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ミステリの祭典

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あびびびさんの登録情報
平均点:6.33点 書評数:669件

プロフィール| 書評

No.549 10点 そして誰もいなくなった
アガサ・クリスティー
(2016/07/12 23:52登録)
女性が活躍する場面は見たくない…の昔気質の男だったが、クリスティを読んでからどうでも良くなった。この作家は凄い。

だと言うのに、この作品は書評していなかった。もちのろん、10点満点である。何が嬉しいかと言うと、色々な作品に対して正攻法でありながら、妥協せず、独自の評価が熱い?いいちこさん(名前を出してすみません)がこの作品に10点満点をつけられた時、「うぉー」とうなってしまった。


No.548 8点 猟人日記
戸川昌子
(2016/07/01 00:47登録)
油断していたと言ったら失礼になるが、先に「大いなる幻影」を読んでいたから、脇が甘くなったのかも知れない。

彫りの深いマスクをした男が外人風を演じ、夜な夜な女を漁り歩く。自身は玉の輿と言うべき状態で、仕事も安定している。しかも妻の実家が芦屋の豪邸なので、東京ではずっとホテル暮らし。週末に芦屋に帰る生活だ。

ホテルの他に、アパートを借り、そこを拠点として夜は街に出る。そしてモノにした女性の詳細を「猟人日記」にして記しておく。そんな男が過去の女性らしき犯人に復讐される。殺人犯として、警察に逮捕されるのだ。

しかし、彼の義父に雇われた弁護団が地道に捜査し、彼の無実を証明するのだが、本当に油断していた。その結末に、「あっ」と、声をあげてしまった。時代背景的なアンフェアはあるが、自分は心地良い驚きを感じた。


No.547 6点 大いなる幻影
戸川昌子
(2016/06/29 12:05登録)
昔は時代の先端を行く女性専用のアパートも、今はオールドミスの館になり、奇奇怪怪な行動をする住人が増えた。その怪しげな雰囲気の中で繰り広げられる心理的な戦い。これが男性専用のアパートなら、話は続かなかっただろう。

最後に犯人の独白があるが、ひとり二役など、スーパーウーマンすぎるところは首をかしげてしまう?


No.546 6点 祈りの幕が下りる時
東野圭吾
(2016/06/27 23:34登録)
東野さんの最近の作品同様、悪くはない。一読に値する出来栄えだと思うが、期待値が高いので、平凡に見える。ストーリー、物語の謎ともスペシャルではなく、こじんまりまとまっている感じは否めない。


これまで凄い作品を提供してきた作者だけに、このまま、平凡に終わって欲しくない。自分の感覚としては、作風は異なるものの、アガサ・クリスティと同レベルの期待をしている。


No.545 8点 鍵孔のない扉
鮎川哲也
(2016/06/06 23:42登録)
事件が起こり、事件の環境が淡々と語られ、捜査が行われる。捜査の甲斐があって容疑者が狭められるも、難関が立ちはだかり、その後行き詰る。そして、5分の3くらい進んだところで、捜査が鬼貫警部に委ねられる。

ここからが鬼貫警部シリーズの白眉である。自分的には、鬼貫警部が現地(出張)で交わす地元民との会話、その地方の特色、グルメなどが楽しい。今回は蔵王温泉から我我温泉、青根温泉、遠刈田温泉の評価が楽しかった(自分は温泉命で年間10回くらい全国を旅している)。

今回の謎の中で一番唸ったのは、なぜ、黒と茶色の靴を用意したのか?だった。判明すると単純明快だったが、その時点では思い浮かばなかった。


No.544 6点 アデスタを吹く冷たい風
トマス・フラナガン
(2016/06/03 01:34登録)
希有な短編集。それもミステリファンから文庫出版を要望されたものと聞いた。しかし、自分には合わなかったなあ。テナント少佐は魅力的ではあるが、こういう設定はあまり好きではない。

