのではないだろうか。

 未発表のシノプシス。読みたがる人はいるし、商品性があるのは判る。しかし明確に未完成なものを刊行して“このネタはEQが唾付けてました”と主張しちゃうのはどうなんだろう。


No.935 5点 魔術師を探せ!
ランドル・ギャレット
(2021/03/30 12:25登録)
 宗教を始めとして、馴染みのない考え方に触れるのは楽しい。けれど本書の“魔術”はキリスト教のパロディのようで、もともと素養があまり無いネタの更に捻ったヴァージョンには流石に歯が立たない。
 と言うことだろうか、もっと楽しめそうな設定なんだけど今一つ相性が良くなかった感じ。かしこまった会話文は結構好き。


No.934 8点 大誘拐
天藤真
(2021/03/25 12:55登録)
 面白い、だからこそ、読むほどに心臓がキリキリ痛くなる。これにどうオチを付ける?
 と心配していたら、思いがけない算盤で意表を突きつつ、人情派の着地点でグッジョブ。ところでベクトルは正反対だけど漫画『バクネヤング』(松永豊和)を思い出しちゃったなぁ。


No.933 7点 イン・ザ・ダスト
長沢樹
(2021/03/25 12:54登録)
 ネット時代のスピード感。土地鑑が無いのでピンと来ない部分もあるがそこはまぁ止むを得まい。錯綜した展開で膨大な登場人物、“追う側”のキャラクターは立っている反面、被害者加害者についてはえーとこれ誰だっけと迷うこと多数。事件はあくまで“素材”で、本質的には渡瀬と土方のキャラクター小説なんだな。で、実は有能な分析官から感じたのは紙一重の危うさと怖さ。


No.932 7点 チョウたちの時間
山田正紀
(2021/03/25 12:52登録)
 最初期の“説明出来ないことは説明出来ない”から、“説明出来ないことが説明出来ない理由を説明することで説明出来ないこと自体を浮かび上がらせる”手法へと進歩したような。背後に垣間見えた概念があまりに大きく、いつまでたっても読み終えた気がしない。


No.931 6点 櫻子さんの足下には死体が埋まっている 八月のまぼろし
太田紫織
(2021/03/25 12:51登録)
 第壱骨。事態の進行はスリリングだが、動機としていきなりそんな話を持ち出されても。
 第参骨。物語としては面白いが、過去の事件を間接的に描いているので限界が。
 そして、最後に仲違いするのが非常に唐突に思われる。何故今更そんなことで、って感じ。


No.930 4点 月下美人を待つ庭で 猫丸先輩の妄言
倉知淳
(2021/03/25 12:50登録)
 猫丸先輩もう限界? まるで、如何に下らないことを長々と述べて原稿用紙の升目を埋められるか、と言う実験。勿論それで面白ければ良いんだけど……。

 ネタバレするが「恐怖の一枚」。戦闘時には高い場所の方が有利だしスコップもあるのだ、そんな位置関係を許すのは不自然。寧ろ撮影者=被害者、その時点で足くらいは縛られていたかも。それならまさに殺人の最中の顔である。カメラと“最期の一枚”は加害者に託され、加害者はそれを諾々と受け取り所持している。それも怖くない?

 「ついているきみへ」に至っては、問題編が全て出任せであった可能性も否めない。二人は暇つぶしのクイズとして即興の作り話をした。相手に降参させるのではなく想定通りの真相を見抜かせる心算だったので、適度な手掛かりを混ぜて話した。が、お互いに真意を摑めず、そこを猫丸がかっさらったのである。


No.929 8点 烏に単は似合わない
阿部智里
(2021/03/17 12:50登録)
 背後を支える豊穣な物語世界の存在が滲み出ていて、まぐれ当たりの新人賞受賞でないことは明白。最初は設定や語彙に躓いたものの、ひとたび入り込むとそういう要素が寧ろ読み進むエンジンとなる。人間(じゃないけど)の多面性や矛盾を描き出す手管に感服。終盤になって後出しのネタが出て来るのは困ったが、まぁミステリではないからね。いや、この書き方、ミステリとしても楽しめました。

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