home

ミステリの祭典

login
kanamoriさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:2516件

プロフィール| 書評

No.916 7点 伯林-一八八八年
海渡英祐
(2010/08/01 20:04登録)
「東西ミステリーベスト100」国内編の76位は、乱歩賞の歴史ミステリ。
ドイツ留学中の森林太郎(鴎外)が雪の古城での密室殺人に遭遇し、鉄血宰相ビスマルクと推理を競うというプロットは、当時は斬新で非常に楽しんで読んだ記憶がある。
追随するような作品がその後いくつか出たが、歴史上の人物を探偵役に据えたハシリで、密室トリックもなかなか凝っていたように思う。


No.915 7点 炎に絵を
陳舜臣
(2010/08/01 17:46登録)
シリーズ探偵・陶展文が出てこないノンシリーズの本格ミステリでは本書が一番面白いと思った。
戦時中の中国の隠し資金といういつもながらのテーマと企業小説的なストーリーで、中盤まではあまりリーダビリティを感じなかったが、最後にとんでもないサプライズが待っていました。
主人公の行動などにご都合主義的なところがあるのが残念ですが、結末の真相を示唆する伏線も丁寧に張られており、よく練られたミステリという印象です。


No.914 7点 殺人鬼
浜尾四郎
(2010/08/01 17:25登録)
現在の基準では、とても高い評価はできませんが、昭和の初めにこれだけの重厚でリーダビリティの高い本格編を書いていたのはちょっと驚きます。
作中でも何度か触れられている「グリーン家殺人事件」を彷彿(というか、ほとんどコピー)させるプロットではありますが、こういうのが好きなので全然問題ありません(笑)。


No.913 6点 蝶々殺人事件
横溝正史
(2010/08/01 17:11登録)
金田一耕助シリーズとは全くテイストが異なる純粋なパズラー本格ミステリ。
戦前からの由利麟太郎&三津木コンビシリーズものでは、一番ロジカルでスマートな作品だと思います。死体移動の謎はやや分かり易いと思いますが、ほかにもユニークなアリバイトリックがあったりで、これはこれで楽しめた。


No.912 7点 写楽殺人事件
高橋克彦
(2010/08/01 16:51登録)
「東西ミステリーベスト100」国内編の66位は、”写楽の謎”を主題とした歴史ミステリ。
現在の殺人事件にはあまり惹きこまれなかったが、写楽の正体を特定するプロセスの緻密さ・作者の縦横無尽の博識には舌を巻く。最終的に提示される写楽の正体に関しては、ミステリ作家というより写楽研究学者の論考のような感じを受け、その点は最近読んだ島田荘司の作品と比べ、奇想天外さに欠けるように思います。


No.911 6点 富豪刑事
筒井康隆
(2010/08/01 16:38登録)
大富豪の息子・神戸大助刑事シリーズの連作短編集。
収録作4編のテーマにバラエテイを持たせてミステリの軽いパロデイが楽しめる。
たとえば「密室の富豪刑事」で探偵が読者に向き直り読者への挑戦を語りかけるシーンはアレを連想させる。
作者が気楽に書いて、読者が気楽に読める連作ミステリ。


No.910 6点 ナポレオン狂
阿刀田高
(2010/08/01 16:22登録)
いわゆる”奇妙な味”テイストの短めの短編が13作収録されています。
R・ダール風のミステリは、短編だけでは喰っていけない出版事情もあり、日本の作家ではあまり書く人がいなかったので、この作家は当時結構読みました。
基本的にショート・ストーリーなので、意外な真相というよりブラックなオチが持ち味で、飽きるのも早かった。


No.909 6点 焦茶色のパステル
岡嶋二人
(2010/08/01 16:06登録)
競馬オンチと競馬新聞記者、この二人の女性探偵役が転がしていくストーリーが心地よく、やり取りで自然に競馬界の知識と伏線が読者に与えられていく構成が巧い。
ただ、プロットは期待したほどの捻りは感じられず、「あした天気にしておくれ」と比べると出来はちょっと落ちると思った。


No.908 6点 招かれざる客
笹沢左保
(2010/08/01 15:51登録)
プロットに工夫を凝らした社会派風の本格ミステリで、著者のデビュー作。
2部構成になっており、前半は新聞記事や関係者の証言を綴ったドキュメンタリー風な内容で事件を多面的に描き、後半は一転、刑事の私的捜査を本格ミステリ風に描いています。
若干ちぐはぐ感はありますが、暗号、密室、アリバイ崩しと本格のガシェットを多用し、乱歩賞応募作らしい作者の意気込みが感じられました。


No.907 7点 猿丸幻視行
井沢元彦
(2010/08/01 15:35登録)
SF的趣向は、歴史ミステリとしての単なる手段なのはちょっともったいない気がするが、猿丸太夫の暗号解読、柿本人麻呂同一人物説など歴史の謎が楽しめた。
主人公の折口信夫など、実在人物が文学趣味の読者以外にとってはちょっとなじみがないのと、文学研究者寄りの内容は読者を選ぶかもしれません。