自分は根が単純であり、いろいろ考えずにサプライズを味わいたい俗物。要するに、思考力が足りないのだと思う。


No.543 7点 メグレ罠を張る
ジョルジュ・シムノン
(2016/06/02 00:45登録)
初めてのシムノンである。メグレ警部は当然知っていた。それなのに、なぜ手が出なかったと言うと、フランス・ミステリの偏見である。すぐに、ル・パンを想像してしまうのだ。別にル・パンが嫌いなわけではない。自分のなかでは漫画(ル・パン三世)と?ミステリを区別したいわけである。考えてみると、これは偏見である。両者はほとんど別物なんだから。

初めに解説を読んでこの作者がいかに偉大であるかを知ったが、読んでみると、実に味わいのあるストーリーであった。メグレ警部は人情家である。ほろりと来る。謎とき要素は少ないが、こんなジャンルもいいのではないかと、次の作品をこのサイトで探している自分がいた。


No.542 5点 ナイン・ドラゴンズ
マイクル・コナリー
(2016/05/17 23:45登録)
ロサンゼルスののチャイナタウンで酒を売っていた店主の老人が射殺された。ちょうど手が空いていたハリーボッシュが相棒と捜査するのだが、中国マフィアから「手を引け」と脅され、香港にいる娘が誘拐される。

すぐにボッシュは香港に飛び、現地の元妻と、その恋人とともに捜索するのだが、ボッシュは妥協せず、真一文字に突き進む。その結果、元妻は死んでしまうのだが、娘はなんとか取り戻した、しかし…。


その真相は、あまりにも悲惨なもので、すごく後味が悪い。そのやり切れなさが、逆に印象に残ってしまった。


No.541 7点 人それを情死と呼ぶ
鮎川哲也
(2016/05/08 00:06登録)
鬼貫警部に粘り腰がなかった(笑)。作者は時々、鬼貫が決してスーパーンマンではないことをに示しているが、これは松本清張を意識した作品と言うことで、最後の心中がいかにもそれっぽい。

しかし、清張は清張であり、鮎川哲也は鮎川哲也である。アリバイ工作は苦笑するしかなかったが、意外性のあるおもしろい作品で、あっという間に読んでしまった。でも、それほど自分向きではなかったかも知れない。


No.540 8点 一の悲劇
法月綸太郎
(2016/05/05 12:29登録)
誘拐物はほとんど流れが決まっており、あまり好きではないが、これは最後まで緊張感を持って読めた。ミスリードの連発で、最後は落ち着くところに落ち着いたが、密室の解釈だけは無理があったのではないか。

しかし、これほどの作品を26歳で書いた作者の才能に嫉妬する。


No.539 6点 歯と爪
ビル・S・バリンジャー
(2016/04/29 08:57登録)
まさか、これで終わり?と、解説のページをめくってしまった。ふたつの話が絶妙に交差するあたりが一番の緊張感…。

ただ、殺人犯人に仕立てられた方は驚天動地の心境だろう。大胆なトリックを期待せず、サスペンスだという認識を持って読めば名作の香りが充満する?


No.538 6点 皆殺しパーティ
天藤真
(2016/04/26 22:59登録)
大悪人?の語り手を妥協させず、、最後まで大悪人にしたところが素晴らしい。でも、70歳に近いのに、凄まじい肉体パワー。ほんまかいな?と、大阪弁で思ってしまう。

でも、自分にはミステリにユーモアは必要ない。これは気性だから仕方がない。あと、犯人もすぐに分かってしまった。クリスティーの読者なら、中盤で気づくのではないだろうか?


