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ミステリの祭典

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ブラック・ダリア
LA4部作

作家 ジェイムズ・エルロイ
出版日1990年01月
平均点6.86点
書評数7人

No.7 6点 蟷螂の斧
(2021/04/01 17:44登録)
(東西ミステリーベスト55位)警察小説を期待すると裏切られるかも?事件自体が中々起こらないし、全体の半ばでやっと少し動きだし、終盤で一気にといった感じ。事件を中心に考えると、横道に逸れてしまう場面が多いという印象。訳者あとがきにあるように「事件の謎解きが主眼でなく、著者の目は登場人物のそれぞれの暗い情念にそそがれている」ということらしい。とは言われても主人公ほか共感できる人物がいないのが残念な点です。まあ、真相はよくあるパターンですが楽しめました。

No.6 6点 クリスティ再読
(2019/11/25 15:29登録)
評者は名前の通りに再読中心なので、エルロイあたりの80年代デビュー作家は昔読んでない人が多いんだ。だからまったくの初エルロイである。評判は聞いていて、期待してたよ~~評者マンシェットを崇拝するノワール好きでもあるしね。
けどね、ハードボイルドから贅肉を極限までそぎ落としたマンシェットの方向性とは真逆だね。(異常)心理てんこ盛りだから、ノワールとはいえ、ココロよりもモノで語らせるハードボイルドとは絶対に言えないだろう。これでもか!っとぐちゃぐちゃドロドロの愛憎劇を主人公含む登場人物たちが繰り広げるわけだ。警官主人公で残虐な事件を扱う小説なのだが、意外に読後感はミステリ読んだ、というより一般小説に近い。描かれるタイムスパンがそうそう長いわけではない(実質1946~49年の話)のに、大河ドラマを見終わったようなヘヴィな生涯に付き添った感慨を感じるのは、物語の中で登場人物たちが皆々「変貌」を遂げるからだね。
主人公とパートナーのリーがボクサー上がりのマッチョ警官というのもあるし、なにせ事件が事件である。アメリカ猟奇犯罪史上に漆黒の華を咲かせた「ブラック・ダリア」だ。ヴァイオレンスでお腹いっぱい。けどねえ、エルロイの場合、心理主義なこともあって、暴力に理由が付きすぎる気がする。ホントは理由に首をひねらなければいけないような、唐突で不条理な暴力の方が、よりハードなようにも思う....だからか百万長者になった記念で愛犬を射殺する話とか、終盤の主人公による美術品大破壊の方が、死体損壊なんかよりも「ハード」に感じられる。
というわけで、本作力作だとはもちろん、思う。けど評者の好みとは一致しないところも多い。やや持て余している、というのが正直な感想。少し調べたが、現実の「ブラック・ダリア事件」からは、グロい方向に細部を盛ってあるようだ。まあ別に事実に忠実じゃないと...とか言う気はない。だったらさ、「テレパシー」で書いたアンガーの「ハリウッド・バビロン」を本サイトで扱ってもいいだろう。「ブラック・ダリア事件」は「ハリウッド・バビロンⅡ」の現場写真入り大ネタだよ。
(ひょっとして、評者とかだったら通例に反して「ホワイト・ジャズ」の方がヘンな小説で面白い!となったのかも?教えて tider-tiger さん!!)

No.5 6点 レッドキング
(2019/03/25 12:26登録)
「ハードボイルド=かたゆで」には遥かに程遠い、温泉玉子ぐらいにグチャグチャな脆い心を持った男女の、歪んだ「コンプレクス=こだわり」の物語。
女優を幻想した娼婦の様な女「ブラックダリア」の惨殺と、その凄惨な死に取り付かれてしまった男達と女達、フー・ホワイダニットのミステリの骨格は維持しながらも、ユーモラスなまでのグロテスクと過剰なまでのセンチメンタルが疾走して・・不思議なことに・・ある種の「爽やかさ」さえ吹かせたあげく、最後はハッピーエンドの予感さえ抱かせて物語が終わる。

No.4 9点 tider-tiger
(2014/06/01 15:20登録)
個人的には読みやすい文章とは思えませんでした。
構成も下手だと思いました。
焦点定まらず読み筋が掴みにくい作品でした。
主要人物の名前がブライチャートとブランチャード、途中でどっちがどっちだかわからなくなったりもしました。「どっちがどっちでも構わないんだ、どっちも俺なんだよ」と作者が囁いているような気がしました。
ブラックダリア事件という実際に会った猟奇殺人を題材にしていますが、作者に猟奇趣味はないであろうと確信しています。
この作品でエルロイは自分の母親を汚し、殺しました。だが、それを徹底することはできませんでした。
自分はこの小説のラストを甘いと感じましたが、その甘さが生まれた理由はエルロイが母親に対する気持ちを作品に反映させてしまったからではないかと思います。
これは技術ではなく情念で書かれた小説だと思います。
棺桶に入れて欲しい一冊です。
支離滅裂な書評で申し訳ありません。

No.3 7点 kanamori
(2010/07/27 19:08登録)
「このミス’91年版」海外部門の第3位は、40~60年代のロサンジェルスの暗黒史を活写した”LA四部作”の第1作。
エルロイはこれが初読み。ノワールものはあまり好きではなく、各書評でさんざん過激な暴力描写に触れられていたので、読む前は若干腰が引けていたが、圧倒的なリーダビリテイの高さを感じたものの、文体も描写内容も普通に許容範囲内で、ミステリ的な興味が前面に出ているのも意外だった。
「ホワイト・ジャズ」から入る人はまずいないと思うが、本書がエルロイ入門に最適だと思います。

No.2 7点 ZAto
(2009/11/02 23:22登録)
エルロイ自身の過去の出来事が投影された作品というファクターは見過ごせないことではあるのだが、
そういう表層の先入観に囚われてしまっていいものかどうかという疑問に無為な時間を費やしてしまった。
全編に渡って繰り返される暴力とサディズム、流血の沙汰はあまりにも強烈。
バイオレンスがカタルシスに昇華することもなく、最終的には直截的な狂気ではなく冷めた理性の中で深化していく恐怖こそがノワールの到達点なのではないかと思った。

No.1 7点 mini
(2009/01/16 10:01登録)
LA4部作の幕開けを告げる「ブラック・ダリア」
最初の章の部分だけ読んだ段階では、男の友情を謳う警察小説かと思う人も多いだろう
しかし物語はそこから奇妙なうねりを見せ、この作品が警察小説でもハードボイルドでも犯罪小説でもない、まさにノワールとしか表現できない小説であることを読者に確信させるのだ
実際にあった猟奇事件をモチーフに、ブラック・ダリアと呼ばれた女性の幻影に翻弄されてゆく人間群像を、エルロイの筆は書き尽くさずにはいられない
もっとエルロイはエロイのかと先入観が有ったが案外そうでもないし、もっと救いの無い物語かと思っていたがラストで少し救われた

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