No.906 9点 半七捕物帳
岡本綺堂
(2010/08/01 14:56登録)
多数ある捕物帳の元祖がこの「半七捕物帳」で、第1作の「お文の魂」が書かれたのが、大正6年(1917年)だから、乱歩もまだ耽美的な変格ものを書いていた時期だと思います。
設定は、作者が幕末に岡っ引きをしていた半七老人から昔の手柄話を聞くという構成になっていて、ミステリ趣向はもちろん、江戸庶民のドラマ、季節の風物誌としても楽しめる。探偵小説としては、作中のトリックが、作者も”江戸のシャーロック・ホームズ”と言う通り海外古典ミステリからのイタダキが散見されますが、それを江戸時代に応用した点がすばらしい。
宮部みゆき・北村薫編集の傑作選も出ており、時代小説にアレルギーがある方も是非一読をお薦めします。


No.905 6点 バイバイ、エンジェル
笠井潔
(2010/08/01 14:25登録)
矢吹駆シリーズの第1弾、ラルース家殺人事件。
本書が出版されたのが70年代の終り、まだ島荘も登場していない時期ですから、本格ファンの話題作ではありました。
首なし死体の理由などいくらでもあると宣言し、本質直感とか現象学的推理などの探偵の尖鋭的な高説に半分感心しながら読みましたが、解決編の推理はいたって普通だった気がします。


No.904 8点 砂の器
松本清張
(2010/07/31 22:40登録)
野村芳太郎監督の映画より前に、最初に読んだ清張の長編で思い入れが強い。
ミステリとして色々突っ込みどころもありますが、最初の被害者が残した「カメダ」に関する捜査陣の推理の変転が面白かった。
ネタバレ気味だが、大学時代の知り合いにこの地方出身者がいて、なんでズーズー弁なんだろうとずっと思っていたので、この真相には非常に腑に落ちる実感があった。


No.903 7点 高層の死角
森村誠一
(2010/07/31 22:26登録)
「東西ミステリーベスト100」国内編の52位は、社会派+本格トリックの乱歩賞作品。
森村は「人間の証明」(85位)と併せ2冊ランクインしています。
ホテルの密室トリックと考えられたアリバイトリックが印象に残りますが、硬質だが迫力ある文章でリーダビリティもあると思います。


No.902 7点 夜のオデッセイア
船戸与一
(2010/07/31 22:10登録)
志水辰夫と共に80年代の国産冒険小説界をリードした作者の初期の作品。
八百長専門の悪役ボクサーを主人公に、元恋人やプロレスラーなどを同乗させワゴン車でアメリカ大陸を走り回る。パーレビー国王の隠し財産が絡んで、モサド、CIA、マフィアなどが入り乱れる死闘がなかなか壮絶。
洒落っ気のあるプロレスラーたちの造形や旅先の情景など印象深いシーンにあふれています。


No.901 6点 りら荘事件
鮎川哲也
(2010/07/31 21:42登録)
良くも悪くも、これぞ本格パズラーの王道といえる作品。
派手なトリックはないが、考え抜かれたトリックが多数用いられている。特にトランプのカードを使った欺瞞がピカイチ。
一方、将棋の駒のような登場人物、連続殺人が起こっているのに緊張感がない雰囲気創りの下手さなど、小説としてはあまり感心できる内容ではなかった。


No.900 7点 裂けて海峡
志水辰夫
(2010/07/31 21:19登録)
主人公の「わたし」が、弟の海難事故の謎を追ううちに、ある謀略が判明し危難に巻き込まれるというストーリー。
れっきとした冒険小説なんですが、一人称記述で、遺族のもとを次々訪問していくプロットは、まさにハードボイルド小説。ウイットに富んだ会話、強い女性などシミタツ節が随所に読みとれます。
そして、あの最後の一文、キザ過ぎて鳥肌が・・・。


No.899 8点 成吉思汗の秘密
高木彬光
(2010/07/31 20:46登録)
国産の歴史ミステリの先駆的作品。
こういった小説は、どうせなら突飛なもののほうがロマンがあって面白いので、大正時代に発表された”義経=成吉思汗説”を発展させた本書のアイデアは面白かった。
歴史研究者でないミステリ作家としての、多少強引でこじつけに近い論理でも、読者を納得させる筆力はすばらしい。ただ最後の、「昔を今に、成す吉もがな」は、さすがに無理筋。


No.898 6点 紳士同盟
小林信彦
(2010/07/31 20:26登録)
多大の借金を抱える芸能関係者4人が、元天才詐欺師の老人の教えのもと2億円を騙し取るべく奮闘する、国産コンゲーム小説の嚆矢となる作品。
コンゲーム小説の神髄は、被害者はもとより読者をも騙す仕掛けの妙にありますが、同時にスマートなユーモア精神も必須で、その点、老人が称する”コンゲーム道”への入門編など、可笑しみに満ちている。
ただ、借金を抱える4人組素人詐欺集団というのは、どこかで読んだような設定だ。


No.897 9点 八つ墓村
横溝正史
(2010/07/31 18:08登録)
伝奇冒険スリラーの傑作。
戦国時代の落武者と八つ墓伝説や、大正時代の大量惨殺事件など、主人公の「私」こと辰弥が訪れる前の八つ墓村の雰囲気作りが秀でていると思います。
双子の老婆を始め、いわくありげな田治見家や村人の行動もおどろおどろしさを醸しだし、クライマックスの鍾乳洞の追跡劇で頂点を極めています。ただ、シリーズの名探偵を配したために、本格ミステリとして見た場合は二級品の誹りを免れないのが惜しい。

2516中の書評を表示しています 1601 - 1620