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ミステリの祭典

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追悼者

作家 折原一
出版日2010年11月
平均点6.40点
書評数10人

No.10 5点 メルカトル
(2019/11/29 22:03登録)
浅草の古びたアパートで発見された女の絞殺死体。被害者は大手旅行代理店のOLだが、夜になると街で男を誘っていたという。この事件に興味を抱いたノンフィクション作家が彼女の生い立ちを取材すると、その周辺に奇妙な事件が相次いで起きていたことが分かる。彼女を殺したのは誰か?その動機は?「騙りの魔術師」折原一が贈る究極のミステリー。
『BOOK』データベースより。

私は知りませんでしたが、実際に起きた所謂「東電OL事件」をモチーフにした作品らしいです。
久しぶりに、ああ、折原ワールドだなとの感慨を持ちました。丸の内OL殺害事件の被害者に関わりのあった知人友人恋人などの証言を基に、真犯人をあぶり出そうという狙いは分かりますが、正直関係者、容疑者が多すぎてとても犯人を絞り切れません。
まるで本物のノンフィクション小説の様な仕上がりですが、読み方が浅いせいかどうにも作者の仕掛けが見抜けず、真相が明らかになってもカタルシスは得られませんでした。ふーんそうなんだ、位しか感想が浮かびません。

個人的には期待していた程面白いとは思えませんでした。途中の叙述トリックはえっとなりましたが、まあ最近のミステリには珍しくもなく驚きも半分って感じ。暇潰しには良いですが、ちょっと長いかなあ。

No.9 4点 HORNET
(2018/06/03 18:06登録)
 一言で言えば、「分かりにくい」。
 丸の内OL殺害事件を追うノンフィクションライターが、関係者に取材をしていき、そのコメントで物語を構成していく方法なのだが、まず登場人物が多すぎる。その多い登場人物が、入れ替わり立ち代り何度も出てきて話をするもんだから、誰が誰だったのかいちいち前を確認して読み進めなくてはいけなかった。

 それでも何とか読み進めていったのだが…提示された真相はあまりしっくりこなかった。
 こういうパターンでよく感じることなのだが、真相解明の段になって、それまで形作られた人物像やキャラクターがひっくり返され、「実はこういう一面もあった」みたいになるのはなんとなくアンフェアな気がする。本作では、大河内奈美は善意の被害者であったはずで、度重なる取材でもその人物像はあまり崩れなかったのに、最後の真相解明で急に陰湿な人間像に変えられている感じがしてしまう。少なくともそれまでの取材過程で、そうした一面があることが描かれていないと、「どんでん返しのための隠し玉」という感じがしてなんだかすっきりしない。

No.8 7点 測量ボ-イ
(2013/12/01 12:21登録)
読みやすく、リ-ダビリティは秀逸。
謎の提示及び解決もわかり易く、結末の意外性もあ
りました。
不満点は、真犯人及び真相を明かされても何かこう、
やられた感が希薄だったんですよね。
内容的には8点あっても良いのですが、そこで1点
減点します。

No.7 6点 E-BANKER
(2013/08/25 13:58登録)
文藝春秋社で折原といえば・・・かれこれ10年以上続けて新作が発表され続けている「○○者」シリーズ。
というわけで、今回は現実に起きた「東電OL殺人事件」をモチーフとした、その名も「追悼者」。
主人公が”売れないノンフィクション・ライター”という設定は拘りなのでしょうか?

~東京・浅草の古びたアパートで絞殺された女性が発見された。昼間は大手旅行代理店の有能な美人OL、夜は場末で男を誘う女・・・。被害者の二重生活に世間は注目した。しかし、ルポライター・笹尾時彦は彼女の生い立ちを調べるうち、周辺で奇妙な事件が頻発していたことに気付く。「騙りの魔術師」が贈る究極のミステリー~

世間的な評価は他のシリーズ作品と比べて高いようなのだが・・・
処女作品以来、数多く作者の作品に接している身としては、「並み」という評価になるなぁ。
とにかく既視感アリアリなのだ。

インタビュー記事や手紙などをプロットの軸に据え、主人公のノンフィクションライターが事件関係者の過去や周囲をほじくっていく、という展開は、これはもう「○○者シリーズ」の定番。
そして、次第に主人公の周囲に怪しい事件が頻発するようになり、謎の人物が次々に登場してくる。混沌とした中盤を経て、「これどうなってるの?」と思ってるうちに、終盤~ラストで鮮やかにひっくり返される・・・
これもいつもの流れだ。
本作では、OLを殺した真犯人探しのほかに、彼女自身の正体までもが謎の中心にあり、読者は最後まで作者の罠に引きずり回されることになる。

