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ミステリの祭典

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ZAtoさんの登録情報
平均点:6.55点 書評数:109件

プロフィール| 書評

No.29 8点 斜め屋敷の犯罪
島田荘司
(2009/10/18 12:41登録)
『斜め屋敷の犯罪』というタイトルがいい。
「斜め屋敷殺人事件」でも「斜め屋敷の謎」ではなく、あくまでも『斜め屋敷の犯罪』。
驚愕のトリックにのけぞった後に、改めてタイトルを振り返るとなんと味わい深いことだろう。


No.28 5点 出雲伝説7/8の殺人
島田荘司
(2009/10/18 12:38登録)
謎解きが充実すればするほど、肝心の物語が迷走していた感は拭えない。
首なし死体による被害者不特定の事件であるにもかかわらず、
通報によって早々に容疑者が浮かび上がり、マスコミからも追求されていくという流れは、
時刻表ミステリーについて精緻に描き込まれているのに比べるとかなり荒っぽいのではないか。


No.27 6点 長い長い殺人
宮部みゆき
(2009/10/18 12:35登録)
後日談として「容疑者の財布」の声も聞きたかったな。


No.26 7点 さまよう刃
東野圭吾
(2009/10/18 12:31登録)
「警察は市民を守っているわけじゃない。警察が守ろうとするのは法律のほうだ」と自嘲しながらも、
もちろん法治国家として復讐を容認することなど絶対に許されないという葛藤と向き合うことになる。
この警察側の描写が物語に深みを与えている。


No.25 7点 北の夕鶴2/3の殺人
島田荘司
(2009/10/18 12:27登録)
夏の終わりに、「光文社ミステリー資料館」で開催された島田荘司フェアに出掛け、そこで展示されていた“斜め屋敷”の模型をニヤニヤ眺めてはトリックの凄さに改めて唸っていたものだったが、その流氷館のトリックに匹敵するだけの仕掛けが、この三ツ矢マンションのトリックなのではないか。
まったくこんな摩訶不思議な超絶事件に次々と立ち会う羽目になった北海道警の牛越刑事には同情を禁じえない。


No.24 5点 殺戮にいたる病
我孫子武丸
(2009/10/18 12:20登録)
グロは作品の必然としてまったく気にならなかった。
しかし最後の大ドンデンによってもたらされる効果には疑問。
とくに霧が一気に晴れるという劇的なものではなく、
事件の猟奇性を高めたのかといえば、一方で落ちたものもあるのではないか。
現代社会の闇と真摯に対峙していると見せかけて、仕掛けを散りばめる作業。
新本格の作家性とはそういうものだといってしまえばそれまでなのだが。


No.23 8点 十角館の殺人
綾辻行人
(2009/10/17 13:52登録)
読者の先入観までも巧みに伏線として取り入れているのではないかと気づき始めるに至って、俄然、活字を追う目が冴えはじめてきた。
優れたミステリーとは作者が読者をいかに掌の上で遊ばせられるかにつきるのだとすれば、これは傑作といってもいいのではないか。


No.22 7点 左手首
黒川博行
(2009/10/17 13:43登録)
恐いのは、ふとしたときに訪れる「悪魔の囁き」という奴だろう。
ここで踏み出すか踏み止まるかで人生がまるで違ってくる。
カッコ悪い男たちが弾けようとする姿は、ことの善悪は横に置いたとしても立派な武勇伝に思えてしまうし、これを教訓として、あるいは反面教師にして地道が一番だという納得も出来る。
おそらく黒川ワールドの主人公たちが最後に奈落に落ちる姿はふたつの思いを読者に抱かせるのではないか。


No.21 8点 八号古墳に消えて
黒川博行
(2009/10/17 13:38登録)
“関西アンダーグラウンドの名手”が
古遺跡発掘に犯罪小説のネタを嗅ぎつけた。
もう黒川博行の貪欲な嗅覚は犯罪者と変わらんな。


No.20 7点 二度のお別れ
黒川博行
(2009/10/17 13:36登録)
黒マメコンビの丁々発止のやりとりが笑いを誘い、
ややカルカチュアライズされた上役の描写と合わせてユーモアミステリーの雰囲気を醸しているのだが、
黒川本人は真面目に本格推理小説の線を狙っていたのではないか。
少なくとも誘拐のトリックと意外な犯人という落としどころは十分に練られたものである。
今読むとデビュー作ゆえの発酵度の薄さはご勘弁か。


