home

ミステリの祭典

login
ZAtoさんの登録情報
平均点:6.55点 書評数:109件

プロフィール| 書評

No.9 7点 カウント・プラン
黒川博行
(2009/10/17 13:10登録)
多分に登場人物たちが、記号化しがちな短編小説にあって、追う側と追われる側のそれぞれの人生さえも煤けて見せる表現力は、下手な長編一冊分以上のボリューム感があり、そこには『疫病神』の読後感と変らないカタルシスがあった。


No.8 8点 大博打
黒川博行
(2009/10/17 13:09登録)
誘拐ものの最大の見せ場は身代金の受け渡し場面にあるのはいうまでもなく、そこに作家たちは様々なアイデアを凝らす。
しかし犯人と被害者、犯人と警察との人間ドラマが薄いとシステマチックなアイデア先行だけの小説になる。
黒川は人間をしっかりと描ける作家だ。
それも心象描写を延々と綴っていくのではなく、会話や台詞で使われる言葉を精査しながら、
そこから醸される登場人物の心情を読ませることにかけては天下一品だともいえる。


No.7 6点 絵が殺した
黒川博行
(2009/10/17 13:04登録)
正直いえば刑事が容疑者のひとりとコンビを組んで捜査に乗り出す展開はやり過ぎだったと思うし、
真犯人のアリバイと密室殺人を崩すきっかけとなる種明かしも高尚なものとはいい難い気もした。
しかし、例えば土砂降りの中をずぶ濡れになって事件現場まで走る刑事たちの以下のやりとりを思い出すと
どうしても口元が緩んでしまい、四の五のいっても仕方がない気にさせる。


No.6 7点 海の稜線
黒川博行
(2009/10/17 13:02登録)
所謂「姿なき容疑者」を題材とした本格推理ものになるのだが、関西、四国を飛び回るスケールの大きさと、
緻密な取材力、考え抜かれた殺人トリックの妙に東西文化論という膨らみも加えて、
文庫の裏表紙に書かれた「黒川博行、初期の最高傑作」の惹句に嘘はないと思った。


No.5 7点 暗礁
黒川博行
(2009/10/17 12:59登録)
この物語のキモは桑原のシノギへの執念に尽きるだろう。
そして人間関係の複雑さは黒川小説でも最大級で、そこに巨大な利権があることはわかっているのだが、
その利権の総元締めが企業なのか、警察なのか、やくざなのかが判然としないまま、
桑原が強引にこじ開ける風穴に我々は二宮とともに腕を引っ張られように突き進んでいく。

ただ、桑原と二宮の丁々発止のやりとりは相変わらず楽しいのだが、
以前の警察小説のように物語の途中で一度、展開を整理するような描写があってもよかったのではないか。

シノギの矛先が二転三転するのを、
黒川が面白がり過ぎた恨みは残ったような気がする。


No.4 7点 雨に殺せば
黒川博行
(2009/10/17 12:56登録)
ユーモアとスピードを信条としながら本格探偵小説の謎解きもしっかりと踏まえながら、事件の背景は綿密な調査とリアリズムでどこまでも重厚という初期の黒川作品の常道が既にこの第二作目で完成されているといっても過言ではないのではないか。


No.3 6点 アニーの冷たい朝
黒川博行
(2009/10/17 12:54登録)
別のジャンルに飛び込むのではなく、自分の世界にジャンルを引き込もうとするのが、いかにも黒川らしいといえばそれまでなのだが、デート商法とサイコキラーのつなぎ方は少々強引だったような気もする。ここはストレートに女教師とサイコ野郎の対決だけで全編を貫く黒川の筆致も読んでみたいと思った。


No.2 7点 文福茶釜
黒川博行
(2009/10/17 12:52登録)
骨董美術となると真贋をめぐって、一攫千金を狙う男たちの知恵と経験と度胸の騙しあいが展開され、
贋作創作の手口の凄まじさもさることながら、関西弁での口撃の応酬、骨董売買の交渉術やハッタリのかましまくりがアクション小説のようなカタルシスをもたらして文句なく面白い。


No.1 10点 疫病神
黒川博行
(2009/10/17 12:49登録)
本作の持つスピード感は大阪弁による会話のテンポによるところが大きい。
軽快なイメージの小説かというとそうでもなく、どちらかといえば重厚感が信条の作品かも知れない。
ワルがハイエナのようにカネに群がるピカレスクなノーワルでもあり、ハードボイルドではあるのだが、
書き味はどこまでもホットで泥臭く、それでいてスタイリッシュな美学で一貫している。

109中の書評を表示しています 101 - 109