こう書くと、何だか褒めてるような、すごく面白いようにも思える。
でもなぁ、全体的な(叙述)トリックの出来栄えは「やや小粒」って感じではないか。
ある登場人物に仕掛けられた「○○」なども、面白いとは思うが、これってどこかに伏線が撒かれていたのか?
何となく風呂敷を大きく広げた割には、回収したモノは少なかったように思える。
中盤の冗長さもやや気になった(これも本シリーズの特徴ではあるが)。

同シリーズ作品でいえば、個人的には「冤罪者」「逃亡者」あたりの方が上とみた。
でも、さすがにまとまっていて、水準以上の面白さはあると思う。
(残るは「潜伏者」か・・・)

No.6 7点 makomako
(2013/06/16 13:25登録)
 折原一の作品は複雑で精緻な構造なものが多いため時に読むのがつらいということもあるのですが、この作品は誰でも知っている事件のようなストーリーのため入り込むのに苦労はありませんでした。読んでいくと興味深いが複雑でわたしなどは完全に作者の掌でもてあそばれた状態で、途中でぜんぜん違う結果を提示されているにもかかわらずその時点ではそうなのかと納得してしまった。
 犯人など当然指摘できず、名前を指摘されてもえーと誰だったかなといった始末です。きっと読み返すとしっかり伏線が張ってあると思うのですが、もういちど読む気にはなれず、作者を信用して?これでよいということとしました。
 でも読んでいて結構楽しかったのだから不思議なものです。

No.5 7点 haruka
(2013/05/26 20:44登録)
東電OL事件をモチーフにしていること自体がミスリードの伏線になっている。意外な犯人という点で、かなりの大技がさく裂しているが、終盤、もう少し丁寧に伏線が回収できないものだろうか。トリックが高評価なだけに残念。

No.4 6点 touko
(2012/07/29 12:15登録)
東電OL事件をモデルにした作品というと、桐野夏生の傑作「グロテスク」が有名なので、男性作家がこの題材に挑戦するのは勇気がいるんじゃないかなんてことも思ったのですが、こちらは女を巡る社会病理や心理の部分はばっさり切り捨てた純然たるパズラー作品でした。

かといって、東電OL事件ならではのガジェットもちゃんと生かされているし、長すぎて冗漫な部分もあるものの、全体的にはよく出来ていて、楽しめました。

No.3 7点 こう
(2012/03/25 23:16登録)
 インタビュー形式にした作品群の中では上位に入る作品だと思います。こういったインタビューでみられる〇〇を上手く利用している点とあるエピソードのミスリードが上手く騙されました。タイムカプセル以降は読んでませんでしたが少なくとも冤罪者以降の作品では最も楽しめました。
 ちょっと小技の様な印象もありますがこれだけ叙述作品オンリーなのによく考えたなあと感心しました。未読の「逃亡者」も読んでみようと思いました。

No.2 8点 蟷螂の斧
(2012/03/04 20:28登録)
他のサイトでは「まあまあ」の評価が多い。一読ではそのように思うかもしれないと私自身も思いました。しかし、ページをパラパラと戻してみれば、かなりの仕掛けがあることがわかります。ミスリードに次ぐミスリードのオンパレードでかなり凝っている作品です。主題にかかるミスリードも二重となっており、伏線はバッチリあるのですが、犯人はまず解らないのではないでしょうか?。主人公(男)のライターが眩暈を起こすのだから読者も当然でしょう(笑)。女性ライターにも謎があり、ラストのニュース記事にも余韻があります。マスコミを風刺する作品でもあるように感じました。

No.1 7点 kanamori
(2010/12/16 18:00登録)
今回の三面記事シリーズの元ネタは「東電OL殺人事件」。
元ネタの事件同様に、真犯人の追及よりも、昼は有能なOLで夜は娼婦だったという被害者女性に焦点をあて、ノンフィクション作家らが、被害者の幼少から殺害直前までの過去を関係者から取材する構成になっています。
これはなかなかの傑作。インタビュー形式特有のある制限や、タイトルに通じる巧妙な仕掛けによって、折原作品の相当の通読者でもミスリードされるのではないかと思います。作者の近年の作品の中では出色の出来でしょう。

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