home

ミステリの祭典

login
kanamoriさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:2430件

プロフィール| 書評

No.870 8点 黒いトランク
鮎川哲也
(2010/07/28 21:19登録)
鮎川哲也名義では最初の長編ミステリ。
時刻表ミステリ(アリバイ崩し)ものとしては、屈指の傑作だと思います。派手さはないものの、鬼貫の前に次々と立ちふさがる巧緻な真犯人の犯罪計画の壁を突き崩して行く様は、パズラーの醍醐味を満喫できました。
容疑者や被害者など関係者を鬼貫の旧知の人物に設定しておきながら、人間ドラマにしないのは、いかにも鮎川らしい。


No.869 8点 本陣殺人事件
横溝正史
(2010/07/28 20:51登録)
短めの長編なので、読み応えという点では作者の他の傑作群に劣るかも知れませんが、初めて読んだ横溝作品ということもあって印象に残る本格編です。
春陽文庫版で読んだが、事件現場の離れ周辺の見取図が添えられていて、トリック解明のシーンでは、ぞくぞくする興奮に包まれたことを憶えています。細かい点では、三本指の男のミスディレクションも当時は感心できました。


No.868 4点 ドグラ・マグラ
夢野久作
(2010/07/28 20:34登録)
「黒死館」と並んでミステリ界の奇書と称される本書ですが、文体は平易で、読みにくいとは思わないが、内容の理解不能度は「黒死館」を遥かに凌いでいます。
解説を読むまで、作者の意図したものが全く解らなかった。


No.867 6点 黒死館殺人事件
小栗虫太郎
(2010/07/28 20:23登録)
「東西ミステリーベスト100」国内部門の第5位は奇書といわれる古典本格ミステリ。
この晦渋な文体のミステリを読了するのは難儀ですが、法水探偵の広範囲な分野に渡る衒学的蘊蓄解析の部分を読み飛ばせば、単純なプロットでステロタイプな犯人像を設定したオーソドックスなコード型本格だと解る。
しかし、そういった読み方は作者の創作意図にまったく相反するもので、「黒死館」を読解したとは言えないのでしょうね。


No.866 6点 不連続殺人事件
坂口安吾
(2010/07/28 17:38登録)
作者が”犯人当て”を意識しすぎたために、こちゃごちゃと登場人物をいたずらに増やしたので、せっかくのトリックの鮮やかさが埋没してしまった感じがします。
その辺が、同じトリックを使ったクリステイのプロット創りの巧みさに遠く及ばない点で、本格好きのアマチュア作品と言えるかと思います。


No.865 5点 点と線
松本清張
(2010/07/28 17:37登録)
清張作品の本質の一つは、濃厚な人間ドラマ的な部分にあると思っているので、刑事の捜査過程に軸足のある本書は異色作に近い作品だと思います。
アリバイ・トリックの手段については、時代性を考えればとくに不満はありませんが、東京駅の空白の4分間に関してアイデアが評価される点がいまだにピンときません。


No.864 8点 獄門島
横溝正史
(2010/07/28 17:37登録)
「東西ミステリーベスト100」国内編のラインナップを現在眺めてみた印象は、海外編以上に保守的だということです。国内だと色々なしがらみに左右されるということもあるのでしょうか。おそらく、現在同様のアンケートを実施すれば、半数以上の作品がランク外になるように思います。
国内部門の第1位になった本書は、横溝作品の中で個人的フェイバリットではありませんが、俳句の見立て連続殺人というテーマと絶妙なミスディレクションで記憶に残る名作だと思います。
作者の”見立て殺人”は、もう歌舞伎などの古典芸能と同じ様式美の世界ですから、必然性の有無など関係ありません(笑)。


No.863 6点 ラスト・コヨーテ
マイクル・コナリー
(2010/07/28 17:37登録)
シリーズ初期の傑作と称されることが多いこの第4作ですが、個人的には”創りすぎ”との感もあります。
主題は、娼婦であった実母の惨殺事件の謎で、この30年以上前の未解決事件を、上司への暴力行為で強制休職中のハリー・ボッシュが追い続けるというストーリーで、ボッシュ自身に関わる過去の総決算的な意味合いがあります。
一応の解決を見て、残り100ページ余りで語られるどんでん返し的真相はたしかに意外ではあるのですが、大昔の事件の証拠が次々出て来るところは、ご都合主義と思えてきます。


No.862 5点 丘の上の赤い屋根
青井夏海
(2010/07/28 17:37登録)
東京近郊の地方都市にある小さなラジオ局を中心に、多彩な人間模様を描いたいハートフルでノスタルジックな物語。
ミステリ的な趣向はほとんどありませんが、主人公格の男女2人の新住民の生き方にからめて、色々な人々の人生の断面をみせてくれる。脇筋のエピソードを予定調和的にまとめないのは、作者のこだわりを感じる。


No.861 7点 11の物語
パトリシア・ハイスミス
(2010/07/27 19:09登録)
女性作家には意地の悪い、毒気を含んだ小説を書く人が多いように思える。
クリスチアナ・ブランドも毒のある本格短編を書くが、ハイスミスの毒は”奇妙な味”で、独特なテイストを感じます。
この短編集はバラエティに富んでいて、作者を知るには恰好の作品集だと思います。


No.860 7点 リプレイ
ケン・グリムウッド
(2010/07/27 19:09登録)
北村薫「リセット」、乾くるみ「リピート」など、幾つかの国内作家のSFミステリを連想させる時間移動・反復人生もの。これらの作品はタイトルもまぎらわしいほど似ている。
しかし、タイム・パラドックスの意外な解消方法とかのミステリ要素は希薄で、「夏への扉」のテイストに近いSFの分類に入る物語でした。ラストはなかなか感動的で、まあ印象に残るシーンではあります。