No.537 7点 憎悪の化石
鮎川哲也
(2016/04/25 00:34登録)
作者が長年温めていたトリック。偶然に頼った面もあるが、全部が全部計算されたものばかりだと逆に違和感があるし…。現実の事件でも、そんな場合が多い。

自分的には鮎川さんのミステリを一冊楽しんだという満足感がある。最初のトリックで犯人が喋り始めた時には、「まさか?」と思ったが、やはり最後は時刻表のトリックで、妙に安心?してしまった。


No.536 8点 獣たちの墓
ローレンス・ブロック
(2016/04/24 13:26登録)
倒錯3部作ー「墓場への切符」、「倒錯の舞踏」そして本書。どれも抜群に面白い。文庫540ページを一気読みしてしまった。

麻薬ディラーの妻が誘拐され、身代金を払ったにもかかわらず、ばらばらにされた死体が届く。そのディラーの兄がアルチューで、禁酒集会で知っていたマットに捜査依頼が来る。

手掛かりは0でスタートするが、あきらめない、最後まで食らいつく地道の捜査で確実に犯人との距離を縮めていくマット。その犯人たちは常習犯であることが分かり、ついに対決の時が来る。

最後は恋人エレインとの愛の葛藤、自身の想いをすべてを吐きだし、爽やかなエンディングに導いていく。

訳者の田口俊樹さんの翻訳が実に素晴らしい。元原稿より味わいがあるのでは…と思ってしまうほどだ。


No.535 8点
F・W・クロフツ
(2016/04/15 18:36登録)
全ページが捜査のような、そんな作品。中盤ころに犯人らしき人物が2名に絞られ、「樽」の行方を探る。ちゃんとした表があればもう少し頭が整理できたと思うが、これは自分自身ですべきかも知れない。

アリバイトリックは、見破った時点で驚きは半減してしまうが、そこに行くまでのプロセスが実に楽しい。さすが後世まで残る名作だと思った。


No.534 3点 シンデレラの罠
セバスチアン・ジャプリゾ
(2016/04/07 09:10登録)
中盤から話は落ち着いてくるが、序盤はすごく読みづらい。要するに、遺産相続の奪い合いなのだが、仕掛け人が記憶喪失になり、話が一転、二転、反転する。最初の100ページがまったく進まず、放棄も考えたが、常にベスト100に入る作品だけに我慢した。

しかし、自分の脳みそでは、この本の良さが分からなかった。


No.533 8点 殺人交叉点
フレッド・カサック
(2016/04/03 12:16登録)
表題作の「殺人交叉点」は、最後の一撃がなくとも面白い作品だったが、やはりその一撃にやられた。すぐに読み返してみると、なるほど、会話のほとんどがそうであった。このトリックは、いくつかの作品でおなじみ?だが、創案者なら凄い。

もう一遍の「連鎖反応」もアラン・ドロンなどで映画化されたほどだから十分に楽しめた。独特の語り口を持つ作家で、自分には水が合っていた。フランスミステリも興味深い。


No.532 8点 北村薫・宮部みゆき編『読んで、「半七」!』
岡本綺堂
(2016/03/22 13:35登録)
心の中では、「いまさら、半七捕り物帳?」と思いながら手に取ったが、その世界観に魅了された。ひとことで言えば、「粋」である。

時代は大正で、老人になった半七が、聞き手に対して昔の手柄話をするという設定。もちろん事件と謎は江戸時代のものだが、どれもうまくまとまっており、珠玉の物語が詰まっている。


No.531 9点 ナイルに死す
アガサ・クリスティー
(2016/03/21 18:39登録)
クリスティー命としては、この作品を8点以下にするわけにはいかない。クリスティーの作風をほとんど詰め込んだ名作だからだ。この作品でしたか?坂口安吾の「不連続殺人事件」の元となったのは…。

少し冗長気味ではあるけど、「検察側の証人」と同じ匂いのする作品だと思う(あくまでも自分自身の思い込みとして)。


No.530 7点 見えない精霊
林泰広
(2016/03/20 14:00登録)
そこそこ伏線を散りばめつつ、くどいほどの状況説明。飛行船を浮かべ、密室にするアイデアもそうだが、これなら別にネパール近辺でなくても…と思うが、そうでなくてはならない理由がある。

途中からうすうす感じていたトリックだが、しかし、あの狭い飛行船内でそれが可能なのか?しかも船内は一方通行である。

そう訝りながらも、ページをめくる手が止まらなかった。かなり読みやすい本だった。

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