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ミステリの祭典

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悪魔の選択

作家 フレデリック・フォーサイス
出版日1979年12月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 人並由真
(2019/02/04 19:30登録)
(ネタバレなし)
 フォーサイスの初期5長編の中ではコレだけ未読だった。そのことが長らく気がかりで、今回ようやっと読んだ。しかし原書&翻訳の刊行からいつの間にか40年も経ってたよ、とんでもないな(笑・汗)。
 それで読後に昨今のweb記事での本書についての噂を拾うと、物語の主題の一つがウクライナ(や当時のソ連の他の衛星国家)の民族運動のため、現実の2014年のウクライナ騒乱の際にこの本は再注目されて、静かなブームとなったみたいね。国際関係も情報文明も前世紀の旧作でいろいろと今日の視点から見た距離感はあるんだけど、一方でそういう部分での強烈な普遍性はある。

 冒頭、大規模な自然異変が有事の発端になる辺りのゾクゾク感は、まんま西村寿行の超傑作『滅びの笛』だな。本作『悪魔の選択』は長編ミステリの仕様としてはポリティカルフィクションだし諜報現場目線のエスピオナージュ、さらにサスペンススリラーだが、少し後ろに下がって全体図を見るなら、自然の突発的なクライシスに翻弄される人間たちの狂騒劇も浮かんでこないでもない。広義のパニック小説の要素もある。

 まあ何はともあれハードカバーで上下二冊、約600ページ、一日半で一気読みです。堪能しました。登場人物は、名前が出てくるだけで120人以上に及ぶ大賑わいぶりだけど、ほとんどのキャラが髪の色がどーとか体格がどーとかとかのごく簡単なビジュアル描写もない(ごく何人か例外はあるが)。本当に良くも悪くもキャラは駒にして、お話を語りたいっていう感じなので、その辺の呼吸に合わせられればリーダビリティは頗る高い。

(以下:少しだけネタバレ)
 ただね、最後のどんでん返しは、当初から見え見えだよね。この手の作品がかなりの高い確率で「誰が最後に笑ったか」パターンになるのはごく順当だし、そう思って読むと大方の構図は透けてしまう。
 というか、主人公のアダム・マンロー、優秀な情報部員のハズなら、そんな<ウマい話>がいきなり転がってきたことに、最初から疑念のひとつも覚えるべきじゃねーかと。メチャクチャ面白かったけど、その辺だけは引っかかったので1点減点。

No.1 7点 kanamori
(2010/07/21 20:31登録)
近未来ポリティカル・サスペンスの傑作。
ソ連の食糧危機に乗じた米欧の駆け引きから、KGB議長の暗殺を絡めた国際謀略を描いています。
今読むと、もはや「近未来」でないので、IF小説として古びれて緊迫感に欠けるきらいがあるのは止むを得ない。
しかし作者の緻密な取材力には感心します。

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