No.19 8点 ドアの向こうに
黒川博行
(2009/10/17 13:33登録)
あとがきに本人が記しているように、この作品は警察の捜査を通して描いた本格推理小説であり、
雲を掴むようにぼやけていた事件の輪郭が次第に狭められて、
やがて絞られた焦点のように真犯人が浮かび上がる構造が見事。


No.18 7点 てとろどときしん
黒川博行
(2009/10/17 13:32登録)
「ようそんな口から出まかせを平気でいえますな。閻魔さんに舌ぬかれまっせ」
「かまへん。わしゃ二枚舌や」。

相変わらずたまらんですなぁ、このノリは。


No.17 8点 蒼煌
黒川博行
(2009/10/17 13:29登録)
黒川作品の登場人物たちは、おしなべて欲望にとり憑かれている。
もともと業腹な金銭欲に名誉欲が加味されることで、それは一層ギラギラと鮮烈なイメージとなる。
しかし『蒼煌』にはそれを良しとしない清貧な理想が一方の核としてあり、
その対比が「人間喜劇」としての面白さを際立たせているのではないか。


No.16 8点 切断
黒川博行
(2009/10/17 13:27登録)
ストーリーそのものは凄惨な殺しの場面があり、珍しくレイプまがいの描写もあり、銃撃、誘拐、追跡、爆破と
黒川作品としても最大限にエンターティメントの要素を盛り込みんだもの。
それでいて本格推理ものの領域に踏みとどまっているのだから贅沢な作品であることには違いない。
自らひと皮もふた皮も剥けようとする黒川の筆致が安易なカタルシスを許さない硬質感を産んでいる。


No.15 8点 迅雷
黒川博行
(2009/10/17 13:25登録)
『封印』で一気にハードボイルドの領域に踏み込んだときには日活アクションの趣を感じさせたが、
『迅雷』の味わいは70年代の深作欣二『資金源強奪』や中島貞夫『狂った野獣』といった東映B級アクションのケッサクのノリに近いものを感じる。


No.14 7点 封印
黒川博行
(2009/10/17 13:21登録)
本格推理作家からハードボイルド作家に転進していく挨拶代わりの習作という位置付けなのかも知れない。
そうなると主人公が誓いを破って拳を振るうまでの展開と、その後の展開とでは作品の色合いが異なっていくのも、黒川自身がこの瞬間に作家としての方向性の封印を解いたと穿ってみるのも面白いような気がする。


No.13 9点 国境
黒川博行
(2009/10/17 13:19登録)
桑原にしてみればゴロ巻きの相手が同業のやくざから社会安全員や国境警備兵に代わっただけのことであり、二宮にしてみても身にかかる火の粉として極道社会も北朝鮮国家体制も似たようなものなのかもしれない。
しかし、だからといってミナミで成立する話を半島から大陸まで等倍で膨張させたチンケなものではない。
北朝鮮の国勢や地理関係に対する黒川の描写は精緻に渡っている。
ストーリーはフィクションとしても、そのフィクションをしっかりと成立させるには根幹の背景がリアルでなければならないことを黒川は熟知しているようだ。


No.12 5点 暗闇のセレナーデ
黒川博行
(2009/10/17 13:16登録)
「探偵が女子大生」「テレビドラマ用に作られた原作」「密室トリック」という私にとっては三重苦のような作品だったが、例によって美術業界の暗部などがこと細かく描写され、一見、お気軽なライトミステリー風でありながら重厚感を失っていなかったのはさすがだったと思う。


No.11 7点 燻り
黒川博行
(2009/10/17 13:14登録)
確かに自分も地道にキャリアを積んでいくという人生を諦めざるをえない歳となって、一攫千金への渇望は日々増すのみであるのだが、リスクを負うほどの気力が今ひとつ内から湧きあがってくることもなく、火もつかないので“燻る”ことも出来ない。
そんな男としてどこか去勢されてしまっているのではないかという気分を黒川博行に喚起させられた読書だった。


No.10 4点 キャッツアイころがった
黒川博行
(2009/10/17 13:11登録)
死体発見現場が滋賀、京都、大阪ということでそれぞれの警察が合同捜査の不自由な状況となり、
面子と縄張りの争いに発展していくあたりは警察小説として面白いテーマでもあるので、
出来れば女子大生探偵の活躍を抜きで読みたかったという恨みは残った。
まるで別の小説を一冊の本で読んだような不思議な気分ではある。

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