No.859 7点 招かれざる客たちのビュッフェ
クリスチアナ・ブランド
(2010/07/27 19:09登録)
作者の短編ミステリのフルコースが用意されていますが、このディナーはどの料理にも毒が入っているので要注意。
コックリル警部ものでは、冒頭からの伏線が見事な「婚姻飛翔」と、倒叙もので最後の一撃が光る「カップの中の毒」が印象に残る逸品でした。
個人的ベストは、やはり「ジェミニー・クリケット事件」。凝った構成と意外な結末で、名作の名に値すると思います。


No.858 6点 ミザリー
スティーヴン・キング
(2010/07/27 19:08登録)
自動車事故で半身不随になった人気作家が、熱狂的な女性愛読者に監禁される恐怖を描いたモダン・ホラーサスペンス。
超常現象などが出てこない、人間の狂気を主題にしたホラーですが、克明な心理描写がなかなか読ませます。
主人公の人気作家「ポール・シェルダン」って、ひょっとして・・・・(笑)。


No.857 7点 ブラック・ダリア
ジェイムズ・エルロイ
(2010/07/27 19:08登録)
「このミス’91年版」海外部門の第3位は、40~60年代のロサンジェルスの暗黒史を活写した”LA四部作”の第1作。
エルロイはこれが初読み。ノワールものはあまり好きではなく、各書評でさんざん過激な暴力描写に触れられていたので、読む前は若干腰が引けていたが、圧倒的なリーダビリテイの高さを感じたものの、文体も描写内容も普通に許容範囲内で、ミステリ的な興味が前面に出ているのも意外だった。
「ホワイト・ジャズ」から入る人はまずいないと思うが、本書がエルロイ入門に最適だと思います。


No.856 6点 このミステリーがすごい!’91年版
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2010/07/26 21:46登録)
創刊第3号の本書からタイトルの年次が”翌年度表示”に改められた。欠版があったわけではないので、対象作品は従来どうりで、直前1年間(89年11月~90年10月出版)です。

企画としては前号と大きな変化はないが、巻末に対象期間に出版された作品リストがついたのはありがたい。

ランキングを見ると、海外部門の盛況ぶりがすごく、話題作が目白押しで、ベスト3の「薔薇の名前」「ブルー・ベル」「ブラック・ダリア」の”花タイトル3作”は、通常だといずれもベスト1ではと思うほど。「薔薇の名前」は20年間積ん読状態で未読なんですが(笑)。
国内部門は、第1位の大沢のブレイク作「新宿鮫」を始め、ハードボイルド・冒険小説がこの年も元気だった。


No.855 7点 写楽 閉じた国の幻
島田荘司
(2010/07/26 21:06登録)
著者初の本格的な歴史ミステリ。
「成吉思汗の秘密」や「時の娘」は、始めに仮説がありそれを証明するアリバイ崩し的な歴史ミステリと言えると思いますが、写楽の謎(=写楽は何者だったのかという謎に収斂する)は、一種のフーダニットものに通じる魅力があり、本書の「真犯人」も島荘らしい奇想天外さで楽しめた。
現代編は主人公の家庭環境の話題など冗長と思える点とか、本作で解明されない事象が残ったりで不満ですが、蔦屋重三郎視点で描かれる江戸編のエピソードはなかなか軽妙で、その中にさりげなく写楽のアリバイ崩しの伏線である暦の話題を入れるなど、巧妙な構成になっていると思います。


No.854 6点 闇の奥へ
クレイグ・トーマス
(2010/07/26 20:41登録)
英国情報局長ケネス・オーブリーが登場する冒険スパイ活劇サーガの一冊。
同シリーズの作品では、映画化された「ファイアフォックス」が有名ですが、本書はミッチェル・ガントではなく、部下の工作員パトリック・ハイドが主役で、謀略と活劇が堪能できる。
しかし、時代の趨勢で現在ではもはや流行らないストーリーだという感は否めない。

ちなみに、本シリーズの原題にはほとんど動物の名前が入っていて、本書の場合は”The Bear's Tears"。


No.853 7点 誓約
ネルソン・デミル
(2010/07/26 19:03登録)
ベトナム戦争時の残虐行為疑惑で軍事裁判にかけられる元陸軍中尉を主人公にした法廷ものサスペンスの超大作。
シリアスな内容で重厚長大なうえに、テーマが日本人読者に馴染まないと思いますが、思いのほか物語に引き込まれました。
のちに「模倣犯」を書いた宮部みゆきが、本書を「このミス」で1位に挙げているのが分かるような気がします。
しかし、デミルは「ゴールド・コースト」や「プラムアイランド」などのエンタテイメント志向の作品のほうが好みだ。


No.852 6点 フリーキー・ディーキー
エルモア・レナード
(2010/07/26 18:43登録)
クライム小説といっても深刻さや暗欝さがないの作者の特徴でしょうか。
本書も、休職中の警官を始め、レイプを訴える女優、暇を持て余す大金持ち、ベトナム反戦の影を引きずる爆弾狂など、ちょっと常識を外した登場人物たちが、それぞれの欲望のままにオフビートな騒動を繰り広げます。
映像的でスタイリッシュなクライム小説という印象です。


No.851 6点 古い骨
アーロン・エルキンズ
(2010/07/26 18:21登録)
「このミス’89年版」海外部門の3位にランクインしたのはスケルトン探偵シリーズの邦訳第1作。
探偵役が、発見した白骨から生前の容貌はもとより性癖まで推理してしまうというのがユニーク。探偵の特異な設定によりプロットもパターン化されるから、シリーズがこれほど続くとは思わなかった。

2430中の書評を表示しています 1561 - 1580